1999年10月上旬の日記

前半は新型iMac(欲しい!)、後半は大阪遠征(救急車に乗ったよ)の10日間でした。いまのiMacを中古屋さんに売っぱらって新しいのを買おうかなって、マジに検討しています。それから、大阪でお会いしたみなさま、どうもありがとうございました。今後もよろしくお願いしますね。(1999年10月11日記)

10月1日(金) 大学が9月入学になればいいのに。
[更新情報]銀河の果てまで 汎用掲示板を設置した。
[日記]同僚といろんな話をしているうちに、以前からの持論を披露する展開になった。よく練った考えというよりは思いつきに近いんだけど、大学は(7月に入試をおこなって)9月に新学年を迎えることになればいいなという意見だ。理由の一部は以下の通り。
(1)構造不況の予備校業界サイドの利点としては、3月に高校を卒業し大学進学を考えている生徒たちを、ほぼ全入に近い形で4月から7月までの4ヵ月間、抱え込むことができる。
(2)暑くて湿気の高い8月にがつがつ勉強する(予備校講師はがつがつ仕事する)必要がなくなる。8月は入試に合格して大学に入るまでの、文字通り「夏休み」になるわけだ。同時に入試直前だから正月もまともに祝えないということもなくなるはず。
(3)高3になると「高校生活」を営むというよりは受験準備に終始する現状を変えることができる。
大学9月入学の案にはいろいろ欠点もあるのかもしれないが、少なくとも(いま話題になっている)2001年からデノミを実施するという案よりはいいと思うんだけどな。いかがでしょうか。
[BGM]The African Jazz Pioneers,"Live at the Motreux Jazz Festival." 南アフリカは日本と並ぶジャズ大国だ。しかも独自の温かみのあるサウンドからは(ジャズがスノッブな趣味となってしまったアメリカや日本とは違い)大衆に根ざした強さを感じ取れる。 古くから活動しているThe African Jazz Pioneersの91年のライブを収録したこのアルバムは、そういった南アフリカのジャズの典型例と言えるだろう。
[読書記録]井上京子『もし「右」や「左」がなかったら 言語人類学への招待』(大修館書店)。それぞれの言語が森羅万象を切り取って表現する、その独自性や背後にある普遍性を研究するのが言語人類学。マックス・プランク研究所でさまざまな言語の空間表現についてのフィールドワークに従事していた著者の体験に基づいた本書は、「左右」を表す語彙を持たない言語を始め、興味深い具体例が満載。著者はもちろん女子プロレスラーではなくて言語人類学者(慶應義塾大学講師)。ちなみに、インド音楽の研究者に井上貴子さんという方もいらっしゃいます(笑)。

10月2日(土) 第69回「TSとTGを支える人々の会」催しに参加した。
[日記]「TSとTGを支える人々の会(TNJ)」の催しに参加するために、午後5時に会場(今回は当事者のみの非公開の催しなので場所は明らかにできない)に到着。しばらく会場近くの書店で時間をつぶす。5時40分にレーザー脱毛帰りのTくん(もと芹沢香澄)と合流。開始時間まで30分しかないので会場内に入る。配布予定のレジュメをホッチキスでとめたり机を並べたりする作業がまだ終わっていないというので、Tくんと一緒に急遽お手伝いをすることに。定刻よりやや遅れて講演会が始まる。
今回のテーマは「セクシュアルマイノリティが家族をつくる権利」。おふたりのFTM(用語についてを参照)の方と、おひとりのMTF(用語についてを参照)の方の当事者としての体験談でスタートする。棚村政行さん(早稲田大学法学部教授)は、同性愛者・性転換者の婚姻について欧米諸国の法的状況と日本の現状について話してくださった。この内容に関するくわしいことは、棚村政行「同性愛者間の婚姻は法的に可能か」(婚姻法改正を考える会『ゼミナール婚姻法改正』日本評論社)に書かれている。予定の時間を大幅に超過したため、斎藤有紀子さん(明治大学非常勤講師)のお話はトランスジェンダー(用語についてを参照)が家庭を持つことについての理念的なものが中心だった(斎藤さんからの情報発信と言うよりはむしろ、斎藤さんの方が当事者の考えをお知りになりたいという感じだった)。
テーマが大きくて漠然としすぎているため、今回の講演会の内容は前回の催しのテーマだった戸籍の性別訂正や名の変更なども含めて多岐に及び、少々散漫な感じがした。銀河自身、自分の子供が欲しいとか家庭を持ちたいと思ったことなど一度もないせいか、自分自身の問題としてとらえるというよりも、大学の講義かなにかに出席してお勉強させてもらったという感触だった。
