雑記18:ある日病院にて(1998.11.01)
これはちょっと前に私が病院に行った時に体験した事である。
私はその日、健康診断を受けるべくとある
総合病院に向かった。
前の日に
”明日、朝一番で行きますのでこれこれの項目の健康診断をお願いします”と
電話予約してあったので小一時間もあれば終わるだろうと思っていたのだが、実際は
4時間もかかってしまった。
4時間かかった理由はいろいろあるが、簡単に言うと
”準備不足と不手際”だ。身長と体重を計測するのに
30分もかかったことを例に簡単に説明すると、
1.担当の看護婦が身長計と体重計がどこにあるか分からなかった。
2.身長計と体重計を見つけたのはいいが、別々の科にあるもの同士の組み合わせだった。
3.大きな病院だったので、それぞれの科へ移動する時間がかかった。
4.隅の方でちょっと計るだけなのに一般外来患者と同じように順番待ちさせられた。
5.最初47kgと記入されていたので再計測した。
といったところだ。特に5番なんて
見るからに重そう※1な私が47kgのわけが無いので気付きそうなもんであるであるが、74kgを47kgと書いてしまったらしい。
※1念のため言っておくが、決して○゛ブではない。物心付いたころから野球をやってたため”ごつい”のだ。特に太股なんてそこいらの華奢なお姉さん達のウエストほどある。ちなみに胸囲も110cmほどある。これで171cmの身長だから見るからに重そうなのである。
まあ、確かに30を過ぎて全身がポヤンとした柔らかな物質に虫食まれていることは否めない事実であるが.....。
そして、この後看護婦といっしょに
”あっ”と叫んでしまったのだが、心電図を取るためにそれ専用の小部屋に入ったら、入り口付近に
身長計と体重計のセット(しかも結構新しい立派なやつ)
が置いてあったという落ちまでついていた。
とまあ、こんな感じで半日かけて健康診断を受けたわけだが、その最中に私は
医者と患者とのとんでもない会話を耳にした。
それは採血のための順番待ちをしている時だった。
ご多聞に漏れずそこの病院にもお年寄りが多く、私が待っているところにいたのは私の
2.5倍ぐらいの年齢の人ばかりだった。
その中の一人のおじいさんが嬉しそうにニコニコしながら若い先生と話しをしていた。
暇だった私は何の気無しにその二人のやり取りをぼんやり眺めていた。
老:「先生はいつも優しくて、こんな年寄りにも親切にしてくれて、わしは先生じゃないとダメですわ。」
先:「そんな、他の先生もみんな私よりももっと優しいですよ。」
老:「いやいや、先生が一番ですわ。わしは先生が休みの時は病院に来ないことにしとるんじゃ。」(オイオイ)
先:「そんな、私がいなくてもちゃんと来ないとダメですよ。」
老:「いや、わしは先生じゃないといかん。先生は優しいし、腕も確かだし、安心できるで。先生の言うことは間違いないで、安心して任しとけるんじゃ。」
先:「いえいえ、そんなこと無いですよ。」
さらっと聞き流せば
先生を信頼しきっている老患者と
自分を謙遜する若い先生とのごく普通の会話なのだが、よく考えながら聞くとこの先生、
”自分の腕は確かじゃないし、言ってることも間違い、安心して任しちゃいけない”と言っているではないか
!
謙遜するのもいいが、
時と場合を考えて欲しいものだ。
もし今日が初診で、しかもこの病院は初めてという人がこのやり取りを聞いていたらどう思うだろうか
?
「おいおい、大丈夫か?こんな先生に診てもらって?」
なんて思ったりしないだろうか?
スカイダイビング初体験の際、いざ飛ぶぞという前にインストラクターが固定金具類を最終チェックし終わって
「じゃあ、行きましょうか!」
と言った時、あなたが
「これだけ確認してるし、先生も経験豊富だから安心して任せられます!」
と
不安を打ち消すべく言った言葉に対して
「いえ、そんなこと無いですよ」
と言われたら、はたしてあなたは飛ぶことができるだろうか
?
などとくだらんことを考える余裕があるほど
元気な時には病院なんか行くもんじゃないことを思い知らされた一瞬だった。
おしまい。