下山交差点(長久手町大字原山下山) 長久手MENU

舟形高60cm 一面ニ臂 立像

   

   幕末建立の立像
長久手町営の循環バス「Nバス」の下山停留所のすぐ横に,木造トタンぶきのしっかりした祠があります。中に収められているのは,舟形光背に「
文久四子年 正月十八日」の銘がある馬頭観音の立像です。この記年銘には墨が入れられていました。文久四年は幕末の1864年。イギリス艦隊が薩摩を砲撃した「薩英戦争」の翌年にあたります(文久四年は,途中で元治元年に変わります)。

   一面二臂の馬頭観音
一見すると聖観音像のようですが,頭上には確かに立体的で可愛らしい感じの馬頭をちょこんと頂いています。すらりとした全身に柔らかな線のなで肩,とてもスマートな石仏です。珍しいのは一面二臂立像という形。尾張旭南原山町の追分の道標仏はこの形態ですし,瀬戸市では東へ行くほど多く見られますが,尾張旭や長久手町では,三面六臂ないし三面八臂の坐像が多いですから,「この地域にも,この様式の馬頭観音があるんだぁ…」といった感じです。南原山町の石仏は1847年の建立です。幕末期の特徴なのでしょうか?それとも銘を刻むのに,沢山の腕があっては邪魔だったりして…

腕や衣の表現は比較的簡素です。技術的にはそんなに高くなく,どちらかといえば稚拙な感じがなくもありません。お顔の彫りは浅いのですが,全体のイメージ同様優しげに見えます。140年も前の石仏ですが,その割には風化が見られません。きっと,祠の中でずぅ〜っと大切に拝まれてきたのでしょうね。取材の日にも,たくさんの花が供えられていました。