第4部 不死なる者ども

    第四の魔

 

 ユスフェラの山の端に、陽光の最後の一片が吸いこまれて消える数時間前の記憶を、寝台に仰臥したままパランは無言で反芻していた。
 ダルガたちが深山奥ふかくわけいってから三度めの、ティグル・ファンドラの死であった。
 ふう、と深い息をつき──ふいに占爺は、その両の目を見ひらいた。
 違和感を感じたのだった。
 奇妙な気配が、宙を流れたのである。
 寝台から首だけをもたげて、占爺は注意深く四囲の気をさぐった。
 たしかにある。
「どうやら」とパランはひとりつぶやいた。「時間がきたらしいの」
 閉じたアルビノの右眼の幻視で、一行が核心に近づきつつあることは感知していた。
 自分がなんらかの理由で最初から同道するあたわぬことは占術により予期していたが、運命がなんらかの形でふたたび交わるであろうこともまた知っていた。
 どうやら、その時がおとずれたらしい。
 サドラ・ヴァラヒダが一行を魔域にまねき、エレアが屋敷をはなれたときから、妖体の屋敷への訪問はぴたりととぎれていた。
 あの夜にほぼ完璧に破られてしまった結界も、とうぜんずたぼろのまま修復される気配はない。なにより、ソルヴェニウスの言によれば結界を構築した術使はヴァラヒダの襲撃に耐えきれず、その命脈をたたれているということになっている。
 ゆえに、同じ種類の霊力の流れを感知することなど、考え難い事態であった。
 その流れを、パランは感知したのである。
 ふ、ふう、と占爺はしわがれた醜貌をひょっとこにして、深い息を闇に吐きかけ、どっこらしょ、とかけ声をかけて身を起こす。
 本調子ではないが、短期の旅にならどうにか出られそうなほどには、回復しているようだと自己診断した。
「やれやれ、この老体に休暇をやれる日がはたしてくるのやらこないのやら」
 つぶやきつつ、意外に身軽な動作で床におりたち、おちついた足どりで歩きはじめた。
 客用の寝室を出て、霊気の発現点へと歩をすすめる。
 広大な館だったが、パランはまるで我が家のようにあぶなげない足どりで迷いもせずに歩きつづけた。
 まるで往来をでもいくような顔をしている。
 就寝前の気怠げなあわただしさをふりまきながら行き交う何人もの召使いや衛兵とすれちがったが、だれもとがめようとする者はいなかった。
 どころか、客室に仰臥しているはずの半死人がすずしい顔をして屋敷内をうろついているというのに、気にとめる者さえひとりとしていない。
 まるで、そこにパランの姿など見えないとでもいいたげに。
「ふむふむ。まだまだわしも捨てたもんではなさそうじゃて。見せてやりたいものだの、ダルガに。あの小僧よりもわしのほうが格段に気配の制御は上だからなあ」
 いいたいほうだいのひとりごとを口にする。
 隠行、であった。
 外界を認識するのに人は視覚、聴覚の二大感覚に多くを負っているように思われがちだが実はそうではない。
 見れども見えず、聞けども聞かず──存在の認知にもっとも重要とまではいかないが、気配を断つことにより存在はおどろくほど希薄になる。
 むろん、パランが行っているように、堂々と人前をうろつきながら何の違和感も抱かせないほどの境地には通常はいたれない。その意味で、パランはたしかに自賛するごとく達人の域に達しているといってよかった。
 ともあれ、目的の場所をさぐり当てて占爺はするすると、歩をすすめた。
 最初の訪問のときに、ヴァラヒダの魔その他についての説明をソルヴェニウスからうけ、また霊体として出現したヴァラヒダの襲撃をうけたあの室であった。
 山側に面した方角は吹きぬけになっていると同時に、いくつかある部屋への入口にも扉のたぐいは通常使われず、あけっぱなしになっている。
