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title/1979 第2幕
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状況:約10分の休憩
   会場には当時の音楽が流れる
   途中から"FOREST ECHO #2"(LONG VACATIONオリジナル、サントラに収録)が
   流れる。第2幕開演を予告するアナウンス
   音楽のボリュームが大きくなり、やがてフェードアウトしていく

=== 学校の屋上 === 104min50sec

状況 :舞台上には、教室の場面と同じように椅子が置いてある
    ステンレスのカレー皿を持ったマユミと、UCCオリジナルコーヒーと
    紙袋を持ったミキが舞台上手から出てくる
マユミ:ごめん、ミキちゃんちょっと持ってて
状況 :ミキに皿を持ってもらい、高さ80cmくらいの柵を越える
    マユミに持ってる物を預けて、柵を越えるミキ
    舞台中央に座る2人。マユミは膝をくずして、ミキは、膝を
    抱え込むようにして座っている
マユミ:やっぱり、昼休みは屋上でしょう
ミキ :よく来るの?
マユミ:うん、誰もいないし。立入禁止だからね
状況 :マユミ、ミキの顔をのぞき込みながら
マユミ:去年の暮れに、ここから飛び降りた人がいるの
ミキ :受験ノイローゼ?
状況 :首を振るマユミ
マユミ:生徒じゃなくて、先生
状況 :上の方を見て、視線を下におろしていきながら
マユミ:ひゅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん、ぐしゃ
状況 :ニッコリ微笑んで、スプーンを口に運んでほおばるマユミ。飲み込んで
    空を眺め、気持ちよさそうに
マユミ:ああ、いい天気だねぇ。死ぃんじゃ、だめだよねぇ
ミキ :ずっと無言のミキ。マユミ、ミキの顔をのぞき込んで
マユミ:どうしたの、ミキちゃん元気ない?
ミキ :ううん
状況 :元気のなさそうな表情で、首を振るミキ
マユミ:そ。そういう人なんだ
ミキ :なんか、焦っちゃって
マユミ:なんでぇ?街が味方してくれないから?
状況 :悪戯っぽい笑顔でたずねるマユミ。ミキ、膝を抱え込み正面を向いたまま
ミキ :あんなに憧れてた東京にいるっていうのに...なんかさ
    こうしてる間にも、どんどん新しいことが起きてるのに
    なんにもできないんだもん。...なんかそれがジリジリしちゃって
    この空の下に、坂本龍一も、近田春夫も、フリクションのレックも
    いるのに。全然関係ないんだもん
状況 :空しそうな表情のミキ
マユミ:...なんかやろっか?
ミキ :え?
状況 :けげんそうな表情でマユミの方を向くミキ
マユミ:なんか。パーっと。派手なこと
状況 :笑顔でミキの顔をのぞき込んで言うマユミ

