イタリア・ドライブ'97 (7) シチリア編 (3)

[6月12日](木)

10:00頃

ヴィラ・イジェアをチェックアウト。パレルモ市内見学その2、お買い物と昼食。

14:00頃

パレルモを出て、シチリア島を反時計回りに移動開始。

15:00頃

セジェスタのギリシャ都市の遺跡見物。ここからしばらくはひたすら遺跡巡りとなる

18:30頃

アグリジェントのホテル、ヴィラ・アテナに到着。

20:30頃

ホテルで夕食。

パレルモの港の風景

 ヴィラ・イジェアは港の西側に海に面して建っているので、部屋やテラス・レストランからは港やヨットハーバーが一望できる。しかし、港は造船所や倉庫がならび、美しい海や山の背景にも関わらず美しい風景とはいえず、実に惜しい気がする。

 かつてはナポリと並び賞される美しい港だったのだそうだが、近代の窮乏から工業誘致に励み、おかげで都市は潤った反面、美しい港は失われてしまったのだそうだ。

残りのパレルモ観光を消化

 昨日閉まっていたバラティーナ礼拝堂へ。現在、州議会が入っているノルマン王宮の裏手から入る。州議会だけあって門はマシンガンを抱えた警官が守っているが、挨拶するとにっこりと手招きしてくれる。

 エマヌエレ大通りを下って昨日のマリナーラ広場へ。この日は車でいっぱいだった。係りのオヤジが空きスペースを探して誘導してくれる。で、2000リラ。昨日はこんな係りはいなかった。

 イタリアの駐車場係りの怪である。ちゃんとバッジをつけて領収書を切る正式そうな係りもいれば、自分で勝手に仕切っているような怪しげな自称係りもいる。まあ料金はこんなもので、暑い中ご苦労サンという感じなので、払ってやって下さい。

 州立美術館。裏通りの実に目立たないところにある。ペストの驚異を描いた「死の勝利」。チェファルーで見逃したアントネッロ・ダ・メッシーナの「受胎告知のマリア」。これだけじっくり見られればいい。(まだいろいろあるけど)

偶然中に入れてしまったマッシモ劇場

 映画ゴットファーザー完結編のクライマックスの舞台である。いちおう外からでも見ておこうと、近くに車を停めて大階段を登って行くと、上から何やら高価そうなスーツを着込んだオヤジがニコニコしながら手招きする。

「さあさあ、この券持って中へ入りなさーい。余っているのよーん。日本人? あー、良く来たねー。シチリアへようこそね。」

 よく分からないが、そんなことを言っているようだった。

マッシモ劇場内部 券をもらって中へ入ると、地元の高校生の団体が、舞台の前に固まって説明を受けている。しばらく観察していると、地元ロータリークラブ主催の見学会に出くわしたらしい。ついでにあの日本人も入れてあげようと、役員のオヤジが気まぐれに思いついたのだろう。ラッキーであった。

 劇場の内部はもう、言葉にならない美しさ。しかし思っていたよりは巨大ではないなという感じだった。でも幸運も重なって感激でした。

これまた灼熱のセジェスタ遺跡

 パレルモでしばし散策とセルフサービスのバールで昼食後、高速道路を西へ向かう。陽炎と逃げ水の揺らめく道路は後ろも前も遙かかなたに車が見えるだけ。

 セジェスタはバルバロ山の麓にギリシャ神殿。山の上には劇場の遺跡があるが、もともとは山の斜面全体が都市だったらしい。ドーリア式の神殿は内部の聖像安置室がなく、建設中に中断したとも、そうゆう開放的な施設だったとも、諸説がある。

 現在は人里離れた荒涼たる窪地のようなところであり、神殿の近くに駐車場と土産やバールの施設がある。フランス人ツアーの団体が大型バスでやって来ていた。

 劇場まではバスが30分間隔で送迎している。2000リラ。バスに乗り込んで行ったのは我々2人だけだった。登って行くと頂上の乗り場に15人ほどの客が、茹でダコのような顔をしてへたりこんでいた。いやな予感。

