低速重量弾狙撃銃2
written 2019/6/29
昔書いた低速重量弾狙撃銃のコンテンツの続きです。
前回書いたときから10年以上が過ぎたため、分かってきた事や状況がいろいろと変わってきたので、それに合わせた内容になります。
また、以下のコンテンツとも関連があります。
使用弾重量に合わせた初速セッティング
シリンダ形状と弾重量
ボルトアクションライフル等で0.28gやそれ以上の重量弾を撃ちだすためのセッティングについての話です。
概要
飛距離は弾重量に依存し、重いほうが飛距離がある。
軽量弾で銃口付近での最大パワーが出る銃が多い。
銃のセッティング次第で、その重量の弾でどのぐらいのパワーを出すか変化させられる。
そのためには軽量弾での効率を落として調整。
銃刀法違反にならないように注意。
昔書いた重量弾と相性の良い組み合わせ
昔書いた「低速重量弾狙撃銃」のコンテンツで重量弾を撃ちだすセッティングは以下のように書きました。
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A.シリンダー容量を増やす
B.気密性をあげる
C.バレル内径を小さくする
D.大きめの弾を使う
E.バレルを短くする
F.ホップを弱くする
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現実的にこの中に使えるのはA,B,Eかなと思います。
Cについてはよくよく考えるとデメリットのほうが多いように感じます。
エア容量としては効率的になるのですが、軽量弾+弱いホップの組み合わせで弾速が出やすくなり、初速調整が難しくなります。
むしろCの代わりにEのバレルを短くする方法をとるのが現実的です。
Fについては、やってしまうと有効飛距離が落ちるため、やはりできれば避けたいところです。
ただし、ホップは弱めのほうがサバゲでは使いやすい傾向があります。
弾重量=飛距離
今の0.98jの規制のもとでは、むやみにパワーを上げて飛距離を稼ぐことはできません。
しかし、セッティングがしっかりあっているのであれば、弾が重ければ重いほど飛距離は伸びます。
これを満たすには以下の要素をクリアしている必要があります。
・銃口付近での撃ちだしパワーは軽量弾と同じ(初速ではなくパワー)
・その弾を十分浮きあげさせるだけのホップスピンをかけている
この2点ができていれば軽量弾より遠くまで飛びます。
もちろん、常識を超えたほど重い場合は、弾がいくら高速で回転させたとしても弾を浮き上がらせるのは無理だと思われます。
重量弾が軽量弾に比べて遠くまで飛ぶ理由は、以下の要素によります。
・空気抵抗に負けづらく、遠距離でも弾速が落ちづらい
重量弾は空気抵抗に負けづらく、遠距離まで弾速が持続します。
銃口付近での初速は軽量弾のほうが速いですが、遠距離では重量弾のほうが速い弾速を記録するのが普通です。
・バックスピンが遠距離まで持続する。
軽量弾に比べてバックスピンの回転速度が落ちづらく、遠距離まで持続します。
結果、軽量弾より遠距離で弾の浮き上がりが発生します。
銃刀法に合わせ、すべての状況で規制値を超えないようにする
これがかなり大事な要素です。
銃刀法には0.2gで0.98jを超えない事の表記はありますが、弾重量とホップのかけ方についての記載はありません。
ホップのかけ方は法律に書くような事ではないと思いますが、弾重量が書かれていないのは、ややおかしい印象を受けます。
もし警察沙汰になった場合、軽量弾から重量弾まで様々な弾で弾速チェックした挙句、どれか一つでも規制値を超えていたら検挙という事は十分あり得ます。
弾とホップの組み合わせで銃のパワーは変わります。
一般には0.2g弾と弱いホップあたりから、0.25gあたりで最高パワーを記録する物が多いですが、重量弾用にカスタムされた銃や、ノーマル銃でも一部の銃は重量弾でも最高パワーを記録します。