=== 山田 === 106min40sec

状況 :中央の照明が暗くなり、舞台左上に突然男が吹っ飛んできて倒れる
    それに続いて、ゆっくりと根岸が入ってくる。根岸、倒れている
    山田を見おろして、命令する
根岸 :叩け
山田 :やだ
状況 :殴られた頬を押さえながら、力無く応える山田
    根岸、ちょっと体を前かがみにして、のぞき込むようにして
根岸 :た・た・け
山田 :やだ。バンドは解散したんだ...
根岸 :再結成
山田 :...しない
状況 :立ち上がりる山田
山田 :...教室に戻る
状況 :立ち去ろうとする山田。根岸の横を通り過ぎようとする
    根岸、突然足を出し、ひっかけて転ばす
根岸 :まだ昼休みだろう?
状況 :無言で立ち上がる山田。根岸、山田の肩に手を置き
根岸 :ふふふふ。こうやってさぁ、わざわざ学校まで来てやってんだからなぁ
山田 :いたぁ〜い!!!いたぁ〜い!!!助けてぇ〜!!!いたい!
状況 :突然わめきだす山田。根岸、驚いて、手を離すがわめき続ける
    根岸、自分の手を確認しながら呆然とした表情
山田 :あうっ!あうっ!あうっ!
状況 :山田、殴られるようなまねをして、顔を左右に振る
香山 :演技する必要はないの、演技する必要はないのよ
状況 :8ミリカメラを構えて、香山が入ってくる。根岸、驚いてそちらを見る
根岸 :あんた!!!
香山 :元気ぃ?
状況 :カメラを構えたままの香山。根岸、怒りながら
根岸 :おい!何撮ってんだよ、あんた!!!
香山 :え?山田君のドキュメント
状況 :カメラをおろし
香山 :演技したらやらせになっちゃうじゃないの
    すっごくぎこちなかったわよ、今の
状況 :怒る香山。反省したように、うなだれる山田
香山 :はい、じゃもう一回
根岸 :だから撮るなよ、おい!
状況 :チカが息を切らして駆け込んでくる。手には缶コーラ
    根岸、突然態度を変えて
根岸 :ていうか、まあ、だいたいそんな感じぃ
香山 :何がぁ?
状況 :根岸、カメラのレンズに手をかざしながら、笑顔で
根岸 :あ、ごめんごめん、今日はこれくらいで勘弁して、ごめん
状況 :訳が分からない香山
香山 :え?
状況 :根岸、渋い顔で
根岸 :お前、学食で待ってろって言っただろう、な
チカ :うん、学食、人がいっぱいで、それにのど乾いたかなぁと思って
    缶のウーロン茶って、まだないんですねぇ
状況 :感慨にふけるチカ。コーラをさしだしながら
チカ :はい
根岸 :うん
状況 :コーラを受け取る
チカ :メンバー集まりましたぁ?その方ぁ?
状況 :山田を見て言うチカ
根岸 :ああ
状況 :山田の方に踏み出して、笑顔で会釈をしながら
チカ :こんにちわ
状況 :わけがわからないような表情で、首から上だけで会釈する山田
    香山の方に向き直って会釈しながら
チカ :こんにちわぁ。マネージャーの坂井です。名刺まだできてないんですけど
状況 :香山も、わけがわからないような表情で会釈する
根岸 :あ、いいから
チカ :あ、今後ともよろしくお願いします
根岸 :だからいいんだって
状況 :焦ったような口調の根岸
根岸 :あ、そうだ、屋上で待ってろ、屋上で
状況 :舞台下手の上方を指さしながらいう根岸
チカ :はい
根岸 :俺、すぐ行くから
チカ :うん
根岸 :柵あるけど、低いから
状況 :腰のあたりの高さを手で示す根岸
チカ :うん
根岸 :大丈夫だから
チカ :うん
状況 :山田の方に行って、ちょっと前傾姿勢で握りしめた右手を差し出しながら
チカ :がんばりましょう
状況 :きょとんとしている山田、。チカ、下手の方に歩いて出ていく
    根岸、山田の方を向き
根岸 :いいんだな
状況 :再び、カメラを回し始める香山。根岸山田を睨み付けて、脅すように
根岸 :田中はやるぞ
状況 :山田に背を向け、出ていこうとすると、香山のカメラが根岸を撮っている
    根岸、レンズを睨み付けて出ていく。香山、うなだれた山田を撮っている
香山 :はい、行きましょう、先行って
状況 :香山に言われて歩き出す山田。香山、後ろから撮り続ける
香山 :もっと、肩落としてぇ
状況 :振り向く山田。香山、カメラを顔の前から外して、怒りながら
香山 :振り向いてどうすんの!
状況 :再び歩き始める山田。香山、山田を撮りながら一緒に出ていく

