ハトポッポ

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kv強化月間z

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ベジータは空を飛んでいた。
頭上に広がる空は既に赤みを含んだオレンジから青みがかったピンク色に変わりつつある。

もうすぐ日が沈む。
もう少しスピードを上げた方がいい。

「チッ…」
ベジータは忌々しく舌を打った。
あのバカは…日が沈むのと同時にいつも寝てしまうのだから。

だから仕方なく、こんな時間に行ってやるのだ。
…まだ少し早いのはとっくに承知の上だ。

「あの野郎…」
何でこんな時間に王子であるオレの方から行かねばならんのだ。

普通なら下級戦士から来るのが礼儀だろう。
だが…あいつは…

ベジータがようやく目的の場所に着いた時、既に上空は僅かに青みはじめていた。
そのまますぐに着地せず、上空からカカロットの家を見下ろす。



「……」
小さな小屋のような家の前にあの野郎が間抜けヅラで立っているのをベジータは見つける。。
他に何もない山の中のつまらん所だが、それが修行には一番いいだと、あいつは一人で住んでいる。

「そんなに慌てねえでもっとゆっくり食えよ。まだパンは沢山あっからよ」
あの野郎は、家の周りに寄ってきた小さな山鳩にパンくずをまいていた。
このオレがこんなになっているというのに、あの野郎は呑気な顔をしやがって鳩とたわむれていやがる。
ベジータの眉間の皺がピクリともう一つ増えた。

「ん?よう、ベジータどうしたんだよ?そんな空の上に浮かんじまってさ。さっさと下りて来いよ」
その時、あいつ…悟空がベジータの気配に気づき、ニコリと笑った。

「……」
「ん?ベジータ、何か用か?」
「ちゃんとした理由がなくては来てはいけないのか?」
「そんな事は言ってねえよ。おめえがオラの所に来るなんて珍しいからさ。どうしたんだよ?」
「どうしたも何もないだろう!!!キサマがオレの所に来ると言っておきながら既に半年だぞっ!いつまでたっても来る気配もありゃしねえっ!」

「おめえ…もしかして、ずっと待ってたのか?」
「そ、そんな筈ないだろうっ!このオレが何でキサマを!」
「なら、いいじゃねえか」
「……」

「そんなに怒るなよ。オラも修行で色と忙しくてさ…」
「忙しいという割には、こんな所で呑気に鳩にエサなぞやってるのかっ!!」
「へへ、まあいいじゃねえか」
「何がいいのだっ!鳩にエサをやる時間はあってもオレの所に来る時間は無いようだな!このオレは鳩より後回しと言う事か」
ベジータがドンと足を踏みならすと、唸るような地響きがして、鳩はびっくりしたように飛び立った。

「だからそんなに怒るなって…ああ、逃げちまった…鳩のパンが残ったけど食うか?」
「キ、キサマ…オレに鳩の残飯を食わせる気か?」
「残飯じゃねえよ。ちゃんと食えるぞ。一週間前のやつだからちょっとパサパサしてるけどな」

別にパンがどうしようもなく食べたい訳でもなかった。
パサパサのパンを食べる為にわざわざ此処まで来た訳でもない。
けど、このパンを持ってるといつまでたっても鳩の話から抜けられそうにないので、ベジータはそれを悟空からひったくるとガツガツと食べてしまった。

「おめえ、そんなに腹が減ってたのか?」
「ち、違う!」
「このパン、結構鳩が好きなんだ」
「キサマは…この期に及んでまだ鳩の話なのか?」
無理矢理パンを飲み込んで喉を少々詰まらせながらも本題に入る。

「何をカリカリしてるんだ?急ぎの用があるなら、さっさとおめえの方から来たらいいじゃねえか」
「…そ、そんなはしたない事が出来るか!!」
「はしたない…って何しに来たんだよ、おめえ?」
「……」
悟空に不思議そうに顔をのぞき込まれた。

