「ゴキブリ軍団大進撃!」
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第3話「プランニング」
 翌日、オマチ城に隣接して建てられた、小学校の図書館に集まった3人は、昔のお城周辺の地図などを取り出して眺めていた。オマチ城の周囲には、アルファ、ベータ、ガン マの3重の防御壁が作られている。それぞれ、石で作られた堅牢な城壁なのだが、内部には秘密の通路や隠し部屋があったりするという、子供達にとっては絶好の遊び場となっ ていた。もちろん、学校にはこれらリングの中に入って遊んではいけないという規則があった。もっとも、アルファリング以外は、遠くて遊びにいける場所ではないのだが。
 「この地図じゃぁ、小さくてよく分からないわねぇ。」そう言って腕組みしているのは、二の腕の筋肉が逞しいなーこである。「リング内の構造が分かる地図はこれしかない しねぇ。」じょたは、虫眼鏡で地図を拡大して見ていたが、もともと正確でない上に、印刷がぼやけてしまっていて、よく分からなかった。羊皮紙に書かれた地図は、カードが 隠されていると思われる場所の拡大図のようなのだが、図書館の地図と見比べても、どこがどう一致するのか全く分からなかった。
 「悪がき3人組でお勉強とは感心なことだな。」いつの間にやってきたのか、じょたの背後に熊五郎が立っていた。熊五郎は、じょたの学年主任の先生で、とさかの赤い生活 指導のニワトリとは親友である。この先生に、じょた達がリング内に侵入する計画を立てていた事がばれたらまずい。どんじゅうろうは、菓子袋をマッハで隠していた。こうい うときだけはすばやいのだ。「なーこ、バスケのメンバー足りないの。一緒に来てよ。」同じクラスのエイミが、自習室のドアから顔を出してなーこを呼んでいた。「あ、分か った。今行く。じゃ、私はそういうことで、後ヨロシクね。」なーこはじょたにウインクすると、自習室の出口へ逃げて行った。しかし、何かに気付いた様子で、すぐにじょた のところへ戻ってきた。熊五郎は、隣のテーブルでレポートを書いている生徒に、何かアドバイスしていた。なーこは、じょたの耳を引っ張ってひそひそと内緒話をした。「絶 対ひとりで探しに行っちゃだめよ。約束だかんね!」
 最近、じょた達3人組の様子がおかしいと気付いたのは、クラスの情報屋サルマタであった。こいつは、音の出ないスケートボードに乗って校内を移動するという特技を持つ 、忍者のような生徒であった。「んぎ?なーことじょたがアッチッチなのはまぎれもない事実、だと。んぎんぎ?あいつら帰りにどこで道草食ってるの、かと?ひょっとして、 すきゃんだる、かと?」ませガキである。「調査の必要がある、と。」サルマタは、音の出ないスケートボードに乗って地面を勢いよく蹴ると、校門から出て行くじょた達3人 組の後をつけた。
 「今日は危なかったね。」じょたは、なーこと並んで歩きながら言った。「こうなったら直接探しに行くしかないよ。」なーこは、きっぱりと言った。「僕は反対なんだな。 リング内には、入っちゃいけないんだもんな。」どんじゅうろうが相変わらず菓子を食いながら言った。なーこは、柄にもなくにこりと微笑むと言った。「どんじゅうろう君に も、手伝ってほしいことがあるのよ。お願い。後でアイスおごってあげるから。」なーこが、ぶりっこしてる!怪しい、怪しいぞ。さすがにニブチンのじょたでも、これは怪し いと思った。何をたくらんでいるんだろう。
 「んぎ?これは怪しい、怪しいツーショットである、と。アッチッチは、どんじゅうろうの方だったのか、と。」背後からこっそり後をつけていたサルマタは、懐からメモ帳 を取り出してなにやら書き込み始めた。えー、○月×日(○曜日)晴れっと。今日は、なーこ達の尾行をした、と。あいつら三人の関係は、えー・・・、あれ?さんか、さんか ん?授業参観であった、と。「んぎ?何か違うぞ、と。」じょた達の横を、メモ帳を手にして考え込んでいるサルマタが音も無く通り過ぎていった。集中すると、周りが見えな くなる性格らしい。「まずい!サルマタに知られちゃったか。」なーこは、クチビルをかんで悔しがった。「じょた!例の場所、これからすぐ行くわよ。」「え?準備はしなく ていいの?」「そんなのあと、あと!」「でも、リングには怪物が出ることもあるって、さっき言ってたじゃ・・・」「いいから、一緒に行くの!」なーこは、じょたの手をつ かむと走り出した。どんじゅうろうも、砂煙を上げながらその後をどたどたと追いかけていった。
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