登場人物

マリン（マリエスファーナン・イルルミード）：
　　シエラのパートナー。背はシエラより拳２つ低い。一見頼りなさそうで弱そうだが本当に弱い、弱いのだが、実は…。
　　シエラの仕事の実質上管理者。隠された顔も多い。長閑な田舎の青年のような雰囲気を持つ。
　　常にシエラの度を越した仕事振りに手を焼かされている。
シエラ（シェルテスエーラ・ティルイム）：
　　伸びきった四肢と成熟した肉体の長身の美人。
　　極めて高度な戦闘能力を有し、星間連合内での種種の揉め事を調停する交渉＆執行人である通称ストームレイカー
　　「Stom raker：嵐を見通す者」の特Ａ級のライセンス保持者。一見、怜悧で近寄りがたい雰囲気だが、感情の起伏が激しく
　　直情径行的なのを抑える仮の姿。マリンの前では素直に振舞う。シエラにとってマリンは精神的支えだが、妬きもちやきで
　　マリンが他の女性と親しいのは嫌だが、相手にされないのも嫌だと矛盾する感情もある。

ナナセ四姉妹
　　仕事と湯治の為にヴァンフリータを訪れた四姉妹。
　ユーミ：双子の姉で長女　明るく社交的で面倒見が良いがのんびりやさんである。
　ユーカ：双子の妹で次女　冷たく高慢な態度だが本来は素直で優しい。
　ユーキ：四人姉妹の三女　勝気なところと自由奔放な性格だが根はしっかりしている。
　ユーナ：末っ子の四女　　元気で快活、好奇心旺盛だが、純情なところも有る。

デルル：星間自治警察第４課（広域抗争犯罪取締課）の警部補

ガルバルディ：アメリア・クロムハート社頭取

カイル：クロムハート社頭取付主席秘書官

ラムス：クロムハートより依頼されたビジランテイ部隊の指揮官。武力行使の第参者的調査機関のパワーズを率いる。

序章：

「どけっどけっ、どけっ！！」
　宇宙港旅客エアロック脇のゲート前では薬物乱用の症状を見せている男が人質にレイガンの銃口を当て搭乗口前まで
近付こうとしていた。
　移送途中の隙をみて逃走し、繋留中の小型宇宙船を奪取しようとしているのだ。
　バシュッ、と不意に背後の搭乗口のエアロックが開いた。
「なんだっ？！」
　開いたエアロックからボーディングチューブを覗きこむと閃光が鉄砲水のように押し寄せた。
　眼が眩んだ瞬間、レンチが男の顔面を叩き、仰反った合間にエアロック上のハッチから誰かがするりと男と人質の前に
割って入るように音も無く降り立った、そして。
　ドンッ、と轟音が響くと、男は一気に壁際まで反動で飛ばされ、額に当たった銃身で意識を失っていた。
「なんてやり方だ。
　実体弾を打つ反動で男を引き離すと同時に反動そのものを男に吸収させて抵抗を奪うなんて…」
「あれがストームレイカーのやり方なのか」
　唖然とした宇宙港の警備員達を気にすることなく、小型宇宙船と乗員は出発して行った。

　惑星アメリアの大陸と海洋の比率は約２８：７２であり、大陸は惑星の半休側に大部分が集まり、大小の島嶼が点在し
赤道を挟む形で北のマクラン大陸と南の東西アラルカン大陸に人口の９割が住んでいた。
　大陸内の移動手段は鉄道であり、大陸間は船舶であった。これはかつて栄えた文明の負の遺産である大気圏内広域
防衛システムが高度９千フィート前後を飛行する物体を撃墜する自動防衛システム７２個体が、遊弋しながら惑星上空に
展開しているためである。
　いずれの大陸も中央部はステップ高原を形成しており、人口稀薄地帯もあって荒涼さから治安は良くない。
　マクラン、アラルカン両大陸に挟まれたウンヴァルト海は、東のパレルツ海峡から西のファダビア海峡の総延長が赤道
周囲３分の１以上の１万７千キロメートルに及び、ほぼ中心部のマクラン大陸のテテス半島にこの惑星最大の都市であり
総監府と宇宙港への起動エレベーターが設置されているファルツェン市がある。
　惑星アメリアにおける主要な産業は農業と観光であり、貴重な鉱物資源メタクロム以外に恵まれず、内燃機関は石炭を
主としている鉄道以外はない。船舶は大部分が貨物船でありＳツヴァイ機関を使用している。
メタクロムの主な輸出先は隣の惑星ヤークスであり、第１次産業が大半を占めるため人口は五億に満たない。

　物語は、西アラルカン中部、鉄道輸送の中継都市の１つであるヴァンフリータから始まる。

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