=== 出逢い ===  108min50sec

状況 :根岸と山田のからみの間、屋上で食事をしているマユミとミキ
    ミキは、袋からパンを取り出して小さくちぎって、コーヒーを飲みながら
    食べている。マユミはカレーを食べながら、ミキにパンを少しもらったり
    コーヒーをもらったりしている。マユミ、カレーを大きな動作で飲み込み
    皿を下に置く。ミキの方を向いて笑顔で
マユミ:うん、やろうよ、ぱーっと
状況 :スカートの左ポケットから、タバコを取り出すマユミ
    ミキ驚いた表情で
ミキ :マユミちゃんタバコ吸うの!?
状況 :軽くうなずいて、タバコをくわえるマユミ。タバコを差し出しながら
マユミ:ミキちゃんも吸う?
状況 :ちょっとためらうが、笑顔で
ミキ :吸う
状況 :タバコを一本受け取るミキ。舞台左奥に太川がやってきて、壁に
    かくれて2人をのぞき見している。マユミ、自分のタバコに火を付けた後
    ミキのタバコに火を付ける
太川 :榊原さんがタバコを!?
状況 :ショックを隠せない太川。ちょっと間をおいて、無理に冷静な口調で
太川 :当然だ。不良とか、そういうあれじゃない。開かれた女として
    当然の事をしてるんだ
状況 :自分に言い聞かせるような太川
マユミ:ねぇ、なにやろうか?派手なこと。ミキちゃんなにがやりたい?
状況 :タバコを右手に持ってきくマユミ
ミキ :なんかこう、でかいこと
マユミ:だから、具体的に
状況 :ちょっと考えて、ニッコリしながら
ミキ :an-anの、おしゃれグランプリ東京代表になる!
太川 :なれる...君ならなれるよ
状況 :笑顔でボソっとつぶやく太川
ミキ :デビットバーンの愛人になる
太川 :だめだよぉ、それはだめだ!
状況 :あわてながらボソっとつぶやく太川
マユミ:う〜ん、その人知らないし、なんか現実的じゃない
状況 :顔をちょっとしかめて言うマユミ
ミキ :だからぁ、なんかこう、ワクワクして、ドキドキして
    頭が痛くなるくらいかっこよくて、楽しいこと
    すっげぇかっこいい音楽聴いたときみたいな感じ
状況 :笑顔で説明するミキ
ミキ :そういうのがやりたいんだ
状況 :太川、満足そうにうなずきながら
太川 :わかる、わかるよ
状況 :マユミ、ミキから視線を外して、ちょっと首を振りながら
マユミ:全然わかんないや
状況 :ミキ、膝を抱えて、寂しそうな表情で
ミキ :あたしもわかんないや
太川 :えぇ!?
状況 :目を丸くして、驚く太川
ミキ :ほんとはあたし、何がやりたいんだろう?
マユミ:ミキちゃん、太川君と結婚すれば?
状況 :突然、明るい声で言うマユミ
太川 :な!
状況 :突然のことに焦る太川。ミキ、けげんそうに
ミキ :誰?
マユミ:太川君。一番後ろの席の。眼鏡かけててぇ
状況 :自分の耳の所を指さして
マユミ:もみあげない人
太川 :見城!
状況 :さらに焦る太川
ミキ :そんな人いたぁ?
太川 :榊原さん...
状況 :泣きそうな表情の太川
マユミ:あの人、変な音楽好きだよ
太川 :変な音楽って言うな!
状況 :怒る太川
ミキ :あたし、存在感薄い人、見えないんだ
太川 :...榊原さん
状況 :悲しそうな表情の太川。舞台右奥に牛添が歩いてくる。壁を挟んで
    太川と反対側。壁から、上半身を乗り出してニッコリ笑って手を振りながら
牛添 :ハジメさ〜ん
太川 :...牛添マチコ
状況 :うなるようにつぶやいて、舞台奥の方へ駆け出していく。牛添、座っている
    ミキを見て、急いでスカートの右ポケットから何か取り出し、口の所で
    構える。ちょっとガニマタ気味に腰を落として構えている
牛添 :フッ!
ミキ :痛!
状況 :顔をゆがめて、左首筋に手を当てるミキ。舞台奥へドタドタと走って
    逃げる牛添。マユミ、ミキの首筋を見て、取り外した物を
    ミキに見せてしかめっ面で
マユミ:吹き矢!
状況 :そこへ、舞台上手から、チカが入ってくる。ミキを見つけて
チカ :あ〜!
状況 :声のする方に顔を向けながら
ミキ :あぁ?
状況 :チカを見て、表情を曇らせるミキ。チカ、嫌みな笑みを浮かべながら
    柵を手で押さえて越えてくる。手をはたきながら
チカ :さっきはどうも!
ミキ :あなたもこの学校なのぉ!
チカ :違う違う
マユミ:誰ぇ?
ミキ :15年後から来た方
状況 :バカにするような口調のミキ
チカ :どうも
状況 :マユミに挨拶するチカ、口調はちょっとなげやりな感じ
    とりあえず、会釈するマユミ。チカ、タバコをもつミキの顔をのぞき込み
    ニヤリとしながら
チカ :頭にガソリン入れてたとこ?
ミキ :そうそう
状況 :うっとうしそうに応えるミキ
マユミ:なぁにぃ?
状況 :顔をちょっとゆがめながら言うマユミ。さっぱり話がわかっていない

