1996年公開のフランス映画、「Ponette」のノヴェライズ。著者はジャック・ドワイヨン(ジャック・ドワイヨン=著、青林霞・寺尾次郎=編訳)となっているが、正式なクレジットを見る限りこれはどうなのだろう?
Baced upon the screenplay by Jacques Doillon
Novelized by Kasumi Aobayashi
Published by Jiro Terao
――本書に関わった人物と、その役割は上記した通りだ。これによると著者のように扱われているジャック・ドワイヨンは、元となった映画「ポネット」の脚本家兼監督でしかない。これを日本語に翻訳したのが、恐らく一番下にクレジットされている寺尾次郎氏、それを元に小説形式に書き下ろしたのが青林霞氏ということになるのだろう。となるとドワイヨンは単なる原作者、実質的な著者としてクレジットされるべきは青柳氏だと思われる。実際、映画を小説化して刊行された書籍ではそのように扱われるのが通例だ。
蛇足となるかもしれないが、映画「ポネット」の主なスタッフを紹介しておこう。
監督、脚本はジャック・ドワイヨン。主演、ヴィクトワール・テヴィソル閣下(敬称)。製作、アラン・サルド。撮影、カロリーヌ・シャンプティエ。
ちなみに主演のヴィクトワール・テヴィソル閣下(敬称)は、当時4歳であられた少女様であるが、この作品での極めて質の高い演技が評価され <ヴェネチア映画祭主演女優賞> の史上最年少受賞者となられた。……恐ろしい話だ。
ポネットというタイトルは、彼女が演じたヒロインの名前。交通事故で母親を失い、失意に暮れる4歳の女の子である。父親や周囲の人からは、「お母さんは死んでしまった。もう会うことはできないのだ」と諭されるが、ポネットはそれが信じられないし理解しようと思わない。やがて父親の仕事の都合で叔母の家に預けられることになるなど環境の変化も経験するが、相変わらずポネットは母親の帰りをひとり待ち続ける。
「全能の神様 ママとお話がしたいんです でもママは全然応えてくれません あたしに応えてくれるようにママに伝えてください」
4歳の少女が自分の言葉と感覚とで、母親の死という現実と必死に戦い、そして理解していく様を描いた物語。
――これを淡々と文字で再構成していったのが本書なのだが、劇場版の魅力を完全再現しているかは怪しいところ。やはり原作となっている映画版を観たほうが賢明か。
2004/03/05
セガサターンの人気TVゲーム「BIO HAZARD」初回限定特典として配布された非売品の本。ハードカヴァーで150ページ超を数えるが、実際の文量は市販の文庫本1冊分に及ばない。本の正確なタイトルは「BIO HAZARD -The True Story Behind BIO HAZARD-」で、サブタイトルが示す通りゲーム本編のバックグラウンドを補完するような内容になっている。コンテンツは『トレヴァーの手記』という掌編、『Storyboards from BIO HAZARD』と銘打った数ページの設定資料、メインとなる『BIO HAZARD THE BIGINNING』、そしてプロデューサーのゲーム制作秘話という構成。
メインの小説は、ゲームの主人公クリス・レッドフィールドの一人称形式で進行するハードボイルドになっている。特にこれといったものはないが、まあ読んでおくと本編であるゲームをする際、主人公に感情移入がしやすくなるであろうとは思える。無料特典だったことも考えると悪くないものなのではないだろうか。星は、このハードボイルド小説のみの評価。コストパフォーマンスは考慮してない。
2003/11/30