8月8日 さぁ再出発・・・のはずが

■足止め
6日は自転車W杯観戦、7日はぼけぼけと「休日」をとっていた(「休日」といういい方も変だな、無職なんだし)わけで、そろそろ走りましょうよ、という意識がさすがに自分の中からも沸いてくる。これまではアムステルダムからハンブルクに向かってほぼ一路まっすぐで北東に向かって走ってきた。これからはたしかにいろいろと選択肢はあるのだろうけど順当に考えればベルリンに向かって、すなわち南東へと一路驀進とするのが普通の感覚というものでございましょう。  
 しかし・・・朝6時、起きてみれば小雨模様である。ここから天気が悪化するのか、はたまた好転するのかさっぱり予想がつかない。とりあえず、YHのチェックアウトリミットの9時ぎりぎりまで様子を見ることにする。近くの駅まで行ってスタンドで新聞を買って天気予報のチェック・・・どうやら一日中雨は上がらないらしい。どうしたものか。少しでも小止みになれば出たいのだけども・・・。  
 そんな天気で逡巡しているちんたさん、だがしかし、本日は意外なところから足止めを食らうこととなってしまいました。とりあえず準備だけでもしようかね、とYHの地下にあるガレージまで下り、いつもの出発前の儀式、空気圧チェックを・・・と思ったところ、ない、ないのです、空気入れ。ありりり?ロードレーサーのチューブラータイヤというのは一夜明けただけでも相当空気が抜けてしまうもの。空気入れが無いことには、つーか、毎日空気を入れないことにはまったく走れないのです。その必要レベル特Aクラスのグッズ、空気入れがないのです。普段はフレームのドリンクホルダ脇にセットしてある空気入れ・・・。

・・・恐らく3日前の大転倒の時に落としたな・・・・?

 いや、ガレージに置いているうちに誰かに持って行かれたという可能性もなきにしもあらずなのだけど、そう考え始めると旅が一気につまらなくなってしまうし、まぁ、普通に考えればあせってそそくさと再スタートしたあのクラッシュの方があやしい。きれいにちらばったもんな、荷物も運転手も。  


■お買い物
 ま、いずれにしろ、天気如何に関わらず、本日は足止めとなってしまいました。チェックアウトの10分後に同じ所にチェックインをするという荒業をかまして、本日は自転車屋を探してハンブルク散策です。YHの受付のおばはんに聞いてみると、自転車屋は地下鉄で2駅ほど行ったところ、地図でいうとここにあるよ、と印をつけてくれる。2駅も行かないといけないの〜と思うと同時に、そんな遠いところの自転車屋をピンポイントで指示できるおばはんに脱帽。  
 ま、行ってみましょう。今回の旅では地下鉄に乗ることは無いんじゃないかとも思っていたのですが。 ハンブルクの地下鉄は、というかヨーロッパの地下鉄のたいていがそうなのですが、切符は「どこどこ駅まで」とかいうのではなく、ゾーン制(ゾーンの中ならどこまで行ってもいい)かつ時間制です。例えば2時間券ならゾーン内なら2時間の間は乗り放題なわけで、何回乗り降りしてもいいようです。切符を買ったら最初に乗る時間のスタンプを押す機械に差し込みます(要は改札とかは無いわけです)。ヨーロッパを動いている間中、よくこのシステムでキセル乗車が無いものだ・・・と思うのですが、後々、聞いてみれば地元の連中の8割方は切符なんか買ってないんじゃないか?とのこと。たま〜に検札もあったりしてその時は結構大量の人数が引っかかっていてそれはそれで見ていると面白いそうです。実際、ちんたも検札には遭遇しました。  あと、地下鉄というか鉄道ネタで行きますと、ヨーロッパでは電車が止まっても自分でボタンなりレバーにアクセスしないと目の前の扉は開いてくれません。田舎の汽車と同じです(ただし閉めるのは自分ではできない)ので、地方の方は何ら違和感ないかもしれません。日本の感覚でいるとついついドアの前で突っ立ってしまい後ろの人がにゅっと手を伸ばされ代わりにドアを開けられてしまったりします。
ハンブルグの地下鉄。正面から見るとキレイなのですが、側面は落書きだらけ。きれいなまま残っている車両などほとんどありません。ドイツ人は落書き好き。
 おばはんに言われたとおり、地下鉄で二駅ほど行ったところ。ほぼ迷うことも無く自転車屋はありました。中に入って見て回ると・・・ありました、空気入れ。いくつかあって、今まで持っていたのと同等品は無かったのですが、高いのと安いのがいくつか。これまで3日間でも結構不便を感じていたので、ちょっと清水ダイビングな気分で高いほうに手を出します。79DM(約4000円)。すでに雨の街歩き用の傘なんかも買っちゃったりしているので本日は午前10時にして早くも一日の予算はるかにオーバーです。  