「どうしたんだよ、ベジータ?何だか元気がねえようだな。目の下が黒くなっちまってるぞ」
「…眠れないのは…」
「はあ?何を言ってるんだよ、おめえ?」
「眠れないのはキサマのせいだ」
一つ息を飲み込んで、ベジータはポツリと答える。

「何だ、おめえ、寝てないのか?なら今夜はオラの所で一緒に寝たらいいぞ」
「キサマ、こんな時間にオレがただ寝に来ただけとでも言うのかっ」
「じゃあ修行でもしに来たのか?でもこれからおめえと修行するには今日はちょっと遅えぞ。そろそろオラは寝る時間だからな」

「わかってる、だからわざわざこんな妙な時間に来たのだ。キサマは日が暮れたらさっさと寝てしまうからな」
「で、結局おめえは修行じゃねえんなら、何しに来たんだよ」

「うるさいっ!さっさとオレの熱を静めやがれ!」
「おめえ…熱でもあんのか?」
悟空はベジータの額に手を当てて熱をみてみる。

「キサマ、何処までふざけた野郎だっ!オレの熱は…」
そこでベジータは言いにくそうに口ごもった。
早く察しろ、そんなストレートに言えるかっ!

「もしかして、おめえ、チンチンが熱くなっちまったのか?」
しかし今度は悟空のあまりにもストレートすぎる言葉にベジータはカーッと顔を赤くした。

「キサマ、そ、そんなにはっきり言うなっ!」
「そうか、チンチンが熱くなっちまったのか、ハハハ、そいつは困ったな」
「そこをでかい声で何度も繰り返して言うなっ!」
本当にデリカシーの無い奴だ!

「そんな事言ったって、おめえがちゃんとはっきり言わなきゃ、オラ、わかんねえよ」
「すっとぼけた野郎だぜ」
こいつのマイペースさに、ベジータは呆れて怒る気も失せてくる。

一体自分は何を一人でカリカリしてたのだろう?
こいつに会うと、感化されて段々自分も穏やかになってきてしまう…どうしようもなく。
サイヤ人の王子であろうオレが…

「わかったよ、ベジータ。なら、さっさとエッチをしようぜ。寝るのが遅くなっちまうからな」
そうなのだ…こいつはいつもバカ早く寝てしまうのだ。
わかっていたから、わざわざベジータは今日は早く来た。
夕方とはいえ、まだ明るいこんな時間に自分からエッチを誘いに来るのもどうなのかと思うが、自分にとってちょうど頃合いの良い時間には、このうすらトンカチはいつも夢の中に行ってしまっているのだ。

「キ、キサマ!そんなあっさりと……っ!!」
悟空に体そのものを引き寄せられるようにベジータは腰を取られた。

「眠れねえくれえオラとエッチをしたかったのか?」
「……」
一転して変わる悟空の低く囁くような声に、素直にうなずけないベジータの喉がそれでもゴクリと動く。
すっ惚けた野郎から、一瞬の内にオレを惑わす黒い悪魔にすり替わるのだ、こいつは。

「なら、我慢してねえで、もっと早く来いよ、ベジータ」
「…夜になる前にケリをつけてやる。来い、カカロット!オレを…めちゃくちゃにしろ…」
「わかったよ。やろうぜ。おめえが納得するまで付き合ってやるよ」
悟空の漆黒の瞳が妖しげに揺らめいた。


そうなる事が当たり前であるかのように唇が重なった。









「ん、ああっ!」
悟空の体の上で、ベジータは自らの体を貫かされた状態で、激しく腰を揺らしていた。
幾日も…いや、何ヶ月もこの欲望をもてあましてきた。
自分でも淫らで浅はかだとは思う。

突き抜けるような痛みと熱さが、濃厚な欲望と化して背筋をゾクゾクと駆け上がる。
そうだ、この感覚を自分は幾晩も求めていたのだ。
この激しさを自分に与えてくれるのは、同族のカカロットの肉体だけなのだ。
鋭く熱い…
自慰とは比べものにならない程の熱さに、思わず息が荒ぶってくる。

