8月5日 輪をかけてすんなりとはいかない日々・・・

■早朝のブレーメン
   朝。ちょっと早起き6時起床。別段、目覚ましをかけているわけでもないのですが、早起きが生活のサイクルとして定着しつつあります。疲れ果てて12時くらいには寝てたりするからでしょうかね?
 とりあえず、ちょっとブレーメンの街を散歩。朝7時くらいだとまだほとんど人通りがありません。パン屋でパンを買って朝食・・・があまりにも甘いパンで全部食いきれずにギブアップ。
 この散歩の間に見つけた薬屋と自転車屋。チェックアウトの後で改めて立ち寄ります。薬屋はリップクリームが欲しかったため。とにかく、ヨーロッパに入って4日、空気がとても乾燥しているので唇が荒れに荒れまくっているのでどうしても欲しかった一品(ついでに通信用の単3電池も購入)。自転車屋の方は前々日からの懸案となっているリアホイールの折れ切ったスポークのリペアです。が、立ち寄ってみると前日の店と同じく「うちではロードレーサーの修理はできないんだ」とのこと。昨日はここから遙か彼方に離れた店を紹介されてしまったのですが、本日は200mほどの距離の所にあるお店を教えてもらいました。こちらのお店の開店時間にはまだ1時間ほど間があるので、ブレーメンの川っぺりでしばらくぼーっと時間つぶし。前日も歩いたリバーサイドテラス。向こう岸にはなんちゃらとかいうビール(有名らしい)の工場が見えます。

ブレーメンの川っぺり。しばらくぼーっとしていましたが1時間弱とはいえ、この旅でぼーっとした時間を過ごすのは初めてだということにも気付く。


■ドイツの自転車屋
 再度立ち寄った自転車屋さん、三度目の正直か、修理してもらえました。ついでに振れとりなんかもしてもらっちゃったりして。修理してもらっている間、店の中をうろうろして見回ったのですが、自転車の価格はほぼ日本と同じくらいですね。対DMレートが50円を切れば安いと感じるかな?さらにいろいろ見てみるとパーツ関係はほとんど日本のシマノ一色。意外やカンパニョーロは一個もありませんでした? スポーク3本+振れ取り:14DM(約700円)
安いっ!


自転車屋の中。どの自転車屋も概ね日本の自転車屋より大きめ。


■マジでどこ走っていいやら
 さぁ、出発です。もう11時近くになっているので、先を急ぎましょう。急いでいる割にはブレーメンの街からどの道を通って出ればいいのかさっぱりわからなかったり、バスの運ちゃんに教えられた通りに進んだら知らぬ間に高速道路に入っちゃってて、車のドライバーに思いっきし怒られてみたりと、本日もなんだかちぐはぐな感じで進んでいきます。


■ジャージ姿でレストラン
 11時に出発だったのであっという間にお昼時です。ありゃりゃあ、まだ40kmも走っていないのにね。しかし、本日も道の回りは農地ばかりで、レストランどころかGSも滅多にありません。できればあまり金をかけたくなかったのですが、見つけたレストランを逃すと次にいつ食事にありつけるかわかりません。とりあえず入ってしまいましょう。
 入ったのは小さな街に1軒だけあったレストラン。お昼のランチもやってます。土曜日なせいかお休みの人も多いみたいで、店の一角では男連中が集まってカードに興じていました。しかし、「歩き方」はじめとして、様々なガイド本には「ドイツのレストランはマナーにうるさく・・・云々」と例外なく書いてあるのですが、ちんたさんマナーもへったくれもなくサイクルジャージにレーサーパンツというほとんど競輪選手のような格好で御入場です。でも、まぁ入れちゃうもんですね。それほど高級な店に入ってないせいもありましたが、この後もずっとドレスコードで入店を断られた・・・ということはありませんでした。


小さな街のレストランと本日のランチセット
 今日のお昼のランチはスペアリブ。スープとデザート抜きならさらに安くなるようで、もちろんそちらにします。しかし、その「安いほう」でもこれまたでっかいでっかいスペアリブ。それも付け合わせのポテトフライは小さめのボールに山盛りでスプーンですくって食べる・・・みたい。そのほかにも温野菜とバケットがついて・・・つくづくドイツは食べ物が幸せな国です。つーか、ドイツ人これは明らかに食いすぎだ。・・・が、それは良いんですが、日頃、お箸で暮らしている日本人にはスペアリブにナイフとフォークで対峙するというのはなかなかに困難な作業でありました(^^;)。 昼ランチ(スペアリブ):13.5DM(約680円)(


■♪丘を越え行こうよ
 満腹、満足です。さぁ、先を急ぎましょう。だんだん天気も良くなってきて暑いくらいです。今日はこのままハンブルグまでなだれ込むつもりです。
 さすがにドイツに入ってからはオランダのように真っ平らとはいかず、丘を登ったり下ったりが続きます、がそれほどきっつい丘も無く、ほとんどギアは固定で、シフトレバーに指をかけることがほとんどありません。のほほ〜んと漕いでいればいいのですから、とてものんびり、のんびり、いい気分(ま、20km/h位で走ってるしね)。

今日もまた、ずっとこれ。ずっと農地。


■デモ
   しかし。

 ハンブルグまであと30kmほど、というところにあるTostedtという街の中心部に入った頃、急に道路が渋滞してきました。いや、ちんたの方は自転車道ですからそのまます〜いすいと動かない車を後目に進んでいくのですが、ほどなく渋滞の先頭が。

 なんじゃこりゃ?

