1999年6月下旬の日記

6月25日、埼玉医大でMTF用語についてを参照)としては初の性別再判定手術が行われました。それがきっかけというわけではありませんが、自分自身の性別違和に対して具体的に何をどうするべきか、自分の進むべき道がまた少し見えてきました。(1999年9月1日記)

6月21日(月) 髪の毛の色に対する反応。
[日記]髪の毛のことが心配だったけど、生徒たちの評判はすごくよかった。「金髪の時はおばさんみたいだったけど、今度の方が若々しく見える」って何人もに言われる。とりあえずほっと安心するが、どうも生徒たち、ヴィジュアル系だと勘違いしてるみたい。胸がふくらんでいるヴィジュアル系がどこにいるんだよ。ヴィジュアル系だと思われるくらいなら、おばさんの方がいいよぉ。で、問題の髪の毛だが、全体が濃い茶色。両サイドにひと房ずつ以前の金髪を残している。銀河はもともと髪の毛の量がかなり多い方なので、全部降ろすとずいぶん重たい。両サイドを少し降ろして、あとは頭の上の方でポニーテール。自分で見ても確かにヴィジュアル系っぽい。うーん。ヴィジュアル系って思われないようにするのが、パスへの第1関門かあ。前髪の量が多くて少々重い感じなので(金髪の時は気にならなかった)、そのせいかなあ。近いうちに前髪をすいてもらいに、また美容院に行かなくちゃ。
夜の授業が終わり、新宿で知人の親子(お母さんと娘さん)とお食事。9時半に別れるが、長*さん(銀河の彼氏)はまだ都内某所でお友だちと会食中。長*さんが到着するまで東口のTSUTAYAで時間をつぶす(この時間、ここぐらいしか開いてないんだもん)。10時半に長*さんが到着。西武新宿駅近くの「ルノアール」でお茶を飲む。髪の毛の感想を聞くと「うーん、まあなぁ」と唸ったっきり。早く慣れてよねっ。家でやりたいことがいろいろあるので、11時半には家路につく。
銀河のホームページでは、各ページごとにいちばん下に英語で気の利いた(と当人だけは思っている)ひとことを書いているんだけど、今回のひとことは自分でも特に気に入っているの(トップページのひとことと並ぶくらい)。簡単な単語ばかりだけど、深いよね。
[回想記]この後、前髪をすいたりしてなんとかヴィジュアル系からおばさんに戻りました。長*さんも慣れてくれたみたいです。(1999年9月1日記)

6月22日(火) 白髪風味の若い女の子たち。
[日記]金曜日の出講校舎で一緒になる同僚の女性とお昼を共にする約束をしていたので、12時半に都内某所の校舎近くのお洋服屋さんで待ち合わせ。週末から始まるバーゲンに備え、いくつかのバーゲン対象商品をお取り置きしてもらう。お昼をいただきながらの話題はインターネット。中学生の娘さんの誕生日プレゼントにパソコンを買ってプロバイダーの契約も済ませたというので、メールアドレスとURLをお教えする。昼食後、公共料金の支払い等の雑用を片付け(5月分の電話料金は2万4千円、覚悟していたよりも安かった)、都内某所でホルモンを打つ。
4時半に新宿へ出て、いつものヴェローチェで長*さんと待ち合わせ。先に着いて待っていると、後からやって来た長*さん、銀河を見つけることができずにウロウロ。金髪の時は100メートル先からでも分かって便利だったんだけど、今の髪の色では目立たないから見つけにくいんだって。
髪の毛の色といえば、最近の若い女の子の間で流行っているグレーのメッシュ(全体が白髪まじりに見える)、銀河は結構好きなんだよね。髪の毛はおばあちゃんみたいで、アイメイクはばっちり。なんかそのズレ方が妙に滑稽で面白い。銀河がいまどきの若い女の子だったら、きっとあの仲間の中にいただろうな(仮定法過去形)。いまの銀河が真似しても単なるおばあちゃんになるだけだから、しないけど。そうそう、銀河が髪の毛を染めている最大の理由は、白髪隠しなんだよね。なんにも染めないでナチュラルなままにしてたら、あの若い女の子たちとちょうど同じ感じの髪の毛の色なんだ。だからなおさら、あの流行に親近感がわくっていうか。とにかくしばらくは、白髪風味の流行、続いてほしいな。
