宇宙暦46461.3。エンタープライズはクリンゴン帝国との国境近くの通信連絡基地へ接近しつつあった。だが、基地からはなんの応答もなく、ライカー率いる上陸班が基地へ調査に向かった。
基地の内部にはオーディオ・モニターが拾った亜空間通信の音声が響き渡っていたが、一見した所、変わった様子はなかった。
ジョーディが計器パネルを操作し、スピーカーからの音声を止めると、どこからかガタガタと音が聞こえてきた。音の主はサービスダクトの中に隠れていた一匹の犬だった。ジョーディたちに声をかけられた犬はしっぽを振りながらダクトの中からでてきた。
ウォーフは基地のシャトルが紛失しているようだとライカーに報告、一方、ビバリーはライカーを呼び、基地の中でおそらくメンバーが殺害されたらしいと説明する。彼女が指差した先には、血痕と溶けた細胞残留物がこびりついていた。
ウォーフはビバリーの指示で問題の血痕のこびりついた部分の床を焼き切った。エンタープライズに持ち帰り、分析するためだ。彼女の推測では、血痕も細胞残留物も基地に勤務していたアクイエル・ウナリ中尉のものらしかった。もう一人の基地員、ロチャ大尉はシャトルで逃げ出したに違いなかった。基地のメインルームにあるあったコンソールは何者かが情報を引き出そうとした際に操作を誤ったためだろうか、ロックされていた。ジョーディは基地員の私室に入ると個人日誌にアクセスすべく、コンソールを操作しはじめる。すると先程の犬がジョーディに向かって吠えはじめた。部屋の中を見まわしたジョーディは机の上に置かれた骨を見つけ、犬にくわえさせた。机の上にはおそらく女性のものと思われるアクセサリーが残されていた。そのアクセサリーをいじりながらジョーディは日誌の再生を始めるよう、コンピューターに命じた。
スピーカーから流れてきたのは女性の声だった。ジョーディは映像も再生するように命じるが、モニターには何も表示されない。日誌の内容自体は彼女(ウナリ中尉)がロチャともめていたことを示す程度で今回の事件のきっかけとなるような事はなにも記録されていなかった。そして日誌の再生は急に終わってしまった。
エンタープライズでは基地から回収された床の鉄板が分析されはじめていた。基地の人間を殺した武器は高出力のフェーザーで、クリンゴン製のものらしかった。
通信基地の一室ではジョーディが相変わらずコンソール相手に悪戦苦闘していた。彼はコンピューターに指示を出すと、フード・レプリケーターの方を向き、アイス・コーヒーを飲もうとする。と、急に犬が吠え出した。ジョーディが振り向いてみると、モニターにはアクイエル・ウナリ中尉の顔が映し出されていた。彼女の日誌によれば、彼女は最近悪夢に悩まされているようだった。モラグという男が基地を破壊すると脅迫し続けていることが悪夢の原因で、彼女は基地から逃げ出したいとこぼしていた。モラグという男はこの基地周辺を巡回しているクリンゴン艦の艦長らしい。ジョーディはエンタープライズに戻り、つかんだ情報をピカードに報告した。
ピカードはクリンゴン帝国のトラク長官に通信を入れ、モラグのことを問い合わせるが、トラクは「侮辱するな」と怒り出してしまう。ピカードが「ガウロン総裁に直接掛け合おう」と言うと、トラクは慌てて協力を約束した。
基地に戻ったジョーディは再びアクイエルの個人通信ファイルの再生を始めた。モニターの中の彼女は少し上官にそむいてしまった事、故郷が懐かしいというようなことを話している。突然、彼女の部屋の外から物音が聞こえ、「ロチャ?あなたなの?」と問い掛けるアクイエル。記録はそこで終わっていた。
通信基地のメインルームで調査を続けていたウォーフとライカーはDNAの痕跡を発見していた。その主は一人のクリンゴン人らしかったが、今回の事件とどのようなつながりがあるのか、まだわからなかった。
ライカーはジョーディのいるアクイエルの部屋に向かった。彼女の蔵書に目を通していたジョーディは、現在、ロチャの個人日誌にアクセスしようと試みているが、何者かが不正にアクセスしようとしたらしく、作業は難航しているとライカーに報告する。その途中でジョーディはうっかり「アクイエル」とウナリ中尉のことを呼んでしまい、一晩中、彼女の日誌を見続けていたせいで、以前からの知り合いのような気がしてきたと照れ笑いをする。
