** 紅茶の時間 **






紅茶をおいしく入れるには、唯一必要なコツがあります。
このコツを知っていると、値段の安いリーズナブルな紅茶でも、 十分おいしく入ります。 で、とてもカンタンなやり方なんですが、 入れるコツを知らないのでおいしくなかった・・・ という事はわりと多いようです。

そんなわけで、紅茶を入れるコツを、イギリス人の言葉を借りてご紹介。

「ヤカンをティーポットの所まで持ってくるな。
ティーポットをヤカンのところに持って行け!」

おいしい紅茶を入れるコツは、実はほとんどこれだけです。
つまり、お茶を入れるときに、十分に沸騰したお湯さえ使えばおいしいのです。
少し温度を下げてから入れる緑茶とは、味を引き出すコツが根本的に違います。
上の格言は、 ヤカンを火から下ろしてティーポットの所まで持ってくる間にも、 沸騰しているお湯の温度が下がってしまう。 だから、紅茶葉を入れたポットの方を、 沸騰してシュンシュンしてるヤカンの横まで持っていって、 沸きまくったお湯をティーポットに入れなさい。 という意味です。  どんな事があっても、保温ポットにいれて温度の下がっているお湯で、 紅茶を入れてはいけません。(ティーバッグでもです!)

前に読んだイギリスのミステリーで、 探偵マニアの貴族の家の超有能な執事が、 実に食えないヤツというか一癖も二癖もある強者で、 主人が彼の気に入らない言動をすると  「彼(執事)はとても恐ろしい復讐をする。 ぬるいお湯でお茶を入れて持ってくるのだ!」  という描写で、ひっくり返って笑い転げたことがありますが、 この復讐がどんなに人非人かヒシヒシと実感できるくらい、 温度の低いお湯で入れた紅茶は情けないものです。

なお、「沸騰」というのは、 お湯の中に泡が出始めて湯気が立ってくる頃のことではなく、  その後、泡がどんどん出て、ヤカンの口から湯気がシュンシュンと、 勢いよく出始めてからを言います。  時々泡が出始めるとお湯が沸いたと勘違いしてしまう人がいるので、 湧いたと思っても、もうしばらく火にかけておきましょう。





さて、基本はこれだけですが、「よりおいしく入れるには」  というアイデアもあります。
ここからはオマケの追加情報です。



<葉っぱの量>
  有名な 「ティースプーンで1人に一杯づつ+ポットのためにもう1杯」 という、「スプーンで人数分+1杯」 は、ミルクティーのための基本です。
ストレートティー(ミルクを入れずにそのまま飲む) の場合はこれでは濃くなりすぎるので、スプーンで人数分のみの葉を入れるか、 多人数の場合は1杯分くらい葉を控えた方が、 渋みやエグ味が出なくて香りが立ちます。


<待ち時間>
紅茶の抽出時間は、3分から5分が基本です。 (葉のタイプや細かさによって時間が違います、 たいていは、紅茶の缶や袋に必要な時間が書いてあります。 細かいほど短く、大きいほどゆっくり待ちます) 私は友達がバースデープレゼントにくれた3分間砂時計をずっと使っていますが、 長く置くと渋みの出てくるストレートティーの場合は、これがとっても便利です。 (3分間のカップラーメンタイマーも可!)


<ポットのかたち>
紅茶の葉は、沸騰したお湯を入れると、 ポットの中で上下に輪を描くように回転し始めます。 (じつは、沸騰したお湯を使わないと、この回転も足りない)
というわけで、長いポットや変形のポットより、 丸いポットや急須型のポットの方が、カンタンにおいしく紅茶が入ります。
といっても、よくある長型の強化ガラスの紅茶ポットや ティーバッグで入れると飲めないほどマズイかというと、 そこまでの味の差はなくて、沸騰したお湯を使っているなら、 コーヒーカップにティーバッグをほおりこんだだけでもかなりおいしく入ります。 うんとこだわりたい人は、丸いポットと茶こしを使いましょう。