ちょっと不思議に思ったのは、自分の子供が欲しいので(本格的にホルモン療法を始める前に)精子の凍結保存を試みているという当事者のおひとり(MTF)のお話。銀河は自分の精子(男性性の象徴)がアクティヴに活動するということ自体に嫌悪を抱いていたので(だからホルモン療法の結果いちばんうれしかったのは、生殖能力を失ったことかもしれない)、自分の精子が卵と結合して子供が産まれる可能性を持つということ(つまりは「父親」になるかもしれないということ)には不快感しか抱けない。MTFTS(用語についてを参照)がアクティヴな精子を保存しておきたいと思うということ自体がどうもピンと来ないのだ。結局、TSだのTG(用語についてを参照)だのと便宜上ひとまとまりにくくられているけど、ひとりひとりの置かれている状況や考えはそれぞれ別々なんだなと、当たり前のことを考えるしかなかった。
例によって二次会にTくんともども参加。ちょっとおしゃれな中華料理店。見覚えがある店だなと思っていたら、2年以上前に「エリザベス」(アマチュア女装ルーム)の外出イベント(スタッフの引率のもと、女装してみんなで外歩きをするというイベント)で来たことのある店だということを思い出した。そのことを言うと、みんなに妙に受けてしまった(どういう意味で受けたかはご想像通り)。料理もおいしかったし、とても楽しい時間だった。レーザー脱毛や整形手術の具体的な情報などが飛び交う。あるお医者さんがGID(用語についてを参照)の当事者に、「TSとTGを支える人々の会」の二次会(催しの方じゃなくてね)に行きなさいというアドバイスをなさった(笑)という話を聞いたが、確かに催し自体よりも二次会の方が自分にとっていま必要な情報を効率的に集めることができる。
11時に散会。銀河は新宿へ向かう。今日の夕方、久しぶりに渡辺洋美さん
(Web上ではさすけさん。ネイティヴの女性でハシケンのホームページの主宰者)から電話をいただいて、「ジュネ」(いわゆる女装スナック)で会おうということになっていたからだ(洋美さんの彼氏を紹介してくださるということだった)。もちろん「ジュネ」では長*さん(銀河の彼氏)も待っていてくれる。洋美さんの彼氏は体格がよくて髪の毛も五分狩り(今日これからスキンヘッドにするらしい)で、外見はちょっと怖そうだったけど、すごくやさしい人。洋美さんとラヴラヴなのが素敵だ(銀河が他人のことは言えないけど)。2時前に洋美さんたちが帰ったあとは、吉岡純子さんとホルモン療法用語についてを参照)のこと、自助グループのこと、整形手術のこと、ミシェル・フーコー(フランスの哲学者)のことなどで話し込む。有意義だった。久しぶりに南麻衣子さんにもお会いできた。相変わらずお元気そうでなによりだ。
店内がカラオケで騒がしくなってきたので、長*さんと2人で「たかみ」へ移動。ここでは何ヵ月かぶりに世利菜さんやマッキーこと魔季子さんとお会いする。初対面の年輩の女装の方に最後までネイティヴの女性だと思っていただけたのがなによりもうれしかった。閉店後はママの村田高美さん、スタッフの
中澤清美ちゃん、長*さんと4人で「シエン」(喫茶店)でお茶を飲む。

10月3日(日) 疲れやすい銀河を心配してくれる長*さん。
[日記]疲れがたまっていたせいか、帰宅した朝8時から夜12時まで(途中数回目が覚めたけど)延々と眠りつづけた。何回か長*さんから電話が入ったけれど、気がつかなかった。夜8時頃、一度起き出して電話をする。銀河の体調をものすごく心配してくれていた。申し訳ない。
長*さんは疲れやすい銀河を本当に心配してくれている。「どうしてもホルモンをやらなきゃいけないのか、体にいいわけないんだから」っていつも言ってくれる(そんな心配をしてくれる男の人は長*さんがはじめてだ)。「ホルモンをやっていようがいまいが、銀河は女なんだし、俺にとっていちばん大切なんだから」って。涙が出そうになる。
なぜホルモンをやるのかってこと、なぜSRS(用語についてを参照)を望んでいるのかってこと、銀河は女装をする人ではないんだってこと、女装スナックにはあまり行きたくない理由。銀河の言葉が足らなくても、長*さんは全部理解して飲み込んでくれる。その上で「ホルモンをやろうとやるまいと、手術を受けようと受けまいと、お化粧をしていようがいまいが、銀河は女なんだし、俺にとっていちばん大切なんだから」って言ってくれる。うれしいし、感謝している。
銀河が長*さんのためになにをしてあげられるのかは、わからない。でも、銀河が長*さんに守られている以上に、長*さんのことを守っていてあげたいと思う。
