雑記33:チャイルドシート(1999.05.17)


チャイルドシートの義務化が審議され、実施されるというニュースはもうご存知のことと思う。
そこで、チャイルドシートが義務化された場合に考えられる余談的な事項についてちょっと書いてみようと思う。


<幼稚園バス>
これはもう大変である。なんたって幼稚園児の大半は6歳未満なんだから、当然のことながらチャイルドシート着用義務の適用を受ける。
「道路交通法改正試案」”1.運転者の遵守事項に関する規定の整備(1)自動車乗車中の幼児の保護”によると、バス・タクシーは除くとなっているが、
対象とならないバス、タクシー等の運転者も、6歳未満の幼児を同乗させるときは、その幼児に、チャイルドシートを用いさせるように努めなければならない
ともなっている。これはおそらく路線バスなど、不定期に幼児が乗車してくるケースを睨んでの規定と思われるが、当然毎日当たり前のように幼児が乗車することが自明である幼稚園バスはチャイルドシートを装備する義務があると言っても過言ではない。

ということはどういうことかそう、幼稚園バスの座席全て(あるいは大半)がチャイルドシートという、世界的に見ても珍しい光景が日々繰り広げられるということになるのだ。う〜ん、一度見てみたいなぁ。

それと、チャイルドシートを取り扱っている販売店の方々へアドバイス。全国の幼稚園は超大口のお客様になる可能性があるってことです。営業活動はお早めに。


それにしても、「道路交通法改正試案」”その幼児に、チャイルドシートを用いさせるよう”ってのはどうになかならんもんかなぁ。
この文面だったら運転者がチャイルドシートを用いて幼児を乗せるんじゃなくて、車に乗る幼児は自らチャイルドシートを用いなさいって感じだもんなぁ。
チャイルドシート付けてなかったら運転者じゃなくて用いない幼児が悪いみたいじゃん。


<近所づきあい>
これは、チャイルドシートの義務化によって近所づきあいに亀裂が生じる可能性について触れてみようという試みである。(って大袈裟だなぁ(^^;))

それではまずチャイルドシートが義務化されるの、とある雨降りの郊外型大型スーパーの1階エントランスホールでの出来事をちろっと紹介しよう。


母A:「あら、A子ちゃん、雨が降ってるわよ。お母さん傘持ってこなかったから濡れちゃうねぇ。どうしようっか。困ったわねぇ。」
子A:「ママ〜、A子、濡れるのいや〜。」
母A:「そんなこと言ってもどうしようもないもの...」
田中:「あら、A子ちゃんのお母さんじゃないの。それにA子ちゃんも。」
母A:「あ〜ら、お隣の田中さん、こんにちは。急に降ってきちゃって、いやですわねぇ。」
田中:「あら、私車で来たからよかったら乗っていかない?
母A:「いや〜、助かります。そんじゃ、お言葉に甘えて...。よかったわね、A子。」
子A:「うん。」
母A:「田中さんにはいつも助けてもらっちゃってるわね。」
田中:「いいのよぅ、ご近所同士なんだからっ。」

これで近所づきあいもバッチリうまくいくのである。今度醤油を切らした田中さんが母Aさんの家に

 「奥さ〜ん、ゴメ〜ン、お醤油少し分けて貰えるかしら?」

と、今時そんなことありまっかいな的なアクションを起こしたとしても、

 「どうぞどうぞ。」
 『この前車で送ってもらっちゃったからこれぐらいしてあげないとね。』(心の叫び)

