Google アドワーズとアドセンスがネット広告を変えた |
私個人のWebサイトに Googleのインターネット広告として注目されているアドセンス(AdSense)を 平成18年6月
から試しに導入してみました。 このページでは グーグルが牽引する検索エンジンによる「キーワード広告」が 既存のネット広告にどういう影響 を与えているかを アドワーズ(AdWords)とアドセンス(AdSense)を中心に 考察します。 1。ネット広告を激変させたロングテール型ビジネスモデル マイクロソフトのWindows95が1995年末に登場してから 早くも10年余り経ち その間に パソコンが急速に 普及すると共に インターネットの世界も Web1.0からWeb2.0に 大きく進化しました。 「ウェブ2.0」とは インターネットの世界が 2005年央頃から 構造的に進化(パソコンソフトでいうバージョン アップ)したことを意味し その要因として (1)インターネットの「使い方」の変化と (2)インターネットを取り巻く 「技術」の進歩 の二つがあります。 インターネットの「使い方」の変化とは 1998年に 従来にはなかった高性能のロボット型検索エンジンGoogle が登場したことにより インターネットの主たる利用方法が ポータルサイト経由ではなく 検索エンジンを使って 直接お目当てのホームページへとたどる(即ち 情報を探す)方法が一般的になったことです。 インターネット を取り巻く「技術」の進歩とは ブロードバンド等のIT技術革新により インターネットを利用するインフラコストが 激減し Web上の情報とWebの参加者が急増する中で Googleが牽引する検索エンジンの重要性が増し ネットの中心的存在になったことです。 インターネットの世界がWeb2.0に進化したことを 最も端的に示すのが 「ロングテール現象」です。 ロングテール(Long Tail=長いしっぽ)現象とは 少数の上位で全体の大半を占めるという「パレートの法則」に 対するアンチテーゼであり 2:8の8の要素の合計が全体に対して無視できない割合を占めることを意味します。 例えば コンビニなどでは 良く売れている順に20%の商品が総売上の80%を占めます。 扱い商品の売上を大きい 順に並べて棒グラフにすると 売れ筋の商品がアタマとなり 死に筋のニッチ商品は長い尾(ロングテール)の模様 になります。 これは 「マーケティング理論」として経験的に知られており 商品を並べるスペースに限りがあるので 売れ筋 である上位20%(恐竜をイメージしたアタマ)の商品在庫を中心に販売し 下位80%(しっぽ)の商品は在庫しない というのが 商売の鉄則となっています。 しかしながら Webを使ったネットビジネスでは 置ける商品の種類を 限る必要はなく 下位80%(長いしっぽ)に当たる「死に筋」のニッチ商品を合計した売上が 「売れ筋」である 上位20%(アタマ)の売上を上回ることも可能となります。 Web2.0の時代に成功するビジネスモデルは ロングテール現象を利用した「小さな売上をかき集めるロング テール型のビジネス」であり 多くのネット利用者から共感を得ています。 ロングテール型のビジネスとは 言い換えれば 「塵を集めて山を作る」 ビジネスです。 ネット広告の分野でロングテール型ビジネスを成功させたのが グーグルの「キーワード広告」で 検索語と 広告を連動させる仕組みの「アドワーズ」(検索連動型広告)と ホームページ内に関連性の高い広告を載せる 「アドセンス」(成果報酬型広告)です。 Web1.0時代のネット広告は ポータルサイトの「バナー広告」が中心でしたが Web2.0の時代には クリック レートが低くコスト効果の悪いバナー広告は凋落し 代わって Googleなどの検索エンジンを使った 「キーワード検索結果」に広告を載せる「キーワード広告」である AdWordsやAdSense等 がネット広告の 主流となっています。 Googleは 無料の検索サービスと広告配信を組み合わせることで 検索サービスを提供する企業というより 「バナー広告」に代わる「キーワード広告」をビジネスの柱とする 巨大なネット広告業を確立しました。 2005年度の第3四半期決算を見ると 約16億ドルあるGoogle売上高の中で アドワーズとアドセンスは98.8% を占め 検索サービスのOEM提供など他の収入は 微々たるものとなっています。 アドワーズとアドセンス それぞれの売上比率は ほぼ50%づつを占めている模様です。 2.キーワード検索結果に表示されるGoogleのネット広告