エンタープライズにトラク長官の乗るクリンゴン帝国のヘビー・クルーザー、「トヴァ号」が接近してきた。観察ラウンジに通された長官はかなり高圧的な態度をとっている。「連邦の女士官など殺していない」と彼はいい、連邦の女性士官が連れて来られた。傷つき、ボロボロの制服を着た彼女こそ、アクイエル・ウナリ中尉だった。ピカードたちは思わず顔を見合わせ、黙り込んでしまった。
アクイエルは通信基地で起ったことを話しはじめた。上官のロチャが急に襲い掛かってきたために武器ロッカーまで走った事は覚えているが、どうやって基地からシャトルで脱出したのかは思い出せないらしかった。トラクが補足して言うには、彼女は気を失ったままクリンゴン帝国の領域を漂っていたという。
「まるで記憶を抜き取られたようだ」と彼女は繰り返す。そのうちにウォーフが「基地に残っていたクリンゴン人のDNAはモラグのものではないのか?」とトラクに尋ね、口論になってしまった。ピカードは「あくまでも可能性があるということだ」とトラクをなだめ、モラグと話をする許可をトラクから得た。ジョーディは「友人が待っているよ」とアクイエルに告げ、観察ラウンジから彼女を連れ出した。
「モーラ!!」犬をみた彼女は大喜び。ジョーディが「部屋に案内しようか?」と彼女に尋ねると、彼女はずっと一人だったから人の多い所へ行きたいと答え、ジョーディたちはテン・フォワードにむかった。
テン・フォワード。ジョーディはアクイエルにマスカント・ジュースをおごる。これは彼女が日誌の中で故郷を懐かしみながら飲みたいと話していたものだ。始めは楽しそうに話していたアクイエルだったが、ジョーディが自分のことを詳しく知っている事に気づき、彼を問い詰める。ジョーディは「もう死んだものと思っていたから、日誌を見せてもらったんだ」と白状し、彼女の機嫌は少しよくなった。「実際に私に会ってみて、予想した通りだった?」と聞かれたジョーディは「かなり複雑で、正直な所、よく分からないな」と答える。「なぜロチャと摩擦がおきるようなことをしたんだい?」と尋ねられたアクイエルは「自分を守るためには仕方がなかった。でも、彼を殺すようなことはしていない」と答えた。
作戦室。ピカードとライカーがロチャの記録ファイルを見ている。ライカーの調べた所によれば、彼は優秀な士官だったらしい。一方、アクイエルの方は以前からかなり問題があるらしく、今回の事件の現場となった通信基地へも半ば左遷という形で転属されてきたようだ。さらに、彼女が話した内容と異なり、基地の武器庫からはフェーザーが一丁、紛失していた。報告を聞かされたピカードはライカーにシャトルを調べるように命じた。
通路を歩くアクイエルとジョーディ。「私が人を殺したように見える?」と聞かれたジョーディは「そんな事はない」と答え、部屋に戻って休むよう告げる。アクイエルは部屋に入って行こうとするが、思い出したように振り返り、「私は確かに複雑よ」と言った。そしてジョーディの頬に手をあて、「オムライル」とつぶやくと、部屋の中に姿を消した。
一方、シャトルベイではライカーたちがシャトルを調べていた。ウォーフはシャトルの中の操作パネルの下にあるボックスからフェーザーを発見、それは最強のレベル10、「殺傷」にセットされていた。ライカーたちはアクイエルの部屋へ行き、フェーザーのことを問い詰めた。だが彼女はあくまでも「覚えていない」と言い張るのだった。
ライカーは彼女に「過剰防衛の恐れがある」と言うと、それまで顔をしかめてやり取りを聞いていたジョーディが口を挟み,「彼女が人を殺したと決めてかかるなんて」と言った。
もうすこしでモラグがエンタープライズにやって来る事になっていた。彼が到着するまで、ジョーディは再び基地の調査を行う事になった。
