【その3】
What May Their Dreams Come?!
What May Their Dreams Come?!
絵画のような美しい映像
"What Dreams May Come" という映画が 1998 年に全米で公開された (映画の写真や詳しい解説は、 このリンク先参照のこと←デッドリンクになっちゃってます)。 Robin Williams 主演、New Zealand の Vincent Ward監督作品。 実写の大自然の風景と印象派風の油絵の風景画を最先端のコンピュータ・グラフィクス、 特殊効果で見事に融合させたその鮮烈で美しい映像は、 1998年度アカデミー賞 "Best Visual Effect" "Best Art Direction" の2部門にノミーネートされ、見事 "Best Visual Effect" で賞を獲得 (ちなみにこの年の作品賞は John Madden監督の Shakespeare In Love"、 監督賞は Saving Private Ryan を撮った Steven Spilberg でした)。
二人の子供を同時に事故で無くした夫婦、 その事件の4年後に今度は夫までも事故死する。 そしてその夫は、 死後の世界から彼女の描く絵画を通してノイローゼに落ちてゆく妻を見つめる。 妻は自殺するが、 自殺したものは天国へは行けず、 地獄に行くという。 そして天国に住む者は、 地獄に住む者とは二度と会えないという。 そこを Robin Williams 扮する夫が妻を連れ出すために地獄へ行くというストーリー。 天国や地獄が出てきても、 Robin Williams が主演を張っていても、 これは決してコメディ作品ではない。 かなりシリアスな装いだ。 さて、何故このサイトでこの映画を取り上げているか。 既にお察しの方も多いかも知れないが、 そう、 撮影ロケ地に Glacier NP が使われているのである。
話の最初でまだ若き(というにはかなり無理があるような)独身の Robin(役名Chris)が未来の妻に出会う地は、 なんと Many Glacier 地区の、Swiftcurrent Lake の湖上である。 画面の遠くにぼんやりではあるがきちんと Many Glacier Hotel も映っている。
そしてそのChrisが事故死して最初に行く天国の風景(Chris's Paradise)は、 Many Glacier 地区を中心にロケされており、 スクリーンの中で Glacier 独特の地形と自然が実に美しく油絵の世界と融合している (映画中そびえ立つ独特の形をした山は、 おそらく Mt.Wilbur と思う)。
そう、まさにそこは天界の風景なのかも。 彼の地がロケ地に使われ、 美しくフィルムに焼き付けられている様は、 Glacier ファンの一人として大変喜ばしいことだと思う。 ちなみにこの雄大な風景の中に、 それはそれは大きな滝も出てくるのだが、 これは Glacier 内の滝ではなく、 落差世界一を誇るヴェネズェラの Angel Fall の映像を合成しているとのこと。 職場の知り合いで、 丁度たまたまこのロケ中に訪園した人がいるけど、 どかどかとでかい機材トラックがあの狭い道を往来していたとか (でも多分 GTTS は車重・車長制限に引っかかって往来はムリだろう)。
だがしかし内容は...
さて、 実はこの映画、 ストーリーそれそのものははっきり言って重要ではない。 実際、 シリアスな(ラヴ?)ロマンス(繰り返すがコメディ映画ではない)であるにも拘らず、 話の流れは大笑いしてしまうほど御都合主義で、 あきれてしまうほど退屈だ。 ハリウッド映画よろしく、 最後もちゃんとハッピーエンド (個人的には、 どうしてエンディングをこのような展開に持っていけるのかきっちり説明して欲しいと思うくらい、 あまりにも安易で唐突)。 どちらかというとそのストーリー自体より、 その中に込められた家族愛、 あきらめない気持ち、 魂の交歓、 心の旅、 といったもっともっと詩的で宗教的で精神的なもの、 これを軸に物語を構築したかったのであろう ...というのがスタッフの建前なのではないかと見てとれる。 が、 残念ながら、 その魂胆はミエミエで、 しかもはっきり言ってかなりチープ。 天国・地獄という世界観も、 むちゃくちゃステレオタイプだし、 特に地獄のセットがこれまた相当にお粗末な。 結局この映画「実写の風景と油絵の風景画の融合」 というこのアイデアだけでスタートした、 イメージ先行型(しかも遂に内容がイメージに追い付くことなく終わった) 企画に違いない、 と思わずにはいられない。 (「実写の風景と油絵の風景画の融合」という技術的な点においては、 非常に成功しているだろうと思われる。 お陰でアカデミーも取ったし。) 個人的には 「気合いを入れて作ってはみたものの、トホホな結果に終わった映画」 を表彰する 「ラズベリー賞」にノミネートさせてあげたいくらいだが、 おそらくそこまで話題になる映画でもなかった気がする。
しかしまぁ、 「最後にはほろりときた」 とか言っている人もいるので、 世の中わからないものだなと思う。 まぁ、 見られる機会があったらヴィデオレンタルでもして一度、 見てやって下さいな。Glacier の晴れ姿を見るためだけでもね。 多分、 日本での劇場公開は...ないでしょうな。 ははは。
さあ、 あなたは果たしてうかつにもホロリときてしまうタイプか? それとも笑っちゃう気力すら衰えるタイプか?
...とか言ってたら、 日本公開が決まったってぇ? ありゃびっくり。 タイトルは「奇蹟の輝き」だそうな... しかし1800円も払って誰が見に行くのか...Robinファンと... をを、 僕のような Glacier National Park ファン? んんんー。
【追記(9/25/2005)】
さすがに日本での公開には(当時USに住んでたこともあるが)行くことはなかったが、 一応Glacierファンとしては、 いつの日かロケ地のディティールを確認するためにももう一度観る機会がないかと思っていたところ、 まぁもう5年以上も前の話になるけれど、 日本-US便の機内上映で日本語吹き替え版を観られる機会が。 ちょっと間を置いて、 しかも今度はちゃんと日本語で内容を追ったにも拘らず、 やはりボクの辛口の感想は一緒。 Glacierはやっぱり綺麗だったけどね♪。
しかし、 Amazon.com
なんぞでこの映画のDVDのカスタマーレヴューなんかを眺めてみると、
なんか知らんがけっこう評価高いのが気になるんですけど。
どういうことぉ〜??
映画観る際、 ボクが何か重大な見落としでもしてるんかなぁ。
みなさん、 本当にこんな映画で最後まで白けずに感動できるんですかぁ〜?
(余計なお世話だっちゅーの)