ボラボラ島記(1)
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7月12日(火)
11時に第1ターミナル受付なので、ゆっくりと朝食取って、送迎バスに乗り込む。この辺のホテルは1泊すると10日程度はただで車が駐車できるので、毎回利用している。午前便の場合、一番楽なアクセス方法だ。
チケットを受け取りチェックインを済ませ、カード会社のラウンジで無料のビールを飲む。いつも機内食が胃にもたれるので、昼食は抜くことにする。出国審査の後、免税バーボンと煙草を買う。これもいつものパターンだ。
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AF280便パペーテ・ファアア空港行きはほぼ定刻通り、午後2時頃飛び立った。
タヒチは物価が高いと聞いたので飛行機代は節約してエコノミークラスを取ったのだが、殆ど満席ながら幸運にも隣が空席で、長旅の窮屈はあまり感じなかった。
機内食とともにウォッカ、シャンパン、赤、白ワイン、とどめにスコッチと流し込む。AFの機内食は噂通りおいしい。去年のガルーダの悲惨なビジネスクラスより絶対うまい。機内食を美味しいと感じたのは実に久しぶりだった。
機内食というシロモノは海外旅行初心者の頃は物珍しくて楽しみにしているものだが、旅も回数を重ねると味も内容もなんていうこともなく、身動きの出来ない機内で機械的に与えられるエサのような気がし、次第に苦痛にすらなって来るものだ。
映画はクール・ランニング。いい旅をってか(ジャマイカのスラングでそんな意味らしい)。しかし、わざわざ吹き替え版になっている。フランス語を喋るラスタマンってのも何だか妙だねえ、などと酔っぱらって独りごちつつ、熟睡。
2回目の機内食は軽食。その後トイレに女性の長い列ができる。そうこうするうち着陸態勢に入ってあきらめる方も多い。到着前の身支度は早めに、みんなが食事を終える前にすばやくトイレに立つのが鉄則なのだ。
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着陸直前まで外は真っ暗だった。やがて見事な朝焼けの中、島影が浮かんできて無事に到着。所要時間は約11時間。タヒチの時差は−19時。朝の6時だから日本は次の日の夜中の1時ということになる。
タヒチアン・バンドの騒々しいお出迎えも最初は嬉しいけれど、入国審査ブースが2つきりなので長々と待たされ、まだ眠い頭にはやがて少々苦痛になってくる。ボラボラ行きの乗り換え時間が迫ってきて、少々焦り始めた。
ところが荷物を取って小走りに行くと、全然余裕の係員。何のことはない。全員そろうまで飛行機は飛ばないのだ。
タヒチ島からボラボラ島への便は双発のプロペラ機で数十人乗り(いいかげん)のエアータヒチ、VT402便。乗客の8割くらいは日本人だ。成田−タヒチ直行便が週1本なので、火曜日は日本人の移動日ってことなのだ。運びきれないので、後発の便があるようだ。たぶん大型機は離着陸できないのだろう。
40分強でボラボラ島に到着。まだ朝の8時頃だ。
空港は環礁の一つに造られていて、小さなターミナルの裏手は船着き場になっている。埠頭の正面にはラグーンの向こうに本島のオテマヌ山が美しい。
数分後に後発のもう一機が到着。
大半の客はどうもクラブメット往きの船に乗り込んでいるようだ。ここで台車に詰まれて降りてきた荷物の山から自分のトランクを降ろしてもらう。うっかりしてると、みんなと同じ船に積まれてしまいそうだ。
次に客が多かったのはボラボラ・ラグーン・リゾート
程なくしてホテル・ボラボラのクルーザーがやってきた。乗り込んだのは日本人4組と欧米人1組のみだった。
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クルーザーでラグーンの中を飛ばすうちに、チェックインシートが配られめいめい記入。支払いのカードをこの時申告するのだが、銀行との取り決めで、カードによる上額制限があるらしい。ダイナース−7万CFP,VISA・MASTER−9万CFP,アメックス−12万CFP,JCB−40万CFP。もっともホテル代は支払い済みなので他に大金を使うあてもなく、我々にとってはまあどのカードでも問題ない。
ただし、ボラボラ島ではVISA・MASTER以外はオンラインシステムでの承認確認が出来なくて、承認には48時間もかかり、週末にはそれも出来ないということで、はっきりいってお店でいきなり使うことはできない。お出かけの時は忘れずに。
右手にボラボラ・ラグーン・リゾート、左手に本島のバイタペの町などを見ながら20分程でホテルの船着き場へ到着。
記入済みのシートを持ってレセプション棟へ行き、チェックインを済ませて水上コテージに案内される。我々の水上コテージは船着き場のすぐ隣で、その場所が良いのだか、悪いのかはわからないが、美しい海とオテマヌ山が一望できる位置なので、とりあえず満足だ。
テラスから階段を降りると海面すれすれのデッキがあって、そこにシャワーもあり、直接泳げるようになっている。ただし膝上ぐらいの深さで、実際コテージまわりで泳いでいるのは子供くらいなものだ。
部屋はシンプルでそこそこ広く、空調はないが風が抜けるので全く暑くは感じない。テレビはなく、ソニーのミニコンポ(ラジオとカセットデッキ)、冷蔵庫、そしてコーヒーメーカーとレギュラーコーヒー(これは嬉しい)が常備してある。
ひととおり、部屋をチェックしたり、ホテル内を散策して、まだやっとお昼だ。
「昼飯食いにいこーぜぇ」とか言いながら5日間のスケジュールなどを相談するうちに、2人とも眠りこんでしまった。
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はっと目覚めると日は赤々とラグーンに沈もうとしている。
「おい、やばいよ。」と起きだし、取りあえずバイタペの町でダンス大会があるみたいなので、でかけることにする。
ロビーでル・トラック(トラックを改造した乗合バス)のチケットを買って、
「時間がないのでこれとこれとこれをとにかく一緒に早くね。」
という感じで、ホテルのレストランであたふたと食事。
バイタペの町(町と呼べるのはここだけ)まではバスで15分程度。
6月下旬頃から7月半ばまで、この季節はヘイヴァ・イ・タヒチ(意味知らぬ)といって、タヒチのお祭り月間なのだ。毎日どこかで何かの行事があって、ホテルの従業員も休んでしまうので人手が足りなくなってしまうらしい。
その日の夜はタヒチアンダンス選手権大会、みたいな催しで、100人程からなる幾つもの団体が、町の広場でダンスを競い合うわけだ。1団体2・30分かけて延々と踊る。最初は凄いねぇなどと見物しているが、1時間もたつともういいやって感じ。
夜店をひやかしながら広場周辺をひとまわりする。見上げると星がギラギラと輝いて涙が出るほど美しい。しかしそれもだんだん飽きて帰りのバスの到着を待ちわびるようになる。
うーん、成田からここまで、この日は長かった。しっかり死んだように昼寝したにもかかわらず、コテージに帰るとじきに寝入ってしまった。四方開け放した窓から入る海風がとても心地よい。まさに楽園の夜は更ける。
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