King Crimson 4


'80 King Crimson 

 もっとも評価が分かれるlineup がこの'80 King Crimson.登場直後は散々な評価が大半を占めたことは周知の事実でしょう.その後,'90 Crimson の登場と伴に再評価されたようですが,だいたいは”'80 Crimson も捨てたものじゃない”みたいな評価,あるいは妙に立派な(でも,後付けの理由としか思えない)理論に基づく賛辞.もちろん,中にはキチンと(冷静に)評価している記事・web site もありますが,やはり少数のように思います.
 何度もこのHPで書いてきたように,わたしは'80 Crimson が大好きです.けっして'90 や2000 に劣るとは思ってません.それどころか,愛聴しているという点では'70 Crimson にも引けを取っていません.わたしは今さら理論的な評価をしようと思いませんし,立派なものが書けるとも思いません.
 で,ここでは'80 Crimson のどこが,どのくらい好きかを力説することで,この時期のlineup が嫌いなCrimson ファンの心を揺さぶれたら...と考えています.


 本論に入る前にお断りをひとつ.わたしはRobert Fripp をはじめとしたミュージシャン達のインタビュー記事をあまり読みません(とくにこの10年ぐらいは).理由としては,1)音楽はやはりその作品が全て,2)(インタビュー等の)記事は時に有用な情報を与えてくれるが,その情報に自分の感性が引きずられる危険性が大きい(<わたしの場合は),3)とくにRobert Fripp の話を読んでいると,後付けの理屈に感じることがままある,4)単に膨大な資料を検討する気力がない,などです.したがって,下の記事の感想・推察等は各種音源を聴いた感想と断片的に知った情報がその元になっています.ですから,この意見が正しいと言う気はさらさらありません.反面,これが正直な感想であることも事実です.

1.Live at Moles Club (Collector's Box vol.4)

moles81.JPG - 7,876Bytes
1. DISCIPLINE 
2. THELA HUN GINJEET 
3. RED 
4. ELEPHANT TALK 
5. MATTE KUDASAI 
6. THE SHELTERING SKY 
7. INDISCIPLINE 
8. LARKS' TONGUES IN ASPIC PART II 



 まだ彼らがDiscipline と名乗っていた頃の音源('81/04/30).最初に書きますが,全編にわたりヒスノイズがあって音質は良くないし,演奏自体もまあ並.この音源を目当てに3枚組みのBOXセットを大枚はたいて買う意義は少ないでしょう.ただ,わたしは個人的にこの音源にとても興味がありました.

 自分の不勉強の所為もあるでしょうが,このDiscipline が突然King Crimson と名前を変えた理由が未だにはっきりしません.まあ真剣にこの問題に取り組んでるわけじゃないですが(笑).その証拠にRobert Fripp のご高説は有り難いけど,常に後付けっぽい印象がつきまとうので,かなり前から真剣に読むことはなくなったし,彼のソロ・アルバムまですべてフォローする気もないし...
 だから,この音源を聞けば何かヒントが得られるかと期待しました.King Crimson とDiscipline の間には決定的に違う何かがあるのでは?と想像したんですが.

 結論.何も分かりません(笑) 演奏曲にしろ,そのパフォーマンスにしろ2つのグループ名を隔てる距離の大きさを説明してくれるような個所はありません.じゃあ,なぜFripp はKing Crimson を名乗る決心をしたのか.'80 Crimson 登場当時よく言われたように,ごく単純に商売上のご都合とも思いません.まあ,Crimson を名乗ることによりはるかに多くの聴衆を惹きつけることが出来るでしょうし,その計算はあったでしょう.しかし,'80 Crimson の姿勢はそんな姑息な計算よりはるかにpositive でした(と思う).

 そこでわたしなりの考え.このDiscipline がギグを開始して時点では,Fripp はまだ自分達の音楽性・方向性にCrimson の名を冠する自信がなかったんじゃないか.もしそうなら...わたしはFripp を非難しません.むしろそれほど斬新な音楽に挑んだ彼に敬意を表します.

 以上はわたしの勝手な想像.もし同じような記事がどっかに載ってたら...その人には申し訳ないけど盗作じゃないです.(<Fripp さまに対しこんな失礼なこと書くヤツ他にいないか^^;) もしFripp 翁自身がインタビューで同じことを語っていたら...これはちょっとした自慢ですね(笑) もしそんなバカなことはあり得ないとおっしゃる方がいれば...まあ笑って読み流してください(爆)

2.DISCIPLINE

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1. ELEPHANT TALK 
2. FRAME BY FRAME 
3. MATTE KUDASAI 
4. INDISCIPLINE
5. THELA HUN GINJEET 
6. THE SHELTERING SKY 
7. DISCIPLINE





 何回も書きますけど,すごいアルバムです.音楽性云々はいろいろな論評があるでしょうし,自分もちょこちょこ書いてます.しかし,それはわたしにとって仔細なこと.ウダウダ言わず「かっこいい」,この言葉につきます.
  とくに「7. DISCIPLINE」.問答無用のかっこよさ.プログレ関連,とくにCrimson 関係では音楽性や理論無視の感情論は極端に敬遠されがち(<自分の反省も含めてね).が,今回は敢えて極力感情的に,思い入れたっぷりで行きましょう.あの短いリフが反復されるにつれ,嫌がうえにも高まる昂揚感や体が思わず反応する気持ち良さ.Crimson という名を忘れて聴くことが最重要.その後から音楽性やその価値を考察・議論しても遅くありません.知的好奇心を刺激する材料には事欠きませんから.でも,まずは理屈抜きに聴いてほしいですね.

