呆冗記
呆冗記 人生に有益なことは何一つ書かず、どーでもいいことばかり書いてあるぺえじ。


だから私は舐められる

 私は、今、大量の巨大な段ボール箱を見上げているのだ。

 私は可能な限り、人と摩擦を起こしたくないと思っているのだ。
 最低限度の自分の世界さえ守れれば、あとはどうなってもいいと思っていた。先輩達に何を言われようと、それは仕方がない。確かに彼らの言う価値観に私は適応しない。現世の価値観以外の価値観を持っている人間など現世の価値観を持っている先輩にとっては異常でしかないのだろう。それは理解していた。
 しかしだ、私が愚かなのは、先輩と同じ価値観の後輩にとっても私は異物なのだ。そのことに気がつかなかったことにある。

 さて、単なる職人の私も今の職場で10年選手になると主査などという役職などに就かねばならない。この世の正しい価値観をもった同輩は既に各部署のチーフになって4〜5年、正しい価値観を持った後輩達も私とほぼ同じく、役職付きになった。そんなところだろうか。
 私にとってはようやく得た役職である。というか、これで今まで苦杯を舐めた現状を吐露し、この会議でなんとかわが部署の状況をもう少しましな状況に持っていきたいと思っても罰はあたるまい。
 お偉いさんが発言を続けるので、手を挙げる。
 ともかく、我が部署の現状は他社出向要員部署よりもパーティションは狭く少人数で、劣悪なのである。そのあたりを何とか解消願いたい。我が部署が
、会社の各部署の基本計画を立てる我が部署が動かなかったらどうなるか、わからないお偉いさんでもあるまい。
 しかし、お偉いさんはあっさり誤解してくださった。
 ひとつ、他部署の優遇は、我が社利益の貢献に比例する。特別な待遇を受けている部署は、それが必要だから受けている。よって、現状のままでは十分である。上杉主査の発言は非常識である。そんな事言うのだったら狭い部屋の整理整頓でもしたら如何か。
 会場全体の失笑・・・。
 はははははははははは。笑いたいのはこっちである。これが最近のドラマでも、植木等主演(本当か?)『ビッグ・マネー』あたりだと、植木等あたりが決めて下さるのだが、残念ながら、我が社に植木等はいない。結局、これでチョンである。

 いや、チョンではなかった・・・。

 某部署の役付(私よりも10才も若いが、正常な価値観を持つが故に役付になっている後輩)が会議が終わって脱力しきった私の前に立ちふさがったのである。
 「あんたねえ、今の発言は他社出向要員の部署に失礼だわ。きちんと今回の会議に出た副主任にあやまんなさい」
 は・・・。
 私は確かに、君よりもこの会社では2年しか先輩でない。主査になったのも同じ年度だ。しかし、他社業務も含めると、7年以上のキャリアの差があるのだが・・・。しかも、今回の会議に出席していた件の分掌の役職付きは副主査であり、主査ではないのだ。
 それよりも、なによりも、君の内部世界では10才以上(異常だったりして)年上を「あんた」よばわりするのか?
 ああ、私が平だったら、無視をするものを。しかし、今の私は我が部署の代表である。何はともあれ、主査なのだ。部下は一人もいないのだが。主査なのだ。だから、役職付きなどにはなりたくなかったのだ。
 しかたがないので、怒っているという副主任に頭を下げにいく。実は、彼、スコップの君であったりするのだ。
 「まったく、一線部隊になんという暴言を吐くんですか。え、失礼じゃないんですか。あんた。場所があるだけありがたいと思いなさいよ。本当に、整理整頓でもすればいいんですよ。ちったあ広くなるでしょうよ」
 また、あんただ・・・。しかし、この副主任、去年まで外注さんで、私より15近くも若いのだが・・・。
 ううむ・・・。ま、別にこっちの価値観のかけらもない私としては平身低頭して部署に戻ったのだった。なんといっても整理整頓もあることだしな。
 そうして、私は、今、他社出向要員部署の現主任が持ち込んだ大量の巨大な段ボール箱を見上げているのだ。私と彼との約束で置いてある資料の山である。
 さて、来年当たり、主任が替わったら、全部突っ返してやることにしよう。ま、私が移動することはあり得ないのだし。スコップの君が主任になるのは確実であろうから。

 うーむ、今回、題名は『だから私は根が暗い』のほうが良かったであろうか。(02,4,24)


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