楽器購入ガイド

ドラムス編

 ビートルズのコピーバンドに限ったことではありませんがバンドが楽器を揃えるのに、恐らく一番苦労するのがドラムでしょう。 理由としては、ドラム自体が音が大きく普通の家では買っても鳴らすことがままならない、場所をとる、安いものでもそこそこ値が張る(最近ではフルセット2万円台なんて激安セットも売られていますが)などが挙げられます。その他にビートルズ等のコピーバンドでは、コピーモデルが出回っていない、国産のものでは色が同じものがないといったところが挙げられるのではないでしょうか。でも折角コピーバンドをやるのだから何とか少しでも似たものを選んでいきたいと思います。ここでは場合に応じて手に入るものを挙げてみます。

Ludwig Down Beat & Super Classic 

 初めに、ビートルズのリンゴのドラムセットのイメージとして一番に挙げられる筈のラディック3点セット校正註1を見てみましょう。

先にリンゴのセット(ラディック ダウンビート及びスーパークラシック)の特徴を挙げてみます。

  1. タム(以下TT)、フロアタム(以下FT)、バスドラム(以下BD)のいわゆる3点セットであること。
  2. トップ、サイドのシンバルは共に独立したシンバルスタンドにセットされていること。
  3. TTはBDにシングルタムホルダーでマウントされていること。
  4. スネアドラム(以下SD)は14"×5"木胴であること。
  5. 各スタンド類のレッグはシングルレッグであること。
  6. 各ドラムは深胴でなく標準胴であること。
  7. ヘッドは表裏共白いもの(出来ればコーテッドヘッド)であること。
  8. 色はオイスターブラックであること。

 大きく挙げればこんなところでしょう。

1.予算がないのでなるべく安くあげたい場合

 この場合、ポイントとなるのは単純にセットの形のみです。
先ず、特徴"a,b,c,e,d,f"は問題ないと思います。 "g"については、安いセットではクリアーヘッドなどが張ってあることも多いので(2013年4月現在では一般的に白いヘッドが張ってある)白いもの(リンゴはウェザーキング等のコーテッドヘッド)に張り替えれば問題はないでしょう。一番の難関は"h"です。これは(2013年4月現在)標準でブラックオイスター色を選べるモデルは安価なモデルには無いので通常で有れば完全に不可能と言っていいでしょう。但しお金をかければ一部ドラム専門店で社外品のブラックオイスターのカバーリングに貼り替えて貰えるところがあります。あくまで安くあげたいのであれば、黒かグレイあたりを選ぶのが無難でしょう。
入手先:楽器店

2.予算はないが見た目だけでもそっくりなのが欲しい場合

 これに関しては、ファンクラブで通販されている(改訂、2005年5月現在販売終了につき取扱無し)リンゴスターコピーモデルが有ります。金額的にも一部の初心者向けセットと同じ位(10万円強)で提供されています。 品質的には値段なりですが、使いづらい点があれば改造するなりすれば実用にも十分耐えます。更にラディックのバッジ(エアーベントの周りの金色のマーク)を真鍮板(ホームセンターなどで手に入ります)で自作するなどすれば一段とそっくりになって価格以上の効果が期待できるでしょう。
 ヴィンテージパーツを用いて改造していけば外観上は70年代のブラックオイスター(ボーリングボールと呼ばれる)に近い色と16×16のFTサイズを除き、相当近いものにすることも出来ますが、そこまですると以下に挙げる上級モデルも買えるかと思う位の金額がかかるので、そこまでを望むなら敢えてコピーを改造して本物に似せることを楽しむので無ければ初めからリイッシューなどを買った方が良さそうです。
入手先:ファンクラブ

 又、海外のオークションではラディックのエントリーモデルであるアクセントシリーズをベースにブラックオイスターに貼り替えリンゴセットとしたものも出品されています。こちらはタムホルダーの形状が現行の復刻版(2013年4月現在はレールマウントをリムズと呼ばれるものと同様のフープ部分で支える方式のVibraband仕様にしたもの)と同様センターパイプ式で有ったり細かい意匠は当時のものとは随分違いますが、バスドラムの脚は当時のものと似た形状で有ったり何よりラディック製のものが上記ファンクラブのコピーモデルと大差無い価格で販売されていることに魅力が有ります。但し、アメリカ国内以外での購入では送料を含めると下の復刻版を買える位の金額が掛かってしまうのでお勧め出来ません。 
入手先:海外オークション