<ミルクティーかストレートか>
ミルクティーの方が断然イギリス的です。 濃いお茶にミルクとお砂糖をたっぷり入れた、のどの焼けそうな紅茶の味は、 1度飲むとクセになります。
しかしストレートティーが、これまた飲み慣れるとアッサリしていて、 とってもおいしい。 特に、緑茶やウーロン茶を飲み慣れている日本人は、 お砂糖を入れないストレートティーもおいしくいただけてしまいます。

だいたいセイロンやアッサムなどの渋みのある濃い色の紅茶はミルクティーに、 ダージリンなど「煎茶系」の、渋みよりカフェインや香りの立つ種類の紅茶は ストレートティーにするとおいしいです。
プリンスオブウェールズやアールグレイなど、特殊な香りのある紅茶は、 好みにもよるとおもいますが、私はストレートが好きです。

レモンティーにする場合は、ストレート系の紅茶(ダージリンなど) にしますが、個人的な意見では紅茶とレモンはあまり合わないような気がするので、 むしろオレンジマーマレードを添えたジャムティーにすると、 邪道っぽいですがおいしいです。(フォーションの輪切りオレンジのゼリーなど、 カップに1枚入れて紅茶を注ぐと、なかなかうっとりできます)  トロトロのお酒の入ったジャムを入れて飲む甘いロシアンティーも、 なかなかおいしい飲み方です。


<おいしい紅茶の葉>
おいしいお茶の葉を使うこと。
高い物でなくていいですから、古くて香りの飛んだ葉はダメ。 パッケージはきれいだけど、 紅茶としてはヘンな味に調整されているものもちょっとダメです。 値段やメーカーにかかわらず、 自分でおいしいと思う紅茶の葉にしましょう。
フォートナムメイソンやハロッズなどは、 さすがに老舗の風格で重厚な味ですが、大量に出回っているからといって、 トワイニングなどをバカにしてはいけません。 (ウイリアムモリス柄のきれいな絵のついたティーバッグをもらったんですが、 これが嫌味がなくてとてもおいしい・・・!)
名前のしれているメーカー品やブランド物はだいたいOKで、 イギリスより北の方の国だといよいよそんなにハズレはないですし、 陶器屋さんのような気がするウェッジウッドの紅茶も、 飲んでみるとなかなかおいしくて、ロイヤルコペンハーゲンあたりは涙ものです。
ただし、フランス製の紅茶に限っては、普通の意味の紅茶ではなく、 ハーブティーかフレーバーティーだと思って飲んで下さい。  普通のダージリンだと思ってミルクを入れると、 ちょっと不思議な香りが参加していて、困ってしまったりする事があります。

なおイギリスに旅行する方は、イギリス国内の、 そのへんのスーパーや食料品店で売っている紅茶の葉を買うと、 かなりの確率でおいしい紅茶にあたるようです。
値段も安くて、有名ブランド品よりおいしいのですから、 だんぜんオトクです。

なお同様に、フランスではそのへんのスーパーで売っているハーブティー (ハスの葉のお茶など)がとんでもなくオイシイです。
私はフランスから帰ってきた友達に飲ませてもらって、 あんまりオイシかったので日本で売っていないかと探したのですが、 そんな安物は輸入しない(トホホ・・・)のだそうで、 やはり安くておいしいものは、地元でしか手に入らないようです。


チャイ (ロイヤルミルクティー) のつくり方

日本でよく「ロイヤルミルクティー」という名前でメニューに書かれている 「チャイ」は、インドあたりで飲まれている「煮出しミルクティー」です。
とっても濃くてオイシイものですが、 ヘンな作り方をすると紅茶が出なくて惨憺たる結果になるので、 このような作り方でどうぞ!