[BGM]Duminsani Maraire & Ephat Mujuru,"Shona Spirit." ジンバブエのショナ人はンビラ(mbira)という民俗楽器の演奏で有名だ(CDもたくさん出ている)。木の板に大小さまざまな鉄片が取り付けられていて、それを両手の親指ではじくことによってメロディーを奏でる楽器で、親指ピアノという名でも知られている。Duminsani MaraireとEphat Mujuruはアメリカの大学に招かれてショナ文化についての講義をおこなったり、ンビラ演奏のコンサートを開いたりしている人たち。伝統に深く根差しながらも、フィールドレコーディングとは明らかに違う現代的な感覚。疲れているときのヒーリングとしては最適だ。

10月4日(月) いよいよ明日深夜、新型iMac発表か。
[日記]昨日たくさん眠ったのに、丸一日仕事をしたらまた疲れてしまった。なんだかダルいよ。2週続けて週末に夜遊びをしてしまったのが最大の原因だと思うけど。
9月30日の日記にも書いたんだけれど、Apple Computerは、10月5日(日本時間10月6日午前2時)にSteve Jobsによるspecial Apple eventをWeb上でQuickTime放送すると発表している(ここを参照)。Mac系サイトでは、ここで新型iMacが発表されるのはほぼ確実だという情報が飛び交っていて大変なことになっている。
情報をまとめておこう。噂では、それぞれgood, better, bestと名づけられた3種類の機種が発表され、goodはブルーベリーだけ、betterは現行のiMacと同じ5色、bestはPower Mac G4と同じグラファイトが用意されるという。一部に出まわった写真によると、大きさやデザインはあまり変わらないが、トランスルーセントというよりは透け透けのシースルー。
とにかく、明日深夜はリアルタイムで放送を見たいから、今日のうちに充分に睡眠をとっておくことにしよう。
[BGM]中山千夏『おりじなる・ふぁーすと・あるばむ』。作家で元参議院議員でフェミニズム系の運動家というイメージしか持っていない人も多いようだけど、千夏ちゃんはそもそも(安達由美なんて足もとにも及ばない)名子役出身の(広末涼子なんて足もとにも及ばない)売れっ子アイドルだったんだ。特に68年から司会のひとりとして参加した日テレの「青島幸男のワイドショー」(青島幸男前東京都知事と中山千夏と八代英太新郵政大臣が司会という、今にして思えばすごい番組)での千夏ちゃん(当時20歳)はバツグンに冴えていたし(八代がPTA的良識派の感想を述べ、千夏ちゃんが鋭く突っ込み、青島がまとめたり落としたりするという役まわり)、70年の朝日放送のドラマ「お荷物小荷物」は千夏ちゃんがしょっちゅう役を離れヴァラエティー番組化するという、当時としてはアヴァンギャルドな作りでスリリングだった。このCDブック(本屋さんで売っている)は千夏ちゃんの初期(69年から71年まで)の曲(「あなたの心に」とか「とまらない汽車」ってすごくヒットしたんだよ)を22曲集めたもの。透明感がある声とパンチのあるうたい方が魅力的。「ひょっこりひょうたん島」とか「ドロロンえん魔くん」の主題歌をうたっているから、聞いたことはあるよね。
[読書記録]佐藤朋子『アリス達のマッキントッシュ』(企画室ゆう)。授業の空き時間の時間つぶしのつもりで買ったんだけど、やっぱり時間つぶし以外のなにものでもなかった。30人のMacユーザーの女性へのインタビューと写真。コンセプトはいいんだけど、筆者による『不思議の国のアリス』についての大量のエッセイがつまらないし(ひとりよがりって感じだ)、インタビューに形を借りて自分の思いを吐き出してばかりいるのがねえ。インタビューされている人たちの方をもっと前面に出すべきだよ。

10月5日(火) 栄養士の先生の講演を聴きにいった。
[日記]長*さんのお仕事(薬屋の社長さん)の関係で、とある場所へ栄養士の先生の講演を聴きにいった。「食物繊維とダイエット」というテーマにも興味があったしね。
で、本当にビックリしたんだけど、この先生(30代の女性)、とにかく話が上手。2時間の講演は、すっかり話に引き込まれているうちにあっという間に終わった。銀河は予備校講師っていう仕事柄よくわかるんだけど、2時間ものあいだずっと聞き手を飽きさせないで引きつけておくのって、とてもむずかしい。プロだよね。ホントに感心した。
感心しているだけじゃなくって、この先生がなぜ話が上手なのか、ちゃんと観察して答えを出しておいた。答えを出すだけじゃなくて、それをもとに自分の授業を点検し直した。職業病のようなものだと思うけど、人の講演を聴くときって、内容以上にその人のパフォーマンスが人を引きつける力があるかどうかってことが気になる。どこがよくてどこがダメなのかを分析したくなる(「TSとTGを支える人々の会(TNJ)」の催しのときもいつもそうなんだよね)。そこらへんのことについてはまたいずれ。