3.普通のプロモデルを買うぐらいの予算はある場合

 40万円弱用意出来れば、ラディックが現在出しているリイッシュー(復刻)モデルを買うことが出来ます。ギターなどのリイッシューと同様、細部の仕様は異なっていますが流石に本家だけあって音はいいです。 リイッシューモデルもギター等と同様製造時期に依り幾らか仕様が違っており、全体的には古いもの程(古いものでは既に80年代あたり迄遡るので既にそれ自体ヴィンテージであるとも言えますが...)60年代のヴィンテージに近い再現性を見せています。 (2013年4月現在補足:ここ数年復刻版に力が入っておりタムホルダーやカバーリング等デザインなどが現代的になってはいるものの一時期のものと比較すればかなり上質なものになっていると言え、胴や部品等部分的にはオプション選択でより近いものに変更が可能となっています。)
 因みに現行のものとヴィンテージの相違点を挙げておくと、

  1. 先ず外見ではタムホルダーが現行モデルのパイプ状のものである。
     -当時のものはレールとラチェットの付いた金具で位置、傾きを調整するもの(クリッパーシェルマウントTTホルダーと名付けられ、Rail and Consolettとも呼ばれる)。 但し、リンゴは初USAツアーから帰国後間もなくボールクランプ式のもの(2台めの20"セット、後述)に交換している。
  2. BDスパー(脚)が70年代の仕様に近い(70年代のものより若干太めになっている)ものになっている。
     -70年代仕様のものが弓状の脚をBD内部に差し込んで長さを調整する方式になっているのに対し、当時のものはBDのシェル(胴)上の取り付け部を軸に円周方向に上下に可動して角度を変えることでBDの傾きを決めていた。
  3. 更に細かいところではバッジも現行のモデルに採用されている平板なものがつけられている。(2008年8月更新)取り付け位置もかなり打面側に寄って取り付けられている。
     -当時はひとまわり小さく、浮き彫り様のものが付いている。
  4. BDフープ(ヘッドを締める輪)にカバーリング(インレイ)されていない。
     -当時はシェル同様のオイスターブラックのカバーリングが貼られている。
  5. 当時付けられていた内蔵ミュートが採用されていない。
     -レバー式(ノブが一般的な円形で無く野球のバットに形が似ている為ベースボールバットなどと呼ばれる)の内蔵ミュートが付けられていた。
  6. BDのテンションボルトがTロッドでなく、TTなどと同様のものが使ってある。
     -打面、前面共全てTロッドが使われていた。
  7. TT、FT、BDにスモールラグ(ラグに大小有り、12インチなど当時も小さいものが使われた)が使われている。(2008年現在、レギュラーラグに戻された様です。)
     -13"以上のTTなどにはレギュラーラグが使われていた。
  8. オイスターブラック色がどちらかと言えば70年代のボーリングボールに近く色合いも異なる。(2008年8月更新)最新のものは更に色合いが変わっており、もはや全くの別物と言ってよい色になっている。
     -60年代のものは透過色系の色で製造方法もかなり手間の掛かるものだった模様。70年代以降の「ブラックオイスター」とは全く違う。

など多岐に渡ります。その他、スタンド類がかなり重厚なものが付いていたり、ヘッドもクリアーヘッドが張られていたりするので、外観をリンゴのものに近づける為にはそのあたりを当時のものに近い仕様のものに交換する必要が有ります。 少なくとも上記相違点のうち、TTホルダーとBDスパーは見た目に違いが大きいので一番に交換の必要がありそうです。 TTホルダーは後述の通りですが、BDスパーに関しても少なくとも70年代、出来れば60年代のものに交換してしまいたいところです。 因みにBDスパーは現行のラディックアクセントシリーズのものと似た形状なので60年代のものが入手出来ない場合これを手に入れて交換してもいいでしょう。 
 更に材質では、当時のものが基本的にメープルのリインフォースメント付きのアフリカンマホガニー、ポプラの3プライ合板を内面ホワイトコーティング - 後述 - したものだったのが、リイッシューではメープルとアメリカンベニアの合板でリインフォースメント、ホワイトコーティング共に無しとなっていて、製造方法も異なっています。
 但し、ドラム専門店でも通常在庫していない事が多いので、取り寄せになる可能性が大きいです。
 現在(2002年5月2日現在)ラディックの現地カタログモデルとして確認できる「リンゴ」モデルはL8004LM(Classic Maple FAB4)という型番でBD20"中心のセットになっていますが、少し前までは22"中心のセットL8024LM(Vintage FAB 4-Piece Outfit)がメインとなっていて、こちらも入手可能です。

