八千代市保育園父母会

連絡会ニュースNo.16

1999年 8月20日(金)発行

 八千代市保育園父母会連絡会広報部

 [子育て〜検討委]&[福岡合研]報告号

「子育て〜検討委」,委託園設置前提の会へ変質!

父母提案(モデル園条件)、子育て支援対策検討委員会答申として採択〜

 昨年、市から突然出された「公立保育園の民営化」案。私たち父母は、各園父母会をネットワーク化する連絡会を結成、学習会を開き、5万筆を超える署名を集め、数々の活動を繰り広げましたが、市長の一方的な方針を議会で改善させることはできませんでした。しかし、市に話し合いの場を設定させることができ、子育てに関わる広範なメンバーによる「子育て支援対策検討委員会」が4回開催され、八千代の保育園について討議しました。

 第3回検討委に先立って、市の方針や討議のあり方について、文書で市長に意見や質問を提出しました(ニュースNo.15参照)が、回答されませんでした。またこの検討委の経緯を無視する形で、「どこの法人に民営化をまかせるか」を選ぶ「受託法人選考委員会」設置のスケジュールが既に決まっていました。つまり、反対する父母の怒りを聞くだけ聞いて、方針は一切変えないという市当局の姿勢は、残念ながら明らかでした。

 こうした中で、第4回検討委(8月10日)は「モデル園設置」を前提として開催されたため、私たち父母は、不本意ながら受託法人園(モデル園)展開に必要な条件(どうしてもモデル園を作るというのならば、せめてこれだけの水準は保ってほしいという願い)」を文書で提案し、今までの八千代市の高い保育内容を下げることの無いよう、せめて現状を維持してほしいと訴えました。父母側の道理ある主張に反対意見は出ず、委員会の総意として確認させることができました。委員長名で受託法人選考委に伝えられることになりました。

 常に子どもの立場に立って、不可解な市長の姿勢に何度も耐えつつ、しかし民主主義を信じて活動してきた連絡会の姿勢が、さまざまな立場の市民に広く受け入れられた結果です。今後は、モデル園の選び方、受託法人の選考の仕方、そしてこの「条件」が守られるかどうか、モデル園実施後の民営化計画が再検討されるかどうかなど、私たち父母は注意深く見ていく必要があります。同時に、民営化するより公立園のままサービスを拡充したほうがコストがかからないのに「モデル園民営化は実施」という目的不明な市長方針を、全戸配布ビラなどを利用し、公立園の水準を守り、合理化をストップさせるため、さらに多くの市民に知らせ、世論を広げていくことが大切です。

 

全国各地で『統廃合・民営化』の動き(福岡合研集会報告)

〜御殿場では、民間園理事長が公的保育水準維持のため公立保育園を守る側に〜

  第31回全国保育団体合同研究集会(8月7〜9日福岡市)の「保育要求実現と国・自治体へむけての運動」分科会で、鈴木事務局長が八千代市の現状をレポート発表しました。この合研集会には全都道府県から保育園父母や保育士・学童保育指導員など保育に関心を抱く人たち8282名、千葉県からは92名(内7名八千代市)が参加しました。

 分科会(37-A)で、

@「公立保育所の『統廃合・民営化』反対運動を住民と共に」(高知県市町村職労南国市支部保育部)、

A「主体者として育ち合い、父母・地域の人々とともに、公立保育園を守る運動をめざして」(静岡・御殿場市職保育園部会)、

B「八千代市の高水準の公的保育を守りたい」(千葉・八千代市保育園父母会連絡会)、

C「保育所の給食業者委託反対のたたかい」(北九州市職員労働組合保育所部会)の4つの提案をもとに、参加者の地域の実状を出し合い、共通点を汲み出しながら学び合いました。

 御殿場からの報告では、民間園の理事長が、公立保育園を守ることが公的保育の水準を維持するために重要だと気付き行動し始めたとの話が印象的でした。また、全国各地域からの参加者発言の中で、保育行財政研究所7月23日発行「保育の公的責任とは何か」が紹介されました。その報告書の中で兵庫県尼崎市(「民間移管」方式で八千代市はこれに倣おうとしている)の現状として、「父母が保育内容に関して意見を言うと保育内容の違いだからやめてもらったらよいと言われた」「父母の会は認められないと言われ解散した。」「父母の会は認められたが、連合会に入っては駄目だと言われ脱退手続きを行った。」等の意見が載っています。市民が直接的に関与できない「民間移管」方式の不安が浮き彫りにされています。

 6時間あまりに及ぶ分科会の締めくくりに、世話人の垣内国光先生(日本福祉大学)が、以下のようにまとめました。

@今の情勢=何でもありの時代

A私たちが推進してきた実践や運動に確信を持つこと

B職員と父母の会(の連携)が大事

Cどう闘うか?    T運動に遅い・早いはない

           U保母は父母を信頼し大胆に依拠して共に歩むこと

           V学習し真実を伝え合うこと

           W大胆に宣伝していくこと

           Xきちんと最後まで闘うこと

                    :黙っていて子供たちに申し訳が立つか?