6時過ぎに「嵯峨野」で夕食をとった後、本当に久しぶりに(いま日記を検索してみたら5月23日以来だ)レンタルルームへ。でも2人とも慢性的寝不足なんで、睡眠をとることが中心になってしまった。で、明朝も早いし10時には帰宅。
[回想記]白髪風味のグレーのメッシュは現時点ではもうアウト・オヴ・デイトみたいで、街でもあまり見かけなくなってしまいました。で、なんと今は金髪がはやっているみたいですね。うーん。(1999年9月1日)。

6月23日(水) 授業中、半分眠ってしまった。
[日記]ここのところの慢性睡眠不足のせいで、授業中眠くて仕方がなかった(生徒は寝ても平気だけど、講師は寝るわけにはいかないので超つらい)。授業しながら頭の中がウトウトしているのが自分でもわかる。ここだけの話、授業中半分眠っちゃうことって年に数回はあるんだけど、不思議なことにちゃんと授業はできちゃうんだ。授業は椅子に座らずに立ってやる(銀河の場合は大教室中を歩きまわったり走りまわったりもする)からってのもあるんだろうけど、要点はもらさずきちんと話し、少なくとも生徒からは異常事態だってことはわからない。でもね、眠ってるの自分ではわかる。だから、ほとんど条件反射の世界。職業意識だけで支えられている感じ。で、午前中の授業が終わり講師室に戻ってくると、ついたての陰にあって生徒からは見えないソファーへ直行(生徒に見えるところにいれば質問とかで捕まっちゃうからね)。(「たかみ」や「ジュネ」でのNさんのように)座った瞬間に爆睡状態に。ふと気がつくと4時半。4時間近くも眠っていた。というわけで、お昼ご飯もとり損ねて、夜の授業に突入。眠気は覚めたけど、今度はおなかがすいて仕方がなかった。
授業が終わり自宅近くに戻ってきてから夕食(今日は朝も抜いたから初めての食事だ)。牛タン定食にした。デザートにケーキも食べた。帰宅するとやっぱり眠くてたまらなくなってきたので、今日の分の日記をアップロードしたら速攻で寝ることにする。
[回想記]自分の家でひとりで寝てると、夜中の2時とか3時に必ず目が覚めるんですよね。で、心臓の鼓動がばくばくと妙に速くなってそれ以上眠れなくなるんです。起き出して何かをする気力はわかないので、結局一睡もせずにベッドのなかであれこれ考えごとをすることになります。昼間眠くなるのも当然ですよね。(1999年9月1日記)

6月24日(木) 洋美さん(=さすけさん)と会う。
[日記]午前中で授業が終わり、都内へ直行。2時に新宿に到着するが、長*さんはもうお昼を済ませてしまったというので、仕方なくひとりで牛タン定食を食べに行く(最近牛タンばっか)。2時半にいつものヴェローチェで長*さんと合流。とある事情で長*さんの会社の経営上の話し合いに同席することになったので、その前に2人で意見調整をしておく。3時半から長*さんの事務所にお客様を迎え、話し合いが始まる。一応、予定通りの展開で4時にはお開き。ところで急遽、銀河のホームページの掲示板の常連客でもある洋美さん(Web上ではさすけさん、ネイティヴの女性でハシケンのホームページの主宰者)とお会いすることになったので、T-ZONEに隣接した喫茶店で落ち合う。
洋美さんとは、6月5日に大阪の沖香住ちゃん(TVNEWS in Kansaiの主宰者)が東京に遊びに来たときに香住ちゃんの紹介で知り合い、音楽(ソウル・フラワー・ユニオン)と格闘技(前田日明)の話で意気投合して以来のお友だちだ(6月5日の日記を参照)。とは言うものの、実際にお会いするのは今日が2回目(でもなんだか大昔からの知り合いみたいな感じだけどね)。で、今日お会いすることになったのはひょんなきっかけから。2時半から長*さんとヴェローチェでお茶を飲んでたとき、長*さんが急に「今日こんなのがあるんだけど、忙しいから行けないんだ」と言って招待券と書かれたチケットを見せてくれる。「地底レコード5周年記念 大地底祭」。