ないす・とぅ・みーちゅー!
【3/25-26/2000】 Lower McDonald Creek, Apgar Lookout Trail
【3/25-26/2000】 Lower McDonald Creek, Apgar Lookout Trail
ないす・とぅ・みぃちゅー。
時は夕方6時20分過ぎ、どんよりとした曇空の下、 僕は Apgar Village にほど近い Lower McDonald Creek に架かる橋の上から、 静かなる流れを見つめている。 公園のゲートをくぐったのが夕方6時、 週末とは言えこの時期のこの時間である。 さすがにもう園内に人影はない。 小雨が降り始めてきた。
ふと流れから目がそれ、 また視線が元に戻った時、 僕は静かに「はっ」と、 息を飲む。
さて、 何故僕はうすら寒い中こんな時間にこんな所に一人侘んでいるのかと言えば、 Lower McDonald Creek の岸辺から水の中に大きく張り出した小枝の建造物、 Beaver Lodge があるからだ。 橋の上からその距離約 10メートル、 まさに観察して下さいと言わんばかりの場所に、 それはある。 Beaver は早朝もしくは夕方〜夜間に活動をする、 警戒心の強い動物と聞いている。 今迄園内の至る所に Lodge や Dam といった、 Beaver のフィールドサインを発見してきたが、 まだその姿にお目にかかったことはなかった。 この、 森の中の小さな建築家(というか土木業者というか)... を一目見てみたい、 というのは僕にとって「Glacierでぜひ実現したいリスト」のかなり高い位置に名を連ねている一つでもあった。
遠くで小鳥の声が木々の間をこだまし、 そよそよと水の流れがする以外は何の音もしない小雨の中で待つこと約15分、 まさに僕の目の前に今、 「憧れの君」が静かに姿を現した瞬間である。
「ないすとぅみぃちゅぅ!」 と橋の上から小さく囁く僕の存在には気付いていないのか、 巣から余り離れない範囲ではあるが水面を悠々と泳ぐ君。 想像していたより小さな体つきだ。 こんな体であんなに大きな Lodge を作ったのかと恐れ入る(注)。 ひとしきり泳ぎ回ったあと、 Lodge の脇で体を丸め、 一本の小枝を加えて突如、 「パツパツパツパツ」と速いリズミカルな音を立て、 あっと言う間に枝をかじり折ってしまった。
そしてまた流れを悠々と泳ぎ始める。 別に魚を獲るわけでもなく、 枝を探すわけでもなく。
そんなこんなで10分くらいしぐさを観察した頃、 僕は見る位置を変えようと、 橋の上でガサガサと音を立ててしまった。 すると、 彼(女)はフイにとオールのような尾で水面を勢い良く叩く。
申しわけないー。 と心の中で叫びつつ、 寒空の下、 更に橋の上で待つこと15分、 彼(女)は再びそのキュート&ラヴリィな姿を水面に現したが、 ゆったり一回り泳いだら静かに水中に潜り、 また巣の中に隠れてしまった。 その後、 ごくたまに水中の枝が揺れたり気泡が立ったりするので、 すぐそこにいることはわかるのだが、 中々顔を出してくれない。 更に待つこと15分ほど、 やっと3度目のお披露目である。 が、 周囲は段々薄暗くなってきており、 手もかじかんできたので、 数分続いた第三部を見物したあと、 帰ることにした。
しかし結局1時間以上も僕は橋の上で君を待って(+眺めて)いたわけだ。 念願叶ったり。 いやーありがとう。 寒かったけど報われたよ。
- 【注記】
- レンジャーさんに確認したところによると、
この Beaver Lodge は 10年ほど前に作られ、
一時は10頭近い Beaver が家族で住んでたそうですが、
ある年突然姿を見なくなったとのこと
(原因はわからないが、 伝染病のようなものにやられたらしいとの見解)。
- そして去年あたりから再びこの若い Beaver が住み始めたそうで、 現在彼(女)の手によりリフォーム中。
- West Glacier から入園して、 最初のT字路(右はGTTS、 左は Visitor Center) を左に曲がり、 Visitor Center に寄らずにまっすぐ行ったところにある橋から見られますので、 Apgar に寄られた際には、 ぜひ一つ立派な家を見てみてあげて下さい。 (2000年5月時点)
- そして去年あたりから再びこの若い Beaver が住み始めたそうで、 現在彼(女)の手によりリフォーム中。
これはうまい。〜 Cafe Max 〜
夜、 Kalispell にて、 アメリカらしからぬ美味しいレストランを発見。 本当は、 一人でレストランに入るのもなんとなくナンなので、 "Cafe" "Coffee Shop" "Dinar" といった、 こじんまりした喫茶店もしくは定食屋のようなものがあれば、 と思いメインストリートを物色していたところ "Cafe Max"という名の店を発見。 中が暗そうだったのでもう終わってるかと思ったが、 意外にも9時くらいまでやっているようなので入ってみたら、 あらら、 Cafeとは名ばかりで、 規模は小さいがちょっと高級そうなレストランであった。 店員の服装も白と黒でシックにまとめ(ネクタイもしていた)、 奥にはずらりワインが棚に寝かせてあり、 ちらり目をやると、 ディッシュの盛り付けからして違うじゃん。 お客さんにもドレスコードがあるような感じではこれ...(大丈夫だったが)。
まぁ入ってしまったので試してみたら、 お、ここは当たりだぁ。 いわゆるアメリカン・フレンチというやつで、 そろそろアメリカ(というよりモンタナ)の大味な食事に辟易してきてるあなた、 旅の最後に一晩ちょっと贅沢なんてどう? (一人$30〜40くらいかかるかな...)