・余談、アサヒM40事件のタナカのカシオペア事件
過去にエアガンが銃刀法違反により違法と認定され、回収になった事件が3度はあります。
コクサイ M29
アサヒ M40
タナカ カシオペアリボルバー
どれもカート式のエアガンで、カートリッジの中にガスを注入し、それを撃ちだす方式です。
これらが実弾を発射可能という事で違法銃とされました。
このうち、M40とカシオペアリボルパーはM29の教訓から、実銃とは違う構造をさせていました。
具体的には実銃の場合、カートリッジの中心を後ろから叩いて発火させますが、M40、カシオペアともに前から叩くという方法を採用し、実弾を発射できなくしています。
それでも、パイプなどで改造パーツを自作することで実弾使用可能と判断されています。
これを考えると、自分の状況で銃刀法に触れていないのでOKとは言えません。
ましてやホップが弱い場合に大丈夫、強い場合に大丈夫、使用弾がどの重さだから大丈夫。などとは到底言えません。
軽量弾でのパワー効率を落とす
多くのエアガンで0.2gから0.25gのノンホップから適正ホップで最も高いパワーが出ます。
0.28gのような重量弾でなおかつホップをかけると、パワーダウンしてしまう銃が多くなっています。
重量弾で最高パワーを出すには、軽量弾でのパワー効率を落とすようなカスタムをしていきます。
例えば0.28gの使用をメインとした理想としては
0.2g 0.7j
0.25g 0.8j
0.28g 0.9j
0.3g 0.8j
のように、自分の使う弾で最高パワーが出るように調整し、それ以外ではパワーがやや落ちるようにしていきます。
軽量弾でも重量弾でもほぼ同じ弾速で撃ちだす方法
一般に重量弾を使うと軽量弾よりも弾速が落ちます。
ただ、現実性は置いておいて理屈の上では、これがほぼ全く同じ初速で撃ちだす方法があります。
たとえば
0.2gで80m/sで0.64J。
0.3gでも80m/sで0.96J。
0.4gなら80m/sで1.28Jで違法。
このようなセッティングとしてあげられるのは以下の物です。
・ピストンを極端に重くする。
・シリンダーは使わず、ピストンをBB弾に直撃させる。
・現実的ではないほど強力なスプリングを使用したと仮定し、ピストンの前進速度を80m/sに設定。
さらに重い弾を使うとパワーが上がっていきます。
イメージしやすいように、エアガンではなくピストンの直打撃の例えにしました。
しかし、エアで撃ちだすにしても内径6mmのシリンダーを使った場合はどうなるでしょうか。
・ビリヤードでのたとえ
ビリヤードでボールをほかのボールに当てた時、真ん中に当てると当てたボールは止まり、当てられたボールが当てられた速度になります。
これはボールの重量が等しいからで、もし当てたボールが当てられたボールの倍の重量だとした場合、当てられたボールは2倍の速度にはならず、当てたボールと同じ速度にしかなりません。
余ったパワーは当てられた弾には伝わりきりません。
パスカルの原理
シリンダー内に掛かる圧力はどの面に足しても均等。
シリンダーの太さの違いを使い、力と速度と変換できる原理です。
エアガンの場合、太いシリンダーで直径6mmのバレルのエアを流し込むため、ピストンの押し込む力を速度に変換して弾を撃ちだしています。
太いシリンダーは軽量弾を高速で撃ちだすのに適しており、ほぼ全ての銃がこのためのセッティングです。
細いシリンダーは速度への変換は少ないですが、力のあるエアとなります(最大圧力も高い)
一般にピストン打撃速度だけでは、BB弾を遠くに飛ばすだけの速度が稼げないため、このようにして力を速度に変えています。
・自転車での例え
自転車などのギアが近い感じです。
変速ギアのある自転車では、以下のようになります。
高いギア = 力はないが速い
低いギア = 力はあるが遅い
高いギアは最高速度は出やすい反面、出だしと上り坂などのように高い抵抗がかかった状態では前進することが難しくなります。
