イタリア・ドライブ記 (5) 渋滞とキウーゾだらけのナポリ

 

 

7月18日(火) ナポリ市街、ポンペイ観光

 

6:00頃、起床。

 

時差に慣れてくると疲れも出てきて朝はかえって辛い。昨晩、調子に乗って飲み過ぎた宿酔いもある。朝食後、フロントでナポリまでどのくらいかかるかと聞くと1時間くらいだという。サレルノからポジターノまで2時間半もかかったので半信半疑であった。

 

10:00頃、出発。

 

ナポリへ向かう高速道路ソレント方面へ向かい、じきに半島の細くなっているところで峠越えをする。半島の先の方ほど道路は高い所を通っているので景色が素晴らしい。道路も広くて比較的新しい。交通量も少なく全く快適だった。初めからこっちのルートを使えば苦労せず済んだのだ。

 

ナポリ湾に沿って走り、カステラマーレ・ディ・スタービアの町からはナポリまで高速道路となる。正面にベスビオ火山の勇姿を見ながらナポリ市街へ向かった。2車線道路でセンターラインを跨ぐ追い越しもやってみるが、反対側から追い越してくる車があると、まだちょっとビビるのであった。しかしホントに1時間ちょいだった。

 

11:30頃、ナポリ市街地、到着。

 

ところが市街地に降りてナポリ駅からウンベルトT世通りに入るとびっしりと渋滞だった。めざす所はまず国立考古博物館である。まあしかし、下手に脇道へ入ると迷ってドツボにはまりそうな気もするので気長に進む。地図を見ながら一方通行の道を入ると、サンタ・キァーラ教会の前で通行止め、歩行者天国となっていた。ここは駐車場にもなっているので、歩いて行こうとも考えたが既に満杯で、警官がパーキングロット以外に停めようとする車に注意して回っていた。

 

しかたがないので別のルートを探し、また渋滞のウンベルトT世通りを引き返す。途中、行きたい方向へは左折禁止。駅まで引き返して広場でUターン。また渋滞・・・。

 

運転の荒さではナポリが一番である。とにかく強引に割り込まないと永遠に前へは進めない。信号機は参考程度に従えば良いようだが、逆に青でも安心してはいけなし、多少車が触れ合っても(!)平気なのである。窓を開けると熱気と騒音と排気ガスがむっと入ってくる。「ナポリを見て死ね」というがホントに死にそうだ。しかしこの言葉はもともと航海の安全祈願の言葉であって意味が違う。

 

しかし慣れてくるとそれなりに暗黙のルールみたいなモノがあって、割り込みに対しては実に寛容であることが分かってくる。ゆっくりと車の鼻先を突っ込めば確実にゆずってくれるのである。

 

12:30頃、やっと国立考古博物館の近くへ到着。

 

もうひとつの目的地、カポディモンテ王宮と国立博物館はここから1本道で、ともに午後2時までだったので、ちょっと焦ったわれわれは、そちらを先にしようと北へ向かった。

 

ところが正面ゲートと思われる門が閉まっていた。ぐるぐると周囲を走るが他に入口はない。停めて地図を見ているとオヤジが近づいてきて何か言っていので、道を教えてくれるのかと思ったら、どうも後部座席のバックやらコンソールに置いた財布やらをしまいたまえ、ここらは泥棒が多いから見える所に置いていてはいかんと、注意してくれたようだ。親切なオヤジである。

 

また何やら工事をしている門の前に車を止めて地図を広げていると、妻が中へ入って英語のしゃべれる女性を連れてきた。こヤツは笑顔だけで誰かを引っ張ってきて後の会話をぼくに任せるというのが常套手段なのだ。

 

聞くと修復作業のため閉館中であった。

 

「キウーゾ?」(ここだけイタリア語が出る。chiuso・閉鎖、閉店)

「シィ、シィ。」

 