=== 田中 ===  111min10sec

状況 :舞台中央の照明が落ちる。舞台右上に上原と、一緒に教室を出ていった
    生徒がタバコを吸いながら入ってくる
上原 :だって、転校してきたばかりだよぉ。いないでしょ、彼氏は
男生徒:地元にいるよ。...うわぁ、吸いがらだらけだよ。教師の諸君も
    気がつかないのかねぇ?体育館の裏は、あれだって
状況 :携帯吸いがら入れにタバコを消して入れる男生徒。2人で地面に
    膝をたてて座り込む
上原 :地元にいたってぇ...
男生徒:...わかった!あの転校生、お前にやる
上原 :やるって
男生徒:そのかわり、お前今日...ノーパン喫茶おごれ!
状況 :ちょっと恥ずかしそうな男生徒
上原 :な、何?ノーパン喫茶って?
男生徒:できたんだよぉ!
上原 :ああ。あ...でも...恥ずかしいな...
男生徒:なにが?
状況 :下を向いて自分の股間を見つめる上原
男生徒:俺達は、はいてていいんだよ!!!
上原 :...そうなの?
男生徒:そうだよ。...そうだろ。...だって、...そうじゃねぇとなぁ
状況 :ちょっと、自信なさそうに言う男生徒
上原 :やだぜ、俺、キンタマ出してコーヒー飲むの
男生徒:ああ、キリマンジャロとか飲んでもなぁ...
上原 :そうだよ、モカひとつなんて言っても...
状況 :うつむいて言う2人
男生徒:キンタマだしてちゃなぁ
上原 :それに、ああいうとこって、どうせおばちゃんじゃないの?
男生徒:バカ!おばちゃんがいいんだよ。16,7の小娘よりぜんぜんいいよ
上原 :そうか?
男生徒:そうだよ。熟女
上原 :いくつぐらい?
男生徒:ごじゅ〜〜、に、さん
状況 :考えながら言う男生徒。上原、顔をちょっとしかめて、首をかしげながら
上原 :それはちょっと
状況 :2人のすぐそばに突然、男が吹っ飛んできて倒れる。驚く2人
    それに続いて、ゆっくりと根岸が入ってくる。根岸、倒れている
    田中を見おろして、命令する
根岸 :弾け
田中 :やだ
状況 :うつ伏せに倒れたまま応える田中
田中 :うっ!
状況 :ニタリと笑いながら、倒れている田中の腹に蹴りを入れる根岸
    しゃがんで、田中の髪を引っ張って、顔を上げながら
根岸 :弾け!
田中 :やだ
状況 :笑いながら、また蹴りを入れる根岸
根岸 :山田はやるぞぉ!
田中 :僕はやらない
根岸 :ふぅん
状況 :うなずきながら言う根岸。また蹴りを入れる
根岸 :殺すぞぉ。それでもやらねぇか
田中 :やらない!
状況 :おびえた表情で、立ち上がる上原と、男生徒
    立ち去ろうとするが、根岸が体でブロックする。根岸、ニヤニヤしながら
根岸 :なぁ、こいつさぁ、殺されても弾かねぇって
状況 :顔面蒼白の2人。男生徒、気を付けの姿勢でこわばりながら
男生徒:あ、...殺されて弾いたら驚いちゃうよ!ね!!!
状況 :ひきつった笑いを浮かべる男生徒。きょとんとする根岸
根岸 :...なぁ、楽器、弾けない?
上原 :え?
根岸 :楽器!俺さぁ、こいつとバンドやってた、ケンってんだけどな
状況 :男生徒、あわてた口調で
男生徒:ああ、よ、よ〜く、御存知ってます!な!
上原 :うん、下着泥棒のね
状況 :しまったという表情の上原。焦って、田中を指さしながら
男生徒:こいつに、聞いて!あの、田中が、言いふらしてて!

状況 :その間、タバコをくゆらせているミキとマユミ。灰は、空き缶に入れる
    2人で話をしてて、一人だけ、膝をかかえてそっぽを向いているチカ
    しばらくして、マユミとミキがなにやら相談して、手招きをして
    話しに加わる。ミキはマユミより先にタバコの火を消し、吸いがらを
    空き缶に。舞台右上の照明が落ち、3人の方に照明が灯る
チカ :見城マユミさんって言うのぉ?
マユミ:うん、なに?
チカ :見城マユミ、見城マユミ...どっかで聞いたよ、見城マユミ
状況 :マユミ、チカの方に身を乗り出し、缶の縁でタバコの火を消しながら
    ワクワクしながら
マユミ:え?どこでぇ?
チカ :どこでだろ?つい最近
状況 :眉をしかめて、考え込むチカ
天の声:見城マユミの下着を盗んだ、盗んだ、盗んだ
状況 :「魅せられて青春」での田中の発言がエコー付きで、天から聞こえてくる
    再び、照明が落ち、根岸達の方に照明が灯る

