ポケモン学研究所
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サトチ・グリーンのポケモン学講義

3.ぼんぐり考 〜ポケモンとぼんぐりの関係〜

 (以下の講義のアイデアは、旧「ポケモン・しゃべりたがり」の掲示板上での討論の内容が元になっています。 改めて、御礼申し上げます。)


サトコ「・・・ねえ、きいていい? いつだったかね、テレビで、ポケモンが、人間から、ぼんぐりの木を守った、って話をやってたの。
 それでね、友だちがいってたんだけど、『ぼんぐりの木なんて、モンスターボールを作るためにあるようなものなのに、なんで、ポケモンたち、わざわざ守ったりするんだろう?』って。 ポケモンをつかまえるモンスターボールのもとになる、ぼんぐりの木なんてない方が、ポケモンには、ありがたいんじゃないか、って。
 ・・・なんて、こたえたらいいか、わかんなかったんだけど、グリーンにーちゃんなら、どうこたえる?」

グリーン(−ー)「・・・なにも、ぼんぐりの木は、『モンスターボールを作って、ポケモンをゲットするため』にあるわけじゃない。 ポケモンが、『トレーナーにゲットされるため』に存在するわけじゃないのと、同じことだ。 木は木として、ポケモンはポケモンとして、自分自身を生きているだけだ。」

サ( −−)「・・・・・」

グ「・・・と言っても、それでは答えにならんだろうな。 どうせ、こんどの講義は、ぼんぐりと、モンスターボールについての話をするつもりだったから、そのあたりから始めよう。 ・・・ただし、長くなるぞ。」

サ(;^▽^)「・・・うん、わかった。」

グ「さて・・・、『ポケモンがぼんぐりの木を守る理由』だが、オレが思うに、大まかに言って、2つある。
 まず1つは、『食料確保のため』だ。 樹液にも、多くの生物が集まるし、ぼんぐりばかりではなく、あの手の木の実は、野生生物の大切な食糧だ。 いわば、『メシの種』を確保するのは、当然ということだな。」

サ( ・・)「へえ〜?? あれを食べるの?」

グ「ここに、先日サトチ・イエローのヤツから研究用に送ってもらった、黄ぼんぐりの実がある。 縦2つに切ると、こんな感じだ。 (下図を参照)
木に生っているクルミを採ったことがあるなら、構造が分かりやすいかも知れないな。」

ぼんぐりの構造図→ぼんぐり構造図

グ「赤、青、白など、亜種によって違う色の皮と薄い果肉につつまれて、固い殻がある。 その中に入っているのが種子の本体だ。 ボールに加工されるのは、この、種子を包む殻の部分だ。 この殻は、堅くて丈夫だが、発芽のときには、蝶番状の部分から、きれいにぱっくり口を開ける。 その継ぎ目をポケモンは知っていて、開けて中身を食べるわけだ。

 ぼんぐりの種子は、クルミやアーモンドのように、発芽のための栄養分をたっぷり貯えているから、ポケモンにとっては、ちょっとした御馳走というわけだな。 と、いっても、人間の口には合わないが・・・ おい。・・(−−;)」

サ(;>*<)「・・・!!!」(しぶ〜っ!!!!

グ(;−−) 「馬鹿・・・! 食べるのは、種子の中身だ。 外側の果肉なんか、普通はポケモンだってあんまり食べないんだぞ・・・。 ほら、これでうがいしろ。 ・・・まさか、オマエがかじるとは思わなかったぞ・・・! イエローのヤツの、食い意地張ったピカチュウじゃあるまいし。」

   ( ∴>/(o>□<o;)\「ピ〜ッカチュ〜!」(へ〜っくしょ〜い!))

   (( ・・) 「どうした、ピカ? いきなりくしゃみなんかして〜?」)

サ(;>o<)「・・・だってぇ〜・・ ポケモンたちがすきなのって、どんな味かと思ったんだもん・・・。」

グ(;−ー)「・・・やれやれ。 言っとくが、ポケモンと人間の味覚は違うんだ。 動物が平気で食べてるドングリなんかでも、人間は渋抜きしないと食べられない種類も多いんだぞ? 種子の部分も人間の口には合わないからな。 かじるなよ。

 ・・・しょうがない、一時休憩だ。 紅茶をいれるから、棚から、カップと皿とってくれ。 お茶菓子も、そのへんに、もらいもんがあるだろ。」

サ(^^)「わーい! ベーカリー・マサラの『ピカチュウのほっぺ』だー! これ、だいすき〜!