2010年1月現在、Legacy Seriesとして発売されているLiverpool4というモデルは、最近無かった力の入った出来になっています。
従来の復刻版との大まかな違いは。

以上3点が外見上目立つ違いですが、100周年記念ということで採用されている楕円形のバッジが目立っているのがコピーバンド使用には残念と言えば残念です。 (2013年4月現在)ラディックとしては、バッジもオプションで選択出来る様なシステムになっている様でヴィンテージに近いものとしては、Legacy Vintage Keystone Badgeを選択すれば遠目にはヴィンテージ同様に見えると思います。 オプション選択せずそのままのものを買った場合もバッジの交換程度は比較的簡単に出来るので、実使用で気になる場合は交換してしまう手もあります。交換用のバッジは、現在ヴィンテージのバッジも海外オークションなどで出品されていることも有りますし、ヴィンテージの復刻バッジ(preserialタイプの社外品ですがかなり良く出来ています)もイギリスで販売している方(Classic Drums)がいらっしゃいます(海外からの購入に不安のある方は送料含む実費にて手数料不要で代理購入のご相談承ります、但し状況に拠ってはご要望にお応え出来ない可能性も有ります)。

(2013年4月更新) 最新の復刻版に当たるものは、Classic Maple シリーズのFab22 Kitとして紹介されており、特徴は以下の様になっています。

リンゴのものに近づけるとしたら、オプションでタムのフープマウント(Vibraband Tom Holder)の代わりにブラケット(Classic Tom Bracket)をタム胴に直付け、BDのチューニングボルトをT-ハンドルに、バッジはキーストンバッジ(Legacy Vintage Keystone Badge)を選択。 SDをvintage black oyster pearlのもの(2013年4月限定発売のJazz Festival 復刻版となるLS401XX1QSが今現在最も近いものになると思います)にする。 
以上で外観はかなり近いものになりそうです。
更に、オプションでの選択は出来ませんが、脚を60年代のヴィンテージや復刻版の折り畳み式のものに変更(脚無しで発注し後付け)すればより近付けることが出来ます。
(※2016年4月現在、LEGACY MAHOGANYシリーズに採用されているBDの脚は折り畳み式で60年代のものに類似しています。 リインフォースメントリングの復活やセット名もSuper ClassicやDown Beat他の昔のセット名が復活する等ヴィンテージラディックファンには嬉しい変更が多数されています。 現代風にはなっているもののレールマウントも選ぶことが出来、ここ数年カバーリングも次第に60年代のものに近いものになって来ています。 LEGACY MAPLEのFab22セット等のバッジもキーストンバッジとなっています。)

その他胴自体(Classic Maple シリーズよりLegacy シリーズの方が当時のものに近い構成)からカバーリングやブラケットなども選択出来るので、Fab22 kit 以外のシリーズを選択してパーツを指定することでより近いものにすることも不可能では無い様です。 但し金額的には高価になってしまうので、リンゴ風のセットをどうしても現行の新品で揃えたいという人以外にはお勧め出来る選択肢では有りません。

