イタリア・ドライブ'97 (13) ミラノ・コモ編 (3)

[6月18日](水)

10:00頃

車でコモ市街地へ

12:00頃

船を待つ間にバールで昼食。小型船に乗って、一つ目の村アルジェーニョへ。村を散策後、船でコモに帰る。

15:00頃

ホテルへ戻ってホテルの庭園を散策、ちょっと買い物

16:00頃

ホテルのプールでのんびり昼寝

20:00頃

ホテルで夕食

湖畔の朝

 プーリア、シチリアと巡って来た後だけに、北イタリア・コモ湖畔の朝の日差しはさすがに柔らかく、空気は少しひんやりと肌寒い。

 ヴィラ・デステのメインダイニング「ザ・ベランダ」は白いバロック調の本館から庭園に斜めに大屋根をかけ、3方をガラスで囲ったつくりになっており、湖畔側の外部にも席がしつらえられている。

 天気もいいので湖畔の席をお願いし、行き交う小型クルーザーなどながめながらのんびり朝食をとる。ホテルは湖の西岸に位置するため、対岸の山は朝の逆光に沈み、彼方に航跡たつ水面は日がキラキラと映えて輝く。眩しさに目を細めると、そのまままた眠ってしまいそうだ。

ヴィラ・デステのフローティング・プール いくつかのテーブルをへだてて食事をする数家族の談笑、子供の声、かすかな食器のふれあう音、鳥のさえずり、彼方のボートのエンジン音。湖面に浮かべたプールに航跡が達すると、低い波音とともに、プールサイド全体がゆっくりと揺れる。

「うーん、いいじゃないの。シアワセ。」

コモの町散策

 コモ湖地方は絹織物の産地らしい。妻の目が輝く。

 しかし昨日ミラノで買い物の欲求をすっかり満たしてしまった彼女は余裕である。流行モノらしいケモノ柄の服やバッグを見つけても、好みではないからと珍しく購入意欲を見せないのであった。

 街並みはやはり北部らしいたたずまいだ。

 そういえばコモはロンバルディア・ロマネスク様式発祥の地。北イタリアのみならずヨーロッパ全土にこの様式を広めた建築家兼石工たちは「コモのマエストロたち(maestri comacini)」と呼ばれ、逆に「コマチーニ」がコモの地名の由来でもあるそうな。

 小さな町に程良い大きさのドゥオーモは正面の装飾がとても綺麗だ。こちらの様式はゴシックの建物にルネッサンスの装飾を付けた不思議な感じ。開口部が多いせいか内部は比較的明るく、タピスリーや絵画、彫刻などが飾られている。

舟で行き当たりばったり

 ケーブルカーで山に登るか、舟で湖に出るか。

 しばし2人で思案の後、山の上は寒そうだ舟にしようという軟弱な結論で、湖畔の船着き場へ行く。壁の時刻表とにらめっこし、遠くまで行ってしまうと時間がかかるし、とりあえず次の舟でひとつだけ行ってみるかと、これまたいい加減な結論。

 空席の多い小舟で湖面を北上すると、やがて左岸に我が宿ヴィラ・デステが見え、それを過ぎると、緑豊かな山の斜面に素敵な別荘(ヴィラ)が点在する湖岸を両側に見ながら進む。

 コモ湖はアルプス南端の谷間に水が溜まった様な湖で、広いところで2qもないのではないかと思うほど細長い。湖岸に接したヴィラは船着き場のある庭を持ち、糸杉が実に格好良く並んでいる。

 有名人のヴィラも多いらしく、ガイド付き「有名人ヴィラ見学ツアー」という企画もあるそうだ。

アルジェーニョに帰りの船が入ってくる「あー、いっこ欲しいよね」

「誰かくれないかねえ」

「なにそれ。がんばって手に入れようとか言わないわけ?」

 下船したのはわれわれ2人だけだった。アルジェーニョ。ガイドブックにもない小さな集落である。船着き場から湖岸道路を挟んで広場兼駐車場とバス停、道路と山からそそぐ渓流に沿って肩を寄せ合うように民家が並んでいた。

 午睡に入ってひっそりとした集落を少し歩き、帰りの舟が来るまで広場に面したバールで僕はビール、妻はパフェを注文した。

やるべきことは終わったね

 ホテルに帰って敷地内を散策。ショップを見つけてまた妻の目が輝く。

 午後も遅くなってからプールへでかけ、本格的に昼寝である。今回の旅行もそろそろ終わりということで、もう完全に脱力していた。

 夜は「ザ・ベランダ」で夕食。また外の席を頼んだのだが少し肌寒く失敗。肩と背中の開いた服の妻は鳥肌たててぼくの上着を奪う。

ヴィラ・デステで最後の夕食をとる ちゃんとした格好ほど、男は着込み、女は肌を出すというのは面白いものだ。気が付くと外の席の女性は多くが同じように連れの男性の上着を肩に羽織っている。

 フォアグラとポルチーニ(トリュフ)の前菜、ゴルゴンゾーラのペンネ、仔牛肉のソテー、バローロの赤。北イタリアはバターを使う料理が多いが、ここの料理はさらにフランス料理に近いような雰囲気だった。ワインはロンバルディアではこれといったものが無いそうで、お隣ピエモンテが有名だ。

 部屋に戻ってミラノで買った品々を箱や袋から出し、午後にヴィラで求めた大きなバックに詰め、箱や袋は丁寧にたたんでスーツケースに納める。

 夜半から雨が降り出し、イタリアへ来てこれほどしっかりした雨音を聞く夜は初めてだと、改めて乾燥していた南イタリアとシチリア巡りの感慨に浸りつつ眠る。

本日のお買い物

ボッティガ・ヴェネタのどでかいバッグ(買い物品を詰めるため)

シルクのショール 2枚/いずれもヴィラ内のショップで

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