大都市『サティス』から少し離れた森に、フィランセは居た。
「しぶといっ!」
木の上で弓を構えながらフィランセはつぶやいた。
構えられている弓の先には、一匹のイノシシが暴れ狂っていた。
イノシシには10本ぐらいの矢が突き刺さっていて、それでも倒れないとは、群れのリーダー並である。
フィランセは狙いを定めて弓でイノシシを射る!
矢が当たり、イノシシはふらつき少し暴れてから倒れた。
「空腹のときの私の前に現れたのが運のつきだったな・・・。」
そう言ってフィランセは木から下り、死んだイノシシに近づこうとした。
「こっちで音がしたぞ!!」
知らぬ男性の声に、フィランセは急いで木に登った。
「誰もいないではないか?・・・むっ!これは今倒されたようなイノシシではないか!!」
来たのは、騎士のような人が二名であった。考えるとたぶん族退治に来た者だと思われる。
「ちょうど昼時だ。このイノシシを昼飯としていただこうではないか。スティイ。」
そう言うと、一人の騎士は馬から降り、火を作り始めた。
スティイと呼ばれた方の騎士は少し考えてから頷き、馬から降りた。
空腹だったフィランセは、せっかく仕留めた獲物を見捨てれはできなかった。
「そのイノシシは私が射止めたものだ。返せ。」
すぐさま木から下り、フィランセは不機嫌そうに言った。
「なにをいう、これは俺が見つけたから俺のものだ!!族め!!!」
騎士もどうやら空腹だったみたいだ。
「テイトル!いくら空腹であっても、失礼ではないか!!そもそも私たちは族退治に来たんだぞ。」
スティイが言い・・・
「あぁだったらこいつを退治して、手柄とイノシシをもらおう。」
テイトルと呼ばれた騎士が、答えた。
「私は族では無い!!」
フィランセはそう叫んだが、騎士たちは聞く耳持たず、馬に乗ってすっかり戦闘準備満タンだ。まさに馬の耳に念仏である。
騎士といえど、さすがに『国内戦争』の優勝者の敵ではなかった。フィランセは騎士たちの攻撃を軽やかに受け流し、後頭部に一発食らわせてやったのである。
騎士たちが気がついたときは、自分たちは縄で縛られ、イノシシも骨と皮だけになった時であった・・・。
「剣を使わなかった相手に負けた俺たちって・・・。しかも、イノシシも変わり果ててて・・・。」
テイトルはかなり落ち込んだ様子でつぶやいた。
「しょうがないさ。死ぬのよりはましだ。」
スティイがテイトルを慰めるように言った。
「きっと俺たちは一生、族の奴隷にされるんだー!!!」
テイトルの叫びに、フィランセもため息をついた。
「だから私は族じゃなくて、ただの旅人だってば・・・。」
その言葉に騎士達は驚いた。
「なんで最初に言ってくれなかったんだよ!」
「あんた達が聞いてくれなかったんでしょう!!」
テイトルとフィランセが口げんかをしている最中に、スティイが口を挟んだ。
「ただの旅人がなんでそんなに強いんだ?」
その言葉にテイトルも、疑問を吹っかけた。
「そうだよ!だいたいこの国の王城で、1・2を争うコンビの俺たちになんで敵うんだよ!!」
「城で1・2?族退治に派遣されるやつが?」
そのフィランセの言葉に、騎士たちはグサッと来たみたいだった。
「しっ下っ端の中で1・2を争うんだよどうせ!!」
テイトルはひねくれたように言った。
「それより私は、あなたの強い理由を知りたいのですが・・・。」
スティイが少し暗く言った。
「それは・・・」
「それは!?」
「教えてあげない!にしても、あんた達本当にここの国の騎士?」
「!じゃなかったらなんなんだよ!」
テイトルがなかば怒りながら言った。
「騎士から馬とか奪った、ものしらずの族。」
その言葉にさすがに騎士たちは完全に怒った。
「言わせておけばー!!!」
こうしてまた騎士二人は、気絶したのであった・・・。
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