最初はふーんと思ってただけだったけど、場所が吉祥寺って書いてあったんでピンとくる。地底レコード(インディーズ系のレコード会社)って言えば、渋さ知らズ(世界一スゴイ日本のジャズグループ)。渋さ知らズって言えば、何日か前に洋美さん(=さすけさん)が吉祥寺でのライブへのお誘いをうちの掲示板に書き込んでくれてたっけ。あれってたしか今日のことだったはず。急いで洋美さんの携帯に電話する。「今日の吉祥寺の渋さ知らズ、行く?」「行く行く」「招待券があるんだけど、あげようか?」「わぁい、ありがとう」というような展開。というわけで、新宿にお住まいの洋美さんに西口まで来てもらったってわけ。最初は2人で、後から長*さん(もちろん洋美さんとは初対面)も合流して3人でお茶を飲む。洋美さんとは音楽の趣味が似ているので、話が妙に盛り上がる。でも、ライブの時間なので(長*さんは仕事だし、銀河も疲れてたので)5時過ぎには散会。帰りがけT-ZONEでスーパーディスクドライブ(パナソニックのLK-RM934UZ、ストロベリーとアイスホワイトのiMacカラーのやつね)を買う。これで、10年以上にわたってワープロ専用機で作成し蓄積していたドキュメントをDOSフォーマットのフロッピーに落として、このスーパーディスクドライブで読み込み、仕事環境を徐々にiMacへと移していけるはずだ。
ところで、なぜ(ロックだとかジャズだとかましてやインディーズなんかとは縁のなさそうな)長*さんが招待券なんて持ってたんだろう。長*さんに聞いてみると、地底レコード関係者の女性が「ジュネ」(歌舞伎町の女装スナック)のお客さんで、長*さんとも親しく、「大地底祭」のポスターに長*さんの会社も広告を出したんだって。長*さんの飲み屋人脈、恐るべし(いやホントに)。
洋美さん、ライブ楽しかったかな?
[回想記]とても豪華なメンツで素晴らしいライブだったようです。ところで、平ゆきさんもそうですが(6月11日の日記を参照)、長*さんの飲み屋人脈には本当にびっくりさせられます。(1999年9月1日記)

6月25日(金) Jedit3.0 って超いいよ。
[日記]仕事は午前中だけ。仲良しの同僚の女性と行きつけのお洋服屋さんへ。火曜日にお取り置きしてもらっていたバーゲン対象商品をゲット。黒のワンピース(ひざまでの長さだが、前に2本スリットが入っている)と黒のサマージャケット。お昼(中華料理)をいただいた後、いったん自宅に戻る。今日は埼玉医大で2例目、MTF(用語についてを参照)としては初のSRS(用語についてを参照)の日。少し気になる(夜のニュースによれば無事成功した模様)。でもまあ、自分は自分の道を行くだけだ。
4時半に新宿に出て「ルノアール」で長*さんと合流。昨晩お仕事上のトラブルが発生したため、かなりお疲れ(しかもご立腹)の様子。おなかを空かせている長*さんと回転寿司をつまんだりした後、長*さんの事務所へ。機嫌の悪い長*さんをなだめながら、長*さんのお母様と談笑。今晩はおふたりで親戚の方と会う予定だというので、銀河も7時半には家路につく。
iMacを買って以来、文章を書くときはSimpleText(マック付属のエディター)を使ってきた。それで格別な不自由は感じていなかったが、数日前に思い立って、定番エディターだという Jedit3.0を株式会社まつもとのホームページからダウンロードしてきた。想像以上の使い勝手のよさ。原稿を書いたり、授業で配布する補助プリントを作ったりするのにちょうどよい。過不足がないというのはこういうことを言うんだなあと感じた。シェアウェアだというので速攻で料金(たった2500円だよ!)を送金。以前りのにワープロソフトのことを相談したとき、文章を書く仕事をしている人間はみんなワープロではなくエディターを使っていると教えてもらったので、Word98を買うのを思いとどまったのだが、たしかにこれじゃあワープロなんていらないや。どうしてもレイアウトとかに凝ったり、いろんな細工がしたいんだったら、本格的なDTPソフトを買えばよい(DTPって楽しそう)。