「Funny World じょたの冒険」
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第2話「大泥棒あらわる!3種の宝玉を探すの事」(中)
 「領主様!正門前の立て札にこんな張り紙が!」兵士が一枚の紙切れを持って、食事中の小太りの男の前に現れた。長さが10m近くある巨大なテーブルで、ひとり朝食を取 っていた小太り領主は、おつきの者に大なべから小鉢にかゆをよそってもらっているところであった。「読みあげよ」めんどうくさそうに領主は言った。「はっ。えー、・・・ 前略オマチ城城主殿、いつもいつも御仕事ご苦労―さん。配下の方たちの有能ぶりには、毎回大変感謝しております。さて、貴殿の所有する3種の宝玉のイミテーション、上記 まさにお預かりいたしました。訳あって、3箇所に分割して保管しておきましたので、後ほどゆっくりと探してみてください。保管場所については、詩にて表現してみましたの で、ご鑑賞ください。なお、慈悲深い領主様のお心をお察しいたしまして、宝玉を探し出した領民には、ご褒美がどっさり出るとお伝えしておきました。やさしいなぁ。では、 城主様の丸々とした健康をお祈りして筆を置きます。ご機嫌よー。大泥棒ネコキチ」
 「ばがぁー!!」手にした紙を両手で真っ二つに引き裂くと、真っ赤に怒り狂った無精ひげの角顔オヤジが目の前に現れた。ここはオマチ城の警備兵詰め所。「こんなもの読 んだら、領主マルチャン様は卒倒されるわ。」ツバキとご飯粒を吹き飛ばしながら、怒鳴っているのは警備隊長の平蔵である。「はっ、マルチャン様におかれましては、卒倒し た後自室にてお休みを取られているとの事であります。」「ばがものぉ!3種の宝玉は警備隊の威信にかけて、必ず取り戻すのだ!直ちに捜索隊を編成し、準備出来次第しゅっ ぱぁつ!」「はっ!御言葉ではありますが、隊長殿。どちらへ向かえばよいのでありますか。」「ばがぁー!そんなことも分からんのか!?順番に片っ端から捜索するのだ!従 って、まずは月のしずくだ。ちくちくのぶよぶよだ!」「はっ、ちくちくのぶよぶよでありますか。」「そうだ、多分そのぅ、毛虫の事だろう。こそ泥らしいネコキチの考えそ うなことだ。お城の西に、毛虫がたくさん発生する場所があったな。確か果樹園だったと思うが。そこをしらみつぶしに捜索する。いいな。」しばらくの間、お城近くの果樹園 で夜通し毛虫退治をする兵士たちの姿が見られたという。
 「月のしずくはしみわたる。ちくちくのぶよぶよがいっぱいにあり。互いに近づき、また離れるものなり。炎の宝珠はかきわける。おやつが欲しい木の根っこにあり。注意一 秒、怪我一生。太陽の王冠はさかのぼる。反射する日光の冷たい底にあり。犬が西向きゃ尾は東。うーん、なんだか分からんなぁ。」シュウが新聞の切抜きを持って歩いている 。ここは城下町の中心街。今日は、3人組で探索に出向くための装備を整えようと、町に買い物に来ているのだ。いつにもまして混雑する中心街を一列縦隊で歩く3人。お城の 立て札と、新聞によってもたらされた宝捜し騒ぎで、今町は持ちきりなのであった。「最初の一文が大まかな場所を表している。次の文章が隠し場所の特徴、というところまで は分かった。3つ目は何かな。」シュウは、なおもぶつぶつと呟いている。「前後の文章が、逆の役割を持っている場合もありそうだね。それは、ちくちくのぶよぶよで大まか な場所を推定しなければいけないんだと思う。」と、じょた。「うん、そうだなぁ。それにしても今日は混んでるなぁ。」町の雑貨屋は、どこもお客さんであふれ返っており、 品切れをきたしている店も少なくなかった。すごい経済効果だったといわざるを得ない。じょた達は買い物もそこそこに、町外れの秘密基地、2人組みの木に向かった。そこは 、アルファリングの外側にある木立の一本の木で、樹上に縄を渡して休めるようになっていた。木の上で作戦会議をするつもりなのである。