つまり抵抗がない状態では速く進むが抵抗がかかると進めなくなる。
これをエアガンのピストン動作の動きにすると自転車の高いギア的なピストン動作をするエアガンは、軽量弾や弱いホップに向いています。
自転車の低いギア的な動きをするエアガンは、重量弾にホップをかけた時に向いています。
ピストン重量
ピストン重量が重いほど、パワー効率は落ちますが、軽量弾と重量弾での初速の差は小さくなります。
つまりは重量弾向けです。
このバランスは悩ましいところで、重くしていくと単純にパワー効率は落ち、その分強いスプリングを必要とします。
ピストン重量違いの測定結果は以下のコンテンツにも買いあります。
使用弾重量に合わせたセッティング
加速シリンダー
現状、加速シリンダーについてはうまく調べられていないので記述できません。
加速シリンダーを使うとシリンダー容量は減りますが、ピストンの押し出し力は増えると思います。
バレル
低速重量弾の場合、長いバレルや精密バレルを使うと軽量弾での弾速が出すぎるので、向かない。
チャンバーでせっかく強いスピンをかけても、バレルが長いとバレル内でスピンが低下する可能性もあるので短めバレルのほうが望ましいです。
極端な例えであればチャンバー出てすぐ銃口ぐらいが軽量弾とノンホップの組み合わせでパワーが上がりづらくなります。
パーツ組み合わせとセッティング
・スプリング
パワー効率が落ちるのでスプリングが強めになる。
・シリンダー
細くて長いシリンダーが向いている。
ただしシリンダーのサイズの変更は簡単にはできないので素材となる銃選びがほぼ決まる。
・ピストン
重めのピストンのほうが低速重量弾には向く。
ただしバランスが大事。
・バレル
内径の小さいバレルやロングバレルは低速重量弾には向かない。
現状、市販品が軽量弾に合わせたセッティングになっている理由
・0.2gから0.25gが一般によく使われる
よく使われる弾で最も効率よくパワーを使えるのが理想的。
・0.2gでのパワーが高いほうが魅力的に見える
0.2g、またはせいぜい0.25gでの初速が一般に目安とされることが多く、これらが高く見えたほうが魅力的に見えます。
たとえば0.2gの弱いホップで初速90m/sの銃と、同じ条件で初速80m/sの銃があったとすれば、普通は前者を「強い銃」とみなされる傾向があります。
たとえば狙撃銃で0.3gをいざ使おうとした場合、セッティングによっては後者が前者を上回る事はよくある話です。
・昔は弾の撃ちだしの抵抗が小さかった
80年代は一部例外を除いてホップがありませんでした。
弾もデジコン製などの例外を除けば軽いものが多く、抵抗に打ち勝つような強い力は必要ありませんでした。
それよりも弾速だけが要求されていました。
なので、軽い抵抗の状態で高い弾速で撃ちだせるシリンダー形状になり、その形状が今でも引き継がれているように感じます。
これに対する重要な変化は「ホップが一般的になった」と「0.98j規制」です。
ホップが一般的になったことで、ホップパッキンでの抵抗がある程度あるのが当たり前になりました。
つまり弾の撃ちだし抵抗は昔よりも大きくなっています。
さらに、0.98j規制により、いかなる条件でも0.98jを超えてはいけない事が必須となりました。
このため軽量弾やノンホップなど、抵抗の少ない条件で高いパワーが出てしまうのはご法度になっています。
そのためエアコッキングや電動のようにシリンダーとピストンを使ったエアガンの場合は、シリンダー形状が現状の理想的な形と一致していないように感じます。
ホップ形状の見直し
一般的な可変ホップはホップパッキンのバレル内への突き出し量を変化させる事でホップの強さが変わります。
ただし、これはあまりにホップを強くしていくと、単に抵抗だけ強くなり、どちらかというと弾に回転を与えるのではなく、弾を停止させる方向に力がかかってしまいます。
