イタリア・ドライブ記 (4) カプリ島のサンタルチア親父
7月17日(月) カプリ島観光
6:30頃、起床。
この日は車を使わなかったのでドライブ記ではない。
レストランで朝食後、短パンに着替えエレベーターで遥か下のビーチへ降りていった。ビーチといっても断崖の入り組んだ入り江の砂利海岸で、コンクリートの広いテラスにビーチチェアが並べてある。その一角が船着き場になっていた。
教会では男性の短パンや、女性のノースリーブやミニめのスカートは入れてもらえないのだが、カプリ島で教会見学することもあるまいと、せいぜい涼しい格好をした。短パンといってもリゾートによくある7分ズボンというヤツだ。短足太めの日本人であるぼくが着用すると山下清画伯か、天才バカボンのような感じなので、われわれはこの格好を「バカボン」と呼んでいる。
エレベーターが下に着くと頭上には極彩色の鳥が入った大きな鳥かごが吊るされ、地面には大きな黒い犬が2匹、のっそり寝そべってお出迎えしてくれる。この犬はたぶんウォータードッグという種だと思うが、気が向くと客と一緒に海で泳いでサービスしたりするという変わったヤツなのである。このホテルはこいつを含め少なくとも4匹の犬がいて愛敬を振りまくでもなく、のんびりとロビーに寝そべったりしている。なんとなく放任主義ホテルなのだ。
アマルフィの町の方から大型クルーザーが来て乗船し、途中ポジターノでさらに客を積み込み、海岸に沿って進んだ。海から臨むソレント半島の雄大な岩肌の奇観が別世界のように美しい。
10:00頃、青の洞窟、着。
カプリ島の海岸には「青の洞窟」の他にも「海牛の洞窟」「アルセナーリの洞窟」といくつかの洞窟がある。いきなり着いたので良く判らなかったが、観光名所となっているのは「青」だから、やっぱり「青の洞窟」に付いたのだと思う。
洞窟見学のボートが20隻ほど客を乗せて漂っており、海面すれすれにある洞窟口から入ったり出たりしていた。
洞窟の出入りは波の上下動を見計らいながら一番水面が下がった時に、鎖を掴んで一気に突っ込む。やっとボートが通れるくらいの入り口は、水面が上がると殆ど没するので、その瞬間は絶妙なタイミングが要求され、スリル満点である。その時当然、客は狭いボートの底にはいつくばっていなければならない。
ボートがすっと来て刑事コロンボそっくりの船頭の親父がわれわれを手招きする。2・3人づつボートの舳先と後部に乗り込み、受付ボートのところで1人5千リラ弱の見学料を払う。おつりは船頭の手数料だと一方的に取られた。
「ジャポーネ?」
「シィ。ソノ・ジャポーネ。」
われわれが日本人と判ると刑事コロンボはニヤリと笑い、日本人多いよ、良いカメラだねなどとリップサービスをひとしきり、次に大声でサンタルチアを歌い始めた。だみ声である。
ボートの反対側に乗っていたドイツ人家族の少女が自分のカメラを突き出し写真撮って下さいという。お互いにカメラを交換して写真を撮りつつ、にわかに再現したなごやかな三国同盟となって入り口に向かった。
女性たちの悲鳴とともに洞窟内に突入した。中は真っ暗で、刑事コロンボの促すままに起きあがって振り返ると、入り口方向の海面が真っ青に光っていた。たぶん入り口の下部がより大きく海面下で開いていて、大量の光が水中から入っているのであろう。目が慣れると、そこは直径30m程のドーム状の洞窟だった。
「どうだ。美しいネ。素晴らしいネ。さ、写真とるといいネ。」
前後の乗客の写真を撮るなど刑事コロンボは大サービスである。
そしてまた大声でサンタルチアを熱唱し始めた。洞窟内にいる他の船でもやっているのでだみ声サンタルチアの輪唱が木霊する。確かにこれは始めてみる美しさだが、ちょっとうるさ過ぎるぞ。
さて、外に出てボートを降りる時、歌のサービス料として1万リラのチップを要求された。ぼくが渋って千リラ出しても2千リラ出しても、大声で「マンマミーア」と叫ぶばかりである。同乗のドイツ人のお母さんとしばし顔を見合わせ「しかたないね」という感じで払う。たった10分程で2組から合わせて2万リラとは良い稼ぎだ。
クルーザーに乗り込んでやれやれと見ると、刑事コロンボはまた日本人OLと思われる客を乗せてだみ声サンタルチアを歌っていた。日本人はあまり居ないのに。こいつなかなかやるのである。
11:00頃、再び島を巡ってマリナ・ピッコラへ上陸。
16:30に迎えに来るというので、バスでカプリの町へ行った。バールでパニーニとジェラートで昼食後、更にバスでアナ・カプリへ行き、リフトに乗ってソラーロ山頂へ登る。このへんはお約束の観光ルートである。空気がちょっとガスっていてソレント半島の眺望は霞んでいた。
カプリに戻って買い物。大きな皿(約5000円)を買い、更に行くとブティック街があった。うちの妻が大好きなフェラガモへ飛び込むと、日本人だらけだった。
日本人、居るところには居るのである。
ここで早くも2足のパンプス購入(1足約12000円)。やれやれである。
16:00頃、アナ・カプリに戻り休憩。
海水浴客でごった返していた。妻は裸足になって海に。ぼくはカフェでビールを飲みながら水着の女性など鑑賞。うーん、おお、いやいや、あれあれ、凄いものであるな。何だかぼくもすっかり中年親父である。
18:00頃、ホテル帰着。
その後は前日と同様、レストランで夕食。この日はプロシュート(生ハム)、カルニ(肉)、ピザ、シチリアの白ワインを注文した。
「うーん。スッ晴らしい!」
ここも再びセンゴクさんでお願いします。
部屋へ帰って更に持ってきたバーボンを飲んで、すっかり酔っぱらい、バスジェル入れてジャグジーを作動させて泡だらけになり(やっちゃだめです)、「明日はナポリ行くぞぉ」とわめいてごきげんである。
22:00頃、早い熟眠。