 「一番特徴的なのは、ちくちくのぶよぶよだな。これがいっぱいある、と・・・」シュウは腕を組んで考えている。「やっぱり栗の林じゃないかな。」と、シュウ。「ぶよぶ よが引っかかる。ぶよぶよしている栗なんてあるか?ぶよぶよといえば、いもむし。ちくちくのいもむし。いっぱいいる場所。」なんだか冷や汗が出てくる。なんとなく想像で きてきたのだが、どうしてもその場所は候補から外したかった。「これじゃぁちょっとストレートすぎる。きっとちがうよ。」シュウは、毛虫が嫌いだった。「ちくちくって服 とかにくっつくやつじゃないか?」とじょたが言った。「おぉ、そうかもしれない。」「ぶよぶよって言うのは、その植物の種類を表しているんじゃないかな。」じょた君、だ んだん冴えてきた。「ぶよぶよでくっつく植物なんてあるか?」「ある。春先に花が咲くと、花のめしべが膨らんでぶよぶよになるんだ。花が落ちると、それが固まってちくち くになる。たしか、神社の鳥居に向かう一本道で、群生しているのを見たことがある。」そこは、一面茶色いちくちくが生える野原のはずであったが、ちくちくらしきものは見 当たらなかった。また、まだ誰もこの場所には気付いていないのか、じょた達3人組意外は誰もいなかった。3人とも草むらに入ると、その草を調べだした。
 遠くにオマチ城の4つの尖塔が見える。丘の上に建つ別荘の2階バルコニーで、二人の男が椅子に座って遠くを眺めている。テーブルには飲み物の入ったグラスが二つと、真 っ赤な色をしたハルイチゴの盛られたガラス容器が置いてある。「今ごろ、ちくちくを探してる奴らは大変だろうぜ。な、ネコキチよ。」「そーだなぁ、いんげぇん。何しろ数 が多いからなぁ。しかも、・・・」ネコキチは、くくくっと喉の奥のほうで笑うと、ガラスの容器に盛ってあるハルイチゴを一つつまんでぱくりと食べた。「おぉ、すっぺぇ・ ・・しかも、あれは形態模写するんだよなぁ・・・」
 「あぁ、あった!ん?」「うわ!なんだこれ!?」「あれ!?」3人とも草むらをかき分けて驚いた。あたり一面の植物の茎に宝石がついているのだ。「これ、どーゆー事? 」シュウがじょたに向かって尋ねる。「よく分からないけど、この中に本物がひとつしかない事は確かだよ。何か秘密があるはずなんだ。多分、詩の3つ目の部分と関係すると 思う。」「あー、これを片っ端から調べろっていうのかねぇ?」シュウは辺りを見回してみた。そこは、果樹園と果樹園の間にある野原で、100m四方くらいの広さがある。 砂漠で石ころを探すようなもので、普通に探していたらとてもじゃないが見つかりっこない。「ちくちくは形態模写するのかな?だけど、どんな状態で形態模写するんだろうか ?」じょたは、ちくちくを一つ手にとってよく見てみた。本当に精巧に出来た模造品である。だが宝石にしては少し軽いし、輝きも鈍い。ちくちくが形態模写したものなのだろ う。つついていたら先が割れてしまった。中は空洞になっていて、ひし形の実がその中に入っていた。ひし形の実がころりとこぼれ落ちた。どうも、このひし形の実と形態模写 には何か関係がありそうだとじょたは思った。「互いに近づき、また離れるものなり、か。ひょっとして、それは磁石のことかもしれない。ちくちくが形態模写するのは地磁気 の影響によるのかも。でも、どうやってこれだけ大量のちくちくを、磁石で一気に方向を変えることが出来たのだろうか?」「でっかい磁石かな?」とトム。「ちょっと待って よ。