 立ちぎきには最適の環境、といっていいかもしれない。
 パランは入口わきに立って部屋の内部に意識をむけた。
 霊気は、テーブルの一角からただよっていた。
 そこにはソルヴェニウスと巨漢の衛兵、それにあいもかわらず起きているのやら居眠っているのやら判然としない老タグリの、枯れ枝のような姿があった。
 瞑目しているのは、ソルヴェニウスであった。
 胸もとに手をやり、ペンダントを握りしめている。
 あの紫色の宝玉であろう。
「ふむ。やはりな」
 その様子を見ながら占爺はひとりごちた。
 やがてふいに、ソルヴェニウスが手をひらいて顔をあげた。
「やはりとらえきれませぬ」疲れた口調で、老タグリにいった。「どうやらエレアさまが敵にとりこまれてしまったことは、まちがいなさそうです」
 驚嘆すべき言葉を、淡々とした口調で口にした。
 枯れ木のような老タグリのからだがひらひらとふるえ、痰のからんだ声音が興奮して何ごとかを告げる。
 美貌の執事は、袖口を引かれながらあえて逆らおうとはせず、うめき声としかきこえない老タグリの言葉におとなしく耳をかたむけていたが、やがていった。
「エレアさまが連中の注意を引いてくれることは最初から計算の上だったはずです。それに、あの妖魔の言によれば贄なくしては“紅玉”のゆくえをとらえることは、不可能と」
 ふたたび老人のよわよわしい抗議のうめきがつづいたが、今度はソルヴェニウスはとりあわなかった。
「とにもかくにも、事象は収束しつつあるのはまちがいありません。あの女幻術使がわれわれの予想をはるかにこえた力をもっていたのはあきらかに誤算ですが、いずれにせよヴァラヒダがエレアさまにあれだけ固執していた以上、かわりの贄などもともと見むきもされなかったでしょう。いいかえれば──いまこそ、絶好の機会にほかなりますまい。いまなら三魔人の妨害なしに“青の洞”までたどりつくこともできそうです。タグリさま、ご決断を」
 むっとしたように、枯れ枝の老人はしばしだまりこんでいたが、やがてもごもごと何事かを口にした。
 執事は満足したようにうなずき、衛兵にむけて指示を出す。
 老タグリの腰をおろした椅子が軽々ともちあげられた時点で、占爺パランはひっそりとその場をはなれながらふたたびひとりごちた。
「そういうことかい。やれやれ。安寧の日々もたったの三日で終わり。この身に平穏のおとずれるときは、死の暗黒まで待たねばならぬらしい。やれやれ」


 ずしりと、妖魔のかぐろい巨体がさらに一歩をふみだした。
 あわせたようにいっせいに、全員がひとしなみに一歩をすさった。
 あまりにも圧倒的なシャダーイルの存在感であった。
 最初に我にかえったのはダルガだった。
「……ふん」
 と、吐き捨てるように口にした。
「ヴァラヒダの魔物だかしらんが、おまえたちの首魁はとっくに死んだ。おまえもあきらめて、地獄へでもどこでも失せるがいい」
 剣の柄に手をかけたまま、いい放った。
 魔怪の反応を見るための言葉だった。
 対して巨体の妖物は──暴言に一瞥すらくれなかった。
 言葉の内容を理解していないのではないかとさえ疑わせるほど悠揚として、ただうっそりと佇立している。
 だが知能がないわけではなさそうだった。
「紹介しよう」
 野太い無骨な、それでいてどこか無機的な声が、黒い獣の顔貌から発されたのである。
 氷のような眼光を放つ双眸が、ちらりと背後をふりかえった。
 異様な──地獄の底からひびき上がってくるかのような、苦鳴を思わせるうめき声がそこから上がっていた。
「ヴァラヒダの、第四の魔だ」
 シャダーイルが重々しい口調で宣告するようにしてつづけた。
