庄中観音堂 (庄中町南島) MENU

舟形高49cm 三面六臂 坐像 持物(輪宝・独鈷杵)

    
   【左】馬頭観音                  【右】庄中観音堂           .

円空仏を収めていることで有名な庄中の観音堂。ここにも馬頭観音が見られます。観音堂の南東に建つ,間口の広い細長い祠の,南から2番目にあるのがその馬頭観音です。基台には,正面に「馬頭観世音」,観音様から見て右側に「願上 馬車連中」,左側に「大正三年□□」と刻まれています。□の部分は,残念ながら読み取れませんでした。※尾張旭市誌本編では「願主馬方連中」と「大正三年三月」になっています。

明治以降,この辺りの街道筋では馬車による運送業,いわゆる「車借」が盛んになりました。三郷交差点や良福寺の馬頭観音も,ここ観音堂のもの同様,大正時代に作られたものです。「馬車連中」の文字は三郷交差点の馬頭観音にも見られます。同業者の組合のようなものでしょうか。

この馬頭観音は彫りが深く,非常に立体的に表現されています。顔立ちは丸っこく,鼻の造作のせいもあってか,一見するとひょうきんに見えてしまいます。しかしよく見ると口は「へ」の字に曲げられ,馬頭観音らしい憤怒の表情を表わしています。目元も険しく,引き締まった表情といえます。しかし三郷の馬頭観音の,見るからに厳しい表情とはかなり感じが違うのは,作られた経緯が違うせいなのかもしれませんね。

蓮華座が舟形と一体に造られています。それがさらに蓮華座の上に乗っている…もとからの組み合わせではないかもしれません。衣の裾から足がちょこんと出ているように見えますが,座った姿勢,例えば輪王座や結跏趺坐ではここに足がくるのは疑問です。可能性としては胡坐をかいていることなのですが…。材質のせいか,それとも風雨にさらされたせいなのか,大正期のものとしては摩滅がひどいようです。