 街の中心と思われる交差点で厳つい制服に身を包んだ警官がうじゃ、うじゃ、うじゃ。どうやら、道を封鎖している?え?なぜ?さらに近づいて見ると「Nazis Raus!」とか書いた看板を掲げていたり?座り込んでいたり?する人が見えます。ナジス?ん?あ、ナチス?え?ナチスがなに?
 封鎖している女性警官(日本じゃ機動隊?でも女性もたくさんいた)に聞いてみると「この通りを迂回すれば先に進めるかもしれない」「この封鎖がいつとけるかは私にもわからない」とのこと?なに〜!?今日の僕のハンブルグはどうなるの?う〜ん、最悪、今日はここであきらめて宿泊かなぁ・・・と半ばこの街で宿を取ることも覚悟しながら、ツーリストインフォメーション探しも兼ねて、迂回してみる。迂回するとそこは住宅街で、他にも渋滞に見切りを付けた車が迂回してきてたりします・・・が、進んでいるうちに先ほどよりもいっそう雰囲気が怪しくなってきました。なにやら厳めしい車、日本で言うところの機動隊の装甲車みたいなもんでしょうか?そして、先ほどの交差点よりもさらにおびただしい数の警官が歩いてきます、そしてその後ろからは・・・・黒づくめの服に身を包んだスキンヘッドの集団が・・・

 迂回してわざわざネオナチのデモの真ん中に突っ込んでしまった〜!!

 ニュース等で最近、ドイツでもネオナチが元気だという話は聞いていたけれども、まさか本物御活躍中に遭遇してしまうとは。ナチらしく?シュプレヒコールも実に統率が取れていて強そう。好奇心で観察しまくりたい心がなきにしもあらずですが、ネオナチって言えばばりばりの右翼というか外国人排斥運動の人達でしょう?ちんたさんこの国じゃ外国人だもん、こえーよ、こえーよ。実際にはデモの隊列の両側をネオナチの連中より数倍怖そうな制服警官が警棒やライフルを持って警備しているわけで、まぁその人達がいるから大事に至ることは無いだろうと多少は安心していたのですが、さすがにカメラを向ける度胸はありません。人種で排斥されちゃうということの怖さを数万分の1だけ実体験したような気分。このデモは後日、新聞その他で結構報道されてました。




後で知った耳学問「Nazis Raus!」=「ナチス、出てけ!」だそうです


■大迷子
 そんなわけでネオナチ様のおかげでこちらの行程はべた遅れです。急ぎましょう。交通封鎖もデモが通り過ぎて解けていきました。
 途中、馬車などが走るのどかな森の中の道を抜け、Harburgという目的地Humburgの川を挟んで少し手前の街に着いたのは3時半頃でした。OKOK、この分なら、5時頃には宿に入ってシャワーだぜ。
 ・・・と思っていたのですが、この川越えが大変です。地図で見てもいまいちわからないのです。つーか、20万分の1の地図では大雑把すぎて都市では太刀打ちできないのです。ここまではそれが問題となるような大都市は通らなかったので良かったのですがハンブルグ都市圏ではそうは行きませんでした。とにかく人に聞きまくるのですがいまいちよくわかりません。ちんたの発音がハルブルグとハンブルグで紛らわしかったせいもあるかもしれませんが、何度やってもHarbrugの駅に戻ってきてしまいます。なんてこったい〜。
 結局、正しい方向に進み始めたのは1時間半も迷いに迷った後。この間20km近く迷走しているのですから大変なものです。しかし、ちょっと進んでは迷い、ちょっと進んでは迷いの連続です。何人かに道を聞き、ようやく「この道をまっすぐ行けばハンブルグ中心街だよ」という所までたどり着きました。もうこの時点で夕方6時を越えています。少なくとも日没までには何とかしなくては。
 しかし、「この道をまっすぐ」なのはその通りなのですが、それは程なく現れた標識からも確かなのですが、どうにも道のりが長そうです。おまけにハンブルグの港湾地帯に入ってきてしまいました。うらぶれた雰囲気の貨車ヤードや荷さばき所。今日は土曜日なので人影もまばらです。傾きかけた夕日の中で怪しい雰囲気さらに倍!という感じです。海外旅行初心者のちんたにとってこれはかなり怖い状況です。あうあう、麻薬の取引ってこう言うところでやるんだよね、という感じ。ちんたさん、内心、かなり焦っています。