入手先:楽器店

4.幾らでもいいから本物が欲しい場合

 ヴィンテージを買うしかないでしょう。1963〜1965モデル(大まかに60年代でも良いが、若干細部に変化が有る)のラディックダウンビート(ビデオ「ファーストUSヴィジット」中のエドサリバンショウ、ワシントンDCコンサートや映画「ア ハード ディズ ナイト」で使われていたBD20"×14", FT14"×14", TT12"×8"のもの)かスーパークラシック(1964年のワールドツアーの頃から以降後期ハリウッドモデル - 後述 - に替える迄使われたBD22"×14", FT16"×16", TT13"×9"のもの)が大体40〜50万円以上(改訂、2005年5月現在某専門店にて50〜80万円以上)から出ている様です。但しこれにはSDやシンバル、ハードウェアー(各スタンド類、ペダルなど)は含まれていません。
 SDはジャズフェスティバルというモデルでした。外見上似たものにパイオニアモデルというのが有りましたが、そちらは廉価版(敢えてこちらを好む方もいらっしゃるので廉価版と呼ぶには語弊が有るかも知れないことをお断りしておきます)で、テンションボルトが6本(ジャズフェスティバルは8本)となります。スーパークラシックという22"の方のモデル名と同一名のSDも有りましたが、これはサイズが5.5"×14"となり、スネアスウィッチも違うのでリンゴの物とは違うと思われます。 更にリンゴのものは1962〜1963年製のものだと推定されこの年式のものでは横から見てスネアスウィッチ(ストレイナー)から左へ順にバッジ、内部ミュートまでがラグを1つづつ挟んで並んでいました。 この前の型では内部ミュートがスネアスウィッチと隣り合うバッジからラグ2つ挟んだところに位置しており、逆に後の型ではスネアスウィッチの左からバッジまで2つのラグを挟んでおり、更に1つ挟んで内部ミュートとなっていました。 既にオイスターブラックのオリジナルJazz Festival自体が極めて希少ですが、このリンゴと同じ型のものは更に希少で滅多に見かけることはなくなっています。 値段としては単に60年代のオイスターブラックの貼り替えもので無いオリジナルJazz Festivalで30万円程度から、リンゴのものと同じものがあったとしても程度によっては100万円以上の値段がついていても不思議では無い程です。
 当時ラインアップされていた主なものは、単品では木胴のものがスーパークラシックシリーズ(BDはクラシック)と、廉価版のクラブデイトシリーズが有りました(除くスタンダード-60年代後期にラインアップされた更に安価なシリーズ)。 セットとしては当時の最上級モデルの中でも最もポピュラーな組み合わせのスーパークラシックが上記の通り22"のBD中心の物ですが、標準ではSDにスープラフォニック400が付き、オプションで同色の木胴SDとなっているのでリンゴはオプションの方を選択した様です(オプションがスーパークラシックだったのかジャズフェスティバルも選択可能だったかの確認は取れていませんが、リンゴ本人はダウンビートの時からビートルズ時代を通して同じSDを使用していた様で、22"入手時に一緒に入手したと思われるSDが使われている写真などは今のところ確認していません)。
 ダウンビートも上記の通り20"のBDを中心とするセットですが、SDには標準で4"×14"のダウンビートモデルの物が付いていたので、初めにこのセットを選択した時点でSDのみジャズフェスティバルを別に購入したと思われます。ペダルもこちらの標準はスピードマスターだったので、SDと共に上級のスピードキングが選択された様です。又、これについては"Beatles Gear"にも書いてある様にリンゴのセットを納入したドラムショップ"Drum City(ドラムシティ)"が在庫の中からバラバラに選んで組んだもので、セットでは無かったという話も有りますが、ここでは追記にも書いた様に20"、22"セット共に便宜上上記モデル名を使っています。
ハードウェアーについて、
HHスタンドは、主に63年製のDirect-Pull Hi-Hat No.1123というモデルを使用。 これについてもSD同様希少なもので、極めて短期間しか製造されておらず現在では稀に見つけても相当な値段がついています。 似たものに後継モデルのNo.1123-1というのが有りますが、これは脚部がフラットでなく三脚型になったものです。
シンバルスタンドは、Flat Base Cymbal Stand No.1400を使用。
SDスタンドは、当初Flat Base Snare Stand No.1363 を使用、間もなく'63製 Buck Rogers Snare Stand 1358C(当時各ドラムメーカー等にハードウェアを製造納入していたWalberg & Auge製)に変更、ビートルズ時代主にこれを使っていましたが、これもHHスタンド同様凡そ1年間しか作られておらず極めて希少となっています。 後に'65製 Atlas Drum Stand 1364-3を使用。
椅子は、楕円形と円形シートの2種類の PORTO-SEAT No.1025を主に使用。 又時期によって背もたれのついたものなど様々なものを使った様です。
BDアンカーは、No.1304を使用と思われますが、実際カタログに載っているものより幅の狭いものを使っていたので品番的には疑問が残ります。当時のロジャースのカタログにリンゴのものと幅まで同じものがNo.1601(C)として載っている様なので、いづれにしてもスネアスタンド同様Walberg and Augeのもので間違い無さそうです。
 ドラム類はSDも含めて全て内面ホワイトコーティング(RESA-COTEと呼ばれる)されたものです。
 60年代初頭(60,61年頃)迄はタムホルダー、BDスパー、FTレッグ、内部ミュートなどの形状が古いタイプ(TTホルダーのTT側が平板な差込式、BDスパーのホルダーが鉄板を曲げただけの様な単純な形状のもの、FTレッグがクランク状になっておらず真っ直ぐなもの、内部ミュートがベースボールバットと呼ばれるレバー形状でなく丸いつまみ型であるなど)になっています。62年頃が過渡期に当たる様でそれらの新旧が混在しています。 その後60年代終わり迄は殆どリンゴの物と同様ですが、70年代に入ると再度上記パーツやバッジはもとよりシェルなども変化するので、ずばりリンゴと同様のモデルは62年〜69年迄と言えそうです。但し、リンゴ本人の3点セットは当然63年〜65年の間に入手したものなので本当に近い物となるとその3年間位の製造年のものとなります(その3年内にも65年頃にはFTのバッジ位置が上部に移るなどの変化が見られます、因みにリンゴ本人のものは65年入手した4セット目のスーパークラシックのみがバッジが上部に有るものの様です)。 又年代に依ってバッジにも細かい変化が有り、トランジション(キーストンバッジの上部のラディックマークが楕円の中に書いてある)、プリシリアル(上部にシリアルナンバーが入っていないもの)などが有って、リンゴのものは上部にシリアルナンバーの入ったものです(リンゴの4セットの内、初期のものには入って居ない様です)。
 又、日本では従来リンゴモデルのドラムはブルーノートと言われていましたが、ブルーノートモデルはBD, TT, FT共ツインとなり、ボンゴやカウベルまでセットされた大きなセットでした。
 今現在(1999年10月現在)某有名専門店で、スーパークラシックヴィンテージを更にリンゴの使っていたものと同仕様にして販売しているところが有って、価格は\800,000以上となっています(除くシンバル、SD, ハードウェアー)。
 又、海外ではヴィンテージのオイスターブラック以外の色(若しくはカバーリングが駄目になったオイスターブラック)のセットを社外品のブラックオイスター色復刻フィルムを使用しカバーリングの巻き直しをしたものをヴィンテージとしては比較的安価(リイッシューと同額若しくは若干高い程度)で販売しているドラムショップも有る様です(2013年4月現在レギュラーでの扱い無し、ヴィンテージのカバーリング巻き直しをして貰えるショップに頼む方法のみ)。
入手先:中古(ヴィンテージ)を扱っている楽器店等