     (;^∇^)  ・・・あの〜、『カップと皿』って、もしかしてこのビーカーとシャーレのこと???」

グ「そうだ。 あと、砂糖とミルクはそこの広口ビンな。」

サ(;^^)(こ、こんなとこまで、オーキド研究所のマネしなくってもぉ〜!!)


サ(;^o^A「ふぅ〜。 やっと、しぶいのとれたぁ〜・・・。」

グ「さて、話の続きだが・・・、『ポケモンがぼんぐりの木を守る理由』の2つめは、『殻をシェルターとして使うため』だと思われる。」

(聞いてるヤツ! ・・・イエローのヤツみたいに『シェルダー?』 とか、くだらないボケをかますんじゃないぞ!!)

  ( ∴∴>(>ε<;)「・・ぶえっくしょ〜い!」)

  (/(o・・o)\「ピカ?」(サトチ、またくしゃみして、カゼでもひいたでちゅう?))

サ(?・・)「?しぇるたー?」

グ「『避難場所』とか『かくれが』のことだ。

 ことい氏の論文で、『ポケモンの自己データ化能力』について、『冬眠』機能の進化したものではないか、と推測していたのを覚えているか? その中に、こんな一節がある。

 『(略)モンスターボールに格納されているポケモンは、自分の情報すべてを、電気信号に変換しているのではないか。(略)ポケモンのこの能力は、「冬眠」機能の進化したものではないかと思われる。(略)元々は厳寒期、巣穴の内部等でひっそりと変換・再生していたのだろうが、モンスターボールと出会って状況は一変した。』

 ことい氏が、この論文を書いた時点では、まだカントーのポケモン学会には、ぼんぐりの存在は知られていなかったので、この論文では触れられていないがな。」

サ「そういえば、そんなことが書いてあったよね・・・。」

グ「そんな時、ただ、地面や木の穴にじかに入るよりも、かれらにとって、より快適・安全な隠れ家として、ぼんぐりのじょうぶな殻を、シェルターがわりに使ってきたわけだ。 種子の中身を食べたあとの殻だけなら、そこらにいくらでもころがってるわけだしな。

 『エネルギーのかたまり』状態というのは、空気中でも水中でも、不安定のようだし、『いれもの』があったほうが、拡散せずに安定していられるんだろう。 ・・・まあ、海の水系ポケモンとか、ぼんぐりのない地域のポケモンの場合は、貝殻とか、他の木の実の殻とか、なにか別なものを使ったんだろうな。 ただ、ぼんぐりの実は特に好んで使われるようだな。 渋皮がすべすべして快適、とかなにか、いろいろ理由はあるんだろうが。

 ・・・そして、そういう状態のポケモンをみつけた人間が、ぼんぐりの実をポケモン捕獲用に使いはじめ、やがて開発されたのが、モンスターボールというわけだ。」

サ「なるほど〜。 ・・・そういえば、ヒワダのポケセンでも、モンスターボールが売られるまで、みんな、ぼんぐりつかってポケモンつかまえてたんだ、って言ってた人がいたっけ。
 ・・・あれ? でも、その人、『ぼんぐりのなかみをだして、とくしゅなそうちをうめこむと、ポケモンをつかまえられるようになる』って言ってたけど? ぼんぐりだけでもいいの?」

グ「『特殊な装置』ってのは、キャプチャーフィールド発生装置なんかのことだな。 ・・・必ずしも、『絶対不可欠』、というわけじゃないが、なければ、捕獲率は全然違うだろうな。

 ・・・前にも話が出たが、モンスターボールというのは、例えば、「タコツボ」のようなものだ。 体力が低下した時に、避難場所をもとめるポケモンの本能を利用して、ボールに入るようにしむける物であって、入れ物自体に、「ポケモンをデータ化してとりこむ能力」があるわけじゃない。

 例えれば、『そのへんから切ってきた竹の竿にタコ糸にパンくず』(ぼんぐりの殻そのまま)を使っても、『人間国宝の名人の和竿に職人手巻きの毛ばり』(ガンテツボール)を使っても、『カーボンロッドにハイテクでキラキラ光るルアー』(市販のボール)を使っても、程度の差こそあれ、同じく「エサを求める魚の本能を利用して魚を釣る」(避難場所を求めるポケモンの本能を利用してゲットする)ことができる、ようなものだ。

