ともかく鹿角の人は、人がいいというか、商売が下手だというか、発祥の地と肩
肘張って見たところで、切りタンポの本場は大館にとられたみたいだし、ジブシは
トンブリと名を変えて、比内町に持っていかれたみたいだ。
がそれはそれとして、発祥の地というからには、その由来くらいは知っておかな
ければ、ご先祖さまに申訳ないと思ったが……
20年くらい前であったか、地許の新聞(週刊)鹿角タイムスに切りタンポの由来
をくわしく書いた記事があったが、中味は忘れてしまったので、「鹿角のあゆみ −
昭和44年刊」から、切りタンポの記事を抜出してみる。 切りたんぽ
観光とともに脚光を浴びている郷土料理の中『切りたんぽ』は、元は単なる『た
んぽ』で、杣子(やまご)が山小屋での残り飯を木の枝に握りつけて焼いたものと
いわれ、『味噌つけたんぽ』が本来のものだろう。これを切って鶏鍋(台鍋ともい
う)にし、客に出すようにしたのは、花輪町料理屋一二三(ひふみ)軒(佐藤久助)
と言われる。大正末期の頃である。その後秋田市川反の料理浜の屋主人が、わざわ
ざ花輪にきて、鹿角時報川村薫を説明役に、一二三軒主人からその料理法を伝授さ
れ、秋田市で売出したものである。秋田名物切りたんぽは、花輪が元祖というべき
だろう。ということで、ここらあたりが一応定説というところだろうと思う。ところで 「ジブシ(ギブシとも)」だが、今はトンブリという名で全国(といっても、どこ までだか知らないが)に出荷されている。花輪弁によると、「じぶし=トンブリで 食用」。私達はギブシといったような気もする。辞典を見てもトンブリはない。ホ ウキの実の項にあった。 ほうきぐさ(箒草) = アカザ科の一年草。果実は食用…… という次第だが、ジブシがなんでトンブリか、が出てこない。そこでなくもとも と、と「秋田のことば」でさがしてみたら、あった。とんぶり、ホウキグサの実、 として、 「口の中に入れ、噛みつぶしたときの食感を『トプリ』ととらえたことによる命 名であろう。他に『ぎンぶし』『じンぶし』<鹿角市>があるが、これは『地膚子』 という漢語による。」 ということで、鹿角の「ジブシ」は中国直伝で、トンブリの本場だ、と一人意を強 くしているが、それにしても、いいところはみんなよそにとられてしまって残念だ。 |
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