新聞に公告を出してあるとのことだが、そんなもの読んでいる訳がない。主な展示物は街中の施設で展示していますよと言うが、そこも午前中までで午後はキウーゾなのだった。

 

諦めて、急いで国立考古博物館に戻ったが、あと1時間しかない。しかも、チケットオフィスで示された展示室開館状況のボードには、3分の2程の展示室にキウーゾの札が貼ってあった。

 

でもせっかく来たのだからと入る。イタリア考古学の素養のないわれわれには入れただけでも結構だ。巨大な彫像などを感心しつつ楽しんだのである。

 

14:00頃、閉館。

 

「キウーゾ」と大きな声で言いながら係員がやってきた。追い立てられて来た一団の観光客がわれわれを見て、

 

「日本人か? 日本人はこんなに早く仕事を終えたりしないよな。」

 

ぼくが笑って頷くと、

 

「ほらみろ。ワシらアメリカ人だって昼飯の後、昼寝したりなんかしないぞ。ガッハッハ。」

 

係員はただ苦笑しながら「キウーゾ」と繰り返した。

 

14:30頃、昼食。

 

考古博物館の近くのベッリーニというバールへ。リングィーネの紙包み焼き(シーフードどっさり)と、ベッリーニのピザ(シンプル)。

 

ウンベルトT世ガレリア「スッ晴らしい!」

 

昼食後、ウンベルトT世ガレリア周辺で買い物をしようと散策するが、この時間帯はシエスタで軒並みキウーゾなのだ。夕方から夜9時頃までまた開けるのだが待っている時間はない。ホテル部屋にあったフレッテのベットカバーが気に入った妻は同じモノを買おうと探すがその店もキウーゾであった。

 

「いいわよ。ホテルで買うわ」と妻は不敵に呟いた。

 

17:00頃、ポンペイ観光。

 

ポンペイの秘画ナポリから高速道路で戻り、ソレント方面とサレルノ方面の分岐近くが、遺跡の町ポンペイである。観光地としてはお約束の名所である。考古博物館のショップで買ってきた日本語版の解説書が非常に役立った。秘画を見て大笑いするイタリア農協ツアーとおぼしき団体がぞろぞろ歩いていた。午後7時のキウーゾまで暑い中歩いてヘトヘトとなった。

 

帰りの高速入口は方向別になっていた。知らずに進入してナポリへ舞い戻る。なじり合うわれわれ。

 

19:30頃、ナポリでUターン。

 

20:00頃、夕暮れどきの夕立。2週間の旅行期間で唯一の雨だった。半島の峠を越すと夕立はすぐに止み、夕焼けに染まるティレニア海が美しい。

 

21:00頃、ポジターノの村に立ち寄る。

 

もう平気で路上駐車をするほどに神経は太くなっていた。路地を歩いて下って行くと入り江の斜面に密集する民家に明かりが灯り美しい街並みは、イタリアと中近東あたりが(良く知らないけれど)ミックスしたような雰囲気である。

 

観光客がそぞろ歩いているなか土産物を物色したりして散策した。現金が少なくなっていたのでカンビオ(cambio・両替商)で両替する。酒屋でリモンチェッロを買った。これはカプリ島の土産物屋にも並んでいる名産品。良く判らないのでかわいい小さな瓶に入ったのを買ってみたが、後で飲んだらとてつもなく甘い酒であった。その他プロシュート、ワイン、ミネラル水など買う。安い。

 

バールでケーキとカキ氷を食べる。カキ氷はちょっと心配だったが一日暑かったので誘惑に負けたのである。アマルフィでの予定は消化したので多少腹を壊しても良いやと思ったのだ。が、結局なにごともなかった。

 

22:00頃、ホテル帰着。

 

買ってきたプロシュートでワインを飲み、夕食は抜いた。ここのところ豪勢に食べまくっていたので、胃腸と贅肉と財布のことを少し考えたのだ。

 

就寝時間は忘れた。

 

 

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