 だから、ぼんぐりそのままでも『不可能』ではないんだが、 ・・・ボールがタダで手に入るかも?とか思ってるなら、やめとけよ。 市販のボールを使うのと、拾ったぼんぐりの殻をそのまま使うのじゃ、マッチやライターを使って火をつけるのと、そのへんの板っ切れをこすって火を起こす、くらいの難易度の差はあるだろうからな。 うまくいっても、何十個も投げて、ひんし寸前にヘロヘロに弱らせたLV2とか3のキャタピーあたりをゲットするのがやっとこすっとこ、ってとこだろう。

 ・・・話がずれたな。 現代のモンスターボールのくわしい構造については、次回の講義に回すことにしよう。 まあ、『ポケモンがぼんぐりの木を守る理由』については、そういうことだ。」

サφ(・・ )(メモメモ)「う〜ん、勉強になったなぁ・・・。 ぼんぐりって、そんなに、ポケモンにとって、たいせつなものだったんだね。」

グ「ポケモンにとってぼんぐりが大切なばかりじゃない。 ぼんぐりにとっても、ポケモンはパートナーなんだ。」

サ「え? なんで? 食べられたりするばっかりで、べつに、ぼんぐりには、いいことないんじゃないの?」

グ「そんなことはない。 実を食べたり、樹液を吸ったりするかわりに、バタフリーやビードルは花粉の媒介の手助けをするし、鳥ポケモンやクヌギダマなどは、ぼんぐりの葉を食い荒らす虫などを食べてくれる。 実を食べるコラッタやピカチュウだって、りっぱに役に立っているんだぞ?」

サ「? ・・・あ、リスとかが、ドングリをはこんでうめるのと、いっしょ?」

グ「そうだ。 ぼんぐりばかりではないが、植物にとって、種子散布というのは大変重要なことだ。 分布をひろげる必要もあるし、親植物のすぐ下に種子が落ちれば、日光があたらず育たない。 親から離れた場所に種子を運ぶ必要があるんだ。

 もちろんコラッタやピカチュウは、ほとんどの種子を食べてしまうが、食べのこされた分は、発芽にとって絶好な環境におかれることになり、次世代のぼんぐりの木を育てていることになる。 こんなふうに、ポケモンとぼんぐりは、一種の共生関係にあるわけだ。」

サ「そうかぁ・・。 おたがいに、助けあってるんだね。」

グ「そう、ポケモンとぼんぐりは、進化の歴史の中で、お互いに影響を与えながら進化してきた。 共進化というやつだな。 その過程で、共生の相手を絞り込んできたことにより、ぼんぐりはいくつかの種に分化していったのだろうと考えられている。 不特定多数の相手に花粉や種子を託すよりは、特定の相手をひきつけたほうが、効率がいいからな。

 中でも、ポケモンとの相互作用が比較的よくわかっている、黒ぼんぐりについて、ちょっと補足しよう。 黒ぼんぐりは知ってるな?」

サ(^^)「体重の重いポケモンをゲットしやすい、ヘビーボールができるんだよね!」

グ「そのとおり。 研究の結果、黒ぼんぐりには、イワークなど体重の重いポケモン、特にカビゴンをひきつける成分がふくまれていることが確認されているわけだが・・・、なぜだかわかるか?」

サ「コラッタとかといっしょ? ・・・かとおもったけど、カビゴンとかだと、実をパクパク全部食べちゃわない??」

グ「それでいいんだ。黒ぼんぐりは、他のぼんぐりと違い、『食べ残し型』ではなく『周食型』の戦略をとっているからな。」

サ(?・・)「『周食型』???」

グ「イチゴとかキウイフルーツをイメージするとわかりやすいか? 種子の周りに、動物が好むおいしい部分を作り、それと一緒に食べてもらうことによって、種子を運んでもらう方法のことだ。」

サ( ・・)「あ、なるほど。『まわり』だけを『たべる』んだね!」

グ「そうだ。 鳥のフンに、木の実の種子が入っていたりするのを見たことがないか? あんなふうに、丸呑みされて、フンと一緒に排出されれば、遠くまで分布をひろげることができるし、果肉に含まれる発芽阻害物質が消化されて、芽を出しやすくなるうえ、肥料も、もれなくついてくる、と。」