ところで、標準体重の計算のしかたっていうのを教えてもらった。なんでも日本肥満学会(すごい名前!)という学会があって、そこが定めた基準なのだそうだ。それによると、身長(メートル)の2乗×22がその人の標準体重。たとえば銀河の場合は身長157センチだから、1.57の2乗×22で、54.2278キログラムが標準体重。うーん、困った。でもって、身長(メートル)の2乗×26を越えると肥満なんだって。これも銀河の場合、1.57の2乗×26で、64.0874キログラム以上なら肥満。およよ。すごくまずい。ホルモン療法を始めたときに53キロだった体重がいまでは66キロだもんなあ(なぜかすぐにお腹が減るようになったの)。ちなみに体脂肪は、男性の場合20パーセント以下、女性の場合は25パーセント以下じゃないといけないのだそうだ。男性で25パーセント、女性で30パーセントを越えると脂肪過多。銀河は25パーセント。MTF(用語についてを参照)の場合は女性の方の基準値で考えるというのでよいのでしょうか(だったらギリギリ合格だ)。とにかく、マジにダイエットを決意した。まずは、夜中にアイスクリームを食べるのはやめよう。
ちなみに、健康的で効果的なダイエットをしたいのだったら、1ヵ月に0.5キロから1キロの減量が目安なんだって。最大でも2キロまで。それ以上の減量は必ずリバウンドするし肌も荒れるし健康を損なうから(医師による指導がないかぎり)絶対にダメだってさ。
[BGM]The Rolling Stones,"Exile On Main St." 72年の発表。個人的にはストーンズの最高作だと思っている。ブラックミュージック(ブルースからレゲエまで)のエッセンスを吸収して自分たち流の音楽に作りあげていく力は、数多いロックバンドのなかでもやはり抜きんでている(この時点ですでにレゲエに目をつけているのはさすが)。なにも知らなくても楽しめるけど、いろんな音楽を体験して耳が肥えていれば、さらにおもしろく聞ける。

10月6日(水) 新型iMacの発表をライヴで観る。
[日記]日本時間10月6日午前2時。Steve Jobsによるspecial Apple eventのQuickTime放送。事前のMac系サイトで新型iMacの発表が確実だと噂されていたので、10月5日の午後8時ごろから仮眠をとり生放送に備える。
午前1時に目を覚ます。混雑を避けるために30分前には接続して待っている。2時を少しまわって開始。Steve Jobsが登場するとすごい拍手喝采。冒頭で先日(10月3日)死去した盛田昭夫氏(ソニーの名誉会長)を追悼するあいさつがおこなわれたのには感動した(「コンシューマー向けエレクトロニクス製品開発のパイオニア」というような言葉だった、たぶん)。まずはMac Os 9の紹介。Steve Jobsじゃない人(だれだかわからない)が解説役。ここらへんは少したいくつしてウトウトする。
さて再びSteve Jobsにスポットライトがあたる。いよいよ新型iMacの発表。だけど、スペックや特長が発表されるだけで、現物はなかなか出てこない。さんざん待たせてタメを作っておいてから、Steve Jobsの"Say hello to new iMac"の合図で(ここがかっこよかった)ブルーベリーの新型iMacが登場。事前情報通り、トランスルーセントというよりも透け透けのシースルー。Steve Jobsが背後に手をまわしたりして透け透けを強調するのが印象的だった。
ところがここで残念な事態が発生。いきなり接続が切れて、ブラウザー(IE)が「予期せぬ理由で終了」してしまったのだ。もう一度接続を試みるが、もうつながらない。こういうときは絶対につながらないから、あっさりあきらめて再び仮眠。5時過ぎに起きてだして、メールマガジンやApple Computerのホームページで発表内容を確認する。銀河が見たのは下位モデル(ブルーベリーだけ)。あのあと、DVD-ROMを装備した標準モデル(5色)と上位モデル(G4と同じグラファイト)の発表があったらしい。ライヴで見たかったなあ。でも全部、事前の情報漏れ通りだった。
新型iMac、欲しいなあ(G4もiBookも欲しいけど)。そのお金で新型iMacを買うか、それとも整形手術を受けるかって言われたら、整形手術の方を選ぶけどね(笑)。