いままで、ちくちくが他のものに形態模写しているのを見たことがあるか?無いよな。ひょっとして、互いに近づき、離れるということは、一旦形態模写をしたら自然に元 に戻る。近づき、離れるってそういう事じゃないだろうか?」「なるほど、そうか。ネコキチの奴、俺たちが必死になって宝珠を探すのを見るのが楽しみなのかもしれないな。 でも、待てよ。それにしても、一斉に宝珠が形態模写した謎は解けていないぜ、じょた。」じょたは、片手をあごに当てて考えるしぐさをした。「それは多分、月齢と関係があ るんじゃないかな。ほら、この間は新月の夜だったでしょう。新月というのは、太陽、月、ファニーワールドが一直線に並んだときに見られるというか、月が夜に見えなくなる んだ。多分その力が解けるまで、この形状のままだと思う。」「ふーん、なんにしてもしばらくはこのままというわけか・・・」「夜になったらこっそり見に来よう。」
 数週間後、ちくちくの草むらが広がる空き地にいつもの3人組がやってきた。西の空では、真っ赤な太陽がゆっくりと沈んでいくところであった。そして、東の山の間から、 お皿のような満月がゆっくりと昇り始めた。月の光がゆっくりと、草むらを照らし出すと、宝珠に形態模写をしていたちくちくは、あふれんばかりの月光を浴びて、空の星々の 姿をかたどった見慣れたちくちくの姿に変化していった。その時、草むらの中に光る物体があるのを発見した。それは、まぎれも無く3種の宝玉のひとつ、月のしずくであった。
 「ばがぁ!まだ見つからんのか!?」ツバキを飛ばしながら角顔の男が怒鳴る。警備隊長の平蔵だ。「おやつが欲しい木の根っこ、かきわけたのでありますが、まだ見つから ないであります。」兵士が敬礼をして報告した。じょた達が月のしずくを発見するかなり前の事である。「子供が欲しがる、おやつのなる木などあるはずがないのであるが、こ れが何かの喩えであることは、我輩の推理によると間違いないのである。しかし、・・・」無精ひげのごりごりと生えた、四角いあごを親指と人差し指で挟むようにすると、「 しかし、何を喩えたものなのかがさっぱり分からんのだ。」しばらくの間、オマチ周辺に生えている木の根っこをほじくり返す兵士たちの姿が見られたという。
 わんぱくの森の入り口にじょた達3人組と、ヒトネコのマルコニャンコが現れたのは、警備隊の兵士たちがオマチ中の樹木を調査している頃であった。もちろん森の中の樹木 も探していると思われるが、人間の感覚では分からない「見えない木」もあるのだ。「なむぅー、僕は、この森には入らないほうがいいと思うの予感。」白黒のヒトネコのマル コが言った。「注意一秒、怪我一生という言葉からして、多分ここでいいと思うんだ。かきわける、というのは文字通り草を掻き分ける事だと思うんだけど、かぎわけるという 言葉にかけているような気もするんだ。その後の、おやつが欲しいという言葉から想像するとね。かぎ分ける能力を持つものしか見つけられないんだと思う。」じょたはそう言 ってマルコを見た。「なむぅー、確かに森の中には、これから樹木になろうとして、地面から芽を出したばかりの植物がたくさんあるのね。その新しい芽に意識を集中させれば 、成長した樹木の姿が見えることもあるのね。でも、その根っこを掘ったら新芽が枯れてしまって、樹木にはならないの予感。詩の内容を読み違えているような予感」マルコの 抵抗も空しく、じょた達4人は森の中へと入っていった。森の樹木は、招かれざる侵入者に気がついたのか、ざわざわと枝を震わせるのだった。
