【その4】
マナーに関する傾向と対策
マナーに関する傾向と対策
よく、 アメリカの国立公園法というのは、 自然を保持し、 自然に親しみ、 自然を学ぶという観点で、 堂々世界に誇れる素晴らしい法だと言われる。 全くもって異論なしだ。 そしてよく、 そんな誇らしい法を自国に持ち、 広大な自然を持っているアメリカ人は、 子供の頃から親と一緒にキャンプ・ボランティアなど様々な野外アクティヴィティを通し自然を経験し自然と親しみ、 アウトドアマナーを知らずのうちに身に付けている、 対して海の向こうからアメリカの大自然を体感しにやってくる日本人観光客のマナーと言ったらもう..... などと言われたりする。 本当だろうか?
そういやこないだカヌークラブでツーリングした時、 キャンプ中にこんなことを言われた。
どうもこの人、日本という国は小さい国土に人間がひしめいていて、 どこもかしこもコンクリートジャングルという印象を持ってたらしい... (しかしこの人はとてもいい人であるし、 アウトドアマナーもがっちり身に付けている。)
「ミエ」の勧め
例えばゴミを例にして考えてみる。 国立公園内には確かにゴミも非常に少なく、 素晴しい環境が保全されているのだが、 ハイキングトレイル脇など、 実はよく見てみると意外とゴミというのは落ちているもので、 これらは日本人客が捨てたものか、 と言われればおそらく大半はそうではない。 もちろん一部そういうのもあるかも知れないが。 自分の周囲を見渡してみても、 ハイキング中に何気なくゴミを捨てている輩(日本人ではない)はそこそこ存在するようだし、 実際に公園を旅行中にも、 別の観光客(日本人であるなしに限らず)が何気なくゴミを捨てたり置きざりにするのをたまに目にする。
が、もちろんそんな連中ばかりではなく、 大半のアメリカ人(とは限らんが)はきちんとゴミを持ち帰る。 ごく一部の常識に欠けた連中が公園を汚してゆく。 日本人観光客も同じだ。大半の客はきちんと心得ていると思うが、 おそらくごくごく一部、困った輩も存在する。
ところで僕はよくハイキング中などにゴミを見付けたら、 気付いた範囲で拾っているのだが、 これが意外と同行者(日本の友人に限らず)に注目を浴びることがある。 もちろんこの行為を目立つようにやっているわけでもなく、 いちいち同行者に促してるわけでもないのだが、 よく驚かれる。 そんなに珍しいことかな? 多分、 アウトドア好きの人ならばアメリカ人、 日本人、 もしくは他の国の人、 に限らずみな多かれ少なかれ普通にやっていることだと思うのだけど。 ただ、 幸い同行者達にネガティヴな反応をされたことはなく (例えば「普段街中でゴミなんか拾わんくせになにカッコつけてんだ」 とか、「なに優等生ぶってんだ」とかいろいろ...)、 みなその後さりげなくマネしたりしてくれているので良かったりするんだけど。
そういや以前、 ある人(アメリカ人)が彼の友人達とどこかハイキングをした際、 その彼がトレイルに落ちてるゴミを拾ったそうな。 そのグループには女の子も含まれており、 うち一人が彼の行動に気付き、
要するにこんなことするのも人それぞれで、 別にアメリカ人だから、日本人だからってことはないということ。 国籍出身に関係なく、同じことをしてる人に出会うと何だか嬉しい。
もちろん、 僕らはゴミ拾いのボランティアをしに公園に来てるワケじゃないんだから、 ムリするこたないと思う。 あんまり気にしていると、 目が気付かぬうちにゴミ探しに走ってしまい、 結局何しに来てるんじゃ状態に陥るのも...。 大体歩いていて疲れてきたら、 ゴミ見つけても屈んで拾うのはけっこうシンドいしね。 最低限自分の出したゴミを持ち帰れば、 一応義務は果たしていると言えると思うし。
アライグマくんのために....