P.S.  銀河は経済に疎いからよくわからないので、ぜひくわしい人に教えてもらいたいんだけど、2000円札の発行って日本経済にとってなにかいいことがあるのかな。まあ自動販売機とかを新しいやつに取り替えないといけないから、そういう関係の業者はおこぼれにあずかれるんだろうけどね。どうせだったら5万円札の方が便利なのに。
[BGM]"ETHIOPIAN GROOVE The Golden Seventies." アフリカの国のなかでもエチオピアといえば、東京オリンピックのマラソンのアベベ選手以来、日本人には馴染みの深い国だ。でもエチオピアのポピュラー音楽のことを知ってる人なんてほとんどいないでしょうね。実際、ワールドミュージックに強いCDショップでも、エチオピアの音楽なんてめったに見かけない。エチオピアの音楽は大好きなので、見かければどういう内容であれ必ず買うことにしてるんだけど、それでもCDを10枚程度、カセットテープを30本程度所有しているだけだ。なんでもエチオピアの首都アジスアベバでは日本の演歌(特に北島三郎や細川たかし)が人気があって、お店やタクシーのなかでよくかかっているそうだ。で、エチオピア人はそれを自分たちの国の音楽と特に区別せずに聴いているらしい(行ったことのある人から聞いた話)。というわけで、エチオピアのポピュラー音楽ってひとことで言えば、演歌。エレキギターとサックスを前面に押し出したファンキーなバンドをバックにジェームズ・ブラウンがうたうコブシまわしの強烈な演歌って感じかな。この盤はコンピレイション。有名なのは現在アメリカで活動中の女性歌手Aster Awekeぐらいだけどね。

10月7日(木) 追悼アマリア・ロドリゲス。
[日記]今日の朝刊各紙にアマリア・ロドリゲスの訃報が掲載されていた。死因は不明。79歳だった(ここを参照)。
ポルトガルにファドというポピュラー音楽がある。リスボンの下層階級に支持されてきたポルトガルを代表する大衆歌謡。独特の哀愁(ポルトガル語では「サウダーデ」という)をギター型の楽器であるギターラおよびヴィオーラの伴奏で表現する。はげしく上下するメロディーが印象的だ。と説明しても、聴いたことのない人にはイメージがしにくいと思う。近似のものとして、昔はやった久保田早紀の『異邦人』を思い浮かべてほしい。あの曲がはやっていたころ銀河は一聴して「あれっ、ファドじゃん」って思った。あとで久保田早紀本人のインタビューを読んだら、アマリア・ロドリゲスが好きでファドのような曲を書いてみたかったと発言していたので、なるほどと納得した。
アマリアはそのファドの第一人者だった。というか、2番目以下を大きく引き離して独走していた。ファドというわくのなかだけでなく、古今東西すべての大衆歌謡の歌手のなかで、どんなに控えめに評価してもベストテンには入る大歌手だった。広い音域。みごとにコントロールの効いた完璧な節まわし。艶やかな声自体の魅力。シャンソンにたとえればエディット・ピアフのような存在だったと言ってもよいだろう。緊張感あふれる歌唱をその特徴にしていたこともあって、晩年はさすがに衰えが隠せなかった。それでも気力をふりしぼってうたいきるその姿にはすがすがしい感動を覚えた。1990年のアルバム"Obsessao"(邦題『ファドとの半世紀』)はそんな晩年のアマリアを記録した感動的な傑作だが、70歳のアマリアの老いた顔をアップでとらえたジャケット写真には強いショックを受けたものだった。ことさらに自分の老いを隠すことをしない毅然とした態度。自分もそうありたいと思ったものだった。
79歳。堂々たる人生をまっとうしたといえるだろう。今日は、うちにあるアマリアの30枚ほどのCDを代わる代わるかけながら、アマリアの残した偉大な音楽の世界にひたっていた。
[BGM]Amalia Rodrigues,"Com Que Voz." アマリアがもっとも油の乗り切っていた1974年(54歳)の名作。30代のころのリスボンのカフェ・ルーゾやパリのオランピア劇場でのライヴアルバムをアマリアの最高傑作とするファンも多いし、その意見には十分に納得できるのだが、個人的には、若いころのピリピリとした緊張感にあふれる作品よりも、70年前後の緊張感は失わないまま温かみを増した作品群が好きだ。ここにあるのはもっとも理想的な大衆歌謡の姿。たとえどんな音楽のファンであっても、アマリアの歌声に心を動かされすにいられないだろう。

10月8日(金) 体調不良の一日。
[日記]昨日(木曜日)の授業中から体がだるくてしかたがなかったが、今日はのども痛いし咳も出て、最悪のコンディション。昼過ぎに病院に行き、午後はずっと休養。