 立ちこめるほこりのなかから、夜をさまよう影のようにそれは出てくる──と、だれもが思った。
 予想はうらぎられる。
 シャダーイルの巨体の背後で突如、空間にぎりぎりと、蜂の巣状に亀裂がはしった。
 そこから卵の殻を破ってひなが出てくるかのごとく、ばきりと、指があらわれた。
 人間の指だ。
 なんの変哲もない。数も五本。
 それでも、その指が異様な印象をともなっていたのは、先刻から不気味にうなりつづけている地獄の亡者の呪詛の詠唱を思わせる耳ざわりなうなり声が、その指があらわれたとたん一段とその音量を増したせいだろう。
 ずばりとべつの位置で亀裂が砕け、やはり五本の指が出現する。
 そして──砕けた空間からのぞく異様なまだらの渦をまく混沌を背にして、それは亀裂の殻を破り、二本の足をふみだして──そう、“こちら側”へとおり立ったのだ。
 長身だが、シャダーイルをはじめとするほかの三魔怪ほどではない。
 ちょっと背の高い人間、といった程度だった。
 姿もまたヴァラヒダの魔と呼ぶにはまるでふさわしからぬ、尋常の人間としか思えない風体であった。
 異様なのは──腹の底が地獄に直結しているのではないかとさえ思わせるような不気味なうめき声をのぞけば──その眼光、ただそれだけであっただろう。
 その眼光が、ひとりの人物の上でぴたりととまった。
「ダルガ」
 妄念にみちあふれた異様な声音が呼びかけた。
 剣をかまえて正対する少年の前に、左眼の潰えた髭面の剣士が、裂けるような笑みをたたえつつ立ちはだかった。
 歯をむき出しにした野獣の顔をしていた。
「ダルガ」
 もう一度、口にした。
 まるで、ようやく会えた思い人を前にしたように、熱い口調で。
「デュバル……!」
 ダルガは、苦渋にみちた声音でこたえた。
 剣士デュバルは──あるいは、かつて剣士であったもの、デュバルは──たまらぬように口を左右にひらいて笑いながら、いくども、いくどもうなずいてみせた。
「決着をつけよう、ダルガ」
 笑いながらいった。
 ダルガは、かなしげに眉をよせながら──かみしめた歯のあいだからしぼり出す。
「おまえ……剣はどうする」
 異様な鬼気に鎧われてどうでもいいことのようにも思えたが、たしかにデュバルは丸腰だった。
 下帯をのぞけば、裸に近いようなかっこうをしている。
 身体にきざまれた無数の傷──とりわけ、山中でダルガにつけられた縦一文字の傷の裂け目に、異様な青い燐光が走りぬけていた。
 四囲の壁を淡く光らせている燐光と同じ色をしている。
 通常なら死んでいてもおかしくない傷をうけて、こうして立って歩いていられるのはその青い燐光の作用なのであろう。
 だが、それが第四の魔とは──
「剣は……」と、デュバルは裂けるような笑みをうかべたまま口にした。「ここにもっている」
 意味がわからず目をむく一同の前で、かつての剣士はもう一度、夢遊病者のようにくりかえした。
「ここにもっている」
 いいながら、つ、と、右腕をさしあげた。
 何が起こるのかと一同見守る眼前で──腕は、青白い燐光を放ちはじめた。
 そしてふいに──その腕が、ず、ず、ず、とのびた。
 伸張したのである。
 ──真白き刃のように。
 まるで骨製の幅広の蛮刀を手にもたせ、そのまま融合させたかのように、その片面を白い鋭利な刃状にとがらせながら──デュバルの右腕が剣と化して、みるみるのび出ていくのである。
 やがて、長剣に匹敵する程度の充分なながさを獲得したところで、腕の伸張は停止した。
 まるで巨竜の肋骨からけずり出してきたかのような、異様な純白の刃であった。
「ここにもっている」
 妄執を眼光にためてデュバルはくりかえした。