そう考えれば高いお金を払ってパソコン屋で買うワープロソフトなんて、なんか中途半端だよね。これまで10年以上ワープロ専用機を使っていた間も、ワープロ専用機の(どうでもよいような)付加機能の「進化」に対して不満を感じていた。そんなことに力を入れるより、文章を入力し印刷するという基本的な部分の使い勝手の向上をもっと心がけてくれればよいのにと思っていた。だけど、そんな不満もとりあえずこれで終わり。iMacとJedit3.0の組み合わせが今のところ、銀河の仕事にとってはベスト。だけど銀河は欲が深いから、もっとよいエディターとかの情報があったら教えてくださいね。
明日は午後から仕事。その後は、お友だちの未奈美ちゃん(掲示板の常連さん)が「梨沙」で一日店員を務めるというので、久しぶりに新宿で夜遊びの予定。
[回想記]その後、他にもいろんなエディターを試してみたのですが、さすがに定番というだけあって、少なくとも銀河にはJedit3.0がいちばんフィットします。快適な作業環境が整いつつあります。(1999年9月1日記)

6月26日(土) 久しぶりの夜遊び。「梨沙」と「たかみ」。
[日記]お昼からの仕事を終えて自宅に戻ったのが午後7時。ゆっくりシャワーを浴び、午後9時に家を出て「梨沙」に向かう。夜遊びはヒロリンさんと「たかみ」で会った6月5日(この日は大阪の沖香住ちゃんとも会った日だし、香住ちゃんの紹介でさすけさんこと洋美さんと知り合った日でもある)以来。今日はお友だちの南野未奈美ちゃん(以前に彼女が名古屋の「べっぴんメイト」のスタッフだった頃知り合った)が「梨沙」で一日店員を務めるというので、遊びに来るように誘われたのだ。
「梨沙」は他の女装スナックと違ってエッチな雰囲気もなく、会話が楽しめる大人のお店。内装もオシャレ(ちょっとバブリーだけど)。女装者中心というわけではないところが好きだ。今日は未奈美ちゃんが出入りしているインターネット関係のオフ会(こういう世界とは無関係の若い男の子と女の子たち)も行われていて、大盛況。久保島静香お姉さま、代田早苗さん、神名龍子さん(EON/Wの主宰者。男性ヴァージョン)と顔を合わせることができた。梨沙ママや未奈美ちゃんにトランスする(用語についてを参照)ための貴重な情報も教えていただけたし、久々に楽しい気分。調子に乗ってロック少年に戻りBeatlesとCreamを熱唱。予定を大幅に越えて午前1時まで滞在した。
その後「たかみ」に移動。金曜・土曜のスタッフの中澤清美ちゃんはどんどんキレイになっていく。この子はカワイイというよりも美形なんだよね。たぶん20代後半になる頃には超美人の女の人になるんじゃないかな。残念ながら、例によって女装のお客さんたち(特にエッチ目的の人たち)とは波長が合わなくて、不快な思いもしたが、しばらくして、お友だちの都美也子ちゃん(「CDサークル「Change」の主宰者)、佐藤潮音ちゃんが相次いで登場し、ほっと安心する。今日の美也子ちゃんはなんと聖飢魔IIヘア&メイク(2時間かかったそうだ)。潮音ちゃんに記念写真も撮ってもらう。美也子ちゃんとは『くいーん』やエリザベスのこと、ホルモンやSRS(性別再判定手術)(用語についてを参照)のこと、GID(性同一性障害)(用語についてを参照)のことなど、いろんな話題について意見交換。久しぶりに(そうでもないか)じっくりと話し合えたのがうれしかった。
鈴木久美ちゃん(いまや伝説となった女装スナック「サイクル」のママだった人)と日下部みどり子ちゃん(「サイクル」のスタッフだった人)から携帯に連絡が入り、2人に会うため午前4時半に深夜喫茶「シエン」へ。ゆっくり会えたのは1年ぶりだか1年半ぶりだかだったので(ちょっと顔を合わせた程度なら何回かあったけど)、話が弾む。話題の中心はサイクルネット(みどり子ちゃんが主宰するパソコン通信。みどり子ちゃんのホームページに案内が載っている)のことと、GIDやSRSのこと。美也子ちゃんもそうだけど、みんな気心の知れた仲間だからストレスなく議論ができてよい。今日は本当にいろんな人たちと貴重な意見交換や情報交換ができて、胸がいっぱいだ。