なんてことになるのである。

ところがである。これがチャイルドシートが義務づけられたにはどうなるかというと、

母A:「あら、A子ちゃん、雨が降ってるわよ。お母さん傘持ってこなかったから濡れちゃうねぇ。どうしようっか。困ったわねぇ。」
子A:「ママ〜、A子、濡れるのいや〜。」
母A:「そんなこと言ってもどうしようもないもの...」
田中:「あら、A子ちゃんのお母さんじゃないの。それにA子ちゃんも。」
母A:「あ〜ら、お隣の田中さん、こんにちは。急に降ってきちゃって、いやですわねぇ。」
田中:「あら、私車で来てるから乗せてってあげてもいいんだけど、ほら、うち子供いないでしょ?だからチャイルドシート無いのよぉ。よその子乗せて点数引かれちゃってもねぇ。ごめんなさぁい。」
母A:「いえ、とんでもないわ。そりゃそうよ、私だってそう思うもの。いいわ、気にしなくても。」
子A:「え〜、A子乗って帰りた〜い。」
母A:「だめなの。田中さんちのお車には乗れないのよ。法律で決まってるの。」
田中:「ご近所なのに、乗せてあげられなくてゴメンナサイね。それじゃお先に。」

となってしまい、後日醤油を切らした田中さんが母Aさんの家に

 「奥さ〜ん、ゴメ〜ン、お醤油少し分けて貰えるかしら?」

と、今時そんなことありまっかいな的なアクションを起こした時には、

 「あら、ゴメンナサイ。うちもちょうど切らしてるのよ。」
 『この前自分だけ濡れずに帰って。私たちはずぶ濡れになったのよ。フン。』(心の叫び)

なんてことになるのである。

チャイルドシートの義務化によって益々近所づきあいのない社会になっていくという一例である。



<誘拐犯>
これも大変である。今までの誘拐は(って、誘拐マニュアルがある訳じゃないけど(^^;))言葉巧みにあるいは強引に子供を車に乗せ、事情の分からない子供がおとなしく乗っているのをいいことにまるで自分の子供か親戚の子供であるかのように振る舞えば、例え信号で停車中にお巡りさんが覗き込んでも、あるいはたまたまパトカーが隣車線に並んで停車したとしても何食わぬ顔をしていれば問題なかった。

ところが、チャイルドシートが義務化されると、誘拐を思い立ったらまずチャイルドシートを買いに行かなければならないのだ。なぜなら、いくら子供がおとなしく座っていても、また仮に騒ぐからと言って薬で眠らせたとしても、お巡りさんやパトカーに見つかったらその時点で

 「おたくチャイルドシート付けてないね。はい、免許証を見せて。」

と止められてしまうのである。

子供もいないのにチャイルドシート義務化に反対している人がいたら、もしかしたら幼児誘拐を企てている誘拐犯かもしれないので、お気づきの方はぜひ警察に連絡しましょう。

あ、ということは、子供もいないのにチャイルドシートを買いに来る人も誘拐犯の可能性があるってことだなぁ。これは出産祝いにと下手にチャイルドシートなんか買いに行ったら

 「あーきみきみ、見たところ独身だけど、チャイルドシートなんて買ってどうするの?ちょっと署まで来てもらえるかな。」

なんて連行されかねないってことだ。気を付けようっと。




いかがであろうか。このようにチャイルドシートの義務化に伴っていろいろな不都合が生じることが予測されるのだ。

最も現実的な問題としては、小さな国産ゼダンに乗っている3人以上の幼児を抱えているお宅では車を買い換えないといけないってことだ。
後ろの座席にチャイルドシートを3つも付けたらそりゃもう大変である。4人以上子供がいれば、もう無条件に7人乗りワゴンに買い換えだ。
こりゃセールスチャンスですよ、そこのカーディーラーにお勤めのア・ナ・タ!

しかもしかも、3人も4人も乳幼児を抱えては歩けないので、外出時には当然ベビーカーを持っていかなければならない。となるとベビーカーを3つも4つも積める荷室の広さが要求される。こりゃあもうマイクロバスにでもしないと、ふいにおじいいちゃん・おばあちゃんが訪ねて来でもしたら大変である。

もしかしたらチャイルドシート義務化の裏には不振にあえぐ自動車業界が・・・なんてこともあったりして。
それともチャイルドシート兼ベビーカーなるものを密かに考案した誰かの入れ知恵だったりして。でもそんなもんあるのか


おしまい。