イタリア・ドライブ記 (12) ポルトフィーノそぞろ歩き
7月25日(火) 終日、ホテル周辺で過ごす
8:00頃、起床
アマルフィ海岸を離れてからローマ、フィレンツェと猛暑の街を歩き回る旅が続き、いささか疲労が溜まっていた。2週間の旅行も終盤に近づき、少しゆっくりしてから日本に帰るため、ここリヴィエラ海岸ポルトフィーノに2泊滞在することにしたのだが、これは正解だった。
朝食はイタリアへ来て初めて、パンと飲物の他に多種類のハムとチーズ、玉子、ドルチェ(ケーキ)などの付いたブュッフェだった。これも嬉しい。そういえばこっちへ来てから夕食は一回もドルチェまでたどり付かなかった。つい欲張って一皿多く注文してしまうためか、入るところは別のはずの妻も、デザートと言い出すことはなかったのである。
アメリカ人らしい何組かの旅行客がなごやかに自己紹介しあっていた。海外で出会うと大抵よそよそしく無視し合う日本人と対照的に、アメリカ人はすぐに仲良くなって大騒ぎを始める。
朝食後、ホテルまわりを散策した。改めて眺める景色は入り江に大小のクルーザーが浮かび、色とりどりの建物が密集した港から上には、瀟洒な建物と様々な植物が絶妙に配置され、箱庭のような美しさである。アマルフィ海岸の荒々しくも雄大な岩の絶壁の景観と対比させて、イタリアを南から北まではるばる来たものだとしばし感慨にひたるのだった。
どこかで見た記憶のある巨大な客船が眼下をゆっくりと動いている。ポジターノからカプリ島へ行く船上で出会ったオデッセイ号だった。我々が2週間近くかけて陸路をどたばた旅してきた間、かの船はゆっくりと海路をきて、ここでまた出会ったという訳である。日本で言えば長崎で出会った船に、函館で偶然また出会うという感じだろうか。何だか勝手に親しみを覚えてしまった。
「今度はこの船で旅せよという神の啓示かもしれないよ」
妻がニヤニヤしながら言う。
ホテルのブティックをちょっと覗くと、イタリア版小森のおばちゃまという感じの派手なお婆さんがさかんにジャッカ(ジャケット)を奨める。安かったけどアルマーニはあんまし好みじゃないのよとパス。ふと壁の写真を見るとスーパーモデルのナオミと肩を組むお婆さんの姿だった。ああこ
のコ知っているよというと、ああマイ・フレンドだとさりげなくも誇らしげである。ミラノ・コレクションがはねた後でも来るのだろうか。ま、本当かどうかは定かではない。
ポルトフィーノの港近くには余り買い物する所もないので、車で町まで出かけたが、お昼も過ぎてそろそろシェスタになる店が多いようだった。インテリアの店を見つけ、明日また器を買いに立ち寄ることにした。
浜辺にぎっしりと並ぶデッキチェアは海水浴客でいっぱいだった。巨大なバストを無防備にさらすトップレス姿が多く、目のやり場に困る。
昼食はバールでパニーニとピザ、ビール。この昼食メニューもさすがにマンネリ感が出てきた。後は目的もなく海岸通りをそぞろ歩くだけ。こういう日もあっていい。
14:00頃、ホテルのプール
町のお店もすっかり閉まってしまったので、ホテルに戻り、後はひたすらプールサイドで文庫本片手にゴロ寝を決め込んだ。海水プールだったので浮力が強く、ラッコのように上向きに浮かんで漂うのも気持ちが良い。
夕食もホテルでとった。この日は一日ゆっくりリヴィエラ海岸のリゾートを満喫し、身体を休めた。ただし、さらに全身の日焼けを重ね、いよいよ異様に黒い東洋人となってしまったのである。
24:00頃
荷造りして就寝。明日は最後の一泊。ミラノへ向かう。