すぐに体がだるくなったり体調をくずしやすいのには、女性ホルモンの影響もあるのだろう。そのことについてのご忠告はありがたく承るが、だからと言ってホルモンをやめるつもりなど毛頭ない。9月9日の日記にも書いたけど、トランス(用語についてを参照)できないくらいだったら「死んだっていい」んだもの。いま死んだって後悔なんかしないよ。だって自分を偽っていないんだから。この年齢まで生きてきたら、あとの人生は付録みたいなもの。SRS(用語についてを参照)を当面の目標にして、やれるところまでやってみるつもりだ。
[BGM]Nusrat Fateh Ali Khan,"Swan Song." 昨日の日記で、アマリア・ロドリゲスは古今東西すべての大衆歌謡の歌手の中でベストテンに入ると書いた。じゃあ、ベストワンはだれか。この質問に答えるのは非常に簡単だ。Nusrat Fateh Ali Khan(ヌスラット・ファテ・アリー・ハーン)以外には考えられないからだ。20世紀の最後に出現し20世紀が終わるのを待たずして亡くなった(1997年没、享年49歳)最高の歌手。それがパキスタンのヌスラットだ。1992年に横浜でおこなわれたワールドミュージックの祭典WOMADにヌスラットが出演したときのことだ(記憶があやふやなので、細部は違っているかもしれない)。全部のステージが終わり、最後にいずれ劣らぬそうそうたる出演者全員がステージ上に集結、全員でジミー・クリフ(ボブ・マーリー以前のレゲエのトップスター)の曲をうたった。ひとりひとりがワンフレーズずつソロをとっていったのだが、ヌスラットの番にきて彼がひと声発した瞬間に、他の歌手たちの存在がすべて吹っ飛んでしまった。スケールが違いすぎる。歌手としてのレベルが違う。そのことはその場にいた観客のほぼ全員が感じたことだろうし、ステージ上の他のミュージシャンたちにも痛いほどわかっていたにちがいない(ヌスラットは他の歌手たちから別格として遇されている様子だった)。とにかくこのWOMADでのできごとには鮮烈な印象を受けたものだった。ヌスラットがやっているのはイスラム教のスーフィズム(神秘主義の一派)の祈りの音楽カッワーリー。イスラム教は音楽を禁止しているのだが、カッワーリーはたぶん唯一の例外。2台のハーモニアム(小型の手動オルガン)とタブラー(打楽器)の伴奏以外は、ソロ歌手とコーラスのコールアンドレスポンスで曲が進んでいく。人間の声こそが最強の楽器だということを思い知らされる音楽だ。ヌスラットは地元パキスタンだけでなく、フランスのオコラやイギリスのリアルワールドといった会社に残した録音で、欧米でも高く評価されていた。晩年のヌスラットはロックやクラブミュージックの要素を大胆に吸収しようとしていたが、死の直前に録音されたこのアルバムで、その試みが大きな実りを結んでいる。ギターやサックスやキーボードやドラムスなどの西洋楽器が加わっているが、それによってさらに伝統性が強化され説得力を増している感じだ。20世紀最後に出現した20世紀最高の歌手の、最後にして最高のアルバム。それがこれだ。
[読書記録]中村とうよう『ポピュラー音楽の世紀』(岩波新書)。とうようさんはここのところ毎月、過去の原稿をまとめて単行本にして発行されているが、これは書き下ろしの新作。とうようさんのポピュラー音楽観の集大成ともいえる内容であり、従来の英米中心のポピュラー音楽観にどっぷりつかりきっている方にはショッキングかもしれない。本書で、とうようさんは、ポピュラー音楽を生んだ原動力は文化衝突だとし、ニューオリンズやキューバやブラジルやインドネシアやスリランカでの同時多発的なポピュラー音楽の誕生から始まるこの100年を、従来の英米中心の見方ではなく、真の意味でグローバルな視座から描いてみせる。そして、本当に生き生きとしたポピュラー音楽は、むしろ中南米やアジアやアフリカにあると結論する。文章もわかりやすいし、新書版で値段も手頃だし、間違いなくいまもっとも刺激的なポピュラー音楽論と言えるので、すべてのポピュラー音楽ファンにぜひ読んでいただきたいと強く願う次第だ。

10月9日(土) 大阪遠征1日目は、意外な人にお会いすることができた。
[日記]お仕事で前日から大阪入りしている長*さんの後を追って、午前11時過ぎのひかりで東京を発つ。連休で普通指定席は超満員。体調も回復していないので、奮発してグリーン車を利用する。
午後2時過ぎに大阪着。3月以来だから半年ぶりだ。軽く食事を済ませ、