「ジュネ」にいた長*さんを放ったらかしにしてたので、機嫌を損ねたみたい。6時に屋台村で長*さんと合流。7時半にホテルへ。12時過ぎまでゆっくりする。ホテルを出た後は長*さんの事務所へ。午後2時半まで長*さんの仕事を手伝ったりじゃれあったりしながら過ごす。会社の経営が正念場を迎え、今がいちばんつらい長*さん。精神的な支えとして銀河のことを必要としているのが痛いほどよくわかる。何がどうなっても絶対に長*さんを裏切ったりはしないからね。
[回想記]とても素敵なお店だった新宿3丁目の「梨沙」ですが、この9月で閉店となることに決まりました。長い間ご苦労さまでした。新たに四谷3丁目の方で再開する計画があるようです(噂ですが)。いずれ「梨沙」のホームページで発表されることになると思われますから、チェックしてみてください。ところで、全般としては楽しかったこの日、ものすごくイヤな気持ちになったことがありました。あんまり不快だったのでこの日記にも書く気がしなかったことです。お友だちがやってくる前の「たかみ」で、何人かのアマチュア女装者が6月25日の埼玉医大でのSRSを話題にしていました。なんとはなしに耳を傾けていると信じられない言葉が飛び込んできました。「性転換までするなんて頭がおかしいんじゃないか」「ふつうだったら考えられないよ。狂ってるんだよ」「変態よ、変態」と。遠くから見ていると似ているようでいて、まったく分かり合えない人たち。この日以来、銀河は「類(class)」としてのトランスヴェスタイト(用語についてを参照)が大嫌いになりました(「個(individual)」としてだったらまた別ですが)。そして女装者が集まる遊び場には以後絶対に顔を出すものかと思いました。(1999年9月1日記)

6月27日(日) 安易に「性同一性障害」を自称していいのかな?
[日記]昨日、都美也子ちゃんと話をし、その後、久美ちゃんみどり子ちゃんとも話し込んで、大筋で意見が一致したことがあった。今日はその話題をちょっと。
前々から気になっていたことでもあるのだが、安易に「性同一性障害」(Gender Identity Disorder)(用語についてを参照)を自称してもよいのだろうか。「性同一性障害」って精神医学上の病名のひとつだよね。TV/TG/TS(用語についてを参照)って用語とはわけが違う。TV/TG/TSというのは、明確には定義され得ないある種の傾向を表す言葉だから、各人で解釈に差が出るのも当然だし、「自分はTSだ」と自称するのも(言葉だけがひとり歩きをしないのであれば)一向にかまわない。でも「性同一性障害」は違う(「病名」なんだから)。定義にぶれがあってまずいし、なによりも「性同一性障害」の当事者を名乗るのなら、精神科医による診断が必要なはず。素人が自分勝手に自称してよいものではない。
安易に「性同一性障害」の当事者を名乗る一部の人が、世間に対して「性同一性障害」の代表であるかのような錯覚を起こさせる情報を発信するのなら、それは犯罪的と非難されても仕方ないだろう。少なくとも、銀河は不愉快だ。切実に治療を必要としている人たちの足を引っ張らないでほしい。
[回想記]窪田理恵子さんのホームページ裏トランス用語集では、このような人たちのことを「とんでもGID」と名付けています。このような人たちっていろいろと本などを読んだり埼玉医大のSRS(用語についてを参照)のニュースを聞いたりして「自分も性同一性障害だということがわかった」なんていうニュアンスの発言をなさっていることが多かったりするのですが、それって家庭用の医学事典かなんかを読んで「私は肝炎にかかっていることがわかった」とかなんとか言ってまわるのと似てますよね。いいですか、自分では判断できないんです、お医者さまじゃないんだから。