あと少し…のところで、いきなり自分の雄の根本を悟空に押さえつけられた。
「な、何をしやがるっ!」
「オラより先に出すなよ、ベジータ」
悟空の瞳が突き刺すように鋭くベジータを睨みつけている。

「……」
「この前はオラがイッてねえのに先にイッちまって、オラを放ったまま、おめえはそのまま抜いて帰っちまったじゃねえか」
「は、放せっ!」
「放さねえよ。おめえ、また先に帰っちまうからな」
「くそったれ…」
「せっかちなヤツだな、もう我慢できねえのか?もうちょっと楽しめよ」
「……」
「もっと気持ち良くしてやっからよ」
「ん…」

少しでも早く頂点に達したい一心で、ベジータは腰を振る。
悟空から与えられているその苦痛は、しかし更なる濃厚な快楽へと繋がって行く。
汗が飛び散り、喉を震わせながらベジータは淫猥に動いた。

「はっ、あっ!」
「ポッポッポ~」
ベジータの嬌声とふいに口をついて出た悟空の鼻歌が同時に重なった。

「な、何を歌ってる、カカロット…」
ハアハアと激しい息の中でベジータは動きを止めると悟空を睨んだ。

「呑気に鼻歌なんか歌ってんじゃねえ!」
「いやあ、何だか、おめえの腰のリズムが何かに似てるような気がしてさ」
「……」

「鳩ポッポとぴったりなんだよな、おめえのリズム」
「…キサマはオレにぶっ殺されたいのか?」
「だってよ…おめえ、もう一回動いてみろ」
「……」

「ほら」
「は、あっ!」
悟空に突き上げられ、思わずベジータは再び腰を動かす。

「ポッポッポ~、ほら、やっぱり一緒だぜ、おめえのリズム」
「……」

そう言われると、確かにシンクロしているように悟空の呑気な鼻歌と自分の腰が一緒に動いている。
この奇妙な一体感は一体何なのだ?
その瞬間から、どうやらベジータの頭の中にもそのメロディとリズムがすり込まれてしまったようだ。
腰を動かす度に頭の中でポッポッポ~とカカロットのすっとぼけた歌声が反響している。

「キ、キサマ、こんな時にくだらん事を言いやがって」
悔しいので倍速で動いてみたり、わざと遅くしてみたりするが、ベジータの頭の中でどうしようもなくポッポッポ~は同じようについてくるのだ。

「カカロット、キサマがくだらん事を言うから、オレの頭からも妙な鼻歌が離れなくなったじゃねえか!どうしてくれる?」
「まあ、いいじゃねえか、素直にそれに合わせてイッちまったらいいんだろ?」
悟空にせき止めていた欲望を今度は刺激するように上下に扱かされる。

「オラと一緒にイクぜ、ベジータ!」
「んん、あっ、あ!」

頭の中で呑気な鳩ポッポのリズムは相変わらずガンガンと流れてくるが、どうにもならない。
今、カカロットの頭の中にも同じようにポッポッポ~が流れているのだろうか?
二人の腰のリズムがいつもよりぴったり合っているような気がする。
滾る欲望が絡み合って一つに融合してしまったような錯覚さえ覚える。
もしかしたら自分の上げている声そのものが、ポッポッポ~になっているような気もするがそんな事はもうどうでもいい。

カカロットだけだ!
自分の中でどうしようもなく滾ってくるサイヤ人の欲望を受け入れてくれるのは。
このドクドクとした熱い肉欲だけが、自分の中にいつまでもポツンと残された奇妙な切なさを忘れさせてくれるのだ。
カカロットを追ってしまう…妙な切なさを。
この一瞬だけ、カカロットと繋がったこの瞬間だけ、自分は全てが満たされる。

『みんなで仲良く食べに来い』とベジータが心の中で歌った歌詞の最後の瞬間で、悟空がタイミングを測ってたかのようにブルリと体を震わせた。
その時を共有するように、ベジータも頂点に達した。