■重なる災難
 そんな時。

 ふと後ろを振り返った時にバランスを崩し、ガードレールに大激突。靴とペダルを固定しているクリップも外れ、放り出されるちんた、転がる自転車、散乱する荷物・・・・。

 あうあうあ、最悪です。心の中は半泣き、というか全泣き
 とりあえず。セルフチェック。怪我、骨異常なし、擦り傷いくつか、他痛み、無し・・・自転車は?こんなところで走行不能になったら終わりだ、でも、結構全力で突っ込んじゃったし・・・ペダル、回る。タイヤ、パンク無し、ハンドル・・・あ、ハンドルが思いっきり曲がっている。ちょうどステム(ハンドルの真ん中の縦の支柱)を中心にハンドルが回ってしまっている。左手が遠くへ、右手が手前へ。ちょうど昔あったスーパーマンポジションのようになってしまっている。さらにチェックするとシフト、ブレーキとも異常はない・・・とりあえず走れそうだ。贅沢を言っていられる状況ではないので荷物をかき集めめるのももどかしく、あたふたと再出発。スーパーマンポジションでGOです。
 あたりはいくら進んでも港湾地帯。ヒスパニックの多い港湾住宅が並んでいます。うらぶれた雰囲気は相変わらず。ちんたさんの「びびりメーター」はもうレッドゾーンいっぱいです。昼間はあんなにスピードが出なかったのに、ことここに至って38km/hで巡航というレースでも出せなかったようなハイスピードではしる私。しかし、もう8時近くなって日も沈もうとしてきています、や、や、やばすぎる〜〜。つーか、港湾がでかすぎるんだよ、ハンブルグ〜!


■飛び込みチェックイン
   やっとハンブルグ市街への最後の川を渡り、中心部まで数kmとなったところで日没。とりあえずもう今日はYHとか安宿とか贅沢は言ってられません。通りがかりの人に聞くと「ホテル?この辺のホテルは危ないというか良いホテルはないぜ」とのことですが、それはかまっていられません。とにかく見つけたホテルでそんなに高くなければ、即決で行こうと決めてます。だって、心は全泣きなんだもの。中心部がどれくらい遠くにあるのかもよくわかんないしさ。
 そんなわけで、中心部っぽいところに入ったところでいくつかホテルの看板も見えてきました。とにかく最初の一軒目に飛び込んで、値段を聞いてみれば80DMとのこと。OKOK、ここに決めましょう。

ふーーーーーーーーーー。

数時間つきまとっていた緊張と危機感からやっと解放されるちんた。80DMはちょっと高いけど、まぁ、いいか。トルコ人っぽいおじさんと客なのか従業員なのかちょっと美男子っぽい少年がいるフロントでチェックイン。  


■貞操の危機!?
 部屋に上がってみるとどうやら部屋はツインルームのシングルユースのようでした。おお、ちょっと得した気分。とにかく、へとへとに疲れたちんたさん、荷物をほどくのもそこそこにシャワーですシャワー。は〜生き返るねー。
 シャワーを浴びてバンダナを洗濯して干して、さ、飯でも食いに行こう、と荷物をロッカーに放り込もうとしたところ・・・

 なに!?

 そのロッカーにはすでに荷物が入っているのです。男物のジャケットと大きな黒い旅行鞄。どゆこと???このツインルームはシングルユースじゃなくって?男二人で使えってか?もしかして、これが噂に聞くホモホテルという奴!?急になんだかお尻のあたりがむずむずしてきます。って、イヤに決まってるじゃん。え?まじで?そういえば道行く人の「この辺のホテルは危ない」っていうのはこういうことだったのか?そういえばフロントにいるトルコ人とあの少年はもうデキてるのか?そんなことが頭の中を駆けめぐり、30秒ほど呆然としてしまうちんた。男として生きているとなかなか実感する機会は無いのかも知れませんが、つーか、今まで無かったのだけど、今、ここでいわゆる貞操の危機というものに極めて現実的に対峙させられてしまっているちんたさん、そうか、女性の皆さん、こういうことなのね、冷や汗どころの話ではありません。あわてて駆け下りてフロントへ。「このキーの部屋、誰か使ってるぞ」と苦情、つーか、部屋を変えてちょうだいと懇願。

「おお、悪い悪い、キー間違えて渡しちゃったよ、こっちだ」

間違えちゃったじゃねぇよ、バカ野郎(^^;)。

そんなわけで、洗濯までやってお店を広げたところをまとめ直し、正しい部屋にお引っ越し・・・・やっと安住の地が得られました・・・・もう・・・今日はいったいどうなってるんだ・・・・。もう、いろいろなことが起こりすぎて身も心もくたくた。これでまだ渡欧4日目、全体の8分の1しか走っていないのに、これですから先が思いやられます。
 もう、あまり外を出歩く気力も無く、つーか、出歩いてみるとこのあたりかなり怪しい地帯でヌードショーやらカジノやらが林立しているちょっとした歌舞伎町みたいなところのようです・・・ってほんとに、ホモホテルじゃないんだろうな?ここ?とにかく気力がないのでその手の店には見向きもせず、ケバブ屋でドネルケバブとポテト、そしてビールを買い込んでホテルの自室で食べる。このケバブとは旅行中、実に長いつきあいになるのだけど、ケバブの話はまた別の日に改めて・・・。

 本日は・・・・疲れ果てました・・・。




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