TOPメニュースズメバチの巣と体のしくみ > スズメバチの巣のしくみ

スズメバチの巣のしくみ

スズメバチの巣のしくみスズメバチの体のしくみセルマップ成虫の羽化数

スズメバチの巣には何段にもなった巣盤とボール状の外皮があります.外皮は朽ち木の木質部や生きた樹木の樹皮をかじり取ったものを,だ液と混ぜて団子状にして巣に持ち帰ります.細かく噛み砕いた後,大顎と前肢を使って薄く延ばしながら表面に貼っていきます.

働きバチが羽化するとあちこちで巣材を集めてくるため,材料の違いから外皮の表面には特徴のある貝殻状の模様ができます.巣の形や外皮の模様は種類によってそれぞれ特徴があり,ハチの種類を判別するのに役立ちます.

巣材を集める働きバチ 巣材を集める働きバチ 巣穴と見張りのバチ 外皮を補修する働きバチ
スイリュウヒバの樹皮を囓り取る働きバチ 朽ちた丸太から巣材を囓り取る働きバチ 団子状の巣材を抱えて巣作り中の働きバチ 大顎で巣材を薄く延ばして外皮を増設中の働きバチ

コガタスズメバチとキイロスズメバチの巣は,外皮に覆われたボール状で,巣が大きくなると縦に長くなります.外皮の模様はいずれも貝殻状ですが,キイロスズメバチの方が一般的に淡い色彩をしています.巣の側面に開いた丸い穴が出入り口となります.

モンスズメバチの巣は釣り鐘状で,底の部分が抜けています.側面には出入りのための穴は無く,ハチは大きく開いた底面から出入りします.外皮の模様もきれいな貝殻状にはなりません.稀に開放空間にも営巣しますが,この場合は底面の開口部が著しく狭くなります.

オオスズメバチの巣も同じように底の部分が抜けており,外皮は薄くて貝殻状にはなりません.この2種のスズメバチは閉鎖空間に巣を作るため,空間の広さや形状によっては,非常に変わった形の巣を作ることがあります.

ヒメスズメバチの巣は,薄い外皮が釣り鐘状または電灯の傘のような形をしており,下端は開放していて巣盤が見えています.

コガタスズメバチ キイロスズメバチ ヒメスズメバチ
モンスズメバチ オオスズメバチ チャイロスズメバチ

巣盤を覆っている丸い外皮は何枚もの層からなり,間に空気室と呼ばれるすき間があります.この空気室には外気との断熱効果があり,巣の内部の温度を一定に保つのに都合よくできており,巣内温度は常に28〜32℃に保たれています.

スズメバチの巣はいわゆる”パルプの巣”で比較的もろいのですが,耐水性にすぐれ水をよくはじくため,風雨から巣の内部を守る役目を果たしています.

巣には1カ所の巣穴(出入り口)があります.巣穴はいつも同じ大きさではなく,活動が活発な日中は大きく,夜間は小さくなります.巣穴からは常に見張りのハチが外をうかがって警戒しています.

外皮の空気室 外皮の表面の様子 外皮の表面の様子 巣穴と見張りのバチ
外皮の空気室 外皮の表面 巣穴と見張りのハチ

外皮が破損して内部が見えるコガタスズメバチの巣

働きバチは巣の内側から外皮を削り取って細かく噛み砕き,巣盤や支柱の材料に再利用します.そのため,巣は丸いままで次第に大きくなっていきます.巣盤には6角形をした育房が整然と,直線的に並んでいます.

巣盤は上から下へと順番に増えていき,できた順に1層,2層と数えます.コガタスズメバでは,営巣末期には3層から4層の巣が大多数を占めますが,稀には5層の巣も見られます.

コガタスズメバチの巣では,巣盤は中央にある太い1本の柱で支えられるのが普通です.キイロスズメバチ,モンスズメバチ,オオスズメバチなどの大型の巣を作る種類では,時には巣盤が10層以上にもなり大変重くなるため,何本もの細い支柱で巣盤を支えています.

支柱の材料には内側から削り取った外皮を再利用しますが,成虫が羽化した繭のキャップの繊維をかみ砕いたものを混ぜ込むため,大変丈夫になっています.

オスバチや新女王バチの子育ては後から作られた3層目や4層目の巣盤で行われます.この頃には働きバチの子育てに利用された1層目や2層目の巣盤は使われなくなり,育房の入り口は巣材で塞がれます.


育房の様子 育房の様子 巣盤の支柱 使われなくなった巣盤の様子
整然と並ぶ育房 巣柄(巣盤の支柱) 使われなくなった巣盤
* 巣盤:すばん,育房:いくぼう

育房の壁面には女王バチにより1個の卵が産み付けられます.卵からかえった幼虫は頭を下にしてぶら下がっています.幼虫は途中4回脱皮して5齢幼虫(終齢幼虫)となります.十分に成長すると,口から糸を吐いて育房に白いふたをして蛹になります.

コガタスズメバチでは,産卵から成虫になるまでの期間は約1ヶ月(32日)です.内訳は卵が5日間,幼虫が12日前後,蛹が15日前後ですが,営巣初期には長く,働きバチの数が増えると短くなる傾向があります.最も短いキイロスズメバチで約4週間,最も長いオオスズメバチでは約5.5週間を要します.

糞は蛹になる直前に1回まとめてするだけです.糞は幼虫によって育房の底に塗り固められるため,巣盤を割ると育房の奥に乾燥した黒い糞の固まり(メコニウム)が見られます.これは大変硬くて巣盤全体を強化するのに役立っています.成虫が羽化した後の育房にはまた次の卵が産まれ,再び子育てに利用されます.

スズメバチ3種の発育日数

卵 幼虫 5令幼虫
壁面に産み付けられた卵 左から卵,2齢幼虫,3齢幼虫,1齢幼虫 5齢幼虫
まゆ まゆの内部の様子 成虫羽化後の育房 育房の断面
蛹(白いキャップをかぶった部分) 蛹の白いキャップを取り除いた状態(赤で囲んだ部分) 成虫羽化後の育房 育房の断面.巣穴の奥に黒い排泄物の固まり(メコニウム)が見える