呆冗記　人生に有益なことは何一つ書かず、どーでもいいことばかり書いてあるぺえじ。

思い出にするにはまだ早い

　少しずつ寒くなっているが皆様にはいかがお過ごしであろうか。
　寒くなったらばおでん屋さん。これは酒飲みとして正しい過ごし方である。というわけで、今日は土曜日でもあるし『Ｋ』さんへ出陣なのだ。
　そうして行ってみたらばなんと、カウンターで大根をつついている男がいるではないか。この店の冬だけ常連。朱雀である。
　おう、朱雀。一ヶ月ぶりではないか。それと、カムイワッカ登頂成功おめでとう。
　「ああ、ありがとう。ようやく。登れたよ。しかし、何だか久しぶりだな。元気してたか」
　「ははは、貧乏閑なし。がったがたなのだ」
　「ははは、こっちは頭痛持ち、目眩持ちではなかったはずなんだが、先週の末からこっちずっと目眩と偏頭痛でな」
　なんだか、今年無茶苦茶病気っぽいんじゃないか？　医者行ったのか医者。
　「ああ、どうも原因が分からないらしい。ただただ点滴打ってもらったが、良くならないものだから自己療法でもしようかと思ってな」
　って、大丈夫なのか。
　「ああ、肝臓、糖尿、こっちの方は大丈夫らしいからな。旨い酒でも飲んでストレスでも解消すれば良くなるかもしれん」
　そういうものか。
　「そういうもんだ」
　などと言いながら銚子を転がす。

　「ま、最近運良く古い特撮のＤＶＤボックスの中古を安く入手することができてな」
　何なのだ？　それって。
　「うむ『魔人ハンター　ミツルギ』と『忍者部隊　月光』なんだが。いやあ、楽しい。楽しい。今度見せてやるな」
　・・・。イマイチよく分からない趣味である。
　「いや、『ナースエンジェル　りりかＳＯＳ』のＤＶＤボックス買おうという人間よりは趣味がマトモだと思うが」
　人の趣味をとやかく言うなよ。というか、この冬、『マジンガーＺ』のボックスも出るのだが・・・。
　「それは買いだろう。『マジンガー』『ゲッター』『コンバトラー』はデフォ買いだと思うぞ」
　うーむ。しかし、１２月には『Ｇガンダム』も発売されるのだ。
　「究極の選択かな。それは・・・ま、『宇宙刑事』シリーズに勝るものではないが」
　この、特撮オタが。

　そのまま２次会へ突入する。朱雀もそのくらいは元気らしい。
　「久しぶりに『Ｐ』へ行ってみよう」
　確かにお久しぶりである。私は１年くらい顔を出していないのではないか。
　「最近、行っても臨時休業やら何やらで閉まっているからな。随分とご無沙汰している」
　幸いに『Ｐ』は開いていた。
　「や、いらっしゃい。久しぶり」
　いつも通りにマスターのＡさんが迎えてくれる。
　店内は全く変わっていなかった。
　「もう、１５年になるのかあ」
　店内の１周年記念パーティ予告ポスターを見ながら朱雀が驚く。確かに大学時代からの付き合いであるから、そのくらいにはなるのだ。
　カウンターについて牛スジ煮込みと『ズブロッカ』を頼む。やっぱりここに来たらウォッカである。
　「あ、『スタルカ』あるよ」
　わあ、もう、銚子３本転がしているのに止まらなくなる。
　なんだか、料理の皿も気がついたら増えている。本当に、ここの料理は美味なのだ。
　「うーむ、失敗したな。こんな事なら最初からここ来れば良かった」
　まったくである。
　「最近どうなんです？」
　「みんな歳取っちゃったからね。なかなか来てくれなくて」
　少しばかり耳が痛い。
　「いやあ、ちょくちょく冴速さんなんかとお邪魔してもバンド活動なさってて開いてなかったりして。ご無沙汰してます」
　「あ、そうだ、上杉君、某君。結婚するらしいよ。いや、したのかな」
　ほう・・・。ま、一方的に切られたのは私の方である。だから連絡の一つも来なくて当たり前なのだが。めでたいことはめでたい。

　少なくとも、『Ｐ』には学生時代からのいろいろな思い出が詰まっている。ここを思い出の中の店にしないためだけにも可能な限りマメに顔を出そうと思うのだ。
　この店の思い出はＤＶＤＢＯＸのように後で買うことが出来るものではない。もっともっと大切なものなのだから。
　まずは、来週。オムレツでウォッカである。約束だぞ。朱雀。（02,10,12）