 「5. THELA HUN GINJEET」,「1. ELEPHANT TALK」,「2. FRAME BY FRAME」.こいつらも理屈抜きで「かっこいい」ですね.あれほど美しかったPete Sinfield の歌詞から出発したCrimson は,ここに来てついにその歌詞の意味を失い,音そのものがdirect に精神と肉体を刺激してくれます.
 ある面「4. INDISCIPLOINE」と「6. THE SHELTERING SKY」は,かつてのプログレ色を多く残している曲ですが,このアルバムでは逆にアクセントとして存在しているような気がします.でも,けっこう好きですけどね.
 「3. MATTE KUDASAI」もなかなかいいメロディーなんですが,如何せん浮いてますね.Blew のヴォーカルでは存在感を示すには不足ですし...(まあ上手くはないですわね^^;) この時期のヴォーカル・ナンバーがその良さを感じさせてくれるのは,次の「HEARTBEAT」までお預けです.

3.ABSENT LOVERS

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DISC 1
1. ENTRY OF THE CRIMES  2. LARKS' TONGUES IN ASPIC PART III
3. THELA HUN GINJEET  4. RED  5. MATTE KUDASAI  6. INDUSTRY  7. DIG ME 
8. THREE OF A PERFECT PAIR  9. INDISCIPLINE 

DISC 2
1. SARTORI IN TANGIER  2. FRAME BY FRAME  3. MAN WITH AN OPEN HEART 
4. WAITING MAN  5. SLEEPLESS  6. LARKS' TONGUES IN ASPIC PART II
7. DISCIPLINE  8. HEARTBEAT  9. ELEPHANT TALK


 オリジナル・アルバムで'80 Crimson に失望した人は,このライブ盤を聴くことでかなり印象を変えてくれるのではないでしょうか.内容に関しては,くり返しになるのでこちらをご覧下さい.
 スタジオ録音からだいぶん印象変わります.リズム隊が前面に出てます.このアルバムの魅力は「リズム」強調mixのおかげと思うかもしれません.でも,よくよく聴くとその本質はスタジオ盤でもちゃんと聴けます.彼らは'80年代もやっぱりprogressive で,かっこ良かったんです.

 皆さん,このアルバムの真の聴き所は「LARKS' TONGUES IN ASPIC PART II」ではないですよ〜.頼むから「DISCIPLINE」や「THELA HUN GINJEET」を聴いてください.「LARKS' TONGUES...」や「RED」だけなら,'70や'90のほうがいいでしょう.でも,ここで聴ける「DISCIPLINE」の良さは'70にも'90にもありませんからね〜.

4.STUDIO REHEASALS

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DISC 1 
1. UNTITLED TRACKS   2. SLEEPLESS : instrumental   3. THREE OF A PERFECT PAIR #1 
4. THREE OF A PERFECT PAIR #2  5. MAN WITH AN OPEN HEART #1  
6. MAN WITH AN OPEN HEART #2  7. INDUSTRY  8. NUAGES #1  9. NUAGES #2 
10. MODEL MAN  11. UNTITLED TRACKS  12. UNTITLED GUITAR TRACKS  

DISC 2 
1. INDUSTRY   2. DRUM TRACKS   3. UNTITLED TRACKS   4. SLEEPLESS : instrumental 
5. LARK'S TONGUES IN ASPIC Pt. III   6. MAN WITH AN OPEN HEART   7. DIG ME 
8. THREE OF PERFECT PAIR   9. MODEL MAN

 ライブ盤(「ABSENT LOVERS」)の良さは,緊張感や力感・躍動感に溢れているからと言えるかもしれません.じゃあ,'80 Crimson が不当に低く評価されるのは,緊張感や力強さが不足していたから,と断定するのはやはり的外れです.この緊張感のないリハーサル音源をはじめて聴いたとき,正直ハズレを買ったと思いました.でも,あるときハッとしたんです.これは身を乗り出して聴くもんじゃないんだと.もっと音に身を任せて聴くもんだと感じたんです.そして,自分が'70年代のCrimson を聴いてきたそのままの態度をずーっと引きずっていたことに気づきました.それに気づいてから,この音源をけっこう楽しく聴けるようになりました.より”真剣に”とは言いませんが...
 万人にお奨めできる類のものじゃありませんが,自分にとってはかなり重要なbootleg です.でも,さすがに愛聴盤というには抵抗ありますね(笑) まさに珍品.

(注)この音源のレビューはこちらを参照してください.

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