TOYOTA VITZ  F"D Package" (3door・4AT) 1999年1月

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試乗したのは3ドア。でも街で見るのは殆んど5ドアですね(これはマイナーチェンジ後)

トヨタの世界戦略車”ヤリス”。その日本版の”ヴィッツ”は,写真で見るより,はるかにまとまりの良いデザインでした。5ドアの方は,リアクオーターあたりにやや垢抜けないところがあるものの,3ドアはなかなかキュートなまとまりを見せています。ちょっとアクの強いマスクとそれなりにバランスしていて,ちょっと見にはルノーあたりの小型車のよう。ほんとうにトヨタ車ばなれしたスタイルです(ほめ言葉のつもりです)。

シートに腰を下ろすと,わりあいとアップライトな姿勢になります。ルノー・トゥインゴにも似た,ぬめっとしたフォルムのシートや,シンプルで蓋のない物入れだらけのダッシュボードも,ヨーロッパの小型車流。リアシートも座面が高くてシートバックが立っているためか,膝まわりに余裕があり,まずまずの居住空間が確保されているといえます。造りそのものは思いきりチャチですが,トヨタ製の”軽”だと思えば,こんなものでしょう。

さて,試乗です。セレクターをDレンジに入れてトロトロと発進。70ps/9.7kgm,800kg+αのリッターカーだから,まずはこんなものかという感じ。ディーラーの構内から公道へ出て,さら中央車線へとレーンチェンジを試みます。と,あれっ〜?なんだこりゃ?のヒョコヒョコした動き。トヨタ車にありがちなフワフワした感じではないものの,何だか落ち着かない挙動です。ハーシュネスも結構強く,お世辞にも好い乗り心地とはいえません。

前が開いたところで,じわりとアクセルを踏み込んでやると…,それこそ耳をつんざくようなエンジン・ノイズの嵐。速度感がおかしくなり,60km/hくらいかと思ってセンターメーターのデジタル表示をのぞくと,まだ40km/hを越えたところ。音のせいだけでなく,挙動のくせや,良好すぎる(?)視界からくる不安感が,体感速度を速く感じさせるのでしょう。60km/hに達すると,80km/hオーバーのスリルが味わえます。思わずスピードを控えさせるという意味では,安全指向の車だったりして!

とはいえ,足回りをもう少し何とかしてマニュアル・ミッションで乗ったら,それなりの面白さがあるかもしれませんね。派手なエンジン・ノイズも,いい刺激になるかも…。もっとも,いまどきは軽自動車だって,マニュアル・ミッションを駆使して走らせたら馬鹿にできない走りをするのは,ヴィヴィオに乗ったときに感じたことですが。

ところで,走らせてみてもシートのホールド感はOK。ちょっと包まれ感があってこれはこれでいいなあと思っていたら,助手席の悪友が「座面が底づきして,こりゃぁだめだ」とのたまうではありませんか。運転席と助手席の造りが,(おそらく)そんなに違うわけではないでしょう。この感じ方の違いは,きっと46kgと80うんkgの重量の差と思われます。どちらが重いか軽いかはいうまでもありませんよネ。

ところで,ヴィッツでは最上級の”U”グレードにしかリアシートのヘッドレストがつきません。GOAもABSもエアバグもと,一見安全指向のようですが,後席の乗員は鞭打ち症になってもいいということでしょうか。こういうところでしっかりとコストの削減をやっているのが,いかにもトヨタらしいというか…。

VITZ追記 1999年6月

最近,職場の上司に「ヴィッツって,どんな車だ?」と聞かれました。奥さんだか娘さんだか用の車の購入を検討しているのだそうです。購入のアドバイスをするなら,きちんと説明できるようにしなければということで,もう1度試乗して来ました。以前とは別の店舗に行ったのですか,試乗車はこんどもF"D Package" (3door・4AT)でした。

エンジンのうるささは1月の試乗の際と同様,新設計のエンジンとは思えないすさまじさ。反面,ブレーキの良さはなかなかのものだと感じました。60km/h+αから強めにブレーキを踏み込んでみました。自分としては珍しく(?)隣りのセールスマンに遠慮したのか,ABSの作動には至りませんでしたが,けっこう気持ちよく減速しました。ブレーキ周りの剛性感も高く,妙な振動も出ません。ことブレーキに関しては合格点。「ひと昔前のトヨタ車とは,ずいぶん違うでしょう?」とはセールス君の弁。

さて,前回は試せなかったコーナリングです。鋭角の交差点に速めのスピードで進入したとたんに,グラッとつんのめるような,不安定な挙動を示し,あれれっ?という印象。同じコースを2度走って,同じ結果でした。街乗り用の大衆車でそんな運転をするな!といわれそうですよネ。でも,とっさのときに意のままに操れることって,大切なのではないでしょうか。足回りを固めたKE20以来,AE86→AE92→NA6→BG9と比較的スポーティーな車を乗り継いできたせいで,「普通の車」に対する評価軸がおかしくなっているのかもしれませんが…。

ところで,今回はレーンチェンジでのヒョコヒョコはあまり気になりませんでした。試乗コースの条件の違いなのか,車両の個体差なのか,はたまた数ヶ月の間に改良が進んだのか。売れている車だけに,手直しも頻繁に行っているのかもしれません。