ET IN ARCADIA EGO。読売新聞社および三井不動産販売株式会社主催の第3回「日本ファンタジーノベル大賞」受賞作にして、著者の処女作。
恐るべき新人があったものである。読了するまでもなく、第一章を読み終えた時点でそう思った。
文章力を絶賛されて大型新人賞を勝ち取った新人としては、近年だと2004年 <第五回ホラーサスペンス大賞> を受賞した沼田まほかる氏などが思い当たるが、残念なことに比較にならない。沼田女史には幾つか注文をつけたくなる箇所があったが、本作にはそれがないのだ。隙が見当たらない。
選考委員をつとめた荒俣宏、安野光雅、井上ひさし、高橋源一郎、矢川澄子らと比較しても、やはり本書の著者――佐藤亜紀に軍配があがるのではあるまいか。そう思わせるほどのものがある。というか、実際選考委員より巧い書き手なのだろう。
あまりの完成度に、選考委員会では「海外小説の盗作では」といった疑惑がもちあがったというが、これには深くうなずける。本当にそうとしか思えない出来なのだ。
UKを代表する歴史小説家、ローズマリ・サトクリフがおくる <アーサー王と円卓の騎士> 物語。
「アーサー王と聖杯の物語(The Light beyond the Forest)」「アーサー王最後の戦い(The Road to Camlann)」へと続く3部作のはじまりの書。正式な原題はThe Sword and the Circle;
King Arthur and the Knights of the Round Tableとなっている。
原書となる英語版は1981年に刊行され、2001年に山本史郎氏の翻訳により日本語版が出版された。今回紹介するのはこの日本語版で、これは400ページ強のハードカヴァー。
巻末には「作者の言葉――美しくも神秘的で、魔術的な物語」と題された著者あとがきと、訳者のあとがきの2つが収録されている。