検索結果画面のトップページに 約8つの関連情報サイトが表示されますが 約8つの関連情報サイトの右側 には そのページをスポンサーする広告主のテキスト広告が掲載されており 詳細を知る為にクリックすると 広告主のWebサイトに飛びます。 このテキスト広告が「アドワーズ広告」で 複数のスポンサーがある場合 には 入札された広告料の高い順に 広告を並べ掲載されます。 次に 左側にある検索結果画面トップにある約8つの関連情報サイトを選び クリックしてコンテンツを見ると アドセンス広告の契約をしているWebページには Googleから配信された関連した広告が ページ内に 多くて 3箇所 掲載されます。 これが「アドセンス広告」で サイトのコンテンツに適した広告を 人間ではなく ロボットが瞬時に選び自動的に配信するというのが スゴイところです。 アドセンスは「テキスト広告」であり クリックしなくても 内容がある程度分かるので 「バナー広告」より 効果的です。 「アドワーズ」と「アドセンス」は 直接的か間接的かの違いはあるものの 両方共にキーワード検索を起点に しているので 広義の「キーワード広告」です。 電通の「2005年の日本の広告費」によると 約6兆円の総広告費の中で ネット広告費は2808億円と未だ微々 たるものですが 既にラジオ広告を抜き 2007年には新聞広告を抜く模様です。 ネット広告費2808億円の内 アドワーズを含めた検索連動型広告は590億円 アドセンスを含めた成果報酬型広告(アフィリエイト)は314億円 です。 3.アドワーズ広告の特色 キーワードを選択した検索結果画面に表示される検索連動型広告は ビル・グロスという企業家が 1998年6月に 始めたもので 強力な検索エンジンを持つGoogleが改良し 2000年10月から「アドワーズ」として導入し 大成功 したものです。 アドワーヅは Ad(広告)とWords(言葉)を組み合わせた造語で Google自体が広告媒体に なっています。 ユーザーは もともと 検索したキーワードに関連したものに関心を持っており 検索者と広告が結び易く ターゲットを絞った顧客層にピンポイントで広告が表示されるので キーワード広告は バナー広告よりもクリック レートが高く 効率的な広告です。 通常は 検索結果画面の右寄りスペースに スポンサー(広告主)のテキスト広告が8件まで表示されますが 広告ランクの高いものは 一番目立つ位置である検索結果画面の上部に 2〜3件 表示されます。 広告の 掲載順位は オークション(入札)でキーワードに高値を付けた広告ほど 上位に掲載される仕組みになって います。 広告文に与えられるスペースは タイトルに12文字 本文に17文字の2行 合計46文字に限られます。 Googleの「アドワーズ広告」と競合するものとして 米国ヤフー傘下の「オーバーチュア」があり 市場を二分して います。 4.アドセンス広告の特色 アドセンス(AdSense)は Google独自の技術によって 個々のWebページやブログにあるコンテンツ内容を 自動識別し そのページに最適な広告を選び自動掲載するネット広告として 2003年3月から開始されました。 大きなメディアに対してではなく 無数にある小さな個々人のWebサイトに広告を貼る「アフィリエイト・プログラム」 と呼ばれるもので ロングテールの尻尾に大きな収益源を求めるビジネスです。 Google自体が広告代理店と なり 人手の必要な広告代理店では到底カバーできない無数の広告媒体(個々人の小さなWebサイトやブログ) を集めるもので 広告主は もっとも商品と関連性の高いサイトに広告を掲載できるので 高い広告効果を得る ことができます。 自分のWebサイトにアドセンスを載せるには Googleに申し込み 指定されたHTMLコードを貼り付ける必要が ありますが これは私のように HTMLを知らず ホームページ作成ソフト(IBMのHomePage Builder)を利用して いる者には チョット面倒な作業でした。 各Webページに載せる広告(広告ユニット)は3つまでで 広告媒体を 提供するWebサイトオーナーには 広告がクリックされた回数に応じて 広告料が払われます。 Webサイトオーナーは 自分のアカウントにログインし Webページ表示回数 広告クリック回数 広告収入額 などを 知ることができます。 1回のクリックで貰える広告料は 広告により異なります。 作為的にクリック数を増やす行為は禁止されており 違反と判明すれば 契約を解除されます。 「アドセンス」と競合する 同じ「アフィリエイト・プログラム」(成果報酬型広告)は アマゾン・ドットコムや楽天市場 も採用しています。 楽天市場の場合 全取扱規模の内 30〜40%がアフィリエート経由と言われ ネット通販店に とって アフィリエートは 売上に応じて広告量が発生するので 費用対効果を明確に把握できます。 アドセンスは 基本的に 大きなメディアに対してではなく 無数にある小さな個々人のWebサイトやブログに ネット広告を配信するアフィリエイト広告ですが 大きなメディアに配信するケースも 最近では 増えています。 例えば YOMIURI ONLINE 読売新聞 や asahi.com 朝日新聞 には 個々のニュース記事に対しアドセンス広告 が載せられています。 強盗に入られたという記事に 防犯器具の広告などは 即効性の高いネット広告と 思います。 