根岸 :まぁ、いいっか。なぁ、もうテレビに流れちゃったんだしなぁ
    んふふ
状況 :笑いながら言う根岸。急に表情を変えてまた蹴りを入れる
根岸 :マダム...ア〜ンド、ムッシュー
状況 :根岸、おびえる男生徒の頭に手を絡めながら
根岸 :ミスタ〜!下着泥棒 イズ ヒア
状況 :ちょっと後ろに体を反らして、右手を胸の所に持ってきて言う根岸
上原 :何だそりゃ?
根岸 :なぁ、下着泥棒と一緒にバンドやんな〜い?
上原 :でもねぇ、楽器はねぇ
状況 :ひきつった笑顔の上原
男生徒:そうねぇ
状況 :田中、うつ伏せに倒れたままで、ぼそっと
田中 :上原ドラム叩ける
上原 :バカッ!
男生徒:あ、そうだ!上原ドラム叩ける!
上原 :お前!
男生徒:結構上手!
根岸 :よし
上原 :よしって...
状況 :絶望した表情の上原
根岸 :じゃあ...あとは、お前
状況 :男生徒を見る根岸
根岸 :ベース弾けろ
男生徒:あぇ?
状況 :ムンクの「叫び」みたいな表情の男生徒
根岸 :弾けろ!
男生徒:ひ、弾けろと申されましても...
状況 :根岸、男生徒のネクタイをつかんで
根岸 :弾いてくれろ
男生徒:ですけどぉ
状況 :そのまま、つめよる根岸。あとずさる男生徒
根岸 :弾いてくれろ!
男生徒:はい!
状況 :そのまま、後ろに出ていく3人。照明が落ちる
    田中、ゆっくりと起きあがり、とぼとぼと出ていく

=== バンド ===  115min00sec

状況 :その間、なにやら話してた3人
ミキ :バンドのマネージャー?
チカ :うん、そう!
状況 :ニコニコしながら応えるチカ。マユミ、興味を持った感じで
マユミ:おもしろそうだね
ミキ :どんなバンドなの?
チカ :もう、超〜〜〜かっこいいバンド
マユミ:ゴダイゴより?
チカ :え?もう、ゴダイゴなんて...鼻と耳
ミキ :何、それ?
状況 :いぶかしげに尋ねるミキ
チカ :目じゃない、あははは
状況 :自分でうけるチカ。あきれるミキ
マユミ:おもしろい!おもしろいよね
状況 :本気でおもしろいと思っているマユミ
    信じられないといった感じでマユミを見るミキ
ミキ :そぉう?
チカ :もうね、超〜〜〜売れるよ、うふふ
状況 :嬉しそうに笑いながら言うチカ
ミキ :ねぇ、なに、さっきから、超、超って
チカ :え、言わなぁい?あ、言わないかまだこの時代は
ミキ :出た!この時代はだって。15年後から来た女参上
状況 :ムッとしている感じのミキ
チカ :ウソじゃないんだけどなぁ
ミキ :はいはい
状況 :相手にしない様子のミキ
チカ :まあ、じゃ、ウソって言うことにしとくわ。15年後からじゃなく
    どっかから家出してきたってことで
ミキ :どっかって、どこよぉ?
チカ :え、じゃあ、福岡。あなたと同じ。んふふ
状況 :笑いながら言うチカ。ミキ、マユミの方を向いて
ミキ :なんか、むかつくよねぇ!
マユミ:そぉう?
チカ :あ、そうだ。ねぇ、どっかただで住めるとこないかなぁ?
状況 :照明が落ちる

=== 秋葉原 ===  115min50sec

状況 :「いい日旅立ち」のアレンジバージョン(サントラ収録の前半)
    が流れ、舞台左上にリカが、出てくる。しゃがんで
    なにかの表面をさわっている。その形からして、どうやら、
    大きなつぼのようである。そこへ、調査員Bが入ってくる
    リカを見て、鼻の下につけひげを付け、店員になりすます。
    音楽はフェードアウト。店員、関西弁で
店員 :いらっしゃいませぇ
リカ :あ、あの
状況 :おわてて、立ち上がって、振り向く
店員 :毎度!いい冷蔵庫入りましたよ、これなんですけどね
    もう入れとくだけで冷えますよぉ
リカ :あ...あの、このタイムマシーン
店員 :ドライヤーでっかぁ!ドライヤーやったらこれがええなぁ
    なんせもう、風が出ます
状況 :ドライヤーを構えて、風が出てるような感じで、髪を掻き上げる店員
リカ :すご〜い、はい
状況 :あきれた感じで言うリカ
リカ :このタイムマシーン
店員 :掃除機ですか!!!もう、この掃除機はゴミを吸います〜
リカ :このタイムマシーン下さい!
状況 :動きを止める2人
店員 :......かしこまりました。こちらへどうぞ
状況 :下手の方を示す店員
リカ :使うんじゃないんですよ!使うと思ってません?
状況 :取り繕うように言うリカ。店員、リカの方を振り返り
    手を左右に振りながら
店員 :ごじょうだんを
状況 :出ていく店員。ついていくリカ
リカ :トシオ、ごめん!
状況 :手を合わせて、つぶやいて出ていくリカ

