佐倉市立美術館 体感する美術2002  耳をひらいて Open your ears

風鈴プロジェクト(IFSによるワークショップ)  


風鈴屋台繁盛記その10

7月7日(日) 風鈴プロジェクト@佐倉城址公園

 午前10時、美術館から城址公園へ屋台の搬入開始。
巨大な入道雲が公園を見下ろす。

 「オニイサン、いつになったら始まるの?アタシ、1番にお願いね!」
城址公園に着くと小学生くらいの女の子が2人かけよって来た。昨日、風鈴が完売した後、閉店間際にやってきて残念がっていた女の子たちだ。
「ゴメンゴメン、もうすぐ始まるから待ってて。どんな絵を描くか考えておいてね。」

 そういうわけで今日も慌しく始まった。

 屋台を設置したのは城址公園のちょうど真ん中あたり。
歴史民俗博物館からの道と、本丸跡からの道、植物苑からの道、菖蒲園からの道とが交わるところだ。その交差点にある大きな木の下で風鈴屋台はオープンした。前方には蓮が水面に広がる姥が池、左手には通称佐倉のトマソン、12階段が鎮座する。
城址公園が持つ場所の力を十分に生かしながら、さて今日はどんな一日になりますか。

 「今日はみなさんに風鈴の絵付けをしてもらいます。それとともに、忘れていけないのは耳を澄ますということです。ここに10枚の音のエクセサイズと呼ばれるカードがあります。まず、このなかから好きなものを選んでこたえてみて下さい。ひとりでじっくり考えるのもいいし、おしゃべりしながらみんなで考えるのも面白いですよ!」
風鈴屋のアンチャン昨日にもまして、はりきって声をあげる。

 音のエクセサイズは簡単なようで、その実よく考えないといけない質問が並ぶ。
「『今朝、一番初めに聞いた音は』かぁ。何聞いた?」
「小鳥のさえずり、なんてキレイなんだけどなぁ。」
「あぁ、ダメだわ。ワタシ、トラックが走る音。」
「ワタシ、妹のいびき―。」
各人各様の会話が重ねられていく。どんな会話がかわされていたか、すべて聞いていたわけではないが、若いカップルが木陰に腰かけて静かに言葉をかわすさまなどなかなかよかった。

 音のエクセサイズが済むと風鈴の絵付けに入っていく。
「絵付けのコツはですねぇ、絵具はなるべく水を使わないで原色のまま塗るのがイイですよ。色がハッキリ出ますからね。」
「これは、一度塗っても消せるんですか?」
「ハイ。濡れたタオルで拭き取ればすぐに消えます。だから、外側に下描きをしておいてそれを内側からなぞるってのも手ですな。外に描いたのは後で消せばいいんでねっ。」
「あぁ、なるほど。」
やはり絵付けとなるとみなさん真剣そのものである。夏の砂浜を描く男子中学生。
「キミ、上手いなぁ!」
「いやぁ、そうでもないっすよ。」
水着のオネーサンを描くのも忘れていない。
「アンタ、ナニ描いてんのよ!」
ちゃちゃを入れる女子中学生。
屋台に座っているとどうしても隣のひとが気になる。すぐ隣や向かい合って座っているわけだからつい言葉をかわしたくなる。見知らぬひと同士でもちょっとした会話が生まれる。「ちょっとその色取ってもらえますか。」「ハイどうぞ。あぁ、イイ色お使いになりますね。」といった具合に。屋台という空間のなせるわざだ。

 開店時は慌しかったが、午後からはゆったりとした時間が流れる。
風鈴が完成すると、風鈴を手に記念撮影。このときのみなさんの表情が実にいい。自分じしんの手で自分の作品をつくり上げた喜びで溢れている。
それは、ひとり部屋にこもってつくったのではなく、多数のひととともに時間と場を共有しながら、しかも城址公園という特別な場でつくったことが大きい。さまざまな意思や作用が働いてひとつの作品ができあがったのだと思う。その風鈴がこれからの生活のなかでどんなふうに息づいていくのだろう。美術館に返信していただく「風鈴エクセサイズ」が楽しみだ。

 今日も風鈴は完売した。
チラシを見ていらした方も、偶然見つけて参加された方もいた。また、参加はしないけれど覗いていかれる方や遠くから眺めている方も多数あった。犬の散歩をさせるオジサンや、涼みにいらした年配のご夫婦。かつてIFSのメンバーだった方もお子さんをつれてみえた。
年齢とか美術が好きかどうかなどは関係なくいろんなひとがやって来て楽しんでいった。そんな日曜の昼下がりだった。

風鈴プロジェクト@佐倉城址公園の様子はこちらでもご覧いただけます。