5.Googleは全能の神になるのか? グーグルの株式時価総額15兆6千億円(2006年1月時点)は インテルを抜き 米国のハイテク業界で2位に あります。 1位・マイクロソフトの時価総額13兆円の未だ半分に過ぎませんが 「いずれグーグルが抜くのでは」 という声が 業界では少なくありません。 巨大な資金を使いグーグルが狙うのは 我々が想像もしなかった「新たなインターネット社会」であり (1)強力な検索サービスと (2)各種のサービス という二つの手段を無料で提供することにより 伝統的な企業の ビジネスモデルを 以下に説明する如く 破壊しつつあります。 Googleという「強力な検索サービス」が現れて以降 さまざまな商品を購入する人々の行動経路は ポータル サイト経由ではなく 検索エンジン経由に変わっています。 多くの人が ポータルサイトを経由せずに 検索エンジンを先ず利用して ショッピングサイトに直接行くようになったので ヤフーの如き総合ポータルサイト や楽天市場の如きショッピングモールは 存在意義を失う恐れがあります。 マイクロソフトも 同様です。 マイクロソフトは インターネットの「こちら側」にあるパソコンで情報処理する為に OS(ウィンドウズ)やオフィスソフトを独占的に販売して 莫大な利益を得ていますが Googleは インターネット の「あちら側(サーバー側)」で全ての情報を処理するので 両社のビジネス手法は全く異なります。 現在 ウェブ が進化したWeb2.0時代においては 情報処理をインターネットの「あちら側」で行なうのが主流(トレンド)であり マイクロソフトにとってグーグルは脅威となっています。 「グーグルニュース」という無料のインターネットサービスも 新聞社の既存ビジネスを 根底から崩壊する 可能性があります。 2002年から開始されたグーグルニュースは 世界中のニュース媒体からさまざまな記事を集め 一括表示する サービスです。 新聞社の記事の見出しだけをコピーして グーグルニュースに掲載し その見出しを 読者がクリックすると もとの新聞社のWebページに自動的に飛ぶ仕掛けになっています。 当初 編集権が 犯されるとして 大手の新聞社が 著作権侵害を理由に訴えましたが 結局はGoogleの軍門に下り 現在では 各社とも ニュースをグーグルに提供しています。 グーグルニュースから各社の記事を拾い読み できるので 朝日 読売 日経など 各社のWebサイトを個別に開き 記事を探す必要はなく たいへん便利です。 その特色は 人間ではなく ロボットが自動的に編集する点にあり 人間に編集されたニュースのように 特定の価値観を読者に押し付けることはないので 広く読者に受け入れられつつあります。 グーグルニュースは 新聞社がポータルサイトから得ているバナー広告収入を損ねるだけでなく 誰もが インターネットで新聞記事を只で読み 新聞を購読しなくなる風潮を助長するので 新聞社の経営そのものを 難しくしています。 結論として Googleの本質を一言でまとめるなら 各種の無料サービスとネット広告を結び付けて得た巨大な 利益で 「検索エンジン」「グーグルニュース」「グーグマップ」「Gメール」「ブックサーチ」などの各種サービスを 無料で提供し 既存のビジネスを破壊することにより その立場を更に強固なものとする ということです。 インタネットが一般化した1995年以降 すべての情報がどんどんインターネットに蓄積され データベース化 される中で グーグルは強力な検索エンジンを駆使して 全てのデータベースを管理しビジネスに利用できる 独裁的な立場にあります。 その行き着く所はどこか? アメリカのビジネス雑誌「BUSINESS2.0」の2006年1月号は グーグルの未来像 として 全てを司る強大な力を予測して 「グーグルは神になる」 と締めくくっています。 グーグルが神になる未来は 人間にとって幸せなのか? 答えは 否と思います。 グーグルが神になるということは ロボットが神になるということであり 特定の人間が意図したアルゴリズム で動くロボットは 危険であり信用できません。 マイクロソフトは 巨大になり過ぎ 色々な弊害を起こして いますが グーグルも巨大になり過ぎることは 決して望ましいことではありません。
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参考文献: 「ウェブ進化論」 梅田望夫著 ちくま新書 「ザ・サーチ グーグルが世界を変えた」 ジョン・バッテル著 日経BP 「Web2.0 Book]」 小川浩・後藤康成著 (株)インプレス・ジャパン 「Googleグーグル・既存のビジネスを破壊する」 佐々木俊尚著 文春新書 「ネット業界 儲けの仕組み」 久我勝利著 翔泳社 「グーグル アドワーズ広告 成功マニュアル」 小山陽子著 インプレス 「ウェブ2.0ビジネス革命」 週間エコノミスト H18.6.6 毎日新聞社 |