■ハンブルグ郊外へ
 さーて、ポンプも買ったしなにすべぇかな・・・ということで時間も大幅に余ってしまいました。すでに街中はW杯観戦を兼ねながら散々歩き回りました。それならば、ということで郊外に足を伸ばすことにしました。ちょうど地下鉄の接続もいいし。
 そんなわけで、この旅始まって以来の観光らしい観光です。行き先は郊外にあるノイエンガメ収容所跡。観光で行くところがそれかい、という感じもしますが、ちんたさん、日本を出る前に「シンドラーのリスト」「アドルフに告ぐ(全巻)」をつるべ打ちのように見てきてしまったので、ついついその手のところに足が向いてしまいます。収容所跡に行くにはバスを使わなくちゃ行けないということでバスも初体験です。地下鉄と共通チケットのようで、地下鉄駅で買ったチケットをひらひらさせるとそのまま乗せてくれました。  

ノイエンガメ収容所の一角にあるモニュメント。


■収容所跡
 ノイエンガメ収容所跡はまぁその名のごとくナチスのユダヤ人収容所の跡で、ナチスの中では割と重要な位置付けの大きな収容所だったようです。ただ、いわゆるガス室のような設備は無かったらしく、とにかく働かせまくることを旨とした収容所だったようです。それでも莫大な数の犠牲があったようで、これは後で知った話ですが、アンネ・フランクとともに「隠れ家」に一緒に住んでいた誰やらさん(失念)も拘束後、ここに送られて犠牲になったそうです。
 雨がしとしとと降る中を、さまざまなモニュメントを見て回ります。
 ここは収容所のあった場所が一部再利用されているのですが、その建物には真新しい高い壁と有刺鉄線が張られていて、護送車?みたいな窓を最小限につぶした車が出入りしています。小さな窓からのぞく顔からすると少年院?あるいは隔離病院?という感じでしたが、表札があるわけでもなく何なのかはよくわかりませんでしたが、自分の意思で自由に出たり入ったりできる施設では無さそうで、収容所の跡地利用としては実にシュールな建物だなぁと思います。なにやらその施設の周囲でも雰囲気の怪しげな連中がうろうろしていたのでびびりんなちんたさんはそそくさと退散してきてしまいましたが、どうやらその奥に真打の展示館があったようです。・・・ってそこまで歩かせるんだとしたら、べらぼうな距離を歩かせる施設だなぁとも思ったり。ちんたさん、足はいっぱいいっぱいです(←それでもお前は自転車で旅してるやつなのか?)  

収容所の中心的な施設だった煉瓦工場跡。


■あてもなく、することもなく
 再びハンブルグ市街、YHに戻ったのは午後4時頃。この頃には雨も上がって日が差してくるようになりました。相変わらず港のあたりでうろうろ、ふらふら。結構出不精で、いろいろ見て回るのはめんどくさくてしょうがないのです。そんなわけできわめて限定された範囲の中だけでうろうろする私。旅先で出会う連中は誰もがこまめに見るべきところはちゃんと見る人たちで感心することしきり。ぼーっとするだけなら、なにもドイツくんだりまで来なくても代々木公園でもいいじゃないか、とも思うのですが、ひたすらぼーっとしてビールをあおるばかりのちんたさん。本日の夕食もシュニッツェル。いまだ他の料理をまともに注文できないでいるようです。ぽてちん。  




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