 更にリンゴのセットに近づけるためのTips 

  1. リンゴはタムホルダーを途中からロジャース社のSwiv-O-maticというシリーズのものに交換セッティングも素早く行え、純正のレール式のホルダーより安定も増す為して使っていたので、映画"A Hard Day's Night"以降に近づけたい場合は、これに交換すると一段と本物度が高まります。 只、現在このホルダーを入手するのは非常に困難です。上記の60万円のセットにはこれが付けられています。 因みに、Swiv-O-Maticのタムホルダーベース部分(collet plateと呼ばれる)には3種類の角度が有り、本来リンゴのバスドラムに付いている位置だと中間の角度のものが想定されていますが、実際にはバスドラムセンタートップに取り付けることを想定された傾きの付いていない90度のものが使われています。 リイッシューモデルで、Swiv-O-maticが手に入らない場合、これも入手困難ですが、レール&ラチェット(rail and consolette)式のものを捜してみる手もあります。 初USAツアーあたりまではこれを使っていたので、現行の物よりは本物っぽくなります。 ファンクラブの物はこの形状に近い物が付いています。 
  2. BDアンカー(BDが前進するのを防ぐためのパーツでBDの前面下部に牙のように見えるのがそれ)を付けると、それだけで上記1(なるべく安くあげたい場合)の場合でも何となく雰囲気になったりします。 このパーツも当時と同タイプのものはきわめて入手困難ですが、上記60万円のセットを扱っている店で似たもの(本物は剣先やゴムの形状等幾分違いがある)を取り扱っています(2,100円)。又、ファンクラブのコピーモデルにも同様のものが付属しています。 余談ですが、70年代にはパールからもよく似た形状のものが発売されており、こちらは現在の復刻品に当時のゴム部分を付けた様なもので剣先はかなり長く作られていました。
  3. ラディックのヴィンテージロゴが印刷されたBDフロントヘッドも同店で買えます。 器用な人はレモ社のウェザーキングヘッド(又は手に入ればLudwig weather masterのロゴが下部に印刷されたラディックのもの)に自分で書き込めば安上がりです。 
  4. セッティングのポイントとして、TTを水平に近づけてBDに接触するぐらい低くセットするとリンゴっぽくなります。椅子の高さはかなり高めですが、ワシントンDCなど膝から大腿部がほぼ水平になる位の高さで叩いている映像も見られます。FTは水平かやや奏者側に傾ける位です。 
  5. リンゴのもののFTは、BD上部から打面側のラグが出るか出ないか位の高さでセッティングされていましたが、FTレッグ(脚)は、ほぼその高さ分の長さしかない短いものが使われていました(つまり脚の長さ一杯まで伸ばして使っていた)。 現在のものはかなり長さに余裕のあるものが使われていますが当時も長いものと短いものが選択可能でした。
  6. BDにはリンゴは使っていませんでしたが、シンバルホルダーが付いていました。 小さな事ですが少しでも近づけるためということで...。 リイッシューには付属しています。
  7. インナーミュートも付けてしまいたいところですが、形状がレバー状になっているものである為、まず入手不可能でしょう(但しヴィンテージラディックを入手して、それに付いているミュートを移植する...勿体ない(^^;...という手もあります)。 ヴィンテージのみの特典です。
  8. シンバルについては、リンゴのものは通常と変則(普通はライドがクラッシュより大きい)になっていて、クラッシュとして使っているものは20"又は22"、ライド(トップ)として使っているのは16"若しくは18"、またハイハットは14"(主にライヴでは15"も使用)となります。校正註2 メーカーは何れもジルジャンかパイステ(パイステは初期のみでそれ以外はジルジャン)であったと言われています。
     どうやら20"のセットではクラッシュ20"(でかい...)、ライド16"に14"のハイハットの組み合わせ、22"のセットではクラッシュ22"(更にでかい...)、ライド18"に14"のハイハットで共にライヴでは15"のハイハットの組み合わせで使われることが多かった様です。 22"のセットで前者の組み合わせも見られますが、逆は無い様です。又、当時は20"、22"というサイズもクラッシュライドとしてラインアップされていた様で、このサイズをクラッシュ側に使用するドラマーも見られました。
  9. BDペダルはスピードキングが使われていました。 リイッシューにも意匠は若干異なりますがスピードキングが付属しています。