=== 集結 ===  116min50sec

状況 :ちょっと3人で話したあと、ポケットからトランシーバーを取り出し
    話し始めるマユミ。照明が灯る
見城父:ああ、いいよいいよ
マユミ:ほんとぉ?
見城父:ああ、今日からでも連れてきなさい
状況 :舞台右上にマユミの父が、何か食べながら、トランシーバーを
    持って入ってくる
マユミ:いいって
状況 :トランシーバーをチカの方に向けながらいうマユミ。チカ喜びながら
チカ :ほんとぉ!?
ミキ :いいの、マユミちゃあん!
状況 :納得いかない表情のミキ
マユミ:いいって
状況 :チカ、マユミが差し出したトランシーバーの方に身を乗り出して
チカ :どうもぉ!
見城父:はい、どうもぉ、待ってまぁす
マユミ:それじゃあねぇ、おとうさま
見城父:はいはい、はい
チカ :ああ、助かったぁ!恩にきますぅ!
状況 :深々と頭を下げるチカ
マユミ:いいえぇ
状況 :頭を下げるマユミ
マユミ:そのかわり!そのバンドのマネージメント、私たちにも手伝わせて
チカ :え?
ミキ :マユミちゃあん!
状況 :困惑した表情のミキ
マユミ:おもしろそうだよぉ!
チカ :でも、それはぁ...
状況 :困った表情で、顔をそむけるチカ
マユミ:おとうさまにも協力してもらって。いろいろできるよ
    脳波狂わせたり、苺のヘタ取ったり
チカ :...苺の?
ミキ :ねぇ!あたしにも歌わせてくれる!?
状況 :突然、笑顔で言うミキ
チカ :えぇ?
ミキ :そしたら。手伝ってあげるぅ
チカ :そっちが頼んでんでしょう?
マユミ:いいじゃない、50万枚以上売れたら。歌おうよ3人で
状況 :ミキ、顔をしかめてマユミの方を見ながら
ミキ :3人?3人ってだれよ?
チカ :まぁ、いいかぁ!あたし一人じゃ何だし。あなた達も目標があった方が
    頑張るだろうし
マユミ:ようし!決まった!
太川 :ただいま、榊原さぁん
状況 :舞台左奥に太川が戻ってきてつぶやく。3人、太川の方を見る
太川 :しまった!聞こえた!...言うんじゃなかった...
状況 :口を押さえて焦る太川。マユミ、立ち上がって、太川の方に歩いていく
根岸 :お待たせ〜
チカ :あ、来た
ミキ :あいつぅ〜!
状況 :舞台上手から、根岸が入ってくる。その後ろには、上原と男生徒
    立ち上がるチカとミキ。チカ、根岸を見て、笑顔で
チカ :バンドのリーダー
ミキ :やめた!あたしやらない!
状況 :根岸に背を向けるミキ
チカ :どうしてぇ?
状況 :チカ、根岸に
チカ :ミキちゃん
根岸 :ああ、さっきはどうも
状況 :根岸が柵を越える。続いて、上原も柵を越える
マユミ:ミキちゃん、ミキちゃん、この人
状況 :太川を指さしながら笑顔でミキに紹介するマユミ
根岸 :あ!
状況 :マユミを見て驚いて声を上げる根岸
マユミ:あぁ、ケン坊
チカ :...なに?
状況 :不安そうなチカ
根岸 :...あぁ、よう
状況 :ばつが悪そうに、右手をあげてマユミに声をかける根岸。取り繕うように
    上原達の方を向いて
根岸 :あ、お前ら、あ...えぇ
状況 :一人だけ、柵を越えていない男生徒、ひきつった表情。ゆっくりと
    一歩一歩後ずさっていく。きょとんとして見ている根岸と上原
    男生徒突然、回れ右をして逃げ出す。呆気にとられる根岸と上原
    上原、走り去った方を指さし、根岸の顔と、指さした方向を交互に見て
上原 :あ!あ〜!
状況 :上原、柵に手をかけ、越えようとする。根岸、あわてて上原の両肩を
    押さえる。上原、柵に手をかけたまま
上原 :あ〜〜!あ〜〜〜!あ〜〜〜〜〜!
状況 :上原、ゆっくりと肩を落としてうつむきながら
上原 :あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!
状況 :叫びが、泣き声に変わる