 ごくりと、ダルガは唾をのんだ。
 そして気をとり直し、身がまえた。
「つけよう」そんなダルガを真正面から見すえながらデュバルは口にした。「決着を」
 ダルガは一度、かたく両の目を閉ざした。
 それをもう一度ひらいたとき、そこにはすべての感情がおしころされていた。
「わかった」
 静かにそうこたえ──
 気合いとともに、打って出た。
 すさまじいいきおいで打ちおろされた剛剣が、デュバルの残像を縦に裂いた。
 瞬時にして側方に移動したデュバルが、その剣跡を横目ににたりと笑った。
「すさまじい」感嘆を、口にした。「うれしいぞ。それでこそ“闇の炎”ダルガだ」
 声とともに吐き出された息が、ダルガの鼻腔を刺激した。
 腐臭がただよっていた。
 背筋を悪寒がかけぬける。
 ふり払うように、ダルガは横薙ぎに剣を打ちこんだ。
 デュバルの長身が、魔鳥のように宙を舞った。
 ふりひろげた両の手が、翼のように空をかく。
 そして──刃と化した右腕が、虚空を裂いてふりくだった。
 地を蹴って、ダルガは後方に逃れた。
 剣の軌道は完全に見切っていた。
 避けたはずだった。
 が──軌道の延長上にあった肩口から、ぶば、と血がしぶいた。
「ぐ──」
 うめきつつさらに後退する。
 落下する刃のいきおいが、真空をつくりだしたらしい。
 刀身よりさらに長大な攻撃圏を、デュバルはつくり出していることになる。
 ダルガは身がまえ、歯がみした。
 対等の条件で対峙したとしても、勝てるかどうかはまるで怪しい相手だった。
 それがいまは──人間であることさえ、超越してしまっている。
「くそ」落下する血流をわきに、ダルガはうめく。「今度はそっちが反則する番、てわけか」
 いって、歯をむき出した。
 笑いを、口もとにきざんだのである。
 そのまま、きゅっと真顔にもどり──目をとじた。
 対峙するデュバルがいぶかしげに顔をしかめる。
 が、こまかいことはどうでもいい、とでもいうように笑いをうかべた。
 異様なうめき声を腹の底からしぼり出しながら、刃と化した右腕をふりあげて突進した。
 打ちこんだ。
 同時に──ダルガの身体が、ゆらめくように横に動いた。
 剣の軌跡を側方にやり過ごし──下方から腰にのせた一撃を打ちあげる。
 横に逃れるデュバルの動きを追うように、その軌道がみるみる変化した。
 ずばりと、切りこんだ。
 わき腹から肩口へとぬける軌跡だが──デュバルの逃げ足のほうが寸毫の差ではやかった。
 剣尖は横腹を裂いただけで、空にぬけた。
 委細気にかけず、ダルガは瞑目したままふたたび、もとの姿勢に復元していた。
 みごとな自然体だった。
 が──
 デュバルのしぼり出す地獄の詠唱が、一段とそのトーンをあげた。
 同時に──裂かれた傷口が、青い燐光を放ちはじめた。
 放ちながらむくむくと、もりあがりはじめたのである。
 見る間にそれは、先の右腕とおなじく剣と化していった。
 気配で察したか、ちらりとひらいた片目でダルガはその光景をながめやる。
 動揺の気配はない。
 ただ、小さくひとつ、舌打ちをした。
「ずるいぜ、デュバル」
 つぶやくようにいって──さらに一撃を打ちこんだ。
 激烈ないきおいにあとおしされて大きくのびた突きが、デュバルの首筋に深く沈んだ。
 にたにた笑いが消えた。
 同時に、裂かれた首筋がまたもや燐光を放ちはじめる。
 ほとんど間をおかず、にゅるにゅるとそこからも刃が生えはじめた。
 眼前に剣をかまえ、ダルガは瞑目したままさらにデュバルに正対した。
「これこそ」言葉に腐臭をただよわせながら、デュバルは歓喜を満面にうかべつつ口にする。「これこそ、おれの望んでいた闘いだ……」
