50 鎮魂祭
 
                         参考:堀書店発行「神道辞典」
 
〈鎮魂祭ミタマシヅメノマツリ・タマシヅメノマツリ〉
 大嘗祭・新嘗祭の前日、身心の安鎮のために行われる祭である。旧事紀の伝えるところ
によると、神武天皇のとき、宇麻志麻治命ウマシマヂノミコトが、天皇・皇后の身心安鎮のため
に、十種神宝トクサノカムダカラを用い、呪文ジュモンを唱えて祈請したが、これが鎮魂祭の起原で
あると云う。物部氏の伝襲したところであり、従ってその氏神である大和の石上イソノカミ神
宮にその起原的行法と云うものが伝えられている。大宝神祇令では、仲冬寅日に鎮魂祭
が規定せられており、また同職員令、神祇伯の職掌中の鎮魂の義解に、「謂ふ、魂は、
安ずるなり。人の陽気を魂といふ。魂は運なり。言ふこころは遊離の運魂を招いて、身
体の中府に鎮まらしむ。故に鎮魂といふなり。」とある。鎮魂の行事は、宮中の御巫
ミカンコ等の掌るところで、いわゆる神祇官(西院)の八神(神産日神以下、延喜式四時祭
・神名帳)は、即ち鎮魂のための守護神である。現今、宮中で鎮魂の儀が行われている。
[詳細探訪(宮中八神)] [詳細探訪(十種祓詞・ひふみ祓詞)]
リンク    〈因みに〉   △招魂タマフリ  招魂とは、生者の遊離魂を招じ魂める、いわゆる鎮魂のことである。日本書紀天武天 皇十四年十一月丙寅の条に、「是日為天皇招魂之」とあり、招魂をミタマフリと訓んで いる。大宝神祇令では中冬の寅の日に鎮魂祭を行う定めであり、この条と一致する。鎮 魂祭には二つの動作、つまり出離の魂を再び本体に復帰せしめんとするミタマシズメと、 静止沈滞の状態にある魂を振作活動せしめようとするミタマフリとがあり、この両者を 統一した儀式が鎮魂の祭である。古くより宮中において行われた重要な神事であり、今 なお古儀を伝承している。   △たまつめむすびのかみ  玉留魂神(玉積産日神(延喜式)・魂留魂神(延)・魂留産霊神(風土記))は、宮中 の神三十六座中の一神で、神祇官西院の御巫ミカンコの祭る神八座、所謂八神殿祭神の一神 である。神武天皇即位の初め、皇天二祖(天照大神・高皇産霊尊)の神勅に従って神籬 ヒモロギを立てて奉斎し、後に御巫によって神祇官八神の一柱として奉斎された神(古語拾 遺)とされる。遊離魂を身体に再び鎮める鎮魂の神である。天神が饒速日命ニギハヤヒノミコト に授けられた十種神宝トクサノカムダカラの中の死反玉シカヘシノタマの霊能を所有している神(旧事紀 )である。霊魂の去った人に再び魂を呼び戻し鎮まらせる徳を有する神である。従って 鎮魂祭の中心となる神であろう。
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