Ludwig Hollywood

 次に、映画"Let It Be"で見られるツインタムのセットで、ビートルズ後期に使われたハリウッドについて少し見てみましょう。 コピーモデルとしては出ていませんが、 オイスターブラックの様な変わった色でなく、木目のナチュラルフィニッシュ(カバーリングであると思われます※2016年04月更新:現在の写真を見ると木材そのものの退色の仕方の様に見えるのでカバーリングでは無く単にナチュラルフィニッシュで有る様です)なので国産の物でも同じサイズのナチュラルフィニッシュを選べば、それらしくなるでしょう。 その場合ポイントとしては、スーパークラシックなどと同様各ドラムの深さ、スタンド類のレッグに気を付けることと、タムはBDにマウントせずダブルタムスタンドでBDの向かって右側(演奏者から見ると左側)よりにセットする様にする、BDフロント、FTのボトムヘッドを外す、などが挙げられると思います。 その他リンゴは映画などで見られる限り、SDにオイスターブラックのものを使い続けていますが、単体でラディックの物(4-50,000円)を手に入れる以外はその色の物を入手するのが困難(違う色の物をブラックオイスターにカバーリングして貰うことは可能、但しやってくれる店が限られている)なので、 木胴のものを選んでおけばいいでしょう。 シンバルについては、映画の初めの方(トウィッケナムスタジオのシーン)では、左右2枚のセッティングが見られますが、中盤からルーフトップにかけてはFTの外側にもう1枚少し小さめ(多分16"程度)のクラッシュがセッティングされています。

