呆冗記
呆冗記 人生に有益なことは何一つ書かず、どーでもいいことばかり書いてあるぺえじ。


夢の涯

 出た出た出た!
 出たのである。
 神は死んではいなかった。ああ。
 「ただいまっですなのだ。
 いったい、どれほど、どれほど私はこの瞬間を待ち望んだであろうか。「封仙娘娘追宝録・奮闘編4 夢の涯」がようよう出版されたのだ。長かった。どれほどまでに長かったことか。
 うーむ。ひさいちよしき氏、絵が変わったのだ。表紙の殷雷、目がでかすぎないであろうか。和穂は少々胸が大きくなり過ぎではないだろうか? そんな疑念も感じつつ、表紙をめくるのだ。
 おお、カラー口絵の冒頭は「夢の涯」版和穂である。2枚目見開きは「西の狼 東の虎」の逃げてる和穂。眉毛が既に焼き海苔状態というのは何とかならんものだろうか。
 三枚目は「刀鍛冶 深淵氏の勝利」の牢屋に入れられた殷雷だったりする。おお・・・。和穂の等身が少し伸びてはいないだろうか? というか和穂八重歯だったっけ?
 などと一人で喜んでいるのである。ああ、恍惚と不安我にあり。
 残念ながら、と言うべきか喜ぶべきか、私は連載中の『ドラゴンマガジン』を一切見ていなかったので全部が全くの新作。1巻、まるっこ書き下ろしのようなものである。こんなうれしいことが他にあろうか。いや、ない。
 というわけで、読書開始である。うう。涙で前が見えないが、しかし、私は頑張るのだ。そう、私はこのときを4月1日から一日千秋の思いで待っていたのだから。うむ。
 しかし、第一話「暁三姉妹密室盗難事件顛末」は完全に凄まじい代物である。というか、これ、ミステリーとして成立するのだろうか? まじめな話。導果先生って・・・。ノックスの十戒っていうのを完全に無視しているのは後書きを参照しなくてもよく分かる。
 ちなみにノックスの十戒というのは以下の通り。

 (1)犯人は小説の初めから登場している人物でなくてはならない。
    又、読者が疑うことの出来ないような人物が犯人であってはならない。
    (例、物語の記述者が犯人)
 (2)探偵方法に超自然力を用いてはならない。(例、神託、読心術など)
 (3)秘密の通路や秘密室を用いてはいけない。
 (4)科学上未確定の毒物や、非常にむつかしい科学的説明を要する毒物を使ってはいけない。
 (5)中華人を登場せしめてはいけない。
    (西洋人には中華人は何となく超自然、超合理な感じを与えるからであろう)
 (6)偶然の発見や探偵の直感によって事件を解決してはいけない。
 (7)探偵自身が犯人であってはならない。
 (8)読者の知らない手がかりによって解決してはいけない。
 (9)ワトスン役は彼自身の判断を全部読者に知らせるべきである。
    又、ワトスン役は一般読者よりごく僅か智力のにぶい人物がよろしい。
 (10)双生児や変装による二人一役は、予め読者に双生児の存在を知らせ、
    又は変装者が役者などの前歴を持っていることを知らせた上でなくては、用いてはならない。

 第二話は「夢の涯」。
 はっきり言って、短編の中での最高傑作だと思われる。こんなすばらしい作品はちょっとない。故に、私はろくごまるに氏の作品を待ち望むのだ。ああ。

 あなたと歩んでみる人生も面白そうだ。

 この一言でこの作品のすべては語れると思うのだ。ただ、作者体調不良時に書かれた作品かも知れない。そう思うと何か意味深な物を感じてしまうのだが。ともかく、この話はやっぱり傑作だ。そう思うのである。是非とも読んでいただきたい。

 第三話、「西の狼、東の虎」。
 いまいち封機握の能力が曖昧で、燃えなかった作品。服は道具ではないのか? とか、効果範囲の中心にいる封機握は作動不良にならないのか? とか、小一時間問いつめたい。問いつめたい。のである。

 第四話、「雷たちの饗宴」。
 これは素直に受け止めていいのではないだろうか。連載最後の話。一応ハッピーエンドと素直に認識するのが吉。しかし、氷の瞳を持った和穂。イラストが変わり過ぎなのは泣くしかない。うーむ。

 書き下ろし・・・。
 これはどう書いてもネタバレにしかならない。しかし、この作品で私は確信したのだ。ろくごまるに氏の真の復活を。そう。これでこそろくごまるに氏だ。本編の復活が待ち遠しいのである。

 ちなみにヴァンダインの二十則というのは・・・。(フェードアウト)

 しかし、富士見ファンタジア6月の新刊あらすじのない扱いの小さい3冊しか買っていない私というのは・・・。(『伝勇伝2』『棄てプリ10』、そして『夢の涯』・・・。)(02,6,20)


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