サツキ、さつき (皐月)最終更新日 2006年10月
野生のサツキ
ツツジ科 ツツジ属 学名 Rhododendron indicum 和名 さつき、皐月、サツキツツジ
関東以西に自生している常緑の低木、川岸の岩の上などに野生する。水湿を好み乾燥には弱く肥沃な腐植質で弱酸性の土壌に適する。 高さは1メートル程度、葉は互生し長さ2〜3センチ、披針型で質は厚い。ツツジと見分け難いが、花はツツジより遅く名前の如く 5月に咲く、枝先に朱赤色または紅紫色の花を付ける。
園芸種のサツキ
古典に見られるサツキ
| サツキは日本固有の花木で、関東以西から九州まで広く分布し初夏の山野を美しく彩る。 他のツツジとともに古くから鑑賞されたことは 『万葉集』 にこの花を詠んだ歌9首がおさめられている。
万葉集以後の諸歌集にもツツジを詠じた歌は数多く見られる。 また、延徳元年(1489年)北慈照寺銀閣の林泉・落照岡に将軍足利義政公がツツジを植えたと伝えられている。
この頃は、ツツジとサツキは区別されていなかった。 サツキが古文書に区別されて出てくるのは俳書『毛吹草』の「俳諧四季之詞」に五月の季語として “五月つつじ”とでている。 |
サツキ栽培のあゆみ
| サツキ栽培の起源は明らかでないが、1692年(元禄5年)に書かれた江戸染井の伊藤伊兵衛著『錦繍(きんしゅう)枕』にはさつきの品種162種を図示し色彩花の品位を記載し、栽培法、繁殖法が記述されている。
ツツジとの区別として、“春咲くのものを「つつじ」、初夏より咲くものを「さつき」という。 しかし、春咲くさつきがあり、木の性さつきなればさつき、又夏咲くつつじ有り、それも木の性つつじなればつつじの部に記す”とある。
この時期、サツキの栽培が盛んだったことが伺われる。このように古くから愛され、品種改良や栽培法が研究されていたのである。 その後、時代と共に好まれる品種の変遷や何度もサツキ栽培ブームが起こった。 日本皐月会品種ごとの人気度を示した 『皐月名鑑』 が発表されている。
また、サツキは花を楽しむだけでなく、花木盆栽の代表として扱われ木全体の姿を楽しむ素材ともなっている。 |
サツキとの出会い
| 1970年5月に現在の地に家を持った。 引っ越しが終わり、庭に植える木や草花を探しに近くにある大きな園芸店を訪れた。 サツキの咲く季節であり、当時のサツキブームも手伝って広い売り場にはたくさんのサツキが並べられていた。
品種の多さ、大小の花と彩りの華やかさに引かれたが、何より驚いたのは1本の木に種々な花を付けていることであった。
中学生の時に習った “メンデルの法則” によると、赤い花の朝顔と青い花の朝顔を交配した種からは赤い花の咲く個体と青い花の咲く個体が一定の割合で出現する。 この様に記憶しており、遺伝子の混じり方によるもので、同じ遺伝子を持っている1つの個体に赤い花と青い花が混じっては咲かないのである。
出会いでのこんなショックと花の多様性に引かれ、たちまち庭にはサツキの鉢が沢山並ぶことになった。 |
サツキの栽培管理
| 野生種には関東以西から九州に自生しているサツキと熊本、長崎、五島から屋久島、沖永良部諸島に生えるマルバサツキの2系列有る。 これらの自然交配と突然変異で現れた物の中で、鑑賞に堪えるものを大切に育ててきたのではないかと思われる。
サツキは突然変異が現れやすい植物のようであり、品種により異なるがかなり高い頻度で新芽の部分に“先祖帰り”が発生する。 この芽が育った枝には単色の花しか付けず、鑑賞価値が低くなる。 一旦、先祖帰りした枝には本来の芸のある花は咲かず、その上樹勢が強く成長が早いので放置するとこの種の枝の割合がどんどん増えてしまう。 祖先帰りした枝は見つけ次第、切り取る必要がある。
私の好きなサツキの紹介で赤花と表現した花が先祖帰りした枝に咲いた花である。
詳しい栽培管理に関する詳しい情報はこちらを参照下さい。 |
30年余の付き合い
| 最初は大輪の色鮮やかな花が多かったが、時を経るに従って小型で落ち着きのある品種により魅力を感ずるようになってきた。 大輪の物は知人に譲り手元にはなくなってしまった。
多くのものは30年以上、同年齢の息子が巣立った後にも同居し毎年美しい花を見せてくれる。 毎年花の後での整枝、3年に一度の植え替え、何よりも乾燥を嫌うので毎日の水やりが欠かせない。 病気には強いが害虫には注意が必要である。 |
お気に入りの紹介
| お気に入りの数種類を紹介します。 1つの種類に複数の花の写真を並べていますが、一本の木に咲いた物です。 |
晃 明 (こうめい) 乳白色に紫色を帯びた桃紅色の伊達絞り、竪絞り、三色咲きに、底白が混じる中輪でやや筒咲き。 葉は小型の細長で他種より緑が濃く照り葉、枝打ちが細かい。
八 咫 の 鏡 (やたのかがみ)
濃い緋紅色の底白、または白色の大玉斑が入る丸弁の小輪。
紅 梅 (こうばい)
濃鮮紫色の白玉斑入り、または爪白が咲き分けるが、あけぼの底白といって、はっきりしない底白が混じる。花弁の長さより幅のほうが広く合わせめが広く、梅の花の姿に似る。 花弁は5〜7枚と変化する。葉はやや厚く緑が濃く照りがある。
一 生 の 春 (いっしょうのはる)
淡い紫紅色の地に紫の大絞り、小絞りで丸弁の大輪。 展覧会でも好評を博し、昭和34年農林大臣賞受賞。一生の春と素敵な名前が付いている。
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大絞り | 地合い紋 |
上 の山 の キ リ ン(かみのやまのキリン)
白地に濃い紫色の竪絞り、またはみじん絞りで中輪。サツキの中で一番紫の強く出る鮮やかな花である。 山形県上の山の産。
| | 各種の花が揃った |
秀 峰 の 光(しゅうほうのひかり)
薄い朱鷺紅いろの覆輪で花びらは細く剣弁の中輪、濃い暗紅色のブロッチが印象的な花である。 この花のみが咲き、芸はない。
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