Album Review 3


シングル「秋の貝殻」が出たひと月後に発売されたサードアルバムです。
さらに3週間後に発売されたビデオ「Noel 」の,サウンドトラックのような趣きです。

Sanctuary 表ジャケット
Sanctuary

(1992.11.21,Ki/oon Sony Records)
[KSC2 27]


クリスマスのイメージで彩られた,6曲入りのミニアルバムです。




1.Sanctuary
(作・編曲:山川恵津子)
Acoustic Piano & Synthesizer:山川恵津子
Strings:JOE Group.
Programming:根岸貴幸

鳥のさえずりの聞こえる,森のような落ち付いた空間をイメージさせる中,
ピアノのささやきに誘われます。次曲の歌詞からの連想により,
実際は,教会の中でしょうか。

ゆったりと,しかし途切れることなく続いてゆきます。

2.リボンのないプレゼント
(作詞:工藤順子/作・編曲:山川恵津子)
All Keyboard:山川恵津子
Percussions:浜口茂外也
Flute:中川昌三(by the courtesy of VICTOR/JVC Records)
Programming:中山信彦
Background Vocals:木戸やすひろ、比山貴咏史、山川恵津子

教会の余韻を残しながらも,明るく活気のある街へと飛び出します。
街のようすを眺めて「貴方」のことを想う女の子の気持ちを,歌っています。

「♪私の〜」から「♪あの人の夢を」 の辺りへと連なるメロディラインが
心地よく胸に染み通ります。とても美しく,物語さえ思い浮かぶコーラスです。

このようなポップスがもっと支持されて良いのになぁ,とつくづく思います。


3.うたたねのソファー
(作詞:西尾佐栄子/作曲:安部恭弘/編曲:山川恵津子)
All Keyboard:山川恵津子
Acoustic Guitar:古川 望
Programming:中山信彦
Background Vocals:木戸やすひろ、比山貴咏史、伊集加代子、山川恵津子、 Qlair
Vocals of Qlair arranged by:大野えり

掛け合いのような,主声とバックコーラスとのやりとりがなんとも
微笑ましい,幾分コミカルに振った明るい曲です。

じっくり聴くと,随所に,絶妙のバランスでコーラスがちりばめられて
いるのですね。実は贅沢な,盛りだくさんの一曲なのだと思います。

彼氏とケンカしてしまった女の子がクリスマスを迎え,家の中であれこれと
考えている姿を綴っています。
博物誌を開いて出てきた欧州の事物の中で,この女の子の状況を
端的に象徴しているのは,”だまし絵の天使”でしょうか。
本当はすぐ会いたい彼女の気持ちが,ひしひしと伝わってくるかのような曲です。

4.スノーブーツのWish
(作詞:西尾佐栄子/作曲:安部恭弘/編曲:西平 彰)
All Keyboard & Programming:西平 彰
Guitar:角田 順
Sax:本田雅人(from T-SQUARE by the courtesy of Sony Records)
Background Vocals:安部恭弘、木戸やすひろ、広谷順子
Background Vocals arranged by 安部恭弘

この曲は,1stアルバム「
Les filles」にも収録されていますね。
特にリテイクしているようには聞こえないのですが,いかがでしょうか。
(あまり厳密に聞き比べをしていないので,さほど自信は無し)

クリスマスにぴったりのこの曲。はじめからこのために用意されたかの
ように,違和感無く聞こえてきます。

心に浮かぶ情景は,やはり雪原で馬車に乗ってたり,雪あそびしてたり
するところ,となってしまうのかな?実は私,どうしてもそうなっちゃいます。たはは…。

5.夢見るヴァイオリン
(作詞:工藤順子/作曲:MAYUMI/編曲:西平 彰)
Drums:島村英二  Bass:高水健司
Guitar:角田 順  Percussions:浜口茂外也
All Keyboard & Programming:西平 彰
Violin:金子飛鳥(from Adi by the courtesy of VICTOR/ROUX)
Background Vocal & All Vocal arranged by 大野えり

裕ちゃんメインです。ヴァイオリンの響きが,なにか心の高まりを
予感させるような導入部から始まり,美しいハミングが裕ちゃんの声へと誘う…。
いいですねぇ。この部分だけですでに頬はゆるみ,瞳はトロンとしてきます。
えっ?そりゃ私だけですって?…,失礼しました〜。

しっとりとした裕ちゃんの声がこの歌の世界によくマッチしていて,安心して
身を任せていられるし,表現力を保つぎりぎりのところまで高くした音域での,
せつなくなる寸前で適度に抑えた伸びが,聴いていて実に楽しいです。

それにしてもヴァイオリンの音色って,スリリングですねぇ。間奏を聴いていると
つくづく思います。ドラマチックだなぁ,って。…,やっぱNoelでの映像のイメージが
ちょっと強いのかな?まぁ,いたしかたないですね。

歌詞については,「♪変な音…」の謙虚さが,なんともグッと
きます。頭なでなでしてあげたくなっちゃいます。

裕ちゃんのボーカルを際立たせるためなのか,3人でのコーラスは控えめな
ようです。それでいてなお,相変わらずの美しい響きです。

6.暖かな森
(作詞:工藤順子/作曲:山口美央子/編曲:山川恵津子)
All Keyboard:山川恵津子  
Flugelhorn:数原 晋
Programming:中山信彦
Background Vocals:木戸やすひろ、比山貴咏史、山川恵津子

前半は,ピチカート風(って,良くわかってないのに書く…)ですね。
律動のなかで,語りかけられているような感じ。
後半が,ぐぅっとひろがりを伴って胸に迫ってくるので,くっきりコントラストが
際立っているように思えて、興味深い曲です。

後奏に想いがたなびいてゆくようでいて,そぼっていってパツッと消えます。

7.Sanctuary ~ The light of three stars
(作詞:西尾佐栄子/作・編曲:山川恵津子)
Acoustic Piano & Synthesizer:山川恵津子
Strings:JOE Group.
Programming:根岸貴幸

Reprise。零れおちる言葉をそっと置いてゆくような歌詞で,
締めくくりです。

3人のささやきを聴きながら,夢でも見ましょうか…。




Sanctuary ライナーより。 寝室の3人



Producer:篠崎恵子
Mixed Engineer:手塚雅夫 (except by M-4松岡義昭)


作詞・作曲・編曲,アルバムでの演奏者クレジットを
お寄せ頂いたJOY RIDEさんの注記より:
「 演奏者の表記、所属レコード会社等は発売当時のものです。
また、シンセサイザー・オペレーターとプログラミング、コーラスとバック
グラウンド・ヴォーカル等、呼称は違っても実質的に同じ意味のものは、
統一した表記にさせていただきました。
(ましゅう注:ここでは,ライナーノートに従い"バックグラウンド・ヴォーカル"として表記しました)
あと、演奏者名等は他アーティストの作品などを参考に漢字表記を
拾い出しております。」

ありがとうございます。

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ライナー裏表紙

ライナー裏表紙。ドコを見てるのかな?



ジャケット裏。この雰囲気が好きなのです。ジャケット裏

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[ジャケットのつくりについて思う]

本作のジャケットは,まるで書籍の如くにがっちりした体裁で
存在感がありますね。絵本のような頑丈さを感じます。
(とは言え,痛めないよう大事に保管してます)

近年,巷でよく見かける"デジパック"三面折りの
ジャケットとも異なり,アルバムの内容に裏打ちされたかのごとく
質感をたたえたすばらしいジャケットだと思います。

いつまでも色褪せさせることなく,
CDと共に大事にしていきたいものです。


('99.11.25)