上原 :う〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!う〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!
状況 :右腕で涙を拭いながら泣きじゃくる上原。あたふたした表情の根岸
    上原の肩から手をどけながら
根岸 :な、なにも泣くことはねえだろう
マユミ:どうしたの?
状況 :マユミ、太川の腕を引っ張りながら、少しミキの方に歩いていく
上原 :う〜〜〜〜〜〜〜〜〜...
    根岸、上原の襟首をつかんで、睨む。上原、ビクッとした感じで泣きやむ
マユミ:ミキちゃん、太川君
状況 :ミキに太川を紹介する。太川、笑顔で会釈。ミキ、うっとうしそうな表情で
    会釈
マユミ:何やってんのぉ?ケン坊
根岸 :ああ、うん...
状況 :うつむきかげんの根岸
チカ :どういう知り合い?
状況 :不安そうに尋ねるチカ
マユミ:幼なじみだよね
根岸 :だよな
状況 :ハキハキと喋るマユミに、もごもごと応える根岸
マユミ:近所なの、うち
状況 :マユミ、ミキの方を顔で示しながら太川に
マユミ:太川君、ミキちゃん
太川 :わかってる
チカ :そうなんだ...
状況 :太川、ミキの方を向いて
太川 :あのぉ...僕、チケット持ってるんですけど
ミキ :え?
状況 :振り向くミキ
太川 :XTCも、トーキングヘッズも
ミキ :ほんとう!?
状況 :先ほどとは、うってかわって明るい声のミキ。笑顔で太川の方に駆け寄る
    太川、はにかみながら
太川 :はい。あのぉ、もしよかったら、僕の分
ミキ :くれるの?
太川 :はい
ミキ :ただ?
状況 :太川、一瞬ためらうが、決意したような感じで
太川 :え、ただ
ミキ :何枚?
状況 :ミキ、ニコニコしながら尋ねる。太川、右手人差し指をたてて
    ちょっとうかない顔で
太川 :あ...1枚
状況 :ミキ、腕組みをして、「しけてるなぁ」という感じで
ミキ :1枚かぁ
太川 :......自分の分しか、買わなかったもので...どうもすいません
状況 :ものすごく申し訳なさそうに謝る太川。ミキ、タカビーな態度で
ミキ :まぁ、いいや!わかった!
状況 :上原、ミキの方に駆け寄りながら笑顔で
上原 :なあ、転校生、お前のおかあさん、バイオリニストなんだよなぁ
ミキ :あ、はい
状況 :明らかにうっとうしそうに応えるミキ、上原をほとんど無視してもといた
    場所に歩いていく。そっけない態度をとられてしょげる上原
    マユミ、ミキの前を通って、チカの方へ歩いていく
マユミ:ねぇ、もしかしてあなたのあれってケン坊のバンドなの?
チカ :そうよ
マユミ:ふははは
状況 :マユミ、口とおなかを押さえて笑い出す。根岸、ばつが悪そうに
根岸 :なんだよ、おい
マユミ:やだぁ
状況 :なおも、笑い続けるマユミ。根岸、力のない笑顔で
根岸 :ひでぇなぁ
チカ :おかしい!?
状況 :ちょっとムッとするチカ
マユミ:だってぇ
状況 :まだ笑っているマユミ
マユミ:ケン坊のバンドで50万枚
チカ :そうよ
マユミ:やろうやろう。おもしろい。やろう!
状況 :笑いながら言うマユミ
ミキ :......ごめん。あたしやめるわ
マユミ:なんでぇ?
状況 :眉をしかめていうマユミ
ミキ :だってぇ...
状況 :うつむくミキ。マユミ、笑顔で
マユミ:せっかくおもしろそうじゃない、やろうよ。私たちの力で
    ケン坊みたいなのが大スターになったらおもしろいじゃない!
状況 :うつむいたままのミキ
マユミ:ミキちゃんとか太川君が好きな変な音楽、やってもいいんだし
    とりあえず、やってみようよ
状況 :マユミ、ミキの顔をのぞき込むようにして
マユミ:やってみようよ
状況 :納得いかない表情ながらもうなずくミキ
チカ :言っとくけど、チーフは私だから
マユミ:うん、チーフはチカちゃん。じゃあ、みんな座って!
状況 :両手で、座るように指示しながら元気に言うマユミ

