イタリア・ドライブ'97 (8) シチリア編 (4)

[6月13日](金)

10:00頃

アグリジェントの神殿遺跡、州立考古学博物館を見学。旅行へ来て初めて日本人団体ツアーと一緒になる。

12:00頃

チェックアウト後、遺跡の残りを見学。アグリジェントを出て、少し内陸へ入って行く。途中、偶然見つけたトラットリアで昼食。

14:00頃

ピアッツァ・アルメリーナ近く、古代ローマのカザーレ荘の遺跡見学。団体ツアーも同じコースのようでまた一緒になる。

17:00頃

カルタジローネの陶板装飾の巨大階段見物。陶芸工房でお買い物。

20:00頃

シラクーサのホテル、フォルテ・アジップに到着。

22:00頃

ホテルで夕食。

遺跡巡りの団体ツアー

 朝一番で考古学博物館へ行き、遺跡から移された展示物を見る。

コンコルディアの神殿 遺跡地区には殆ど説明がなく、暑さもあって看板なんぞゆっくり読んでいる余裕はない。最初に博物館で遺跡について、特に建造された当時の復元図など見ておかないと、よく分からないまま廃墟をうろつくはめになる。博物館の敷地内の教会では、また結婚式が行われていた。

 遺跡地区へ行き、半分ほど見学したところで昼近くなったので、いったんホテルへ戻ろうと駐車場へ行くと、大型バスから日本人団体ツアーが降りてきた。大半は熟年夫婦やご婦人たちだが、若い女性も結構いるようだった。実はここからシラクーサまで2日間、同じコースをたどることになる。

「へー。こんなところをまわるツアーもあるんだねぇ。」

「あるよー。もう世界中どこだって。あるんだから。今は。」

 向こうもこんなところで日本人2人組が車に乗り込んで走り去るのを、不思議そうにながめているのだった。

遺跡案内は省略。ガイドブック参照のこと。

追い越しグランプリ

 アグリジェントからピアッツァ・アルメリーナへ、海岸から離れて内陸へ向かう。当然ゆるやかな登りの区間が多いが、道路は空いていて快適である。ところが大型トラックはやはりスピードが出ないのか、見通しの悪い登り勾配が続くと、その後ろには10数台の車が並んでしまう。

 そして、直線区間にでると追い越しが始まるのだが、これが凄まじい。

 日本の感覚だと追い越しの時、大型トラックのすぐ後ろの車から一台づつ、順番に追い越して行くだろう。ところがここでは、並んでいた10数台がいっせいに反対車線に飛び出すのである。後ろに加速の良い車がいれば、追い越し中の前の車をさらに外側から追い越そうと、反対側の路肩まで膨らんで行く。

 かくして、道幅いっぱいにダンゴ状態になって、あたかもグランプリのスタートのような様相を呈することになる。クラクションは鳴りっぱなしで、全車フル加速で追い越して行く。そこへ彼方から対向車が、こちらはパッシングしながら猛然と突進してくる。

 全車が床までアクセルを踏み込んでいるわけだから、多少は技能や度胸が影響するとしても、追い越し後の順番はおのずと、エンジンのパワーの差によって歴然と決まる。

「ひゃー、あっぷなかったぁ」

と胸をなで下ろしている頃には、メルセデスはもう遙か前方へ見えなくなっているし、小型フィアットはまだやっとトラックをパスしただけ、後方で苦しそうに黒い煙を吐いている。

子牛肉のサラダ

 内陸に入るとまた緑の多い風景に変わってくる。シチリアの内陸は穀倉地帯であり、小麦の産地なのだ。

 お腹が空いてきて突然、妻があそこに入ろうと指さすレストランに入る。高架道路の下、林の中のトラットリア。こやつはこういうところ鼻が利くのである。

 英語は片言も通じないが、地元のひとで賑わっており、好印象だ。牛肉のサラダっていうのは何だろうと注文してみると、ステーキを細切りにして野菜サラダの上に乗せた逸品だった。今までシーフード一辺倒だったので、とても新鮮な気分でした。

真夏の温室「ヴィラ・ロマーナ・デル・カサーレ」

古代ローマのカザーレ荘 ローマ帝政時代の貴族の別荘である。中庭を中心にホール(バシリカ)や浴場、食堂、その他多くの部屋が有機的に配置された壮大な館の跡。建物は失われているが、館全体の床に施されているモザイク画が見どころだ。

 モザイクを守るためか、1m程度の高さに組まれた足場の上から見学してゆく。もとあった建物の形はおおむね復元されているのだが、これが何故かガラスで作られているのだ。一見して嫌な予感。

カザーレ荘の床モザイク ガラスのため明るくてモザイク見学には良いが、予想通り温室そのものだった。内部の熱せられた空気は澱みきって、そよとも風が吹きゃしない。

 そこへアグリジェントで出会ったツアーバスで到着。ぞろぞろと一緒に巡ることになり、便乗してガイドさんの説明を聞いてしまう。汗まみれのお爺さんが具合悪くなり退場。これまた汗ダラダラのおばさんが、

「現地にお住まいなんですかぁー」

と妻に聞いていた。いえいえとんでもございません。

どえらい彩色陶板の巨大階段

 カルタジローネはそう大きな街ではないが、イスラム時代から盛んだった高級陶器の中心地である。バロック風の街並みや州立陶器博物館など、とりあえず見るべきものはあるが、なんと言っても凄いのはサンタ・マリア・デル・モンテ教会(名の通り山の上にある)へ登っていく巨大階段である。

カルタジローネの巨大階段 幅6〜8mくらいで長さ100mくらいを一直線に登る。蹴上げ25センチくらい、踏みしろ60センチぐらいあるから、小柄なひとは1歩づつではきついだろう。資料によると142段あるそうだ。

 この蹴上の部分に、一段ごとに異なる絵柄の彩色マヨルカ焼きの陶板がはめ込んである。従って、階段だけでも圧倒されるのに、下から見上げると極彩色の絵や幾何学模様が果てしなく続いているように見える。まさに天国への階段という感じである。

 思わずレッド・ツェッペリンを口ずさみつつ登って行くと、両側には陶器屋や陶芸工房が軒を連ねている。その両方を兼ねた一見に入る。1階が工房になっていて、入り口と2階が作品展示即売になっていた。挨拶だけして勝手に2階に上って行っても特についてこないし、その商売気ないところが気に入った。

 妻が気に入った大皿を見つけ1階から女性を呼んでくると、商品を見てにっこりとはにかみ笑いを浮かべた。なんとその皿は彼女の作品なのであった。

「あー! あなたがマエストロなのね」

 記念に握手して店を出る。大階段は上りも腿がきついが下りは膝にくる。下まで降りると足がガクガクと笑っていた。

本日のお買い物

 マヨルカ焼きの大皿/カルタジローネの巨大階段沿いの工房で。

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