 バスを降り、ちょっと尾根を歩くと反対側の斜面に劇場の遺跡が広がる。山の頂上の少し側面をえぐってしつらえたすり鉢場の客席なので、舞台の向こうの眺望がすばらしい。遙か下界、赤茶けた緩やかな起伏の大地に、緑の木々と民家がまだら模様を描き、そこに現代の象徴のような高速道路が延びている。

 などと、悠長に感心しているのは15分が限度。いやな予感が当たる。日陰が全くない。バス乗り場に戻ってもバスはまだ来ない。太陽は容赦なく照りつけ、乾いた熱風が吹き抜ける。

 かくて、我々も茹でダコとなって熱い石積みの上にへたりこみ、バスを待ち続けたのでした。

荒涼さが増すシチリア南部

 ぼくの風邪がうつったのか、少々鼻をぐずつかせていた妻はセジェスタの暑さでちょっと参ってしまったようだった。そこで途中寄るはずだったセリヌンテの遺跡はパス。カステルヴェトラーノで高速道路を降りると、そのままアグリジェントへ向かった。

アグリジェント付近 シチリア南岸は高速道路がない。しかし道路は比較的広く、空いているのでほぼ100q超で一般道路を疾走していく。追い越し時には120qを越えることもあるが、そんな脇を自転車が走っていたりするのが妙な感覚だ。

 次第に緑が少なくなり、赤い禿げ山を縫うようにして、車を飛ばしてゆくと、深い谷に掛けられた高架橋に差し掛かり、山の上に巨大な戦艦のようなアグリジェントの街が見えてくる。そして高架橋自体がその街目指して駆け登って行く。

 遺跡地区は街の南の低いところ、それでも海に向かってさらにもう一段降りる手前、棚の縁のような場所にある。そしてホテル、ヴィラ・アテナは遺跡地区の近くにあるので、街には登らずに高架橋から降りていく。

闇夜に浮かぶギリシャ神殿

 18世紀、アグリジェントがジェルジェンティと呼ばれていた頃、ゲーテも「イタリア紀行」にまとめた旅行でここにも立ち寄っている。早く神殿を見たいのにまず街の見物をさせられてうずうずしているのが面白い。

 ちなみにこの本、あの気難しそうな詩聖ゲーテが、明るい陽光の中で変わってゆくワタシ、みたいに瞳に星を輝かせた乙女のような、ただの物見遊山のオジサンと化していて、とってもかわいいので読んでみて下さい。

 今回のシチリア巡り、実はゲーテとほぼ同じコースをたどっているのです。

ホテル・ヴィラ・アテナ 現代の遺跡群は夜間ライトアップされていて、ヴィラ・アテナからは400m程の距離。神殿が1つ2つと闇夜に浮かんでいるような幻想的な光景。これを正面に臨む部屋は人気があってなかなかとれない。我々の部屋も横を向いていて、テラスに出ないと見られなかった。しかもバスタブなくてシャワーだけ。

 やっと涼しくなってきた夜風が気持ちいいテラス・レストランで夕食。メニューはまたワンパターンなので省略。大きな盆に山積みの魚から選んで焼いてもらう。遺跡地区にこんな近いホテルはここだけなので、系列のホテル・カオスから送迎バスで食事だけとりに来る客もいる。

 ハウスワインはメッツォ(半分)という注文の仕方があると聞いていたので、頼んでみると、かなりたっぷりと出てきた。後で知ったのだが、この場合は半リットルの意味なのだ。ボトルではだいだい3分の2本分か。多いはずである。

 しっかり食べたせいか、幻想的なテラスの背景のためか、妻の体調もすっかり復活したようでした。

本日のお買い物

 シーツとピローケースのセット/パレルモのフレッテにて

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