呆冗記
呆冗記 人生に有益なことは何一つ書かず、どーでもいいことばかり書いてあるぺえじ。


小さな疑問

 さて、最近、若者についていけない自分を自覚する。昭和40年にこの世に生まれ幾星霜。宇宙人世代と呼ばれ理解の外といわれながら生きてきたつもりだが、その私の理解の外が最近の若者なのである。はあ。
 札幌は180万人が豪雪地帯に住まう街である。世界的にもこんなに豪雪地帯にこんなに人口が多い町はないと朱雀が言っていたくらいである。(少し信頼性に欠けるが)
 そんな街に今週の月曜日から雪が降りしきっている。なんでも月曜火曜水曜で、120センチ近くの降雪量なのだそうだ。12月のこんなことは昭和41年以来なのだそうだが、当然、私は記憶はない。
 そんなこんなで、わが職場の駐車場も大雪である。そんな中で、後輩君のかっこいいスポーツカーが、雪に乗り上げてしまった。偶然、外回りのため、わがボロ車を暖機していた私の目前である。彼はスノーヘルパーを取り出し悪戦苦闘するもどうやら、雪に低い車高の腹が乗り上げてしまっているらしい。夏格好いい車は冬に弱いのである。
 「これ、使うかい?」
 私は愛車のトランクから折り畳みのスコップを取り出すと差し出した。
 私のボロはボロであるが故に、トランクには万が一のブースターケーブルから牽引ケーブル、三角掲示板から万が一の時にドアをぶち破り、シートベルトを切断するエマージェンシーキット、スノーヘルパーまで入れてある。
 どーせ朱雀の『さっちゃん』のように新車ではないのだ。どーせ、どーせ。である。
 は、話が横道にそれた。
 後輩君は無言でそれを受け取るとなにやら作業を始めた。私も愛車をスノーブラシで雪から掘り出す作業に戻る。何分かたっただろうか?
 「全然、役に立たないです」
 後輩君が、そう言って私の車の近くにスコップをざくっと刺すとそのまま職場の建物の中に消えていく。どうやら役に立つスコップを探しに行ったらしい。
 私はしばらく思考停止状態に陥っていた。今、彼は何と言ったのだろう?
 一応、私は善意でスコップを貸したのだが。
 借りた以上、まず感謝の言葉はデフォルトではないのか?
 「甘いニャ!」
 おお、武田。
 「絶対に甘いニャ。『役に立たないものなんて貸しやがって。この野郎が、よけいな時間使っただろうが。え』というのが後輩君の言いぐさニャ」
 な、なにぃ?
 「そういうものニャ。僕も先だって、ミスをした僕の後輩を役目上、指導しなければならなかったニャ」
 やれやれ、なんだか最近先輩づいているではないか。
 「そんなことはどうでもいいニャ。その時の彼の言葉は印象的ニャ」
 なんと言った?
 『謝ったらミスが消えるんですか?』ニャ」
 ぐぼおお。
 思わず異音を発してしまった。しかし・・・。そういう時代なのか。
 「謝ってもミスが消えないなら、謝るだけ損なのだそうニャ」
 なんか・・・。すごい時代になったような気がする。
 「でも、もう一つ、小さな疑問があるニャ」
 なんだ、どうした?
 「『万が一の時にドアをぶち破り、シートベルトを切断するエマージェンシーキット』を上杉は、万が一の時、シートベルト外してドアを開け、トランク開けて取り出して、ドアを開けてシートに戻り、シートベルトを締めてから使う気かニャ?」
 あれ・・・。
 「そんな時は、エマージェンシーキットはいらないんじゃないかニャ」
 確かに、なんか変だな。
 「絶対に若者のことは言えないニャ」
 うう、武田に言い負かされてしまった。(01,12,14)


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