                    :部分的に後退しても次の過程につながる

八千代には民営化メリットは見いだせない民営化推進者からも疑問の声

作りたて「子どもプラン」が泣いている

 市は今春、「子どもにやさしいまちづくりプラン」を作成。そこでは「子どもの最善の利益の尊重」などを基本理念に、保育園に関しては、休日保育、障害児保育などを充実させ、地域の子育て支援事業(地域開放や一時保育)も推進するという積極的な目標を掲げています。

 しかし、コスト削減を目指した保育園の合理化・民営化とこのプランは、矛盾することになります。このプランを充実させるために作った「子育て支援対策検討委員会」は、これまで実質的な討議はされず、「委託を前提とした委員会」に変質させられようとしています。議会も検討委員会も形骸化してしまったら、「子どものために何が必要か」という一番大切な論議は、誰がしてくれるのでしょうか?

公立230万円、私立128万円の虚実

 市が必ず示す数字が「公立保育園の運営費は園児1人当たり年230万円、私立は128万円」。私立園は運営方針によって看護婦設置や乳児・障害児保育の実施状況などにばらつきがあり、一律比較は乱暴です。実際には、同じ職員配置で同じ保育内容なら公私の運営費は変わりありません。また、公立の金額には2園の子育て支援ルーム(毎日開放)の利用者分は含まれていません。

 保育園運営費は年27億円。内18億円が市の超過負担(持ち出し)で、超過負担の内訳は主に2点です。1つは、保育士の配置基準や看護婦・栄養士(乳児保育を始めた20年前から配置)など、国の最低基準を超えて市が配置している職員の人件費分です。国基準とは、施設認可に必要な最低基準で、30年来ほとんど変わらないため、独自加配していない自治体はまずありません。八千代の基準は首都圏標準レベルです。2つ目は、保護者が払う保育料の国ベースに対する不足分です。低年齢児1人当たり月額0円(生活保護世帯)から5万8400円を所得に応じて負担していますが、八千代の子育て世帯の所得水準は低く(子どもプランでの調査より)、値上げはままなりません。市はなぜ、一方的な数字を出すだけで、こうした背景を正しく市民に説明しないのでしょうか?

八千代には民営化メリットは見いだせない

 今なぜ民営化なのでしょうか。全国的な背景は次の通りです。大量の入園待機児童がいて、朝夕の延長保育や低年齢児枠も全然足りないという緊急課題を抱えた自治体が、事業の大幅拡大をしたくても財政事情が許さない。一方で、公立園が高コストに見合ったサービス(乳児・延長保育をしない、保育士の勤務態度がお役人的だなど)を展開していないという問題状況がある。そこで、民営化をテコに、保育内容の改善を図る流れが出てきました。

 ところが、八千代の場合、待機児童は5人(99年4月1日時点)。民営化とは別に、東葉高速沿線の民間園が建て替えを機に90人定員を150人に拡大する計画も決まりました。公立12園では、7時〜19時の延長保育と乳児保育を行っています。職員の対応も父母本位です。つまり、他自治体で民営化によって実現を目指した内容は既に整っています。

 こうした中で、市長の言う「多様な保育ニーズに応える」とは、休日・一時保育や障害児保育の全園での実施、子育て支援事業のさらなる拡大など、全国に先駆けた1ランク上の保育を目指すということになります。それ自体は大いに歓迎すべき施策ですが、伴う超過負担に耐えられるのでしょうか。コスト削減効果も生もうとすれば、職員配置基準を切り下げて保育本体の質を下げ、同時に私立への補助もなくさなければなりません。保育料の引き上げも必要でしょう。市長は、こうした疑問に答えるべきです。

民営化推進派の研究者でさえ疑問の声

 全国を調査し、状況によっては「民営化やむなし」との立場をとる前田正子さん(ライフデザイン研究所)は、八千代の保育の現状と行革方針発表後の経過を聞き、「八千代で、本当に民営化を進める意義があるのか?もし保育行政全体を民営化で改善する気があるなら手続きの順番がまったく逆です」と話しています。

 例えば、八千代市が民営化モデルとして視察を行った兵庫県尼崎市は、方針策定までに5年を費やし、公表の際は、民営化対象園と時期、民営化で拡充する保育内容、コスト削減試算、受託法人に課す条件、市が責任を負う公立園の配置…等々、細部にわたるプランが示されたそうです。

 計画自体の是非はともかく、八千代市でそれができないのは、しょせん保育内容の拡充は念頭になく、市独自には現状評価や試算も行わず、他をまねればコスト削減になるのでは、と甘い期待で導入したプランだからではないでしょうか前田さんの弁を借りれば「公立園の利用者が不安から反対するのは当たり前。保育内容が質と量の両面で改善されるなら、不安を乗り越える価値もあるけれど、改善されなければメリットはありません」。

 判断材料もないまま、今年10月に受託法人選考委員会を設置する、2000年6月議会で条例改正、2001年1月〜3月にかけて受託法人職員が乗込んできて馴らし保育、2001年4月からのモデル園スタートのスケジュールが発表されました。そんなに急いで強行するのは、一体だれのため?何のため?でしょうか。疑問だけが深まります。 (子育て〜検討委参加の父母)

連絡会会議:8月29日(日)10:30〜正午 

                 市役所隣福祉センター研修室(各園複数参加推奨)

“これからの保育所・学童保育はどうなるの?”(憲法・児童福祉法の理念に基づく公的保育制度の拡充を求める千葉県実行委員会主催)9月18日(土)午後1時30分より、垣内国光先生を招き船橋市葛飾公民館で開催されます。ふるってご参加ください。

7月25日市民会館にて千葉県母親大会開催。父母会からも多数参加し連絡会会長とともにステージで現状を訴えました。

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