「がんばったな…ベジータ」
「オ、オレがいつ何処で何をがんばったと言うのだっ、キサマは!」
体を離したベジータは真っ赤になって切り返す。

「何だよ。おめえ、オラに具体的に言って欲しいのか?」
「……」
「でもおめえとやると、オラは何だか胸の辺りが切なくなるんだ、ベジータ」
「……」
「おめえと繋がると心の隅っこを針で突かれたみてえに、ツンと痛くなる。おめえがまるでそんな風に感じているみてえで…気のせいかな?」
悟空の漆黒の瞳が自分の姿を映し出す。

「気のせいに決まっているだろう。オレが何でそんな風にキサマを思わないとならない?」
「…本当にそうか?」
「…くだらん」
ベジータはそっぽを向いて呟いた。

繋がり会った瞬間だけ肉体の快楽は共有したとしても、感情の全てまでも共有するつもりはない。
こんな事までするくらいだから、こいつは自分の事を嫌ってもいないと思う。
でも自分がこいつを追う程に、こいつはそこまで自分の事をそこまで考えてはいないような気がする。
来ると言っておきながら、半年も忘れているこいつの事だから。
それ以上期待をかけてもどうしようもないだけだ。

「そっか、それならいいんだけどな」
悟空は何か言いたそうな顔を一瞬したが、それ以上何も言わずに言葉を切った。

「くそったれ。サイヤ人の王子であるオレが…ポッポッポ~でイカされるなんて…」
「でもいつもより、タイミングがぴったりだったと思わねえか、オラたち?」
「……」
「そっか、って言う事はこれからもあの歌で合わせばいいんだな」
悟空は得意げに手を叩いた。

「バカ野郎、あんなくだらん歌にこれ以上付き合ってたまるか。オレは誇り高き戦闘民族サイヤ人の王子だぞ」
と反論しながら、ベジータは両手を上げてふああ~とあくびをした。

「眠れそうか、ベジータ?」
「当たり前だ」
「さっぱりしたら眠れるなんて、おめえ、すっげー溜まってたんだな」
「げ、下品な事を言うなっ」

自分を苛立たせていた熱は確かにもう静まっていた。
ポツンと心の隅に残っていた切なさは、激しく狂おしい肉欲と共に昇華されたのだろうか?
いや、この穏やかさは、今、こいつの温かな体に触れているからだ。
強さと相反しそうなこいつの妙な優しさが気に障るが、触れていると不思議と穏やかな気分になる。

やっている最中に呑気に鳩ポッポなんかを歌いやがるクソ野郎。
こんなクソ野郎なのに…いつの間にか、こいつのこの妙に平穏な感じがオレの心を癒すのだ。
叶わぬ願いだが…ずっとこの体に触れていられたらと思うのだ…
一日中などとは言わない。

せめて眠りにつく前のこの一時だけでも。













既に日は暮れて、空は涼しげな藍色に染まっている。
静かな夜だけがそこにある。

「今夜はオラの隣で寝て行ったらいいぜ、ベジータ」
「ふん、狭っくるしい所でこのオレを寝せる気か」
「おめえが嫌なら無理には誘わねえけどな」
「……。寒いから一緒に付き合ってやる。だが、オレの所に足の一本でも投げ出しやがったらぶっ殺すぞ」
ベジータはブツブツ言いながらも、素早く悟空の布団の中に潜り込んだ。









「おめえ、よっぽど眠かったんだな。素直じゃねえんだから」
悟空は隣のベジータをチラリと見て呟く。
悟空に全てを預けたまま、既にベジータは軽い寝息を立てていた。

「おめえの所にはそう簡単には…行けねえよ。会ったら必ずおめえとは別れなきゃならねえしな」
「……」
「どうせやる事だけやっちまったら明日は帰っちまうんだろうな。掴まえようとするとすぐにスルリと逃げちまうんだからな」
「……」
「このまま一緒にいろよってすっげー言いてえんだけどさ…この小さいベッドじゃ無理だろうな。おめえは王子様だからな」
そんな切ない悟空の言葉を寝ているベジータは知る筈もない。

いつもよりほんの少し長い夜。
二人の心が繋がるまでは、まだもう少し時間がかかりそうだ。





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