 リイッシュー、ヴィンテージ

 リイッシューと言っていいかどうか分かりませんが、クラシックメイプルシリーズ(スーパークラシック-4 ply)のTT 12"×8"、13"×9"、FT 16"×16"、BD22"×14"のL8125EMを選べばラグやバッジの形状などから言えば近いと思います。 色はステインのメイプル色を選んで下さい。 
 60〜70年代のラディックのカタログ上では、ハリウッドと呼ばれるのはクラシックシェルのツインタム4点セットに5"×14"のスープラフォニックメタルスネアを組み合わせた物となっていました。 下に挙げるTTホルダーの件も考えると、リンゴも同様のセットをSDとTTスタンドのみ別の物にして使っていたんではないでしょうか。
 従来Big Beatと呼ばれていた後期のツィンタムモデルですが、この構成では60年代後半まではHollywoodと呼ばれているもののみがラインアップされていて、リンゴのものも入手時期から言えばHollywoodということになります。 70年代に入るとHollywoodとBig Beatが並行して売られますが、 60年代初頭のHollywoodと70年代のBig Beatとの大きな違いは、SDに前者は木胴のJazz Festivalを後者にはメタルのスープラフォニック400が採用されている点ぐらいで、前者がジャズドラマーの為の後者がロックドラマーの為のセットと謳われていることです。 ところが、60年代後半には既にHollywoodもスープラフォニック400を採用しており、ロックドラマーの為のセットと謳われています。リンゴのものは60年代後期のモデルなので標準ではスープラフォニックがセットされていた筈です。 SD以外HollywoodとBig Beatの相違点は、スタンド類の違いと、BDにシンバルホルダーが付いている(Hollywood)か付いていない(Big Beat)かの違い程度だった様です(但しリンゴのものにはシンバルホルダーはついていない)。 スタンド類もやはりHollywoodの方がリンゴの使っていたものに近いのでスーパークラシックの頃からの流れからしてHollywoodとBig Beatの比較でもHollywoodモデルの方がリンゴのものに近い様です。 
 余談ですが、スーパークラシックも70年代に入ると同じ構成のセットがDeluxe Classicというモデル名で同時にラインアップされる様になり、両者の違いはHollywoodとBig Beatと同様です。 又、70年代中盤にはダウンビートモデルがカタログ落ちする代わり、スーパークラシックに20インチのモデルを選ぶことが出来るようになります(Jazzetteというモデルもラインアップされていましたが、この時点では18"のBDを中心とするセットでした)。 同じく、Jazz Festivalも70年代に入って間もなくカタログ落ちしています。 更に、80年代に入ると上述のJazzetteセットがダウンビートの後継機種とも言える位置づけとなっていった様です。
 60年代のものと現行のもので外観上一番変化の大きいのはオイスターブラックのセットのところで書いた様に、BDスパーとTTホルダーが挙げられます。 BDスパーは通常、今の国産のものと同様の形式のものが付いているので、LC-1308-SPというモデルナンバーのもの(70年代のものに近く、スーパークラシックのリイッシューに採用されているもの)に付け替えた方が見た目は幾分近くなります。 上記の3点セット同様60年代の折り畳み式の物が手に入れば最高ですが難しいでしょう。 TTホルダーに関しては、単体の場合オーダーしなければ付いて来ませんが、リンゴのBDにはツインタムホルダー用のホルダーベースが付いています(ここからリンゴが初めからTTをスタンドにセットする様なものをオーダーしたので無く、ハリウッドセットをその様にセッティングしたのではないかと思われます)。 ベースのみ取り付けてダブルタムスタンド(LM541TSE:但し現行の物はダブルレッグとなる)でセッティングしましょう。 SDは14"×5"のオイスターブラックのもの。 あとは上記同様、BDのフロントヘッドとFTのボトムヘッドを外して、シンバルを2枚若しくは3枚セッティングすれば見た目はかなり近いものとなります。  
 ヴィンテージのナチュラルフィニッシュのものは中古でも殆ど見かけることが有りません。 無いこともないでしょうが、殊にリンゴと同じ仕様のものは入手困難でしょう。 その他細かい点では、リンゴのドラムにはTT、FTにステッカーが貼ってあるのが見られます。 丁度バッジの上下に白い大きめなもの(リンゴがドラムを入手したイギリスのドラム専門店ドラムシティのもので、映画でも瞬間的に白いステッカーの上部左の4つのマル[ドラムの絵]の中にそれぞれD-R-U-Mと入り、その右にCityと書いてあるのが読みとれる)と、黒っぽい小さなものが貼ってあります。 


Premier drum kit

 最後にごく初期にのみ使われたプレミアーの3点セットについてですが、 コピーモデルは有りません。 リイッシューも出ていないと思います。 現行のプレミア社のセットはパーツ類が当時の物とすっかり変わっていますが、一部モデルのバッジのみデザインは当時と殆ど変わっていません。 ヴィンテージも見たことが有りませんが、捜せば有るかも知れません(2005年5月改訂、最近はごく稀に出て来ています)。 以下にリンゴのセットの特徴を挙げておきます。

  1. 色は茶色っぽく、斜めに縞の入ったカバーリング仕上げでマホガニーデュロプラスティックという色名がついています。

  2. サイズはBD20"×14"、FT16"×16"、TT12"×8"で、SDに14"×4"のロイヤルエースというモデルを使っていました。

  3. ラグの形が変わっていて、TTとBDの物はハイテンションラグのようにトップ、ボトムのラグが繋がったもの。 FTの物は、その繋がりが途中で切れたようなデザインになっている。

  4. スタンド類も古めかしい物が使われていて、似たものは入手困難です。

  5. このセットでもリンゴはタムホルダーにSwiv-O-Maticを使っていた様です。


校正註1 ダウンビート、スーパークラシック共に木胴3点セットですが、前者は20"×14"のBDを中心とした小径セットで、FT14"×14"、TT12"×8" 後者はそれよりも一回り大きいBD22"×14"、 FT16"×16"、TT13"×9"のセットです。「4.幾らでもいいから本物が欲しい場合」参照 戻る