スタジオSwitchへ。ここはMTF用語についてを参照)のメイクに関しては日本一のメイクアップ・アーティスト、森田豊子さん(ネイティヴの女性)が主宰するサークル形式のクロスドレッシング用語についてを参照)・ルーム。銀河は以前、とあるアマチュア女装系の雑誌の表紙モデルをつとめたときに森田さんにメイクを担当していただいたことがあり、それ以来、大阪へ遊びに来たときは必ず立ち寄らせていただいている。銀河が到着したときにはまだお客さんはほとんどいなかったが、東京で何度かお会いしたことのあるまりりん(白根真理奈)さんに親切にしていただいた(メイク前だったので最初はだれなのかわからなかった)。そうこうしているうちに、白鳥美香さん、美々さん(座長)、鳥原優子(ゆうりん)さん、島崎詩織さんをはじめ、いつも大阪でお世話になっているみなさんが集結。当初はお世話になった森田さんにご挨拶をするだけのつもりだったのだが、せっかくだからいったんメイクを落とし、森田さんにメイクをしていただく。いつもながら素敵な顔に仕上がったので(銀河の顔がいつも素敵って意味じゃなくって、森田さんのメイクがいつも素敵って意味ね、念のため)、Switch内にあるスタジオで白鳥美香さんに写真を撮っていただいた(このときの写真をこのホームページで使うつもりです)。
長*さんからお仕事が終わったという連絡が入ったので、7時ごろ宿泊先のホテルへ。しばらく長*さんとベタベタしながら過ごしてから、梅田へ出る。居酒屋でゆっくり食事を済ませ、11時ごろに
MAGNeTへ。MAGNeTは、お友だちの幕戸成子ちゃん(ママ)、静菜ちゃん(チーママ)、藤村典子ちゃん(ナンバーワン・ホステス)の3人がやっているトランス用語についてを参照)系のおしゃれなバー。今日も超満員だった。長*さんと銀河がカウンター席につこうとすると、グループで来ていたお客さんのうちのおひとりが「銀河さんですよね。椎名ももこです」と声をかけてくださった。えっ、ももこさん。こんなところでお会いできるなんて(ももこさんも東京在住)。予想もしていなかっただけに、しばし絶句。ももこさんは以前、悪意のあるいやがらせのために一時期ご自分のホームページを閉鎖されていたことがあり(6月13日の日記を参照)、そのときに少しだけお力になってさしあげたことがあったのだが、それ以来よくメールを交換する仲になっていた。一度直接お会いしたかったのだが、なかなかその機会がなく今日に至ったのだ。本当にお会いできてよかった。はじめて会ったももこさんの印象は、ちょっとMっ気があって(爆笑。あの場にいた人だけの秘密ね)、甘えんぼ屋さんって感じかな。銀河に会えたことを喜んでくださって涙ぐんでいらっしゃったのが印象的だった(銀河ごときに会えたくらいで泣かなくていいんだよ。これからも仲よくしてね)。ももこさんのグループはインターネットで知り合ったお仲間のみなさんだったようで、銀河もときどきホームページを覗きに行っていた北瀬香月さん(この方とも初対面)もいらっしゃった。他のお店を経由してゆうりんも登場。長*さんはゆうりんが好きなので、うれしそうだった。3月にお会いしたときに仲よくしていただいた鬼龍院姫乃(鬼姫)さんとも再会する。
午前2時を過ぎたあたりから、長*さんの様子が変。お酒もほとんど飲んでいない。ちょっと疲れたような顔で「今日は早めに切り上げて、明日出直そう」と言いはじめる。思えば、このときに長*さんの体調の異変に気づいてあげるべきだったのだ。MAGNeTに到着したときには別段なんともなかったし、いつもこのくらいの時間には睡眠モードに入るのが常なので、銀河も軽く考えていた。とりあえずカウンター席がつらいと言うので、ボックス席のお客さんに頼んで席を替わってもらう。ボックス席で長*さんはいつものように睡眠モードに入ったので、銀河はすっかり安心してしまった(寝汗がひどかったのは気になったけど)。午前3時を過ぎたころから、お客さんの数がずいぶん減る。成ちゃん、静菜ちゃん、典子ちゃんと、じっくりとお話をする。トランスのこと、SRS
用語についてを参照)のこと、自助・互助などのこと。いろんな情報も教えてもらった。貴重な時間が過ごせてよかった。閉店時間の5時に、長*さんを起こしてホテルへ戻る。

10月10日(日) 大阪遠征2日目は、救急車も出動して大変だった。
[日記]今日はお昼に神戸さいこさとお会いする約束になっていたので、長*さんと待ち合わせ場所の梅田へ向かう。久しぶりにミニスカートをはいたので、なんだか落ち着かない。まるで女装趣味の人になったみたいだ(笑)。昼食も兼ねてレストランに入り、さいこさんに連絡。到着を待つ。朝方は比較的元気だった長*さんがスパゲッティーを半分以上も残す。食欲がないと言う。すごく心配になる。このときにもっと長*さんの体調を気遣ってあげればよかったのだ(終わったことを悔やんでもしかたがないのだが、なんでもっと長*さんのことを思いやってあげれなかったのかと、自分が情けなくなるんだ)。12時過ぎにさいこさんが到着。ピンクハウスの服がよく似合っている。長*さんは仕事先に向かうが、銀河はさいこさんと談笑を続ける。最近撮った写真を見せていただく。1時過ぎに買い物に行くさいこさんと別れる。さいこさんは福岡の西田幸恵さん、林原琴乃さんと合流するという(このおふたりはあとでスタジオSwitchにお見えになった)。