まず、チャイに使うお茶の葉は、アッサムやセイロンティーなどの、 うんと濃く出るミルクティー用のものがベスト! できればリーフ (葉っぱの形が残っている大振りな紅茶)よりは、砕けたものか、 粉茶を顆粒状に粒にしたようなタイプのものがうまく出ます。 インドや中近東のお土産品の紅茶などはタイプ的にピッタリです。 (この地方の物は、うまくすると、 チャイ向きのいい香料が入っている事もあります。)  安い紅茶でとってもおいしくなるのがチャイの魅力です。

<用意する物>
ナベ 牛乳 紅茶の葉(ミルクティー向きのもの)  水 砂糖 ティーカップ 茶こし(絶対必要!)

まず、鍋に水を入れて、そこに紅茶の葉を「少し多いか?」と思う分量入れて、 そのまま火にかけてぐつぐつ沸騰させます。
絶対に最初から牛乳を入れてはいけません!
牛乳の油分にくるまれて紅茶が全然出なくなります。 最初は水だけ!


で、しつこいくらいにぐつぐつ煮続けます。2−3人分なら、 カップ1弱くらいの水で煮始めて、お湯が1/4くらいになって、 ものすごく濃い紅茶のエキスになるまで、紅茶を煮込み続けます。 (これについては、3分とか5分とか考えません、とにかく濃くします。 火力が強くて蒸発が早く、鍋が焦げ付きそうになる場合はお水を足します)

じゅうぶん濃く出たなと思ったら、 1人前につきカップ7−8分目くらいの牛乳をその鍋に入れて、 こんどは、あんまり強火にするとぶわっと吹きこぼれるので、 注意してゆっくり加熱します。 紅茶がお湯に十分出ていれば、 牛乳を入れてからはそんなに時間をかける必要はありません。 お好みで砂糖を入れて(あとからカップに加えるよりは、 鍋に入れて溶かしておいた方がおいしいかも・・・) 必ず茶こしで漉しながらカップに注ぎます。
茶こしを使わないと、お茶の葉がカップに入ってしまい、 ミルクとお茶の色で中が全く見えない上に、 かなり熱々なので、口の中にお茶の葉を吸い込んで悲しい事になります。
口の中の安全のためにも、茶こしを使いましょう。



< おいしいアイスティーの入れ方 >

もはや定番になりましたが、やはりアイスティーにはアールグレイです。
スタンダードなアイスティーのおいしい作り方はこちら。

<用意する物>
アールグレイの紅茶の葉、沸騰しているお湯、氷(たくさん)、 レモンスライス、ガラスのコップ、柄が長めの金属スプーン(コップに入るもの) ガムシロップ(好みで)

まず、アールグレイを濃いめに入れます。目安としては、 熱くして飲むときの半分くらいのお湯の量です。
コップに金属スプーンを入れ、氷をほとんどコップの上までびっちりと入れます。 この時、氷の8分目くらいの、わりと上の方に、 レモンのスライスを縦を向けて挿しておくと、お茶を入れたとき香りがよくなります。

ポットにお湯を入れてから3分くらい待って、 アールグレイが入ったところで、 コップの中のレモンに向かって熱々の紅茶を注ぎます。
ほぼ上までこぼれない程度にお茶を注いだら、 好みでシロップを入れて、中に挿さっているスプーンでかきまぜて、 全体を冷たくしてから飲みます。
シロップを入れないストレートアイスティーもオイシイです。

コツは、冷蔵庫の匂いのついてない、おいしい氷を使うことと、 氷をケチらないでドッサリ入れること(氷をケチると生ぬるくなります)
金属スプーンは、必ず入れておかないと、 熱い紅茶を注いだときにコップが割れてしまいますのでご注意!

なお、紅茶を冷蔵庫で冷やすと濁りが出て味も落ちるので、 飲むときには、熱い紅茶を一気に氷に注ぐ・・・というのが、 おいしいアイスティーにありつくコツです。

アールグレイの他に、ダージリン系のストレート用紅茶でもおいしく入ります。




このページの図版は、タイムライフ社の 「世界の料理/イギリス料理」  の中から使用しました。


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2000.5.24.



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