 さくさくさく、枯葉の積もった森の中を歩く3人の少年とヒトネコの姿があった。先頭はヒトネコのマルコニャンコ。例によって、耳の飛び出る帽子を被り、釣りざおの飛び 出たリュックを背負って、ポケットがたくさんついた服を着ている。ポケットには、ビスケットがたくさん入っていて、歩きながらぼりぼりと食べている。「何か見えるか?」 2番目を歩いていたじょたがマルコに話し掛ける。「なむぅー」見える、見えないの問題ではない。いたるところに新芽が出てくる兆候があるので、特定のしようが無いのだ。 「なむぅー」マルコは、ビスケットをぽろぽろこぼしながら辺りを見回した。「いっぱいなのね。探しきれない予感。」「そうか、うーん・・・、木の根っこに何かがあるんだ ろうか。」「ぼくもおやつが欲しい」トム君が言った。マルコはそれを無視して、ぼりぼりとビスケットを食べつづける。「ひょっとして、おやつが欲しいのは僕たちじゃなく て、何か別のものなのかも・・・」じょたは、自分で言っていることが恐ろしくなってきた。「そうすると、注意一秒、怪我一生というのも、凄く意味深なんだけど。」じょた は、ぞわぞわと肌が粟立つのを禁じえなかった。見上げると、樹冠がざわざわとざわめいていた。木々の隙間から差し込む日の光が弱弱しく頼りない。「どんどん行こうぜ。」 シュウが列の最後尾から声をかけた。シュウは、現実に存在するもの、物質的なものは恐ろしくないのである。ただ、夜の闇だとか、幽霊だとか、ある種の魔道などは怖がる傾 向にある。まぁ、この後で物質的なものに充分驚かされることになるのだが。
 オマチ城の4つの尖塔が見下ろせるバルコニーで、二人の男がグラスの飲み物を飲んでいる。テーブルの上には、大粒のぶどうの房が幾つも入ったガラスの容器が置いてある 。「今ごろ、木の根っこを探してる奴らは大変だろうぜ。な、ネコキチよ。」「そーだなぁ、いんげぇん。何しろグロい奴だからなぁ。しかも、・・・」ネコキチは、くくくっ と喉の奥のほうで笑うと、ガラスの容器に盛ってあるぶどうを一つつまんでぱくりと食べた。「おぉ、すっぺぇ・・・親玉が現れなきゃいいんだけどなぁ・・・」
 森の奥に入り込むと斜面になっていて、下のほうには小川が流れていた。そこかしこに木の根元を掘った跡がある。皆考えることは同じらしい。「もっと奥に行ってみよう。 」じょた達は小川を越えて、また斜面を上った。ぽとん。何かが落ちてきたようだ。「なんだろう?」じょたは音がした辺りを見た。何かが動いている。握りこぶしくらいの何 か。丸いものであった。足がたくさん生えている。8本。「く、蜘蛛だぁ!」じょたは、何が嫌いだと言って、蜘蛛より嫌いなものは無かった。「あ、わわわわ」パニック状態 である。斜面をめちゃくちゃに走っているうちに、見知らぬ場所に出た。そこは、オマチ城の排水管が斜面から飛び出ている場所であった。先ほどの小川はここから流れていた のだ。周囲を見渡すと、うっすらと白いものがかかっている。よく見ると、それは細かい細かい蜘蛛の糸であった。それがあたり一面びっしりと、張り巡らされているのだ。よ くもまぁ、闇雲に走ってきて巣にかからなかったものである。シュウ達が追いかけてくるのが見える。ぽとん。あ、いやな音。ぽとん・・・、ぽとん、ぽとん、ぽとん。じょた は思わず上を見上げた。そして、血の気がざーっと引く音を聞いた。落ちてきているのだ。たくさんの丸々と太った蜘蛛が。じょたは、首筋から背中にかけて、鳥肌がぞぞぞー っと立つのを感じた。直径2センチくらいの蜘蛛が、樹木の上から落ちてくる間に、威嚇のためか体をぷくーっと膨らませて握りこぶしくらいの大きさになるのだ。自分の目の 前で、黄色と黒の縞模様の体が、風船のように膨らんでいくのを見るのは、蜘蛛が嫌いでない人間にとっても嫌だろう。じょたにとっては地獄であった。しかも、本当の地獄は これから始まるのだ。