ひょっとしたら「性同一性障害」の方が「趣味の女装者」よりも偉いと思っているんじゃないでしょうかね。愚かです(まあ、病院の入院患者の間でも重い病気の人の方が大きな顔ができるってことをよく聞きますけど)。でもって、こういう人に限って世間に向けて自分をアピールしたがるから始末におけないんです。一人称がいつも「私たち」だったりする(「私たちのような人間を世間の人にもっと理解してもらうためには」なんて発言の仕方をする)。自分勝手な勘違いには目をつぶりましょう。でも、全体を代表しないでください。はっきり言って犯罪的です。この件についてはまたいずれ、文章にしてまとめることになると思います。(1999年9月1日記)

6月28日(月) 銀河は「お母さん」なんだと思う。
[日記]お昼の空き時間に新宿へ出て、長*さんと食事。その後ハイジア(正式名称は忘れたが、歌舞伎町の奥にあるキレイなビル)の地下のベンチでまったり過ごす。いったん自宅に戻ってから夜の授業へ。
夜の授業後、また新宿へ出て「やまと」(西口にある居酒屋)で長*さんと夕食をとる。その後は長*さんの行きつけの歌舞伎町のスナック「手まり」(長崎出身のママさんがひとりでやっているお店)へ。長*さんは少しほろ酔い加減でいつも以上に銀河にベタベタしてくる。仕事上きつい局面に立たされている長*さんの心境を思うと、つらい気持ちになる。本当はずっと一緒にいてあげたいのだが、明日の朝までにやるべき仕事が残っているので、10時過ぎには帰宅。後ろ髪を引かれる思いだ。
帰宅後、ほぼ1か月ぶりに香澄から電話がかかってくる。元気そうで弾んだ声。安心する。1か月の間ひとりで考えを整理し吹っ切れたので、今週末から遊びに復帰するそうだ。とりあえず明日の夜に会う約束をする。
長*さんに対しても香澄に対しても、銀河は、パートナーであったり友人であったりする以上に「お母さん」なんだと思う。無条件の愛情で包み込んであげられるくらい大きな人間になりたいと、切実に思う。
[回想記]これまで好きになった相手に対しては、それが男性であれ女性であれ、自分がバリバリ働いて相手には経済的な心配を絶対にさせたくないと思ってきました。主婦願望なんて皆無ですし、ことジェンダー・ロール(性役割)(用語についてを参照)に関する限り、自分の男性性は強いんだなって思っていました。でも最近になって気づいたのですが、いとしい者を自分の保護下に置いてあれこれと世話を焼きたがるのって、「お母さん」なんですよね。そう考えると自分の心の動きもうまく説明できるような気がします。(1999年9月1日)

6月29日(火) 香澄に会った。1か月ぶり。
[日記]疲れをとるために午前中は休養。お昼過ぎに起きたが、ぼんやりして過ごす。活動開始は夕方から。都内某所にホルモンを打ちに行き、5時に新宿へ。例によってヴェローチェで長*さんとお茶を飲み、香澄との待ち合わせの時間まで長*さんの事務所でのんびりする。
香澄の仕事が延びたので、会えたのは8時過ぎ。どの店も行列ができていたので、たまたま空いていたマイシティー(新宿東口の駅ビル)の地下のレストランで食事をしながら話をする。久しぶりなのでちょっと照れくさかったりもしたが、顔を見た瞬間に「大丈夫そうだな」って思った。1か月の間、誰にも会わずひとりでいろいろ考えていた香澄は、さっぱりとした顔(髪の毛はボサボサだったけど)で元気そう。プライバシーにかかわることは公表できないけど、現在の自分をしっかりと把握し、自分の足で進むべき道を歩み始めたんだなという印象を受けた。ルルや銀河と違って、これからも気が向いたらエリザベスに行くこともあるかもしれないけど、基本的には自分の足下の現実を大切にしていきたいそうだ。全面的にバックアップはする。だけど、歩いていくのは自分の足でなんだということを、いつも忘れないでいてね。
9時過ぎにヴェローチェで長*さんも交えて3人でお茶。仕事中のりのに電話を入れたりしながら(りの、仕事のじゃまをしてごめん)、1時間ほどくつろぐ。明日の朝が早いので、10時過ぎには帰宅。