2時ごろ、
スタジオSwitchへ。夜遊び疲れでウトウトしてきたので、少しのあいだソファーで休ませてもらう。昨日もいらっしゃった白鳥美香さん鳥原優子(ゆうりん)さん、島崎詩織さん、まりりん(白根真理奈)さんの他に、沖香住さんTVNEWS in Kansai の主宰者)が会いに来てくださった。いったんメイクを落とし、今日も森田さんにメイクをお願いする。昨日よりも少し派手めな顔に仕上げていただいた。森田さんのアイディアに沿って白鳥美香さんに写真を撮っていただく(ちょっとエッチっぽかったかな)。
長*さんとは7時ごろ合流する約束になっていたのだが、お仕事を早めに切りあげたらしくて、6時前から頻繁に電話がかかってくる。だんだんと不機嫌そうな声になってきて、とうとう「なにしてるんだ。早く来い」って怒りはじめたので、あわててゆうりんに車で待ち合わせ場所まで送ってもらう。車に乗っているときに「もう(待ち合わせ場所の)喫茶店を出たから、ひとりでホテルに帰る。銀河はひとりで遊びに行け」と電話が入ったので、なんとかなだめてその場で待っていてもらうことにする。
待ち合わせ場所に着くと、長*さんはビルの前にうずくまっている。目もとろんとしている。途中で買ってきた体温計で熱を測ってみると、39.5度もあった。びっくりして気が動転しそうになるが、長*さんをその場で休ませたまま大急ぎで近くの薬屋さんに飛び込む。薬屋さんでは売薬では対応できないからと、救急車を呼ぶことを勧められる。長*さんのところに戻ってそのことを伝えると「ホテルに帰って休めば直るから、そんなことしなくていい。銀河だけ遊びに行け」と怒りだす。ふらふらのまま歩きだそうとする長*さんをわんわん泣きながら説得して、携帯電話で救急車を呼ぶ。5分ほどで到着。長*さんを抱えて救急車へ。救急車で病院に運ばれたことはあるけど、付き添いで乗ったのははじめてだ。救急隊員の質問に答えながら、近くの救急病院へ。待合室でまっているあいだ、いてもたってもいられずにオロオロする。やがて診察が終わって長*さんが戻ってくる。風邪をこじらせてだけで、大きな病気というわけではなさそう。やっと安心する。解熱の注射をしてもらったのだと言う。お薬をもらってホテルに戻る。長*さんをベッドに寝かせ、冷たいタオルで頭を冷やす。2時間もすると、さっきまであんなに熱があったのがウソのように、平熱に戻る。長*さんには「ひとりで遊びに行って来い」と言われるが、もちろんそんな気になれず、ずっと添い寝をしている。とうとう長*さんに「銀河が来るのを待っている友だちもいるんだから、行って来い」と叱られる。そこで完全に平熱に戻っていることを確認し、近くのコンビニでお夜食や飲みものの用意をととのえ、なにかあったら銀河に電話するかホテルの人に頼んでお医者さんを呼んでもらうようにと念を押して、MAGNetに向かうことにする。
11時過ぎに
MAGNeTに着くと、仙台の小谷理美ちゃん(銀河とタメ)がたったいま帰ったばかりだという。すれ違いで残念。でも、今回いちばん会いたかった人のひとりであるはるさんにお会いすることができた。はるさんは無理なく自然にトランス用語についてを参照)しているって感じが素敵だった。おまけに超かわいかったので見とれてしまいました(ホームページのお写真よりも実物の方がずっと素敵です)。今日は成子ママがお休みだったので、静菜ちゃん、藤村典子ちゃん、はるさん、初対面のお客さんのASUKAさん(銀河のホームページをよく見てくださっているそうです。ありがとうございます)で、まったりと談笑。永井紀代香さんのグループや、昨日に引き続き鬼龍院姫乃(鬼姫)さんもいらっしゃっていたのだが、離れた席だったのであまりお話しできずに残念。2時ごろ長*さんに電話すると、そろそろ帰ってきてほしい様子だったので、はるさんと再会を約束しておいとまする。ホテルに戻ると長*さんは用意しておいたお夜食を全部食べて、テレビを見ていた。元気になってきてよかった。ひとりにしておいてごめんね。でも、おかげで会いたかったお友だちに会うことができたから。ありがとう。朝までずっと長*さんを抱きしめながら眠った。


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Loneliness can tell us that we're not taking time to be alone.