可変ホップといっても、最も効率よくかけられる回転は限られているように感じます。
・長がけホップ
ホップの突き出し量を変えるより、前後にわたり長い距離でホップをかけたほうが抵抗が少なく強いホップをかけられます。
APS2SVのノーマルホップがやたら強いのも、ホップパッキンが円形で、前後長もそこそこあったことに関係しているのかもしれないです。
・固定ホップで自作
固定ホップは比較的自作がしやすく、いろいろな形を試せます。
また、固定ホップ+標準の可変ホップという形も取れると思います。この場合は完全にホップを切ることはできません。
昔より弾の精度が上がっているらしい
2016年度版、VSR10,APS2命中精度比較のコンテンツのほうに書いていますが、最近の弾はどうやら精度が高いようです。
バイオ弾で始めの90年代あたりでは、バイオ弾は精度が低いといわれていました。
しかし、2016年の時点のマルイのバイオ0.25g弾はかなり精度が高く感じました。
昔(2000年代初め頃?)のエクセル0.25g弾と比較すると雲泥の差です。
同時期に比べてないので大体の目安となりますが
2005年ごろにあったマルイのスーパーグレイド0.25gという0.25gでは最高級の弾と比べても、マルイのバイオ0.25g弾は同等ぐらいに感じました。
無駄なカスタムパーツ
低速重量弾対応銃にセッティングするにあたり、以下のパーツはマイナス要素が大きくなります。
・精密バレル
大きすぎるバレルは問題アリですが、常識的なノーマルバレルだとそれで充分です。
精密バレルに変えてもノンホップでのパワーが上がりやすくデメリットが目立ちます。
・ロングバレル
最近では昔(20世紀の時代)のようにロングバレルのほうが命中精度が高いと考える人も減っているので、組み込む人も少ないと思います。
マルイのVSR-G-SPECでもバレル長は30cm、マルイのM40A5で28cm。
なので30cmもあれば十分です。
個人的には20cmでも良いかなと思います。
・ボアアップシリンダー
シリンダーの内径が多ければ多いほど、押し出される空気の力は落ちます。
なのでボアアップシリンダーを使うと重量弾との相性が悪くなり、軽量弾との相性が良くなります。
ピストンなども変えて大がかりな変更をした上で、効果がマイナスという恐るべきパーツです。
ボルトアクションライフルは昔より使用しやすいかも
2006年の銃刀法改正で0.98j規制ができ、それ以降はボルトアクションライフルの使用は厳しいという話も聞きますが、どうもそうとも言い切れない気がします。
・重量弾が使えるなら
電動より重量弾が使えるというのが有利に立てる大事な要素です。
電動の場合、0.28g以上とはあまり相性が良くなく、重量弾+強めホップだとフルオート時にピストンがクラッシュしやすくなり、そこまで考慮した調整が必要です。
・弾の精度の向上
弾の精度が向上していて遠距離でも弾道が安定するため、遠距離射撃がしやすくなりました。
当然、電動ガンの射程も伸びましたが、射程が長ければ長いほど狙撃銃が生かせます。
例えば実銃の世界では狙撃銃があるわけですが、実銃の世界の7.62mm狙撃銃と7.62mmのフルオートライフルでは、パワーも飛距離も大差ありません。
FPSのようなゲームでは差別化するために狙撃銃とアサルトライフルで威力を大きく変えていたりします。
・バリケード戦闘の増加
90年代までに多かったブッシュ戦とは違い、人工のバリケードを用意したフィールドが多いため、バリケード戦闘が主体になっています。
バリケードを使った撃ちあいの場合、初弾をハズしてしまうとバリケードの影に隠れられ、以後はいくら撃ちこんでも意味がなくなります。
なので、初弾の重要性が高い上に、バリケードから少しだけ出ている部分を狙う場合はフルオートよりも、初弾一発の命中精度が高く、なおかつ射程の長い銃が有効です。