また、 悪意はなくとも、 してはいけないルールをただ知らないだけ、 ってのもけっこう存在する。 どちらかと言うとこういうケースにおいて
以前、 友人同士で一緒にカヤックツアーに参加した際、 食事の用意中、 人参の切れ端とかをそのへんの茂みに投げたり、 ランチのあと、 他のゴミはきちんとまとめているのにリンゴの芯だけはその場に捨てたままにしたりしている友達(アメリカ人)がいたので、 ゴミ袋を差し出して、 「入れて」と言ったところ、 彼女はこう言った。
Glaicer National Park の動物達のようにあまり人をこわがらない = 逃げないような場合、 動物(特に小動物)はやっぱりかわいいし、 手持ちの食料をエサとして彼らに与えてみたくなるというのも人情であろう。 しかしこれは絶対いけないことなのですよ、 動物にとっても、 人間にとっても。 まず、 一度人間からエサをもらえることを覚えてしまった彼らは、 自力で食料を探し摂取する習慣がなくなる。すると、
- 人もいない、 食物も極端に減る季節、 つまり冬を自力で越せなくなり、 死に至る(日本でも知床のキタキツネの問題が有名ですね)。
- キャンプサイト等に出没し、 人の食料を奪ったりするなど、 キャンプ中の人間に迷惑を及ぼすようになる。
- 人間とのコンタクトが増え、 結果人間に危害を与える機会が増える。 彼らは病気を媒介することも多い。
これは各人のモラルの問題というよりは大抵は、 ただ知ってるか知らないか、の問題だと思うけど (対して「ゴミのポイ捨て」問題なんかは、 捨てちゃいけないことを知らなかった、 なんて人はほとんどいないでしょう。)、 だけど、 例えばGlacierなんか、 そこかしこに "Keep Wildlife Wild" の看板が立ってるので、 誰でも目に付くはず。 しかも野生動物にエサを与える行為は、 少なくともアメリカの国立公園内では法律により禁止されている。 そう!! マナーの問題以前に、 違・法・行・為、 なんです!! 見付かったら逮捕されるなり罰金を要求されるなりされても文句言えないってことだ。 とにかく、 動物がかわいいと思ったら、 エサなどやったりしないこと。 彼らのためにも、 自分たちのためにも。 ま、 エサをやるのは街中のハトとかでガマンしときましょう。 それが許されてることかどうかはよく知らんけど。
恋するわたしたち
そういえば他にもこんな例。
これは初めてGlacierに行った際、 レンジャー引率ハイキングに参加した時の話。
Grinnel Glacier そばでレンジャーの人が、
ある岩盤の説明を僕らにしようとした時に「それ」を見つけて絶句。
David & Karen, Love Loveだか誰だか忘れたけど、 とにかく岩肌を引っ掻くようにして英語のアイアイ傘が落書きされていたのだ(罪もないその他大勢のDavidさん、 Karenさん、 すみません。 ただ単に名前を忘れたので例として挙げただけです。)
はー、 アイアイ傘って日本だけの習慣じゃないのか... などと僕が感心している合間に、 レンジャーさんは一旦説明を中断して、 足元の小石をいくつか拾い、 無言でその傷を消し (ってゆーか、 その上から細かい引っ掻き傷を作って目立たなくした)、 その後、 何事もなかったかのように説明を再開した。 僕はそのやり方にいたく感銘を受けたのを覚えている。 説教などしてせっかくのハイキングの楽しい気分に水を差すようなことはせず、 だけどきっとあの場にいた皆には十分な説得力だったろうと思う。
木の幹に心ない落書きをする輩も多いらしい。 さすがにストリートのようにカラースプレーを持ってきてまでする奴らはいないだろうけど。 別の時に、 Hidden Lake Trail 沿いの岩の上に、 小石で "Glacier" と並べられていたのを見た。 うん、 これくらいなら微笑ましいし、 許されるんじゃないかな多分。
んなわけで長々と書いてしまったが、 アメリカ人が日本人観光客に対して特別アウトドアマナーがいいかっていうと、 決してそんなこたないってこと。 ま、 日本からわざわざやってきた日本人客がヘンなことをすれば、 目立つってのはあるかも知れない。 もちろんここはアメリカだから。 ただ、いくつか国立公園を訪れて感じるのは、 最近著しく増えてきた日本人以外のアジア人観光客のマナーの悪さってのが目に付くんだななんとなく。 特に統計データがあるわけじゃないんだけど。
ところでそういう人達を目撃したらどうするかって? んー、 注意できればしてますよ。 でも...、 忸怩たる思いを残しつつ、 なんとなく見過ごしちゃうことも多いかな、 小心者だから、 僕。
そういえば一つ面白いなと思うのは、 こんなに空気の清涼な大自然の中に来て、 休憩時にタバコ吸ってる人。 たまに見掛けたり同行者に含まれてたりするけど、 何しに来てんだこいつ、 と思わずにはいられない。 だけど、 これは単なるいち非喫煙者の感想に過ぎないのであって、 彼らからすれば全くもって余計なお世話なのかも。 彼らには彼らの愉しみ・醍醐味がそこにあるのかも知れない。
ま、 僕としては、 彼らがルール(マナー)を守ってタバコ吸った後、 携帯灰皿できちんと持ち帰る限り何も言うこたないのだが。