=== ミーティング ===  120min10sec

状況  :突然、照明が落ちるとともに、キャッチが流れて、場面が変わり
    スクリーンがおりてくる。スライドで「次の日」の表示
    椅子の後列にミキと太川、前中央に根岸、右側に上原、
        床の上にマユミが座る。チカは立ったまま。
    キャッチが止まり、照明が灯る
    チカ、右足をちょっと前に出し、左手に右肘を乗せ、右手に顎を乗せて
    考えながら
チカ :ベーシストかぁ...
ミキ :シンベでいーんじゃない?
状況 :みんな、ミキの方を振り向く
    太川、ニッコリとしてミキの方にちょっと身を乗り出す
根岸 :なに?
状況 :太川、得意げに
太川 :シンセベースです。シンセサイザーで低音を出して
    ベースの役割を果たす
ミキ :エレキベースより絶対かっこいいって
状況 :根岸、目をぎょろぎょろさせながら、怪しい笑いを浮かべて
根岸 :......しんせさいざぁ!

状況 :照明が落ち、キャッチが流れる。スライドには「次の日」
    舞台下手から、野球のユニフォームを着て頭に包帯を巻いた男が
    入ってくる。手前の方の男は、バットを持ち、キーボードを抱えている
    根岸、2人の後ろに行き、痛そうに手をぷらぷらさせている
    キャッチが止まり、照明が灯る
チカ :シンセサイザー担当の新メンバー
    野球部の中野谷テルオ君と
状況 :根岸、跳びながら、中野谷の頭をこずく
チカ :小林川カズミ君で〜す
状況 :根岸、跳びながら、小林川の頭をこずく
2人 :よろしくお願いします...
状況 :首だけで、会釈をする中野谷と小林川

状況 :照明が落ち、キャッチが流れる。スライドには「命名」
    中野谷と小林川は下手の椅子に座る。手前が中野谷
    舞台上手にホワイトボードが運ばれてくる
    キャッチが止まり、照明が灯る
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 | 田端ロイヤルズ         ブラック・ブラック・ブラック  |
 |                   ブラック・どくろ      |
 | ザ・花吹雪                           |
 |                                 |
 | Vulnerability   新尾崎紀世彦          |
 |                                 |
 | ラフォーレ東京         上原浩一のオールナイトニッポン |
 |                                 |
 | ロクダイゴ           I.B.D.          |
 |                                 |
 |                 ドリームズ・カム・ホーム    |
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   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
チカ :というわけでミーティングの結果、「田端ロイヤルズ」
状況 :小林川、顔を上げる
チカ :これは野球チームと間違われる危険性がある
根岸 :あん
状況 :うなずく根岸達。チカ、「田端ロイヤルズ」の左に赤い
    ホワイトボードマーカーで×を付ける
    小林川、がっかりした感じで肩を落としてうつむく
チカ :「ザ・花吹雪」
状況 :中野谷、顔を上げてホワイトボードを見る
チカ :これはかっこ悪い
状況 :チカ、「ザ・花吹雪」の左に×を付ける。中野谷、ムッとして
    手に持ったバットの先端を床にたたきつける
チカ :バ、バ、バル、...
状況 :綴りを見て、考えながら読もうとするチカ。太川、はっと気がつき
    顔を上げて、チカに向かって笑顔で
太川 :バルネラビリティ!
チカ :は読めない
状況 :チカ、すぐに×を付ける
チカ :「ラフォーレ東京」はださい
上原 :ダっサイ
状況 :ミキ、ムッとして立ち上がっている。上原、ホワイトボードを指さして
    笑いながら言いかけて、後ろで睨むミキを見てしゅんとする
チカ :「ロクダイゴ」は
状況 :マユミ、期待いっぱいの顔で、チカの方を見る
チカ :ゴダイゴっぽい
マユミ:そぉーおー?
状況 :不満そうなマユミ。チカ、次の名前を見て、しばらく固まる
    根岸、期待あふれる表情で、見ている
チカ :「ブラック・ブラック・ブラック・ブラック・どくろ」は
根岸 :お!
状況 :チカ、今までとは違って、申し訳なさそうな表情で
チカ :あ、いーんですが
状況 :チカ、右手親指と人差し指で、「ちょっと」を示しながら
チカ :ちょっと長い
ルミ :長いよね
状況 :マユミの方を向いて言うミキ
上原 :長いよね
太川 :長いね
状況 :上原、ミキの方を見た後、根岸に向かって
    チカと同じように「ちょっと」を示しながら
上原 :ちょっとね。ちょっと長い
状況 :根岸、がっかりしたような、ムッとしたような表情
    チカ、再びホワイトボードにむかい
チカ :「新・尾崎紀世彦」は
状況 :上原、期待しながらホワイトボードを見る
チカ :ふざけてるとしか思えない
状況 :有無を言わさず、×を付ける。呆然とする上原
チカ :「上原浩一のオールナイトニッポン」は問題外
状況 :「上原浩一のオールナイトニッポン」の上に線を引く
チカ :I.B.Dは何の略か分からない
状況 :上原、元気よく手をあげて
上原 :はい!
チカ :はい
状況 :上原、さわやかな笑顔で右手の指を鳴らす動作をしながら
上原 :It's a beautiful day.
チカ :以上の理由でバンド名は「ドリームズ・カム・ホーム」に決定しました
状況 :上原を無視して、「ドリームズ・カム・ホーム」の左に花丸を描くチカ
    根岸、上原にむかって、右手で「おいおい」という動作をしながら
根岸 :きみきみ
状況 :根岸の方を向く上原
根岸 :3つ出したね
状況 :無言でコクリとうなずいたまま、うつむく上原