御岳神社(長久手町大字岩作壁ノ本) 長久手MENU

馬頭観音:舟形高48cm 三面八臂 坐像 持物(輪宝・未開蓮華・宝刀・鉞斧)
摩利支天:舟形高78cm 
三面八臂 立像 持物(宝剣・独鈷・矢・鉾)

   
【左】手水の上の馬頭観音       【右】本殿横の摩利支天

   神社境内の馬頭観音
御岳本教長久手分祠殿(通称岩作御岳神社)の境内には,馬頭観音が安置されています。御岳教に馬頭観音の取り合わせ?と思いますが,おそらく街道沿いや村境に,民間信仰の対象として置かれていたものを,何らかの理由,例えば区画整理や道路の拡幅などのために移動を余儀なくされ,神社がひきとったものなのでしょう。

   手水の上にちょこん…と
参道の石段を登りきると,鳥居の前の手水の上に,やや小ぶりな馬頭観音がちょこんといった感じで座っています。一目見た印象は「頭でっかち」。左右の憤怒面の表情にもかかわらず,まるでいたずらっ子のようで,なにか楽しげに見えてしまいます。造作は教圓寺の小さい方の馬頭観音によく似ています。三面八臂で顔や胴の彫りが非常に立体的なのに対し,六本の腕は舟形に線彫りしただけで,模様のようにも見えます。顔立ちはあまり似ていませんし,舟形のシルエットも異なりますから同じ作者の可能性は少ないでしょうが,様式的には同じと考えていいのではないでしょうか。とすると,これも江戸時代の作かもしれません。

   本殿横の石仏は摩利支天長久手町史の間違い見っけ!
鳥居をくぐって本殿に向かうと,向かって右側の石組みの上に,舟形高78cmの比較的大きめの石仏があります。伸びやかな船形に浅めの浮き彫りで表わされた,三面八臂の像です。船形には「
明治三十二年三月建之」と刻まれ,基壇には人名が並んでいます。「長久手町誌」にはこれも馬頭観音として記載されています。しかし猪らしい動物の背を踏みしめている点,胸前の手が馬口印を結ばず,鉾らしい武器を斜めに構えている点,そしてなにより宝冠に馬頭が見当たらない点から考えると,馬頭観音ではないようです。

これはおそらく「摩利支天」。天上界に住む仏教の守護神である「天部」のひとつで,陽炎を神格化したものとされます。多くは三面六臂で猪の上に立つ姿で表される摩利支天は,もともとインドで信仰された除災増益の神です。我が国では武士の間で守本尊とされたということです。一番上には立像と書きましたが,ぐっと腰を落とした安定した姿勢で,正確には立像とはいえないかもしれませんね(^0^)