砥峰高原〜峰山高原            神河町    25000図=「長谷」


砥峰から峰山を経て学校へ、60人の24kmウォーキング

砥峰高原のススキを歩く

 60人からなる一筋の列が、ススキの中に長く伸びた。今日は、大河内中学校3年生の総合学習「みんなで歩こう ふるさとの山から街へ」。砥峰高原から峰山高原へ縦走し、さらにそこから車道を中学校まで歩くという全行程24kmのウォーキングである。
 この学年の行事としては、珍しくまずまずの好天に恵まれた。これで、「雨男」を返上できるかもしれない。

 とのみね自然交流館を8:40にスタート。朝陽が東に低く、逆光にススキの穂が黄金色に輝いている。風が吹くと、ススキはまるで波のように踊って揺れた。
 朝露に濡れながら列の先頭を歩く。足元に、アキノキリンソウやリンドウが花の色も鮮やかにたたずんでいた。
 道の脇に「ノルウェイの森 撮影地」の標柱が立っていた。「高原内のワタナベとナオコの演技をトラン監督がここから撮った。」などと撮影秘話が記されている。生徒たちは、そんなことには目を止めず、ススキの道をずんずん歩いた。

逆光のススキ 高原を歩く

 間隔が少しずつ開いてきた。稲妻型につけられた道で立ち止まって下を見ると、ススキの中を青い体操服が軽やかに歩いてやってくる。
 「おーい」と声をかけたら、元気な声とピースサインが返ってきた。

 高原を抜けて、スギ林へ。景色が一変してあたりが暗くなったが、道が広くなった分おしゃべりがはずむ。スギ林から雑木林に変わって、アスファルト道に飛び出した。
 アスファルト道をしばらく歩き、再び林の中のハイキング道に入った。地形図に記されている三角点が気になるが、そのまま進んだ。
 歩き出して1時間と少し。疲れを感じ始めた頃に防火帯にさしかかり、ここで初めての休憩。防火帯は絶好の展望地のはずだったが、空には雲が広がり下界も白くかすんでいた。
 「あそこに見えるのが明石海峡大橋や」と、向こうの鉄塔と送電線を指す。「そんなんうそやろ。近すぎるでぇ。」とすぐにバレた。
 ザックを下ろすと、背の網の中に2つのマツボックリが入っていた。大きいほうがアカマツで、小さいほうがカラマツ。どこかで生徒が入れたのだ。しばらく休んでいると、男子が拾った枝で遊びだした。さあ、出発しよう。

防火帯での休憩

 湿地を歩くと、うしろで「ぎゃー」という叫び声とそれに続く笑い声。きっと誰かが、ぬかるみに足を突っ込んだ。湿地を抜けると、きれいな雑木林。季節は確実に進んでいた。
 赤や茶や黄に色づいた広葉樹の葉を、木漏れ日がまばゆく照らした。岩や倒木は、コケに厚くおおわれている。道には落ち葉が降り積もり、歩くとシャリシャリと音を立てた。
 小さな谷に架けられた丸太の橋をいくつも渡った。細い橋をこわごわ渡る生徒たちの姿がおかしかった。

峰山高原への縦走路 丸木橋を渡る

 予定より少し早く峰山高原に着いた。ホテルリラクシアの前の広い芝地でランチタイムとシャレたはずだったが……。シカのフンの少ないところを探して、生徒たちは三々五々輪をつくって弁当を食べた。
 ここもまた、「ノルウェイの森」のロケ地。「ノルウェイの森」と書かれた大きな看板の前で記念写真を撮って、出発。ウォーキングとしてはここからが本番。まだまだ元気だが、みんな覚悟はできている?

ホテルリラクシア前での昼食

 上小田までは、ヘアピンカーブの連続する激下り。列がしだいに長く伸びてきた。うしろ、ちゃんと着いて来ている?途中、道の脇で一度休憩。ホテルから2時間たった頃に、旧上小田小学校の休憩点に着いた。生徒たちの顔にも疲れがにじむ。最後尾が着くまでずいぶんかかった。
 全員が着いたところで、「さあ、行くぞ。」  ごめん。悪く思うな。こうしないと、時間までに学校に着かない。
 さらに1時間歩いて南小田小学校へ。待ち構えていてくれたお母さん方に、チョコレートを1つずつもらって少し元気を取り戻した。
 立岩神社を過ぎ、大歳神社を過ぎると2機の大きなクレーンが見えた。あの下がゴールの学校。一番つらい最後の歩き……と思っていたら、10人以上の男子の集団がどっーと走って追い越していった。
 ゴールするとカレーライスが待っていた。お母さん方が、この日の生徒たちのために作ってくれた。調理室は、おいしそうなにおいに包まれている。しかし……なかなか全員が帰ってこない。カレーを前に、お腹も鳴っている。
 「帰ってきた者から食べよか。」と言うと、「先生、それはあかんやろ。」……。ん?生徒たちの方が、人間ができている。

 お母さん方には、各休憩地点へ差し入れを運んでいただき、疲れの色濃い生徒たちを笑顔で励ましていただいた。その上に、完歩をねぎらうためのこのカレーライス。本当にありがたかった。生徒たちはそんな思いをしっかりと受け止めている。そして、まだ歩いている仲間を思って待っている。
 4時を過ぎ、やっと全員が調理室にそろった。冷やしていてもらったお茶で、乾杯する生徒たち。4杯おかわりする生徒もいた。疲れの中にも、満足そうな顔が並んだ。
 一人の生徒が、「中学校時代の良い思い出ができました。」と言いに来た。どこまでも、よくできた生徒たちだった。

山行日:2010年10月19日

とのみね自然交流館〜砥峰高原〜峰山高原〜暁晴山〜ホテルリラクシア〜大河内中学校
 砥峰高原から峰山高原までのハイキングコースは約7km。峰山高原から、県道を約17km歩いて大河内中学校に達した。

山頂の岩石 砥峰高原 → 後期白亜紀 川上花崗閃緑岩
        峰山高原 → 後期白亜紀 峰山層 安山岩質溶結火山礫凝灰岩
 砥峰高原や峰山高原の岩石の説明については、岩石地質探訪「砥峰高原の地質と地形」や、登山記録「銀の波揺れる砥峰高原から縦走路を峰山高原へ」をご覧下さい。

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