ここは違う頂? (3/26)
次の日、 Apgar Lookout Trail に挑戦、 とは云え、 この季節はまだ雪山である。 Kalispell のアウトドアショップで Snowshoe(西洋かんじき)を借り、 真っ白な森のトレイルを登ることにした。 勾配がきつくなるまでは XC-SKIで、 その後はXC-SKIを脱ぎ捨て、 Snowshoeでガンガン登る小春日和の Apgar Mtn. 。
シーズン前ということもあり、 とにかく静か。 Glacierのハイキングルートとしては、数少ない山頂を踏むトレイルであるものの、 標高の低い所から始まるので、 トレイル全般において森林限界を出ず視界は悪い。 おそらく夏に登れば大した勾配ではないはずなのだが、 さすが雪道だと様相が違い、 ゼェゼェ言いながらガニマタで登る。 ほとんど雪山修行状態である。 それでも人は Lookout Trail に挑む。 頂のLookoutに備え付けてある Guest Book 目指して。 え、 景色? もちろんもちろん。
とか言っているうちに山頂真近、いきなりトレイルが消える。 というか、完全に雪の斜面と化し、道筋がわからなくなり一瞬途方に暮れかける。 しかしここまで来て引き返したくはない... (注: 本当はこういうのはダメです。アウトドアでは、あきらめる勇気も必要です。)
一分ほど葛藤が頭の中を駆け巡ったのち、 下した結論。 「とにかく上に登れば着くやろ。」 と雪の斜面をいきなり垂直に登り始める自分。 幸い、 森の中で雪崩となるほどキツい斜面でもない。 体力に任せて登ったれ、 と15分ほど登ると山頂らしき所に到達。 なんだ、 やれば出来んじゃん♪
ぐるり見渡すと、 僕が最後に登った頂は、 Lookout の隣(北側)の頂であった。 ほぇぇ。
てなわけで隣のLookoutめがけてずざざーっと雪面を滑り降りている最中に、 両足ふくらはぎをツり、 雪の上でのたうちまわりつつ、 +15分かかってやっと到達し、 念願の Guest Book に記帳。 あとは Lake McDonald を眺めつつランチを食べて、 下るだけ。
で、 下りでまたトレイルが雪斜面に呑み込まれており(行きと同じ場所らしい)、 このままトラバースすれば繋がりそうな気もするものの、 まかり間違って低すぎる所に出ちゃったりするとホントに雪山で遭難してしまうので、 大事をとって、 行きに来た雪道を自分の足跡を辿って戻ったのであった。 うぇぇ、 マジ疲れた。
その晩、 アウトドアショップの閉店時間に間に合わず、 メッセージと共に店の入り口にSnowshoeを放置。 盗まれませんよーに。 さよ〜なら〜。
- 【蛇足】
- 次の朝、 開店時間と同時に電話を入れて確認を取ると、
- 「そんなもの置いてなかった。」
- ぐわわわーん。 やっぱ甘かったかー。 弁償か〜これは?。
- ...と思ったら、その後少しして連絡が来た。
- 「夜中に見回りに来た店員がそれを発見して、 家に持ち返っていたのでダイジョーブ。 You're all set. Thank you!」
- ホッ。 平和な田舎町、 Kalispell。
- 「そんなもの置いてなかった。」
以上。