燈籠地山(54m)・姫御前山(50m)・木庭山(61m)  
                   姫路市          25000図=「姫路南部」


行基ヶ鼻から海辺の山の初秋を歩く 2

小赤壁三山(燈籠地山・姫御前山・木庭山)

「行基ヶ鼻から海辺の山の初秋を歩く 1」から続く

 福泊の小さな山、居守山を越えて海岸まで歩き、波止の付け根で休んだ。ここは、小赤壁の東の入口にあたる地点。もう、蚊に刺される心配はない。

3 小赤壁

 小赤壁は、900mにわたって海食崖が連なる岩石海岸である。

 文政8年(1825年)、姫路藩家老河合寸翁が創立した仁寿山校に招かれた頼山陽は、月夜に舟を浮かべこの地の風光を賞した。
 そのとき、中国長江の赤壁に思いを馳せて、この岩壁を「小赤壁」と名付けたと言われている。

 遊歩道の上には、切り立った崖がいくつもそそり立ち、休日には多くのロッククライマーがここで遊んでいる。

小赤壁

4 燈籠地山へ


 燈籠地山は、小赤壁三山の東のピーク。波止から見ると、高い岩が山を取り囲むようにしてそそり立っている。
 
燈籠地山

 波止のうしろに小赤壁公園がある。この公園に入ったところから、山に登る小道がついていた。この道は、クライマーたちが下山に使う道である。
 ウバメガシ林の中の道は、すぐに切り立つ岩壁の側面に出た。岩溝やそこに生える木の枝に手足をかけてよじ登ると、岩壁の上に出た。
 岩の上に立つと、海からの風が舞い上がってきた。

燈籠地山への道 岩壁の上から山頂へ

 そこからロープを伝わってもろい岩盤を登ると、灯籠地山の丸く開けた山頂に出た。
 コナラやクヌギの木がまばらに立ち、地面にはクズが這っている。木々の間を吹き上がってきた風が山頂を抜け、葉擦れの音がざわめいた。

燈籠地山山頂

5 姫御前山へ

 尾根に道が通っていた。ときどき、木の間越しに海が見えた。
 ウバメガシ林から竹林に入った。道も、枯れて落ちた竹の葉で敷き詰められている。竹林からササ原に変わったところで、道がほとんど消えた。
 道の跡を探しながらササを分けて進む。上りにさしかかったところでササが切れ、林の中に道が現れた。
 大きなクスノキが立っていた。道の脇には、メドハギが咲いていた。

 尾根道のわずかに高いところが、姫御前山の山頂だった。ここも、そそりたつ岩壁の上。岩とウバメガシがつくるトンネルの向こうに海が光っていた。

姫御前山から海を見る

6 木庭山へ

 再び現れた竹の林を抜けると、開けた岩の上に出た。この岩の上にもボルトが固定されていた。
 足元には照葉樹の葉がキラキラと光り、目の前には播磨灘が広がっている。
 海は青く、波が正面から射し込む陽光を細かくはね返している。波が岩礁に当たるところでは、岩の周りが白く泡立っていた。
 沖に上島、クラ掛島が浮かび、男鹿島と家島の島影が重なっている。淡路島や小豆島は、白い靄の中にかすんでいた。
 両脇から工場地帯が海に突き出しているが、それは視野の脇に追いやられている。太古からここに住む人々が見てきた風景が、そのまま目の前にあった。

岩壁の上

 山上の小赤壁公園を抜けると、木庭山山頂に達した。ここには、木庭神社が建っている。
 社殿の脇に、大きな岩が重なっていた。神社の石燈篭の下にも、ツルボが咲いていた。

木庭神社 燈籠の下に咲くツルボ

 木庭山から、小赤壁の西端に下った。
 小赤壁の下の遊歩道を歩こうとしたが、一部が崩れていて東へ抜けることはできなかった。海岸で、溶結凝灰岩の気に入った小石をいくつか拾って帰った。

 小赤壁は、姫路市に残された貴重な岩の自然海岸。その名に歴史をとどめる風光明媚なこの海岸は、地質学的に見ても絶好の学習の場である。
 しかし、岩が崩れ落ちる可能性のあることから、木庭山から小赤壁に下る石段や、小赤壁の下の遊歩道が立入禁止となっている。その遊歩道も、途中が壊れたままで補修されていない。
 ここをいつまでも立ち入り禁止にしておくのは惜しい。安全策を講じて、市民が安心してここを訪れ、風景を楽しんだり、自然の学習をしたりできる場に早くなればと思う。

山行日:2017年9月27日


小赤壁公園〜燈籠地山〜姫御前山〜木庭山〜小赤壁〜福泊キャンプ場
 小赤壁公園は、山上と海岸の2ヵ所にある。海岸の小赤壁公園から燈籠地山へ、クライマーが下りに使うコースがある。今回は、このコースを登った。(これとは別に、燈籠地山へは、北の民家の間から道が通じている。)
 燈籠地山から姫御前山を経て木庭山までは、尾根上に道が通じている。この道は、しばらく整備されていなようで、一部が消えかかっていた。

山頂の岩石  白亜紀後期  流紋岩質溶結火山礫凝灰岩
木庭神社の岩石
 木庭神社の脇に大きな岩石が積み重なっている。露頭ではないが現地の岩石である。神社の岩石なので割ることはできないが、その表面を観察をすることができた。
 岩の表面には、写真のように細長い穴がたくさん開き、それらが同じ方向に並んでいる。
 この穴は、軽石が押しつぶされてレンズ状になったもので、周囲より変質しやすいために風化によって抜け落ちた跡である。
 このことから、この岩石が溶結凝灰岩であることがわかる。

 この山をつくる岩石は、小赤壁の岩石と同じである。
 詳しくは、地質岩石探訪「小赤壁」を参照。
 

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