「じょた、後ろだぁ!」シュウが近づきつつ叫んだ。マルコは、両手を自分の口に当てて、全身の毛を逆立てて驚いている。トム君は、・・・泣き出しそ うだ。じょたは、ゆっくりと振り向いた。急に振り向いたら、そのとたんに何かとてつもないことが起こりそうだったし、「見えてくるもの」に対する心の準備も必要であった 。蜘蛛が、背中や肩に乗っかっているという可能性は少ない。そんな感触は無かったはずだ。視界の端の方に、薄茶色の柱のようなものが見えた。動いている。もう少し振り向 いた。薄茶色の柱が数本動きながら近づいてくる。何だ、あれ?柱には細かい毛が生えていて、柱の生え際にはこんもりとした山が二つあった。薄茶色の二つの山に、緑色のビ ー球が4つついた物体が、細かい毛の生えた柱を動かして近づいてくる。体長約1.5mの、その物体までの距離およそ20m。全てを理解した。それは、地上を這いまわって 獲物を捕食するタイプの蜘蛛であった。「でたぁー!!」完全に恐慌状態をきたしたじょたは、足をわなわなさせながら逃げ出した。足は鉛のように重く感じられ、いつか見た 悪夢のように、逃げようとしても体がうまく動かない。薄茶色の蜘蛛は、じょたをターゲットとして見定め、もさもさした足の筋肉を収縮させると、体を持ち上げて喜びにぶる ぶると体を震わせた。そして、急速に歩行速度を上げると、じょたの後ろから襲い掛かった。じょたは、よろめいて転がったおかげで、敵の最初の一撃を避けることが出来た。 振り向くとすぐそこに自分の体より大きい蜘蛛の姿がある。そして、ビー球のような目をこちらに向けて、距離を確認し次の一撃に入ろうと身構えている。じょたの脳裏に学校 で学んだ魔道の呪文が閃いた。まだ、初歩の魔道しか習っていないはずである。自分でも覚えていたかどうか定かでない呪文が、すらすらと詠唱される。蜘蛛の足がすばやくじ ょたの方向に伸びてくる。じょたは右手を前方にかざした。辺りが急にスローモーションのようにゆっくりと動き出した。蜘蛛の動きが遅くなる。そして、足の先の方が白くな ったかと思うと、その白いものは蜘蛛の表面を這うように広がっていった。蜘蛛だけではなかった、蜘蛛のいた周辺が白色に変化しているのだ。捕食者たる蜘蛛は、被捕食者の 突然の抵抗に驚きそして怒った。だが、体を覆う白色の物体は、蜘蛛の体力を消耗させた。蜘蛛は、今回のハンティングは諦め、もはや逃げなければならない事を悟っていた。 だが、執拗にまとわりつく白色の冷気は、そんな蜘蛛の体温を急速に奪い、体の自由を奪っていった。ばきばき、びしびし、足が地面から凍りついていく。蜘蛛はもはや逃げる こともかなわず、最後に一口この獲物の血をすすってやろうかと考えたが、そのときには頭の中まで完全に凍りついてしまっていたのだった。
 気が付くとお日様が正面にあった。左右から見慣れた顔がのぞきこんでいる。シュウ、トム、マルコであった。周囲の明るさから、森の外に出ているのだと思った。頭が痛い 。まだ、先ほどの薄茶色の柱や、緑色のビー球が残像として残っている。目をつぶると、目の前に現れるのだ。じょたは、まぶしくとも太陽を見て、残像がよみがえるのを防ぐ と、「ありがとう」と言った。炎の宝珠は、あの蜘蛛の巣の中に落ちていたらしい。誰かが蜘蛛に襲われて、落としたか・・・犠牲になったかしたのであろう。しばらくそこで 横になっていると、魔道の発動の感覚がよみがえってきた。水性の魔道。対象物を氷漬けにするという、かなり高度な魔道のはずだ。チチチチ、鳥のさえずりが耳に心地よい。 疲れた。じょたはそのまま深い眠りに落ちていった。
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