雑記34:スープおばさん(1999.05.23)


みなさんも経験があると思うが、よく街角で
「○○についてアンケートお願いしますっ
と声をかけられることがある。時には「お祈りさせて下さい。」とか「募金お願いします。」だったりもする。

ところが以前、「それはちょっと....」というこんなことがあった。それは私が渋谷を歩いているときだった。


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その日は昼過ぎから雪が降るという寒い日だった(話が古くてスミマセン)。

私は結構寒さには強い方だが、やっぱり寒い日に外をトボトボ歩いていると暖かいものが欲しくなる。だからよく街角の自販機で熱い缶コーヒーお茶などを買って飲んだりする。120円で体が温まるのだからかなりリーズナブルだ。

そういえばいつから缶ジュースが120円になったのだろう私が120円になったことに気付いたのは去年、つまり1998年の秋なのだが、聞くところによるともっと前から120円だったそうだ。

ではなぜそんなに後になるまで気付かなかったかというと、私の職場内にある自販機が100円で、去年の年末まで1日のうち仕事場に15、6時間いて家ではただシャワーして寝るだけという生活をしていたため、一般の自販機に触れる機会がなかったからだ。

で、120円であることを知ったのは、ある日高速道路をマイカー(って死語?)で走っている時に私にしては珍しくトイレ休憩を取った折り、「ちょっと缶コーヒーでも買ってみるか。」と自販機の硬貨投入口に110円を入れてボタンを押しながら
「ちょっとぉ、なんで出ないんだよぉ。」
とあちこち触りまくっていて、後ろで待っていた人に
120円入れんと出んよ。」
と言われ、『なんだ、ここは山ん中だから高いのか。』と思い、そのことを翌日仕事場で
「高速の○○サービスエリアって山ん中にあるから缶ジュース120円だったよ。」
と同僚に話したら
どこで買っても120円じゃないの?」
と言われたからなのだ。


ずいぶん大きく脱線した。もう何について書いていたのか忘れるほど脱線してしまった。さて、話を元に戻そう。


で、寒いと思いながらトボトボ歩いていると、一人のおばさんがス〜ッと私に近づいてきた。
「スミマセン、ちょっとこのスープ飲んでもらえますか私の手作りなんです。」
???いきなりである。当時私はとある地方都市、じゃない、地方の町から引っ越してきたばかりで、しかも関東地方にこのおばさんぐらいの歳の親類縁者はいないので、もちろんこの”スープおばさん”とはなんの面識もない。

なのにいきなり「スープ飲んで〜。」と言われたのだ。ミニスカートのきれいなお姉さまが
「今度○○から新発売のコーンスープです。試しにどうぞ。」
と名の通ったメーカーの一見してそれとわかる試食品を差し出してくれたらもしかして口にしたかもしれないが、見ず知らずのおばさんが、しかも”私の手作りです”って得体の知れない飲み物を差し出したって口にするわけないのだ。だから当然私は
「イヤですっ
と言ったのだが、そのスープおばさんはなかなか引き下がらず
「健康を考えていろいろ入ってるんですよ。手作りですからちょっとだけでも飲んでみて下さい。」
とにじり寄ってきた。まったく何を考えているのだろう。毒物混入事件が頻発しているご時世にどこの誰とも知らない人が作った”いろいろなもの”が入った飲み物をホイホイ口にする人がいるとでも思っているのだろうか

おばさんの態度から優しく断っていてもダメだと悟った私は、
「いろいろって、アジ化ナトリウムとか砒素とかが入ってるわけそんなの飲めるわけないじゃん。毒見にアナタが一口飲んでみてよ。」
とわざと冷たく言ってみた。するとスープおばさんは、
「そんなの入ってるわけないでしょ。失礼ね。」
と言うと、クルッと後ろを向いて道路の端の方へスタスタ歩いて行った。そして徐に道路脇の側溝に
ジャーッ
とそのスープを捨てたではないか外で通行人にスープを勧めているおばさんだって相当寒いはずだ。寒い中暖をとるにはおあつらえ向きのものを手にしていながら、健康を考えたという”いろいろなもの”が入った自作のスープを手にしているにもかかわらず、飲まずに捨てたのだ。

『試しに飲んで』という私の要求を断り、「飲んで。」と頼んだ相手の目の前で捨てるということはやっぱり何かとっても体に悪いものが入っていたんじゃないだろうか


東京って恐いところだなと感じさせたちょっとしたエピソードでした。

地方在住で息子さんまたは娘さんがあこがれで「東京へ出てたいなんて言ってるのことにお困りのそこのお父さん、お母さん、ちょっとした参考になったら幸いである。って、なるわけないよなぁ。

おしまい。