[回想記]ルル、香澄、銀河の3人でつるんでいたことによって、実のところ、香澄には悪いことをしたと思っています。香澄自身はそれも楽しかったようなのですが、香澄よりもずっと年上でトランス(用語についてを参照)においても先を行っている2人といつも一緒にいて、香澄はずいぶん混乱してしまったんじゃないかなと思うのです。6月中、誰にも連絡をとらずにひとりでいろいろ考えていたことが香澄にはプラスに働いたようで、安心しました。(1999年9月1日記)

6月30日(水) 予備校講師の給料の仕組み。
[日記]夜まで仕事をして9時半に帰宅。今日は給料日(銀河の職場は月末なの)。うちの給料って分給計算(1分授業をするといくらって計算)の年間契約なのね。例えば(あくまでも例えばの話、実際の銀河の給料とは無関係)、分給400円で契約したとすると、90分1コマ授業すると3万6千円になる。週に10コマ授業を受け持つとすると36万円。1学期の授業が4月中旬から7月中旬までの12週。2学期の授業が9月中旬から12月中旬までの12週。だから合わせて24週ね。そうすると36万円掛ける24週で、792万円になる。これが基本給。この基本給を12等分したのが毎月もらう給料になる。この場合で言うと72万かな。でもって、専任講師契約(他の予備校とは掛け持ちしないっていう約束)手当とかがつくから、まあ月80万円前後(税金や年金なんかを天引きされると手取りは60万くらいなのかな)。でね、これが毎月もらえる最低限の額なの。これ以外に、春期講習(1日2コマを10日間で20コマ)、夏期講習(1日2コマを20日間で40コマ)、冬期講習(1日2コマを15日間で30コマ)、直前講習(1日2コマを20日間で40コマ)を担当すると、担当した月の給料にその分がプラスされる。講習のコマ数は年間で130コマってところだから、さっきの分給で計算すると年間468万円。これが3月、7月、8月、12月、1月あたりの給料に上乗せでもらえる。例えば8月はバリバリ講習で稼ぐから、毎月もらえる80万円前後に120万円程度が上乗せされて200万円くらいになる(でも税金が高いから手取りは140万ってところ)。あとはテキストや模試の監修料や執筆料が年間500万円くらい。地方の高校に講演会に呼ばれたり受験雑誌に原稿を書いたり参考書の印税が入ってきたりという雑収入が年に200万円として、今までの金額を全部合計すれば、年収は2000万円(もう一度言っとくけど、これは銀河の収入の話ではなくて、例えばの計算だよ)。でもね、この収入概算は予備校講師(正確に言えば、うちの予備校の講師)の中でもいちばん売れている部類に入ると仮定した場合の計算。売れてなければ分給も低いし、持ちコマも少ない。だから年収600万円くらいから1200万円くらいの講師がいちばん多いんじゃないかな。
今日こんな内情暴露を書いたのは、予備校講師って5千万も6千万も稼いでるっていうデマが世間に流れているから(予備校講師っていうとお金を持ってるって思われてしまう)。バブル期にはそういう人もいたらしいけど、この不況時、いったいそれはどこの国の話だって感じ。同年代のサラリーマンと比べると給料が高い方の部類には入るだろうけど、人気がなくなっていつクビになるかわからないし(プロ野球選手と同じで、昔活躍していたから給料は高くなったけど今は力が落ちてさほどでもないっていう人、つまり、元人気講師って人が真っ先にクビを切られている)、開業医や弁護士とは全然勝負にならないね。
[回想記]この計算はあくまでもひとつの例です。バブルの頃いちばんおいしい思いをしたのは、銀河よりも上の団塊の世代の講師たちですが、銀河も多少はおこぼれにあずかりました。その頃のいまでは考えられないような逸話は、気が向いたらいずれお話ししましょう。(1999年9月1日記)


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