 対してダルガは、瞑目したまま口もとだけで、フッと笑った。
 首筋と横腹から、刃状の真白い異物を生やした化物が口にするセリフではない、と思ったのだ。
 意識だけがデュバルなのだろう。
 ああ、と、そのデュバルが感極まったようにため息をついた。
「昂揚する……気分が昂揚する」
 うめき、うわ言のようにつぶやきながら、ぶるぶると全身をふるわせはじめた。
 左腕が、青い燐光を放ちはじめた。
 五指が融合して尖りだし、ずるずると膨張していく。
 見る間にそれは骨の剣と化した。
 背中からも燐光。
 恐竜の背びれのようにして、おびただしい量の骨白の鋭利な刃が、肋骨の林のようにのび出していく。
 額からも、青白い光を放って無数の白いツノが生えでてきた。
 胸からも。
 肩からも。
 腰からも。
 身体中から、大小無数の骨刀が、針鼠のようにおびただしく成長していった。
 ヴァラヒダの第四の魔にふさわしい、変容ぶりであった。
 ダルガへの憎悪と妄執がこの変容をもたらしたのである。
「気持ちがいい……」異様な変態をとげながら、デュバルは全身を痙攣させて恍惚とうめいた。「決着を……つけよう」
 言葉の意味さえさだかならぬほど恍惚とした口調で、そうつぶやいた。
 ぎろりとダルガを見つめ、にたりと笑う。
 そして──弾丸と化した。
 もとは二本の腕にすぎなかった骨刀が、猛悪な武器と化して空気を裂いた。
 長剣でかろうじて猛撃を受けたが──いとも簡単にはね飛ばされた。
 ど、と洞窟の壁に背を打たれ、ダルガはずるりとおちる。
 立ちあがり──あわてて、ころがった。
 魔怪の急襲が岸壁に突き立った。
 おびただしい数の骨角が、一瞬のうちに無数の穴を岩壁にうがった。
「デュバル!」
 その背後からふいに、叫びが妖魔の名を呼んだ。
 アリユスだった。
 ふりむくツノだらけの妖魔にむけて、むすばれた印形がつき出された。
「デュバル! イア・イア・トゥオラの名において“風の刃”をうけよ!」
 打ちだされた無数の白光が、鋭利な短刀と化して妖魔の全身を強襲する。
 ばきばきと音を立てて、針鼠のように突き立ったツノのうちの幾本かがおれて砕けた。
 砕けた端から、青白い燐光が発した。
 復元する。
 く、とくちびるをかみしめながらアリユスは、新たに印を結び直した。
 その眼前に──
 ぬう、と黒い巨体が立ちはだかった。
 ながい獣の顔が、あきらかな笑いの表情をうかべていた。
 邪悪きわまりない笑顔であった。
「邪魔は、せぬがよい」
 シャダーイルは重く、無機質な声音で宣言し、大きく両手をひろげた。
 すばやく印形を変化させて、アリユスは光の刃をシャダーイルの巨体に打ちこんだ。
 まるで効かぬかのごとく、身じろぎひとつせぬまま黒光りする巨影は、おお、と短く吼えた。
 音声にのって──ごう、と、台風のような衝撃がたたずむ一同に叩きこまれた。
 洞奥深くに、見えぬ手にでも運ばれるかのごとく吹き飛ばされた。
 追ってシャダーイルの巨体が、ずしり、ずしりと、重々しい足どりでふみだした。
 ダルガと、そしてデュバルだけがそこに残された。
「つけよう」
 全身を青い燐光にかがやかせ、うわ言のようにデュバルはくりかえした。
「決着を」
 無数に生え出た白い刀身が、きりきりと音を立ててふるえた。
 変容をおえた全身が痙攣するようにわなわなとふるえ──わずかに人間の名残をとどめたその顔が、歓喜の笑みを満面にはりつけたままはらはらと落涙していた。
 ダルガは無言のまま、剣をかまえて腰をおとした。





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