ジョーディがライカーの部屋から出て来る。通路で待ち構えていたライカーは彼を呼び止め、「友人として言わせてもらうが、これ以上、彼女に深入りするな」と忠告する。だが、ジョーディは何も答えず、立ち去ってしまった。
通信基地。ジョーディはロチャの宇宙日誌にアクセスする事に成功した。だが日誌の一部、宇宙暦46459の部分が何者かの手で削除されていた。
観察ラウンジ。トラク長官、エンタープライズの上官たち、そしてモラグが集まっている。「DNAの痕跡が残っていた」と言われたモラグはあきらめたように「三日前、基地に呼びかけても返答がないので、基地に乗り込んでいったが、誰もいなかった」と白状した。そして怒り出したトラクの剣幕におされ、モラグは基地のコンピューターから通信の暗号を抜き取った事を認める。だが、ロチャ殺害に関してはどうしても認めようとせず、彼の身柄はトラクが拘束する事になった。
通信基地。アクイエルは自分がロチャの日誌を消去した事を認めた。その部分には、反抗的な態度を取り続けるアクイエルを審問会にかけることを訴えた艦隊本部宛ての手紙が記録されていたという。「本当にまずい事をしたな」というジョーディ。アクイエルは自分の部屋に戻ると荷作りをはじめる。後を追ってきたジョーディは彼女をなだめ、「信じているよ」と言い、彼女を抱きしめた。
医務室ではビバリーは回収された基地の床から分離したDNAの再構成を行おうとしていた。だが上手くいかない。助手に指示を与えようとほんの一瞬、金属板から目を離した隙に、金属に付着していた物体が動きはじめた。それは触手のように伸びはじめ、ビバリーの手に触れた。驚いたビバリーはその物体に目を向けると、物体の動きは一瞬止まる。だが次の瞬間、その物体はビバリーの手とそっくりな形に変形していた。
通信基地。コンソールを操作しているジョーディの後ろからアクイエルが抱き付く。彼女は「ケーナー」というテレパシーを増幅させる物体が愛を確かめることにもつかえるから試してみようと持ち掛けた。彼女は彼のバイザーを外すと、手を握り、ケーナーに近付けていく。
医務室。ビバリーは何が起ったのかピカードに説明する。そして「「融合生命体」がロチャを殺したのではないか。おそらく彼は通信基地に来る前に生物に取り込まれていたのではないか」と推測した。そして周期から計算すれば、そろそろ次の獲物を探しはじめる頃だった。ロチャに化けた生命体に接触した可能性があるのはモラグ、そしてアクイエル。ピカードたちは彼女が現在、通信基地に転送されていることに気づいた。
アクイエルの部屋では儀式が続き、ケーナーが怪しく光を発していた。ジョーディは「君が見えるよ」と言いながら恍惚の表情を浮かべている。そこへフェーザーを構えたライカーが踏み込んできて、「離れろ、それはアクイエルではないかもしれない」と叫ぶ。「何を言っているの?」と言い返すアクイエル。ジョーディは呆然としたままだ。
一方、モラグもトラク長官の手で拘束された。彼とアクイエルは最寄りの宇宙基地に連行される事になった。
ジョーディの部屋。彼は一連の出来事からまだ立ちなおれないでいた。「まだ彼女と決まった訳ではない」と慰め、ライカーは出ていった。一人になったジョーディはコンソールに向かい、仕事を始めようとするが、モーラが彼の足にまとわり付いてくる。犬を振り払い、再び机に向かおうとするジョーディは、犬の様子がどこかおかしい事に気がついた。
モーラは彼の目の前で犬から銅のような色をした、うごめく姿に変形し、ジョーディに襲い掛かろうとしていた。彼はあわててサイドボックスからフェーザーを取り出し、その「物体」に向けフェーザーを発射、消滅させた。
テン・フォワード。ジョーディとアクイエルが話し込んでいる。彼女はあやうく「物体」に取り込まれそうになったが、なんとか逃げ出す事が出来たのだった。宇宙基地に戻るという彼女に対し、ジョーディは「エンタープライズのポストに推薦してあげるよ」と持ち掛ける。だが彼女は自分の力でそれを勝ち取りたいと断った。「希望者リストに私の名前があっても驚かないで」と言う彼女。ジョーディはうなずき、二人は名残惜しそうに手を取り合った。