校正註2 当時、ジルジャンのシンバルはハイハットが10"-15"、クラッシュが薄めの16"迄のもの、ライドが中程度の重さの16"-22"などというラインナップだった為、今の様に明確にそれぞれがカテゴリー分けされていなかったのかも知れません(改訂、その他クラッシュライドとしても上記の様に22"などというサイズのものが有った様です)。
ライドについて、16"は使っておらず終始18"のみで、クラッシュは20"しか使っていないとの指摘も頂きましたが、明確な根拠が無い為参考迄にとどめておきます。戻る

追記 :  現在判っている限り、リンゴはDown Beat, Super Classic 共に2セットずつ所有していた様で、現在もDown Beatの2セット目、Super Classic の2セットの計3セットは本人の手元に保管されている模様で、Down Beat 1セット目に関してはタムとスネアのみが残っている様です。 (2015年12月更新) 1セット目のDown Beatに関し、リンゴが今年12月初旬にJulien's auctionsに他の所有物と共に(1セット目の)スネアを除くフルセットとして出品し$2,110,000.00で落札されました。 このことで、リンゴの1セット目のラディックは全て残っていたことが判りました。同オークションには他にも2セット目のスネアも出品され、こちらは$75,000.00で落札された様です。
 モデル名についてですが、20"と22"のセットはそれぞれDown BeatとSuper Classicではなくリンゴがセットを購入したロンドンのDrum Cityで個々のドラム(BD、TTなど)を組み合わせて納入したものであるとも言われていますが、どちらにしてもリンゴの使っていたこれらのドラムは胴の種類としてはSuper Classic及びClassicのシリーズを使っており(除くSD: Jazz Festival)、現在のドラムセットの多くがそうで有る様にモデル名に依って胴の材質などが違うことはなく、胴自体は同じもので、それらを小さめの組み合わせでセットにしたものがDown Beat、それより大きめの組み合わせにしたものがSuper Classicで有る為、SDやハードウェアーなどカタログのモデルと比較すると若干の違いは有りますが、モデル名としてはDown Beat, Super Classicと言っても良いと思います。 実際、Super Classicの方はSDをオプションのJazz Festivalを選択し、SDスタンドをBuck Rogers Snare Standに交換すればリンゴの22"と同じと言っていいものになりますし、Down BeatにしたところでSD (Down Beat SD →Jazz Festival)、 BDペダル(Speed Master→Speed King)程度の違いしか有りません(HHスタンドについてはカタログ写真上はFlat base stand No.1121ですがリンゴが入手した時期に実際にセットされていたものはDirect-Pull stand No.1123です。TTの内部ミュートも同様)。
 又、色についてDown Beatのオイスターブルーのセットも持っていた、又はオイスターブルーのセットのみ所有していたという説も有りましたが、リンゴ本人の弁によるとオイスターブルーのものは持っていなかったということ、又"Beatles Gear"に掲載されたリンゴ所有のセットは全てオイスターブラックで、これによりリンゴの3点セットはどちらも従来言われていた通りオイスターブラックだったというのが正しいということになります。
 又上記、入手困難と書いてある各パーツなどもオークション等で根気よく捜せばいいものが見つかる可能性は有ります。

 ここで以前Jazz FestivalとPioneerモデルの胴が違うものであったと書いて有りましたが、当時のラディック社のドラムはモデル名に依り胴の材質や製造方法形状などの差は無く上記両モデルの唯一の違いはラグの数だけであったことが確認されました。お詫びして訂正させて頂きます。又、後年発売された廉価版のラインであるスタンダードシリーズでもラグや色など外観上同じに見えるところは無いものの胴は同じものを使っていたそうです。

Jazz Festival snare drumについて、当時カタログ上は14"x5"と記載されていますが、リンゴのものについては14"x5.5"だったということで大方の意見は一致している様です。 

 (2015年12月更新)ハリウッドセットについて、リンゴ使用のものは元々ツーバスのセットだったという話も出て来た様で(ツーバスとしてセッティングされている写真が発見されたとのこと:ビートルズクラブ会報より)、そうなると時期的にはカタログ上のセット名で言えば元々のセットはRock Duoセット辺りが当て嵌まることになりますが、例に拠って組み合わせで当て嵌まるものがそうであるというだけで、これもリンゴがバラバラに注文したものがたまたまその組み合わせだっただけかも知れません。

オイスターブラックセットに付いてはThe Beansとものりさん作成の「Ludwigバンザイ」もご覧下さい。

Ludwig fansもご覧下さい。


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