サ(;^^)「・・・肥料、ね〜。・・・」

グ「ただ、ぼんぐりの種子は、かなり大きいからな。 もっと体格の小さいポケモンに運んでもらうのは、ちょっと難しい。 カビゴンクラスの、体格の大きなポケモンでなければ、そんなふうに丸呑みはできないだろう。 だが、イワークなどでは、洞窟など、日光のささない、植物の成長に不適な場所で行動することも多く、散布者としてあまり優れているとは言えないだろうから、やはりカビゴンが一番だろうな。
  ・・・しかし、現在、黒ぼんぐりの木の分布しているあたりには、カビゴンの目撃例はほとんどない。 スリバチ山の奥当たりに少数生息していて、空腹時に降りてくるのでは、という未確認情報はあるが・・・。
 もしかすると、過去はもっとカビゴン、黒ぼんぐりの分布域は広かったのが、カビゴンが生息数を減らすにつれ、現在のように個体数が少なくなったのかも知れないな。 アフリカでは、ゾウによって種子が運ばれる木が、ゾウの個体数の減少にともない、分布をせばめているという話もある。 黒ぼんぐりの木を保護しようとすれば、カビゴンの保護も必要になってくるだろうな。」

サ「ふ〜ん・・・。 ぼんぐりとポケモンって、そんなかかわりがあったんだね・・・!」

グ「話は変わるが、他の種類のぼんぐりにも、特定のポケモンをひきつけたり、ポケモンの繁殖行動に影響を与えたりする、フェロモンのような成分が含まれていることが確認されている。 青ぼんぐりに水ポケモン誘引物質とか、桃ぼんぐりに性フェロモン類似物質とかな。」

サ( ・・)「もしかして、それが、ガンテツボールのヒミツ?」

グ「まあ、加工法にも秘密はありそうだが、少なくともその一部のようだな。 特に黒ぼんぐりの場合、カビゴンに丸呑みされても消化されないために、特に殻がぶあつくできていて、体格の大きいポケモンが暴れるのにも耐えられるという利点もあるしな。」

サ(;^^)「でも、『カビゴンが食べてもだいじょうぶ』なんて、よっぽどじょうぶにできてるんだね。 カビゴンって、毒でもカビでも、なんでも、へいきで食べて、消化しちゃうんでしょ?」

グ「・・・解毒能力が高いからといって、必ずしも、消化吸収能力が強いとはかぎらないぞ?
 ザボンを食べ荒らしたあとの畑で、カビゴンのフンの中からと思われる、多数のザボン種子の発芽が見られたという報告もある。 ・・・カビゴンの消化能力に関しては、まだ研究が進んでいないが、消化吸収能力があまり高くないせいで、一日400kgという大量の食物を食べなくては、必要量を吸収できない、ってことも考えられるだろう。」

サ「それもそうかぁ・・・。 なるほど〜。」

グ「さて、以上のように、ポケモン誘引成分に、ある程度生態的な役割が解明されている、黒ぼんぐりについてはともかく、他のぼんぐりについては、なぜそんな、ポケモンに作用する成分が含まれるのか、まだよくわかっていない部分も多いんだ。 生態的なメリットが不明というか・・・。
 まあ、通常生物でも、まったく生態的に関係があるとは思えない、マタタビにネコ科の動物を誘引するマタタビオールが含まれている、なんて例もあるから、似たような偶然なのかも知れないがな・・・。

 ただ、最近の研究によれば、ぼんぐりとポケモン、両方に共通した遺伝子配列も見つかっているらしく、ぼんぐり系の木とポケモンの間には、何らかの遺伝上のかかわりがあるのではないかという説も出されている。 1つは、ドリル番長氏のポケモンの起源に関する仮説のように、ポケモン(メタモン、もしくは草ポケモン)と、通常植物の間に、なんらかの交配がなされた結果だとする説。 もう一つは、ポケルスをベクターとする、遺伝子の水平移動説で・・・」

サ(;^0^)「グ、グリーンにーちゃ〜ん! なんだか、話がムズかしくて、わかんなくなってきちゃったよぉ〜!!」

グ(;−−)「悪い。 ちょっと脱線しすぎたな。 ・・・まあ、ポケモンとぼんぐりの関係については、大体わかったろう?」

サ(^ー^)「うん! これで、友だちに、ちゃんと答えてあげられるよ! じゃ、またこんどね!」

グ( ̄ー ̄)「こんどは、モンスターボールの構造についてやるからな。 予習しとけよ!」

サ(^0^;);;;(きゃーっ!!)


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